橋本容子さんの裁判判決日程

-緊 急-
通信 特別号
「人としての尊厳を取り戻す闘い」を支援する会
判決: 4月27日は延期となりました
5 月31 日(月)午後1時10 分から、鳥取地方裁判所
4 月22 日午後、突然、大田原弁護士の事務所へ裁判所からの電話がありまし
た。判決の日にちを延期したいというのです。判決まで一週間を切ったこの時
期に、一体どういうことなのでしょうか。橋本さんから知らせを聞いた僕も、
驚いてしまいました。
傍聴を予定して下さっていた方々には、急な変更でご迷惑をかけますが、新
たに日程を調整していただいて、できるだけ多くの方々に傍聴に来ていただき
たく思います。併せて、支援者集会の日程も変更いたしましたので、時間の許
す限り、ご参加をお願いいたします。
また、判決の行方を見守っていて下さった方々には、今しばらくの猶予をい
ただくことをお許し下さい。
判決を書きあぐねる裁判官!?
今回、このように判決の日にちが延期されるということは、果たしてどのよ
うな背景があるのか、裁判官の心情を推測して、大田原弁護士より解説してい
ただきました。
① 被告、殊に鳥取医療センターは、「国立病院機構」であり、「国」そのもの
といってもよい存在である。従って、仮に今回被告が敗訴しても、国とし
て個人に負けるわけにはいかないので、被告は最高裁まで争う姿勢である
ことは想定しなければならない。そうなると、もし、最高裁の判決が、今
回の判決と大きく異なるものとなった場合を危惧し、判断を迷っている。
② 本件訴訟は過去に例のない裁判である。精神保健福祉法の条項(33 条・医
療保護入院)について損害賠償請求が行われたことは無く、本件裁判官の
書く判決が、我が国の司法史上、初の判例となる。そこで、本件判決はそ
の先鞭をつけることになるものであるから、慎重になっている。
2
③ 原告代理人大田原弁護士は、過去にも控訴審において、地裁の事実認定を
丁寧かつ徹底的に崩す弁論を展開してきた弁護士であることは、鳥取の裁
判官なら周知の事実である。従って、控訴審で地裁の判決が支持されると
は限らないことへの不安から、判決を書きあぐねている。
以上、大きく3点のことが推察できるとのことです。結論から言うと、この
ことで、勝訴となるか敗訴となるかは未だ分かりませんが、少なくとも、熟慮
の上で判決が書かれることは間違いありません。
そもそもこの裁判は、今までの精神科医療をめぐる社会通念からいえば、「原
告(橋本さん)に被害はない。医療者は当然のことをしたまで」と言われてい
た事件です。
それに対して、たった一人で、人間の尊厳をかけて、司法に、社会に問うた
橋本さんの勇気は、すばらしいものだと思います。更にその橋本さんの想いを
受けとめ、この裁判の社会的意義を承知し、実質的にここまで闘いを繰り広げ
てきた大田原弁護士を、感謝を込めて称えたいと思うのです。
その後いただいたカンパのお礼
前回報告(通信9号)以降、以下の方にカンパをいただいております。ここ
に掲載してお礼を申し上げます。ありがとうございました。(敬称略)
間宮 久子 1,000円
支援者集会 案内
判決の後、支援者集会を行います。大田原弁護士より、本件訴訟を総括して
頂きます。また、判決を受けて、今後の方向性を探りたいと思います。
待ちに待った判決です。また、その結果によっては、全国に波及して国家賠
償の違憲訴訟にも発展しかねない事件であることを考えれば、多くの方々に関
心を寄せていただきたいと思います。ご参加をお待ちしています。
日 時: 5月31日(月) 午後3時~5時
場 所: 福祉文化会館 3階 会議室
所在地 鳥取市西町2 丁目311
問合せ先 0857-24-6766
橋本さんの裁判についてはこちらをご覧ください

2010年4月号ニュース抜粋

ごあいさつ

お陰さまで、なんとか生きています。

政令41号が閣議決定され、医療観察法はまた一歩、我々を侵食しました。

民主党政権下の障がい者制度改革推進会議へ全国「精神病」者集団も関わることになりましたが、これ事態をどう考えるのかは、あまり整理できておりません。もちろん、病者集団内部でも「政府との関わりは避けるべき」という意見もありました。しかしながら、中村かれんの『抵抗と同化』でいうなら、病者集団は、結成当時から抵抗の勢力であったわけで、政府に殴りこむことはあっても、招待されることはありませんでした。その当たり、折角の機会を強制の廃絶に向けて意見していくことも非常に重要と考え参加に至りましたが、それをどう考えるのかについては、もう少し、じっくり考えたいです。

ただ、障害者権利条約第四条の障害者団体参画を決定付けたものであることにかわりはなく、その点は評価できると思います。

とはいえ、結局のところ、最終的には「精神病」者運動という「精神病」者の連帯と運動でしかすべては成し得ないわけで、障がい者制度改革推進会議を機軸にした意見収集も含めて、「精神病」者運動であると思います。一方で批判の声もありますが、批判の立場の「精神病」者運動からもニュース投稿を歓迎しています。(桐原)

障害者制度改革と精神障害者

2010年3月 関口明彦

障がい者改革本部制度推進本部は21年12月8日に以下の目的で閣議決定された。

1(目的) 障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行い、関係行政機関相互間の緊密な連携を確保しつつ、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、内閣に障がい者制度改革推進本部(以下「本部」という。)を設置する。

障がい者制度改革推進会議はそのもとに作られたエンジン部隊である。第一回会議で福島特命担当大臣は、9月までに、障害者基本法、自立支援法=総合福祉法、障害者差別禁止法について議論し、骨格を示してほしいと述べた。この3法に精神障害者の問題が否応なく関係しているのは言を待たない。基本法、自立支援法は、本来昨年度の課題であったのが今年度にずれ込んでいるのだが、差別禁止法は新しいものだ。一方で精神保健福祉法及び医療観察法は今年度が見直しの時期にあたる。

現在制度改革推進会議で進んでいること

具体的な、日程とテーマは以下である。

第一回 2010/1/12 議長選出、運営、日程 等

第二回 2010/2/2 障害者基本法

第三回 2010/2/15 自立支援法=総合福祉法

第四回 2010/3/1 雇用、差別禁止法、虐待防止法

第五回 2010/3/19 教育、政治参加、障がいの表記

第六回 2010/3/30 医療、司法手続き、障害児

第七回 2010/4/12 交通・建物・情報アクセス、所得、財政

基本文書

障害者権利条約の批准と完全履行が大前提、その他自立支援法訴訟基本合意文書及び和解文書、ILO条約、与党マニフェストなど

特徴

会議の構成員が障がい当事者中心、

5年間を改革時期とする 遅くともH25/8までに基本法を総合福祉法にする(H24/4との説も)

取り敢えず、総合福祉法部会を先行して立ち上げる その後順次多くて10の部会を立ち上げる

改革の可能性と立ちはだかる壁

障がい当事者が多くを占めている 政権のスタンスが生活者の為の政治と言っている

壁は国・地方の財政状況と、既存の制度/利権及び考え方の慣性力

精神障害者医療保健福祉に関して特徴的なこと

1.既存の制度及び予算がそれぞれ医学モデル、医療偏重であること

ami58号によれば、精神医療保健福祉 総額 1兆9,300億円、医療約 1兆8,800億円、入院医療  1兆4,000億円、 地域生活支援  500億円で 医療対地域は 97:3 である。

2.強力な医学モデル偏重の慣性力と既存制度に基づく利害関係が存在している。

成し遂げなければならない課題

条約の締結に当たって、明確に改廃しなければならないのが、精神保健福祉法と医療観察法だ。会議では基本法の議論の折に、差別の要件として、直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如の加えて、特定の生活様式を強制されないことが挙げられた。社会的入院や多くの施設入所がこれに当たる。

条約から見た精神医療

医療は救急救命医療を除き本来自らの利益の為に自由な同意に基づく契約により行われるべきものだ。条約25条健康、により規定されている事柄が、現下の状況を見る限り、日本で担保されているとは言い難い。条約を批准するには、医療基本法ないしは患者の権利法が必要だ。つまり国策としての医療から生活者の為の医療への転換が必須となる。

問題となる、精神保健福祉法

目的が医療と保護になっており、その出自も強制入院担保法であった。

保護が入っているために、社会的入院が正当化されているほか、強制入院に際しても患者の人権を軽視した構造になっている。保護入院は保護者制度と共に即時に撤廃しなければ条約の批准は出来ない。他のものとの平等に基づく医療制度とは言えないからだ。

最も問題となる、医療観察法

1.入り口が刑法6罪種であるにもかかわらず、刑法の原則である、罪の責任とそれに対する制裁の均衡が排除されている。すなわち、刑法39条は刑の減免を定めた条項であるにもかかわらず、不定期無期限に拘禁できる。

2.罪の属人主義というか属疾病主義というか、危険性が無くなるまで、あるいは治るまで拘禁、監視し続けることが可能。

3.基本にあるのは、本来不可能な未来予測とそれに基づく社会防衛の為には人権を無視して良いという考え方だ。

4.医療観察法の審判での事実関係証拠調べは適正手続きを欠いている。弁護士も付添人でしかない。

5.精神障害者を特別な処分対象にすることで偏見を助長する。心神喪失等と精神障害はイコールではないが、処遇が精神科医療なので、医療観察法により、精神障害者の凶悪犯罪が多いとか、精神障害者が危険で何をするかわからないというイメージが強化される。

6.「手厚い医療」は「本人のため」ではない。再犯防止に向けた医療ではあるであろうが、13人もの自殺者を出しているように「本人のため」の医療ではない。つまり、行われているのは自由な同意に基づく本来の医療の構造を持ち得ない。

7.刑事司法と精神医療のキメラであり、人員基準と1人あたりの予算以外は、一般精神医療にとって見習うべき点は無い。

条約の批准に必要なこと

精神障害者にとって、医療の占める割合が予算の97%であることを考えると

医療法、精神保健福祉法、医療観察法が問題となる。

しかし、精神障害者にとって人権侵害の強い法律は、医療観察法>精神保健福祉法>医療法だ。医療法の中の特例により入院患者48人に一人の医師しか配置されない。他科なら16人に一人だ。

さらに、入院は精神科のあるところでないと出来ないというのも、現に法令にある差別だ。

結語

障害者権利条約の批准にあたって、最も障害者の人権を侵害している現にある法律は、心神喪失者等医療観察法である。制度改革推進会議が、法律で定められた順番に沿って、基本法、自立支援法、の次に取り上げるべきは医療観察法、精神保健福祉法だと考える。

NPOおかやま入居支援センターの実態

運営委員 佐々井 薫

高齢者や障害者の住宅確保が困難であり長期入院や施設からの地域移行が難しい事で対策が急務とされる今、岡山県に「NPOおかやま入居支援センター」と言う法人が出来ました。

いろいろと悪いうわさも耳にしていたので電話で支援を受けたいと言う話しで問い合わせてみると、まずケースワーカーとの関わりを聴かれ「あります」と答えると次に成年後見制度か、権利擁護の財産管理を受けているかと聞かれ「いいえ」と答えると「誰でも保証人になるわけではない」と言われケースワーカーと同伴で面接に来るようにといわれました。

とりあえず案内書が送られてきて「当NPOは高齢者、障害者を対象に住宅の確保が困難な方々の支援をするため、関係機関とネットワークを形成し、必要に応じて入居時の保証人となるなどの方法により、住居を確保し、もって、誰もが安心して暮らせる街づくりの一翼を担う事を目的としている」とあり構成員には県下の弁護士、司法書士、社会福祉士などで、協力会員として医療機関、福祉関係機関、不動産仲介業者等となっている。

その後のネットワークの図を見ると本人を中心に、センター、行政、介護支援事業者、病院、財産管理者、仲介業者が周りを囲み、相互にネットワークを形成しているように矢印が示されているが本人は入っていない。

しかも、申込書には本人の生活のほとんどを支援センターにゆだね、年会費5千円を払って会員になることを承諾するようにとの書名欄がある。

さらに「フェイスシート」なるものがあり、経歴や家族構成などの個人情報を事細かく書き込むようになっている。

実際に面接に言った仲間に話を聞くと、事務局は弁護士法人の事務所内にあり、応対に出たのは弁護士で、「フェイスシート」なるものによってくどいほどの質問を受け、ネットワークの形成、財産管理契約、センターへの入会は絶対との説明で、部屋の下見はおろか、部屋を選ぶ事すらできず、センターから指示された部屋に入るしかなく、アパートの全室に精神障害者が病状の重い、軽いのバランスを取って、入らされ、お互いに助け合って生活してくださいとの説明であったと言う。

当然、その仲間は怒りながら帰ってきたと言うことで、話を聞いただけでも怒りが走り、今の時代に、このような法人が存在した事にあきれて言葉も出ない。

何かの利害関係が有るのかはわからないが、人権などと言う事以前に人間として考えていない。

生活保護受給者の皆様

通院にかかる交通費が生活保護から移送費として

支給されるのをごぞんじですか?

東京 山本眞理

厚生労働省は2008年4月、生活保護利用者の通院移送費(交通費)を実質廃止する通知を出しました。これによると、130万件(2007年度)に及ぶ通院移送費のほとんどが、今後支給されなくなってしまう可能性がありました。

この通知は、北海道滝川市で起きた通院移送費の詐取(不正受給)事件に端を発したものですが、影響を受ける生活保護利用者の被害は甚大であり、医療受診機会を実質的に奪われることによって症状が重篤化し、生命の危険にさらされるといった事態も予想されました。

私たち全国「精神病」者集団は反貧困ネットほか多くの仲間とともにこの局長通知撤回に向け闘ってまいりました。その過程でびっくりしたのはそもそも移送費という制度をご存じなく請求しておられない方、あるいはごぞんじでも行政が怖くて請求できない方が多いということでした。

今回上記の局長通知が改正され主な点は以下であり、従来どおり移送費が支給されることとなりました。

改正の内容は

○ 「一般的給付」「例外的給付」の別をなくしたこと

○ 電車バスの場合の「へきち」や「高額」というしばりをなくしたこと

○ 「原則管内」「最寄り」が「比較的近距離」という表現になったこと

○ さらに、傷病等の常態や治療実績、主治医との信頼関係等を総合考慮し適切な医療機関への通院を認めたこと

○ 給付手続の周知を明示した。

○ やむを得ない場合には事後申請も可としたこと

などにより、必要な場合については、きちんと出せるようになっているはずです。

是非、仲間で共有し、必要な方に届けてください。

「生活保護法による医療扶助運営要領について」の一部改正(通院移送費関係)

については下記を参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000004ucp.html

精神病者の人身保護裁判を支援する会

カンパ要請



「脳死」臓器移植について考える 市民と議員の勉強会(第2回)のお知らせ

日時:2010年4月14日(水)12時30分~14時30分
会場:衆議院第二議員会館・第4会議室

◇講演 川島孝一郎さん(仙台往診クリニック院長)
 重症患者の在宅支援医療に携わって
-医師は脳死患者と家族にどう向き合うべきか!?-

川島孝一郎医師は現在人工呼吸器をつけた患者45名を
含む多くの重症患者さんの往診診療を行っておられます。
脳死と診断された患者の在宅生活も支援されてきました。
医師は脳死患者やその家族にどう向き合うべきか?
 一人ひとりの患者の命の尊厳とは?
厚労省「終末期医療のあり方に関する懇談会」委員としても
発言されている川島孝一郎さんのお話をぜひお聞きください。

主催:臓器移植法を問い直す市民ネットワーク
連絡先:新宿区西早稲田1-9-19-207 日本消費者連盟気付
電話:080(6532)0916
 e-mail: abdcnet@gmail.com
URL :http://pub.ne.jp/abdnet

日弁連への要請書

日本弁護士連合会

会長 宇都宮 健児 様

抗議・要請文

全国「精神病」者集団 2010年3月30日

東京都中野区中央2―39―3 (〒164-0011)

電話 080-1036-3685 fax 03-5942-7626

e-mail contact@jngmdp.org

冠 省

私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成した全国の「精神病」者団体・個人の連合体です。私どもは、1974年から刑法改悪=保安処分新設を、閉じ込められる側の「精神病」者の立場から反対してまいりました。2001年以降は、いわゆる触法精神障害者に特化した法律に、心神喪失者等医療観察法に反対してまいりました。法施行後も廃止を求めて活動を継続しています。

さて、3月18日・19日の日本弁護士連合会理事会で決議された、「精神医療の改善と医療観察法の見直しに関する意見書」を読みました。理事会及び意見書は、日弁連の会長選挙・会長就任を目前に控えて、急遽、進められたものと聞いております。また、理事会でも反対派の声が多数上がっていたにも関わらず、議論よりも結論を急いだ決議であったと、漏れ聞いております。

意見書は、明らかに医療観察法の改正を旨とするものでした。これは、医療観察法のひとまずの存続を肯定するものであり、医療観察法反対というこれまでの日弁連の姿勢を大きく覆したものです。

われわれは、弁護士がときとして国家権力や資本を相手取って戦うことや日弁連が国家から独立した弁護士組織であることから、国益や私益のために弱者を切り捨てるようなことをしないものと信じていました。

医療観察法は、日弁連も認めてきたとおり、われわれ「精神病」者に対する国家からの保安処分攻撃の一形態です。非科学的な再犯可能性を根拠に、他の者と異なる手続きによって精神障害者を不定期予防拘禁し、あるいは地域で監視管理するといった、強制医療を命ずるのです。そして、「精神病」者はその犠牲となります。そのため、日弁連から医療観察法の存続を肯定するような意見書が出されたことに、大変、憤慨しております。

われわれは、日弁連が出した「精神医療の改善と医療観察法の見直しに関する意見書」を、断じて許すことはできません。よって、ここに、強く抗議するとともに、以下の箇条書きを要請します。

1.精神医療の改善と医療観察法の見直しに関する意見書の白紙撤回

2.なお心神喪失者等医療観察法の問題は日弁連としては刑事法制委員会の担当となっているようですが、本来精神障害者の身体の自由侵害の人権問題として、人権擁護委員会が担当となるべき問題でもあり、かつ高齢者・障害者の権利に関する委員会、あるいは国連障害者人権条約との関係では国際人権問題委員会の課題でもあるべき問題です。

これら委員会が総合して取り組む問題であることを認識していただいた上で、これら委員会の合同の場で、かつ公開のもとに私たちと討論していただきたいと存じます。

以 上

参考資料 意見書がまとまる前の日弁連への要請書

武蔵病院の非公務員型独立行政法人化へのびほう策への抗議

高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律施行令(政令第41号)が2010年3月19日に閣議される可能性が高いとの情報を得ました。医療観察法は、法の破たんを隠すために、これまでも数々の省令改正による小手先調整をしてきました。今後は、国立武蔵に新たに設置される第九病棟の指定のために、わざわざ改正したものです。

2010年3月13日、緊急要請書を総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、法務大臣、内閣府特命担当大臣、国家戦略担当大臣に提出しました。

しかし、残念ながら2010年3月19日に閣議決定され、3月31日に抗議要請書を出しました。

総理大臣 鳩山由紀夫様

総務大臣 原口一博様

厚生労働大臣 長妻昭様

法務大臣 千葉景子様

内閣府特命担当大臣 福島みずほ様

国家戦略担当大臣 仙石由人様

抗議・要請文

全国「精神病」者集団 2010年3月30日

東京都中野区中央2―39―3 (〒164-0011)

電話 080-1036-3685 fax 03-5942-7626

e-mail contact@jngmdp.org

日ごろの障害者の人権および福祉に関するご尽力に敬意を表します。

私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成した全国の「精神病」者団体・個人の連合体です。

私どもは、再犯予測という非科学的な根拠を持ち出し、精神障害者を他の者と異なる手続きで不定期拘禁を可能とする医療観察法を反対してまいりました。

さて、鳩山政権は、3月19日、高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律施行令(政令41号)が閣議決定されました。耳慣れない法律だが、要は、国立精神・神経センターが4月1日から非公務員型独立法人に移行することで「このままでは、医療観察法で入所させられなくなる」(厚労省)事態を回避するために、「センター全体を国とみなす」政令で取り繕うというものです。
医療観察法16条は、「国、都道府県又は特定独立行政法人が開設する病院」以外は指定入院医療機関にできないと規定しています。「特定独立行政法人」とは「その役員及び職員に国家公務員の身分を与えることが必要と認められるもの」であり、国立精神・神経センターが、国立のままか、公務員型の独立行政法人であるかどちらかでないと、指定入院医療機関としての指定を受けられないのです。しかし、国立精神・神経センターは4月1日から非公務員型独立行政法人になるので、医療観察法第16条を満たせなくなり、新たに開棟する第9病棟(合併症中心)は、法律上も、厚労省令上も違法となります。そこで、このほころびを繕おうというのが政令第41号です。
医療観察法入院施設は、法にその設置基準が定められているにも関わらず、自公政権は厚労省令で「みなし」改悪を繰り返してきました。政令による弥縫策は今回で3回目となります。しかし、法の趣旨や規定を政令や省令で変えることはできないはずであり、このような内閣・官僚の独断専行を認めれば、立法府の権威は地に落ちざるをえません。政令41号は、決して、施設の認定に関する「手続き」的な問題ではないのです。

医療観察法16条の趣旨は、医療観察法の「入院処遇」「医療」は権力行使・強制であるがゆえに公務員が当たるということにあります。しかし、この間の厚労省令、そして今回の政令は、医療観察法の「医療」を非公務員が行うことを可能にし、更なる改悪に道を開くものです。他方、医療観察法の対象者が次々と自殺している実態があり、こういった問題を深刻化させる結果にもなりえます。政令による法の実質的な改悪などという違法かつ越権的な行為を絶対に許すべきではありません。

政令41号が閣議決定されたことに抗議するとともに、実態把握の要請及び真摯に検討していただきたい事項を、以下に箇条書きとします。

①障害者制度改革も政治主導で行うため、内閣府に障がい者制度改革推進本部を設置し、障害者権利条約の批准に向けた法整備のために、障がい者制度改革推進会議を開催している。もちろん、障がい者制度改革推進会議でも医療観察法の非人道性については議論されている。こちらの議論をしっかりと行っていくことが求められる。それなのに、政治主導のエンジンたる障がい者制度改革推進会議での議論内容と逆行した閣議決定が出されたことが、障がい者制度改革推進本部の設置目的から矛盾する可能性はないのか。

②年間235億円もの莫大な予算を投入しながら、このような弥縫策をとらなければならない原因を明確にすべきである。地域住民や自治体が施設建設に反発するのは、精神障害者危険論に基づいて医療観察法が作られ、事実、重警備の施設建設によって差別的なキャンペーンを行っているからではないのか。

③非公務員型独立行政法人化することとで国立精神・神経センター新病棟に法律上の問題が生じることは、自公政権当時からわかっていたはずだが、何らの手当てもしていない。現政権は医療観察法に反対してきたのに、なぜその責任も追及せず、パブリックコメントを実施することもなく、官僚の言いなりになって問題を糊塗する方策をとるのか。
④5年間の施行状況が7月以降に国会報告されることになっているのに、その確認もせずに、障害者権利条約の精神に違反すると指摘される医療観察法を追認するような政令をなぜ決定したのか。
⑤全国ひとつの合併症病棟に遠距離から病人を移動させることは負担が大きく反医療といえるのか

⑥心神喪失者等医療観察法下では鑑定入院・入院医療・通院医療と分断されており医療上問題とされているうえに、さらに合併症ゆえに医療が分断され地域から切り離されることになるのではないか。

⑦心神喪失者等医療観察法対象者以外の精神障害者も合併症の際に医療を受けることが困難であり、治療拒否も全国で頻発しているが、心神喪失者等医療観察法でこうした合併症病棟を作ることはこうした実態に悪しき前例を作り、すべての精神障害者の医療保障に重大な悪影響を及ぼす恐れがないか。

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