「心神喪失者等医療観察法案」を廃案へ 精神保健従事者団体懇談会特別フォーラムに参加された皆様へ

精神保健従事者団体懇談会特別フォーラムに参加された皆様へ

= 「心神喪失者等医療観察法案」を廃案へ =

  長野英子 http://www.geocities.jp/jngmdp/

  「心神喪失者等医療観察法案」が今国会で継続審議となり、秋の臨時国会で再び審議されようとしている。この法案は「再犯のおそれ」
を要件として「再犯を防止すること」を目的に、犯罪にあたる行為をし、心神喪失等で不起訴や無罪・執行猶予などとされた人を対象とし、
予防拘禁しようとする法案である。この法案の対象とされ特別の施設に収容されれば、「再犯のおそれのなくなるまで」
おそらく終生の拘禁が予想される。かつて反対運動で頓挫した刑法保安処分新設と同質の保安処分であり、
手続き的にはそれ以上に問題のある法案である。この法案について賛成の立場から発言している山上皓東京医科歯科大学教授は、
欧米の保安処分制度を高く評価し、その宣伝に努めている。しかしながら、
たとえばイギリスの保安病棟の実態あるいはそのシステムが取り返しのつかないほどの人権侵害を引き起こしていることを、
ちょうど今イギリスのインデペンデント紙がキャンペーンを行っている
(ここで取り上げた記事翻訳及びWNUSPの国連特別委員会でのスピーチ翻訳は長野英子のホームページに掲載中)。

不定期拘禁の実態

 インデペンデント紙「たとえ回復しても出口のない高度保安病棟」(6月16日付)では3つの高度保安処分病院(ブロードモアなど)
には、すでにそこにいる必要がないと判断されている患者が、
行き場がないため400人待機リストに載せられたまま拘禁され続けていることを暴露している。
権利擁護のための審査機関もその審査そのものが間に合わずに迅速な審査すら行われていない実態である。

 またひとつのケーススタディとしてすでに22年間ブロードモアに拘禁されている女性作家の例も挙げられている(インデペンデント紙
「高度保安病棟 ジャネットは22年間入れられている。狂っていると認めない限り彼女は釈放されない」6月16日付)。
彼女は殺人事件をおこしたわけでもなく、菜切り包丁で精神科医のおしりを刺したというだけで22年間拘禁されている。

 年間一人当たり直接費用だけで2600万円以上もの費用を使い、
日本より少なくとも法的にはましな人権救済システムを用意されていても、上記のような実態だ。今回の法案が「社会復帰」
を目的と称していても、現実には受け入れ場がなくなり、特別な施設に拘禁され続ける実態を生み出すこともこの記事で明らかになっている。

対象者の拡大 恐怖に支配されていく精神医療

 さらに最近イギリス政府が発表した精神保健法「改正」の草案によると、
なんら犯罪にあたる行為をしていない患者でも高度保安病院に収容できるようになり、
また治療可能性のない人格障害者であっても収容できることになる(「精神病者は法律を破る前に収容される」6月23日付)。

今回の特別立法や「処遇困難者病棟」あるいは何らかの特別病棟の新設によって、「精神病院の開放化がすすむ」あるいは
「地域精神医療が促進する」「精神医療が本来の医療に専念できる」などという、宣伝あるいは意図的誤解が日精協を中心になされているが、
このインデペンデントの記事(「恐怖製作所」6月30日付)を読む限り、むしろ「危険な精神障害者を選別し特別施設に送る体制」
である保安処分の存在するがゆえに、精神科医はじめソーシャルワーカーなどなどすべてのサービス提供者側に対して、
「犯罪の危険の予測とその防止」の任務が押し付けられ、訴えられるというおびえゆえに、
強制力の行使が行われるという実態が明らかになっている。「ますます強制的になる医療サービスの一つの目安として、
精神病院に強制的に入れられた人の数が、過去10年において1.5倍に増えていることがある。
1990年から1991年に18000人だったのが、2000年から2001年には26700人になっている。これらに加えて、
何千人という患者が治療のために自主的に入院して、その後で退院が認められなくなっている。この数もまた明確に増えている。
その結果約50000人の人が去年精神病院に拘禁されており、その数は10年前より20000人多い」(「恐怖製作所」6月30日付より)

インデペンデント紙では「犯罪の予測と防止」というできないことを要求される精神科医の困惑というか苦悩が語られているが、
今回の特別立法を許せば、こうしたことは日本でもおきてくる。もちろん今での措置解除に関しての「おびえ」は精神科医にあるが、
それをどこかに判断してもらう体制を求めることでかえって、精神医療全体が社会防衛的治安の道具にしてしまうことは明らかだ。

精神医療の国際的反動の流れの中で

 60年代後半から70年代初頭に掛けて各国で「精神病」者自身の解放闘争が全国化していった。80年代には欧米ではこうした
「精神病」者運動の主張が一定精神医療体制の中に受け入れられ、とりわけアメリカにおいてはセルフヘルプ・
オールタナティブが活発化していった。こうした動きに対して精神科医の一部からは「精神科医のやることはない。
ソーシャルワーカーでも素人のほうがいいサービスができるなどという風潮」という苦々しげなコメントが出てくるようになった。

90年代になってこうした精神科医と製薬資本の巻き返しが本格化した。各国での地域での強制医療体制
(裁判所命令によって強制的に注射を受けさせられ、拒否すれば強制入院となるなど)、英米から世界化した電気ショックの再評価と強制の動き、
ロボトミーの復活などの動きも見逃せない。アメリカではブッシュ大統領のもと各地の「精神病」
者活動への援助をしている全国センターへの連邦資金が0にされるという攻撃もある。

さらにヨーロッパにおいてはヨーロッパ評議会(Council of Europe )の生命倫理に関する運営委員会作業班の
「精神障害者とりわけ精神保健施設に入れられているものの人権と尊厳を保護する白書(2000年1月)、が出され、ヨーロッパユーザー・
サバイバー・ネットワークはこの白書は題名と異なり「精神病」者の人権をいかに侵害するかという内容であり、強制医療の拡大、
とりわけ地域での強制医療を強化するものと、厳しく批判している。この白書に続き
「精神障害者とりわけ精神保健施設に入れられているものの人権と尊厳を保護するための参加国への閣僚委員会勧告草案(2001年9月)」
がだされ、精神障害の定義として精神病、知的障害、人格障害があげられ、なんと「例外的ケース」とは限定されているものの、
強制的不妊手術と強制的中絶を法定するよう勧告しているとのことだ。
イギリスの精神保健法案もこのヨーロッパ評議会の一連の動きを背景に出てきたものといってよい。

アメリカ一極支配の下での歴史的反動の中で、弱い環である「精神病」者への攻撃が一挙に強まったともいえるし、
精神医療の政治利用治安弾圧への活用が図られているとも言える。
ちなみにイギリスでは反テロ法によって逮捕された人が病院当局の反対にもかかわらず特別病院に監禁され続けているとのことである
(インデペンデント7月21日付)。

 日本の特別立法も精神医療全体の反動化の流れの中にあることは、
このWPA世界大会が製薬資本の金まみれであること一つを持っても明らかである。
ちなみにWPAの世界大会はいわば製薬資本からの金のマネーローンダリング大会であり、
大会は必ず利益を生み出しWPA本部にその利益を上納する仕組みとなっている(日本精神神経学会総会。評議会議事録参照)。また特別立法が、
盗聴法、組織犯罪防止法、個人情報保護法案、有事立法案といった一連の治安弾圧立法の中で位置付けられていることはいうまでもない。

 一方「精神病」者もこうした反動を決して見逃してはいない。象徴的なのが、
国連の障害者権利条約のための特別委員会においての障害者NGOの闘いであり、とりわけ歴史上初めて世界精神医療ユーザー・サバイバー・
ネットワーク(WNUSP)は「精神病」者の国際組織として声をあげた。WNUSP他「精神病」
者団体は30年間の各国での闘いを踏まえ差別にもとづく強制医療体制の廃絶を訴えた。

本日6時半からの集会ではアメリカの「精神病」者シルビア・カラスさんにこうした攻撃に対する「精神病」
者の反撃の活動としてアメリカの活動報告、国連特別委員会の報告をしていただく。

特別施設での医療内容

法案の特別施設でいかなる医療が施されるかほとんど明らかになっていないが、坂口厚生労働大臣によれば、一般的精神医療と「矯正医療」
とのことであり、水島広子議員の要請により厚生労働省が出した「指定入院医療機関における医療の基本的考え方」(長野英子のページに掲載中)
というメモによれば、「矯正医療」の中身はいわゆる「人格障害者」に対する「矯正プログラム」を想定していると見られる。
こうしたプログラムを重篤な「精神病」者に強制することは恐るべき病状悪化を招くことは明らかである。

またあいまいな「人格障害」概念規定を肯定し、この法案の対象者とするならば、いかようにも対象の拡大はなされうる。

しかも電気ショックやロボトミーなど精神外科手術あるいは薬物去勢などがこの施設で行われない保障は一切ない。
各国の保安処分施設が研究者による人体実験所として利用されてきた歴史もあり、
83年に暴露された入院患者が虐殺された宇都宮病院で東大の精神科医が人体実験を行っていたことも記憶に新しい。
宇都宮病院は私設保安処分施設と呼ばれていた。

すでに電気ショックは精神科救急の現場で濫用されており、
この6月にも電気ショックによる死亡を疑われる事件が神奈川県立病院でおきたばかりだ。ロボトミーも国際的には80年代より復活しており、
スコットランドでは重症のうつ病患者に強制的にロボトミーできる法案すら準備されている(ガーディアン6月12日付)。厚生労働省の
「精神科の治療指針」(昭和42年改定)はロボトミーなど精神外科手術を掲げており、この通知はいまだ廃止されていない。

私たち「精神病」者に人権なしという国の姿勢

この1ヶ月の国会審議においてこの法案の問題点は次々と暴露され、とりわけ「再犯予測の可能性」の根拠は完全に崩れ、
この法案の運用自体が成り立たないことが明らかになっている。もちろん仮に「再犯のおそれ」が100%だと証明されたとしても、
やってもいない行為の「おそれ」を持って人を拘禁することは、あってはならないことはいうまでもない。

 7月5日の法案の法務厚生労働連合審査において、森山大臣および坂口大臣は到底見逃しがたい答弁を行った。

 佐藤議員は再犯予測ができるのか、といった再犯予測可能性をめぐる質問をし、100%
というのはできないだろうという坂口大臣の答弁を引き出した。

 その流れで、佐藤議員はもしこの法案が動き出して、それによって被害が出たとしたら、それに対して大臣は責任が取るのか、
と追求したところ、坂口大臣は、被害というのはどういうことか分からないとした上、この法案の対象者は重大な犯罪を犯した人であって、
その人たちに治療を提供するのだから迷惑をかけるなどということはない、むね答弁した。

 一方森山大臣も、十分なケアをし、社会復帰を目指すのだから、被害というのは分からない。
人権上の問題を指しているとしたら人権問題が全くないよう、人権保障は大前提としている、と答弁した。

 すなわち「再犯のおそれ」鑑定が誤り、「再犯のおそれ」のない人を処分の対象として拘禁しても、これは「医療と社会復帰を目的」
としているのだから、なんら不利益を与えないのだ、という論理である。

 開き直りとしかいえない答弁である。法案対象者とされた人には人権なしという宣言である。

 この論理では法の目的さえ「医療と社会復帰」であれば、その法にもとづき強制収容され、いかなる医療を施され、
実りあるべき人生を奪われても、なんら被害ではない、ということになる。私たち「精神病」者には人権なし、という論理だ。

 現行の精神保健福祉法においてもその目的は「医療と保護および社会復帰」となっている。

 しかしながら、この国の精神病院では医療的に入院が不要でありながら、
行き場がないために精神病院での暮らしを余儀なくされている人たちが7万とも10万とも言われている。
このことは坂口厚生労働大臣自身が国会答弁で認めている。その中にはかつて精神外科手術を受け、
新たな障害を押し付けられ苦しんでいる仲間もいる。これらの方は高齢化し一刻も早い救済がなされなければならない方たちである。
ハンセン病訴訟で語られた強制隔離による人生被害を受けた方たちである。

 厚生労働大臣、法務大臣の今回の答弁によれば、法の目的が社会復帰と医療である以上、
これらの方たちも一切被害を受けていないということになる。国は何もしない責任もとらないという宣言とさえ受け取れる。
長期入院者の社会復帰やら精神医療福祉の充実という厚生労働省の言葉の欺瞞が今明確になった。

 精従懇シンポジウム参加者に訴える。一切の幻想を捨て、特別立法廃案に向け私たち「精神病」者とともに闘うことを! 

資料(厚生労働省が水島議員の要請にもとづきだしたもの)

指定入院医療機関における医療の基本的考え方

1 基本的な医療

入院患者に対しては以下のような医療を行う本日6時半からの集会ではアメリカの「精神病」者シルビア・
カラスさんにこうした攻撃に対する「精神病」者の反撃の活動を報告していただく。

@症状改善のための薬物療法

@疾病理解を促しつつ、患者を心理的に支える個人精神療法

@他者との交流に重点をおく集団精神療法

@疾病再発の防止方法を習得させる心理教育

@基本的な社会生活の技法を習得させる社会生活技能訓練

@作業療法などを通じた社会復帰に向けた訓練

@家族へのカウンセリング(患者への心理的指示、服薬管理について助言)等

2 専門的な医療

 再び重大な他害行為を行うおそれのある精神障害者については、衝動性が強い等の特性がありうるため、ここの特性に応じ、
上記の基本的な医療に加え、以下の医療を行う

@「怒りのマネージメント」等の暴力の自制能力向上のための個人精神療法

@重大な他害行為について内省させ、また被害者への共感をはぐくむとともに、患者に対し療養に取り組むインセンティブを与える個人・
集団精神療法

@適切な人間関係を築く技能を習得させる社会生活技能訓練

@家族へのカウンセリングでは、重大な他害行為の再発防止等について助言

@患者の行動観察を入念に行い、「おそれ」を評価 等

 

全国「精神病」者集団ニュース 2002年9月号

2002年9月発行の「ニュース」抜粋です。 一般定期購読は有料(年6回程発行1年分5000円)です。(病者である会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

全国「精神病」者集団ニュース


ごあいさつ

酷暑もようやくすぎて、しのぎやすい季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか? 夏の疲れが出てくる時期ですので、体調を崩す方も多いでしょうし、恒例の秋のうつにおびえておられる方も多いのではないでしょうか?

(略)

ニュース発行が遅れたことをお詫びいたします。この1年余りの特別立法粉砕闘争の疲れそして秋に向け闘いの準備等で遅れました。お手紙へのお返事も遅れがちとなっていることお許しください。この暑さのためかご投稿が少なく、ほとんど資料だけのニュースとなってしまいました。皆様からのご投稿だけが便りのニュースです。季節もよくなったことですし、次号にはぜひ多くのご投稿を期待しております。

★お手紙、各地のニュース、住所変更、ニュース申し込みはすべて

〒923-8691 石川県小松郵便局 私書箱28号 絆社ニュース発行所
E-mail address
Tel: 090-8091-5131(土日以外 午後1時から4時まで)

★会員の運営している私設ホームページ
http://ssko.tripod.com/ (携帯電話対応)

★ニュース購読料カンパはすべて

郵便振替番号:00130-8-409131 名義:絆社ニュース発行所


北から 南から 東から 西から


(略)


「予防拘禁法案を廃案へ! 秋季共同行動」への呼びかけ

先の通常国会に上程された【心神喪失者等医療観察法案】の廃案を共に目指している皆さん。

7月30日に国会の任期は終了し、この法案は継続審議となりました。したがって、法案の審議はこの秋に行われる臨時国会の場に移されることとなりました。しかし、国会の動きとして、廃案へ向かっているわけでは決してありません。30日の法務委員会では、社民党、共産党の反対はありましたが、採決により継続審議となりました。

私達は、これまで実行委員会を作って5.6集会(360人)、6.23集会(200人)、7.18国会デモ(130人)を行ってきました。

情勢は非常に厳しいものはありますが、私達はこれまでの運動の実績を踏まえて、この秋に向けて廃案を目指した闘いを多くの人達と共に作っていきたいと考えています。

8月11日に秋の闘いに向けた相談会がもたれ、以下の内容で実行委員会への呼びかけが話し合われました。

名称 精神障害者差別・保安処分を許すな!予防拘禁法案を廃案へ! 秋季共同行動
共闘の基本原則
① 「廃案!」の一点での共闘
② 共に討論、共に闘いながら相違を埋めていく
賛同人(個人、団体)を募る
集会、デモ 10月6日(日) 2時~ 文京区民センター
第1回実行委員会 8月22日(木) 7:00~
第2回実行委員会 9月8日(日) 6:00~
豊島区民センター(池袋駅東口徒歩5分)
豊島区東池袋1-20-10 TEL03-3984-7601
「予防拘禁法を廃案へ!秋季共同行動」実行委員会(準)
連絡先 陽和病院労働組合 03-3924-6646
090-1254-8360


『精神医療ユーザーのめざすもの――欧米のセルフヘルプ活動』著者
メアリー・オーヘイガン来日

スケジュール

10月13日 町田 (詳細未定)
10月14日から18日 DPI札幌大会

10月19日 仙台 (詳細未定)

10月21日 小松 午後1時から3時 南加賀保健福祉センター 講演
10月26日 午後1時30分 西宮市総合福祉センター研修室
10月28日 久留米 (詳細未定)

各地の詳細はまだ未定です。参加ご希望の方は窓口までお問い合わせくださいませ。


『心を乗っとられて』ある精神障害者の手記

森実恵 潮文社 千二百円

人間の深遠を垣間見せる心の病――奇怪な幻聴、幻覚は何に由来するものか――あなたがあなたであり、私が私であるために何が求まられているのか。

☆強い心と弱い心☆心も捨てて☆自殺未遂☆お金は何様☆空笑い☆葬られた青春☆男の基準☆プライド☆不気味な幻聴、幻覚 等など

私は大阪精神障害者連絡会(大精連)に属する会員で、長年統合失調症を患ってきたものです。この度自らの闘病体験を一冊の本にまとめ潮分社から『心を乗っとられて』を出版することになりました。

このことが同じ病気で苦しむ皆さんの大きな励みになればうれしく思います。精神障害者の方々が置かれている社会的状況が少しでもよくなるよう、日々文筆を通じて精進していくつもりです。一般書店でお求めになれます。ぜひ会員の皆様にも読んでいただきたく思いますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

オンライン本屋での注文はここから


道路交通法の「改正(?)」について

長野英子

障害者への差別欠格条項の廃止に向けた闘いの中で自動車運転免許が精神障害者にも与えられることになりましたが、そこに選別が伴うことになったのは先にニュースでお知らせしたとおりです。

6月1日より新しい法律が思考されるようになりましたが、今までの書類に加え新しく、「病状申告」がすべての人に求められることになりました。

病状申告について、運転免許申請、更新申請等の書類上でそれぞれ、記載事項以下の欄が設けられています。

(略)


国連特別委員会でのWNUSPの発言

長野英子

昨年12月に国連総会は、障害者の権利条約を検討する特別委員会設置を決定した。

すでに93年に国連総会で採択された「障害者の機会均等化に関する基準規則」があるがこれは条約ではなく強制力がない。

「基準規則は障害者の社会参加を妨げる障壁(バリア)が全ての国にあるとし、障壁を取り除くことが政府の責任である、と明記した。主な内容は建物・乗り物・情報を誰もが使えるようにすること(アクセス)、統合教育の原則(手話を用いる聾学校は別)、職業に関する差別禁止、性的関係・結婚に関する差別禁止である。

基準規則の実施には、自ら視覚障害者である特別報告者や障害者組織が積極的に取り組んできた。しかし、ガイドラインではなく、批准国政府に義務を課す国際条約の実現も障害者側からは訴えられてきた。そうした要請を受けて、2000年には中国政府、アイルランド政府が国連で条約提案を行ったが、実現しなかった。またもや挫折かと思われたところ、昨年秋の国連総会で、今度はメキシコ政府が条約提案を行い、ねばり強い説得工作をして、特別委員会を設置する決議の採択にこぎ着けたのである」(長瀬修 『毎日新聞』2002/01/21朝刊・「発言席」より)

2002年7月30日から8月9日にかけ国連で「障害者の権利条約を検討する特別委員会が開かれ、「精神病」者の国際組織としてWNUSPが歴史上はじめて公式に発言した。NGOの正式の発言そのものが前例がなくまた前例としないということで認められた。

WNUSPはすでにこの特別会議に先立って開かれたメキシコでの専門家会議にも代表を送り、メキシコ草案にも治療の名の下での強制的介入の禁止が取り入れられ、1991年12月の国連総会において採択された「精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための原則」の廃棄とともにいよいよ私たち「精神病」者の声が国連条約に反映される道が開かれたといってよい。

このWNUSPの主張どおりの権利条約が成立しそしてそれを日本政府が批准したとしたら、特別立法のみならず、精神保健福祉法撤廃の日が確実に訪れるといってよい。WNUSPの発言内容はこの30年間の私たち「精神病」者の各国での闘いを踏まえたものであり、私は全面的に支持する。

条約の成立までは5年ほどはかかるという話もあり、今後の流れはどうなるかは予断を許さないが、今は私たちの代表が国連で声をあげたことをまず喜びたい。

以下国連でのスピーチ

―――――――――――――――――

精神障害とレッテルを貼られたものの人権問題とは何か、そしてそれらの人権問題は障害者の人権条約によってどのように取り扱われるのが最良か?

1私たちの問題は私たちが定義する

最初に以下を明らかにしておく。過去30年の運動においてこれらの人権問題について考え続け努力し続けてきたのは、そしてこれらの人権問題とは何かを発言すべきは、精神障害とレッテルを貼られたわれわれ自身である。

われわれの間で最も重要な問題として認識されているのは以下である。

* 障害を根拠とした監禁

* 治療という名目による強制的介入

* 精神障害というレッテルに屈服する結果としての法的地位と市民権の剥奪

* そして地域社会において習慣的に繰り返されるわれわれの自己決定を否定する人権侵害、報道と専門家がさまざまな言葉をつかい偏見と差別を増幅していること。

さらにそれぞれが結びついたものであるが、適切な生活を営む権利、家をもつ権利、消費者自身が管理する支援サービスへの権利、懲罰的あるいは制限された差別的状況からの自由、これらの権利は下記で論じるように、上述したほかの権利と相互に密接に結びついている。

監禁

われわれは差別的な根拠により押し付けられたものである限り監禁は決して正当化されないと確信している。精神病とか精神障害と人が診断されただけで、社会にとって危険であると判断されることになり、その人はたとえば強制入院のような形で監禁される、そうした監禁は決して正当化されないと私たちは確信している。同じ差別的な根拠によってなされているので、自ら傷つけるなど危険から本人を保護するという名目でなされる監禁も、同様に私たちは正当化され得ないと確信している。地域で生きる人々の自らを守る能力を支え、基本的要求にこたえるやりかたはいくらでもある。監禁自体が個人の能力で対抗し得ないほどのさまざまな害を及ぼす。肉体的性的暴行、強制的介入、プライバシーの剥奪、肉体的な状態への無視そして不適切な食事、不衛生、社会的活動の不足、自ら主導権をもった活動の機会と条件の剥奪、強制的隔離などなど。このように、人を監禁するということは統合と自己決定の原則そして同様に非差別の原則に真っ向から反することである。

障害を根拠とした監禁はそれ自体が人権侵害と認識されるべきである。監禁に対する救済手続きは本質的な問題に対処するものにはなりえない。そしてそうした救済手続きは人を虐待するシステムの合法化をもたらしまた根本的変革を避ける口実の議論を生み出すだけである。

治療という名目での強制的介入

また治療という名目によって強制的介入が正当化されてはならないとわれわれは確信している。正常な脳の機能に働きかけ同時にあるいは脳組織を破壊する、精神外科、電気ショックそして向精神薬やその他の薬といった精神医学の介入は本質的に疑わしい。神経学的病気ではないのに、人間の行動を肉体的原因に帰そうとする専門的精神医学の試みは、実際のあるいは認識されている障害のある人々を、いかにもわけありげに劣等であるとする、偏見による決めつけそして差別であると認識されなければならない。そうした試みは人種差別と優生思想と同様でありそしてこれらと密接に結びついている。

治療という名目による強制的介入は拷問の一形態と認識されるべきである。そしてそれは取り分けて差別的に障害のあるあるいは障害があるとレッテルを貼られた人々に押し付けられる。

法的地位と市民権の剥奪

投票権のような法的地位と市民的権利の剥奪は精神障害とレッテルを貼られた人を人類でないかのように差別的に扱う好例である。こうしたことがなされると、精神障害とレッテルを貼られた人は自らの利益のために組織化し権利を主張する能力を抑圧されてしまう。そして同様に法の下で平等な人として認識されまたわれわれの生きている社会に平等に参加する基本的人権が侵害される。その結果通常の生活におけるあらゆる種類の虐待や差別たとえば隔離、強いられた貧困、社会的に作られた弱者として強者である人たちの犠牲にされること、などに全く無抵抗でさらされることになる。また監禁と強制的介入はさらに弱い立場に人々を追い込む。

地域社会で行われていること

習慣的に地域社会で行われ続けていること、たとえば他者に依存せざるをえないサービス、精神障害とレッテルを貼られた人への家族による支配や監禁、あるいは社会から人を排外し、政治活動を制限し、または強制的介入や有害な対応に屈服を強いたりするさまざまな文化的影響力の行使もまた人権侵害と認識されるべきである。他のさまざまな差別と偏見と同じように、精神病とレッテルを貼られた人への差別的決めつけと虐待は多くの社会で長い歴史があり、有害な行為をやめさせるための必要な措置をとり被害を食い止めること、そして社会的個人的なニーズにこたえる適切な文化的オールタナティブを開発することなどだけではなくて、文化的な変革をも求めなければならない。

経済的社会的権利

賃労働が常にできる能力があるか否か、あるいはたとえば親としてなどの社会的なさまざまな役割が求める要件を満たしているか否かに関わらず、社会に生きる誰もがその社会の資源を分かち合いそして社会的文化的生活に参加する権利がある。適切な住宅や生活費を確保するために支援や援助が必要ならば、障害を根拠とした人権を制限するような条件なしに、必要に応じ援助や支援がなされなければならない。特に、住宅や生活費援助をえる資格のためにプライバシーの権利、自分の日常生活を管理する権利、移動の自由、交際の自由、あるいは強制的介入の拒否権などを放棄することを要求されてはならない。このことは市民的政治的権利と経済的社会的権利が密接に結びついていることを明らかにしている。すなわち自由で明白な条件のもとに経済的援助がなされないなら、自己決定、統合そして平等な権利という原則に反して、差別的で強制的支配体制を維持するためにいともたやすく経済的援助が利用されることになるからである。

2.国連決議46・119 「精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための原則」を私たちは拒否する

第二に国際的な原則はわれわれ自身すなわち障害者の経験と専門的知識を反映しなければならない。何が人権侵害なのかの定義に関しては取り分けてこのことが必須である。それゆえに、国連決議46・119、「精神病者保護等のための原則」はわれわれの人権のガイドラインの根拠として正統性がなく、障害者の人権条約を練り上げていく過程では廃棄され無視されるべきものである。

WNUSPはその立場表明の文書で「国連原則」の廃棄を主張した。われわれはこの基準規則が障害への人権の視点からのアプローチと両立しえず、むしろ時代遅れの医学モデルによるアプローチを反映していると確信している。この医学モデルに基づくアプローチは医学的レッテルを人権に優先し、われわれは自分たちのために発言することができない、あるいは平等な存在として完全参加できない存在であると仮定し決めつけている。詳細はWNUSPの見解文書を参照されたい。

上記の見解をとっているのはWNUSPだけではない。国連原則が採用された際に、DPIは国連の小委員会において以下の発言をしている。「われわれにとって、このことは何もないよりましであると判断するべき分野の問題ではない。原則はわれわれのためにわれわれによって作られなければならない。そしてわれわれ自身の権利を防衛するために有益なものでなければならない。そうでなければわれわれはこの原則採決を阻止するためにあらゆる可能な努力をしなければならない。もしわれわれが敗れ採決されるのであれば、われわれは国内においてこの原則を無視する」(国連文書 E/CN.4/1989/NGO/75, 国連文書E/CN.4/Sub.2/1988/NGO/27)

またこの原則の廃棄を求める国連人権高等弁務官への人権に関する請願もある。

世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP)を代表して国連障害者の人権条約のための特別委員会においての発言 ティナ・ミンコウィッツ 2002年8月2日

(仮訳 長野英子)


精神保健従事者団体懇談会特別フォーラムに参加された皆様へ

「心神喪失者等医療観察法案」を廃案へ

長野英子 http://www.geocities.jp/jngmdp/

「心神喪失者等医療観察法案」が今国会で継続審議となり、秋の臨時国会で再び審議されようとしている。この法案は「再犯のおそれ」を要件として「再犯を防止すること」を目的に、犯罪にあたる行為をし、心神喪失等で不起訴や無罪・執行猶予などとされた人を対象とし、予防拘禁しようとする法案である。この法案の対象とされ特別の施設に収容されれば、「再犯のおそれのなくなるまで」おそらく終生の拘禁が予想される。かつて反対運動で頓挫した刑法保安処分新設と同質の保安処分であり、手続き的にはそれ以上に問題のある法案である。この法案について賛成の立場から発言している山上皓東京医科歯科大学教授は、欧米の保安処分制度を高く評価し、その宣伝に努めている。しかしながら、たとえばイギリスの保安病棟の実態あるいはそのシステムが取り返しのつかないほどの人権侵害を引き起こしていることを、ちょうど今イギリスのインデペンデント紙がキャンペーンを行っている(ここで取り上げた記事翻訳及びWNUSPの国連特別委員会でのスピーチ翻訳は長野英子のホームページに掲載中)。

不定期拘禁の実態

インデペンデント紙「たとえ回復しても出口のない高度保安病棟」(6月16日付)では3つの高度保安処分病院(ブロードモアなど)には、すでにそこにいる必要がないと判断されている患者が、行き場がないため400人待機リストに載せられたまま拘禁され続けていることを暴露している。権利擁護のための審査機関もその審査そのものが間に合わずに迅速な審査すら行われていない実態である。

またひとつのケーススタディとしてすでに22年間ブロードモアに拘禁されている女性作家の例も挙げられている(インデペンデント紙「高度保安病棟 ジャネットは22年間入れられている。狂っていると認めない限り彼女は釈放されない」6月16日付)。彼女は殺人事件をおこしたわけでもなく、菜切り包丁で精神科医のおしりを刺したというだけで22年間拘禁されている。

年間一人当たり直接費用だけで2600万円以上もの費用を使い、日本より少なくとも法的にはましな人権救済システムを用意されていても、上記のような実態だ。今回の法案が「社会復帰」を目的と称していても、現実には受け入れ場がなくなり、特別な施設に拘禁され続ける実態を生み出すこともこの記事で明らかになっている。

対象者の拡大 恐怖に支配されていく精神医療

さらに最近イギリス政府が発表した精神保健法「改正」の草案によると、なんら犯罪にあたる行為をしていない患者でも高度保安病院に収容できるようになり、また治療可能性のない人格障害者であっても収容できることになる(「精神病者は法律を破る前に収容される」6月23日付)。

今回の特別立法や「処遇困難者病棟」あるいは何らかの特別病棟の新設によって、「精神病院の開放化がすすむ」あるいは「地域精神医療が促進する」「精神医療が本来の医療に専念できる」などという、宣伝あるいは意図的誤解が日精協を中心になされているが、このインデペンデントの記事(「恐怖製作所」6月30日付)を読む限り、むしろ「危険な精神障害者を選別し特別施設に送る体制」である保安処分の存在するがゆえに、精神科医はじめソーシャルワーカーなどなどすべてのサービス提供者側に対して、「犯罪の危険の予測とその防止」の任務が押し付けられ、訴えられるというおびえゆえに、強制力の行使が行われるという実態が明らかになっている。「ますます強制的になる医療サービスの一つの目安として、精神病院に強制的に入れられた人の数が、過去10年において1.5倍に増えていることがある。1990年から1991年に18000人だったのが、2000年から2001年には26700人になっている。これらに加えて、何千人という患者が治療のために自主的に入院して、その後で退院が認められなくなっている。この数もまた明確に増えている。その結果約50000人の人が去年精神病院に拘禁されており、その数は10年前より20000人多い」(「恐怖製作所」6月30日付より)

インデペンデント紙では「犯罪の予測と防止」というできないことを要求される精神科医の困惑というか苦悩が語られているが、今回の特別立法を許せば、こうしたことは日本でもおきてくる。もちろん今での措置解除に関しての「おびえ」は精神科医にあるが、それをどこかに判断してもらう体制を求めることでかえって、精神医療全体が社会防衛的治安の道具にしてしまうことは明らかだ。

精神医療の国際的反動の流れの中で

60年代後半から70年代初頭に掛けて各国で「精神病」者自身の解放闘争が全国化していった。80年代には欧米ではこうした「精神病」者運動の主張が一定精神医療体制の中に受け入れられ、とりわけアメリカにおいてはセルフヘルプ・オールタナティブが活発化していった。こうした動きに対して精神科医の一部からは「精神科医のやることはない。ソーシャルワーカーでも素人のほうがいいサービスができるなどという風潮」という苦々しげなコメントが出てくるようになった。

90年代になってこうした精神科医と製薬資本の巻き返しが本格化した。各国での地域での強制医療体制(裁判所命令によって強制的に注射を受けさせられ、拒否すれば強制入院となるなど)、英米から世界化した電気ショックの再評価と強制の動き、ロボトミーの復活などの動きも見逃せない。アメリカではブッシュ大統領のもと各地の「精神病」者活動への援助をしている全国センターへの連邦資金が0にされるという攻撃もある。

さらにヨーロッパにおいてはヨーロッパ評議会(Council of Europe )の生命倫理に関する運営委員会作業班の「精神障害者とりわけ精神保健施設に入れられているものの人権と尊厳を保護する白書(2000年1月)、が出され、ヨーロッパユーザー・サバイバー・ネットワークはこの白書は題名と異なり「精神病」者の人権をいかに侵害するかという内容であり、強制医療の拡大、とりわけ地域での強制医療を強化するものと、厳しく批判している。この白書に続き「精神障害者とりわけ精神保健施設に入れられているものの人権と尊厳を保護するための参加国への閣僚委員会勧告草案(2001年9月)」がだされ、精神障害の定義として精神病、知的障害、人格障害があげられ、なんと「例外的ケース」とは限定されているものの、強制的不妊手術と強制的中絶を法定するよう勧告しているとのことだ。イギリスの精神保健法案もこのヨーロッパ評議会の一連の動きを背景に出てきたものといってよい。

アメリカ一極支配の下での歴史的反動の中で、弱い環である「精神病」者への攻撃が一挙に強まったともいえるし、精神医療の政治利用治安弾圧への活用が図られているとも言える。ちなみにイギリスでは反テロ法によって逮捕された人が病院当局の反対にもかかわらず特別病院に監禁され続けているとのことである(インデペンデント7月21日付)。

日本の特別立法も精神医療全体の反動化の流れの中にあることは、このWPA世界大会が製薬資本の金まみれであること一つを持っても明らかである。ちなみにWPAの世界大会はいわば製薬資本からの金のマネーローンダリング大会であり、大会は必ず利益を生み出しWPA本部にその利益を上納する仕組みとなっている(日本精神神経学会総会。評議会議事録参照)。また特別立法が、盗聴法、組織犯罪防止法、個人情報保護法案、有事立法案といった一連の治安弾圧立法の中で位置付けられていることはいうまでもない。

一方「精神病」者もこうした反動を決して見逃してはいない。象徴的なのが、国連の障害者権利条約のための特別委員会においての障害者NGOの闘いであり、とりわけ歴史上初めて世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)は「精神病」者の国際組織として声をあげた。WNUSP他「精神病」者団体は30年間の各国での闘いを踏まえ差別にもとづく強制医療体制の廃絶を訴えた。

本日6時半からの集会ではアメリカの「精神病」者シルビア・カラスさんにこうした攻撃に対する「精神病」者の反撃の活動としてアメリカの活動報告、国連特別委員会の報告をしていただく。

特別施設での医療内容

法案の特別施設でいかなる医療が施されるかほとんど明らかになっていないが、坂口厚生労働大臣によれば、一般的精神医療と「矯正医療」とのことであり、水島広子議員の要請により厚生労働省が出した「指定入院医療機関における医療の基本的考え方」(長野英子のページに掲載中)というメモによれば、「矯正医療」の中身はいわゆる「人格障害者」に対する「矯正プログラム」を想定していると見られる。こうしたプログラムを重篤な「精神病」者に強制することは恐るべき病状悪化を招くことは明らかである。

またあいまいな「人格障害」概念規定を肯定し、この法案の対象者とするならば、いかようにも対象の拡大はなされうる。

しかも電気ショックやロボトミーなど精神外科手術あるいは薬物去勢などがこの施設で行われない保障は一切ない。各国の保安処分施設が研究者による人体実験所として利用されてきた歴史もあり、83年に暴露された入院患者が虐殺された宇都宮病院で東大の精神科医が人体実験を行っていたことも記憶に新しい。宇都宮病院は私設保安処分施設と呼ばれていた。

すでに電気ショックは精神科救急の現場で濫用されており、この6月にも電気ショックによる死亡を疑われる事件が神奈川県立病院でおきたばかりだ。ロボトミーも国際的には80年代より復活しており、スコットランドでは重症のうつ病患者に強制的にロボトミーできる法案すら準備されている(ガーディアン6月12日付)。厚生労働省の「精神科の治療指針」(昭和42年改定)はロボトミーなど精神外科手術を掲げており、この通知はいまだ廃止されていない。

私たち「精神病」者に人権なしという国の姿勢

この1ヶ月の国会審議においてこの法案の問題点は次々と暴露され、とりわけ「再犯予測の可能性」の根拠は完全に崩れ、この法案の運用自体が成り立たないことが明らかになっている。もちろん仮に「再犯のおそれ」が100%だと証明されたとしても、やってもいない行為の「おそれ」を持って人を拘禁することは、あってはならないことはいうまでもない。

7月5日の法案の法務厚生労働連合審査において、森山大臣および坂口大臣は到底見逃しがたい答弁を行った。

佐藤議員は再犯予測ができるのか、といった再犯予測可能性をめぐる質問をし、100%というのはできないだろうという坂口大臣の答弁を引き出した。

その流れで、佐藤議員はもしこの法案が動き出して、それによって被害が出たとしたら、それに対して大臣は責任が取るのか、と追求したところ、坂口大臣は、被害というのはどういうことか分からないとした上、この法案の対象者は重大な犯罪を犯した人であって、その人たちに治療を提供するのだから迷惑をかけるなどということはない、むね答弁した。

一方森山大臣も、十分なケアをし、社会復帰を目指すのだから、被害というのは分からない。人権上の問題を指しているとしたら人権問題が全くないよう、人権保障は大前提としている、と答弁した。

すなわち「再犯のおそれ」鑑定が誤り、「再犯のおそれ」のない人を処分の対象として拘禁しても、これは「医療と社会復帰を目的」としているのだから、なんら不利益を与えないのだ、という論理である。

開き直りとしかいえない答弁である。法案対象者とされた人には人権なしという宣言である。

この論理では法の目的さえ「医療と社会復帰」であれば、その法にもとづき強制収容され、いかなる医療を施され、実りあるべき人生を奪われても、なんら被害ではない、ということになる。私たち「精神病」者には人権なし、という論理だ。

現行の精神保健福祉法においてもその目的は「医療と保護および社会復帰」となっている。

しかしながら、この国の精神病院では医療的に入院が不要でありながら、行き場がないために精神病院での暮らしを余儀なくされている人たちが7万とも10万とも言われている。このことは坂口厚生労働大臣自身が国会答弁で認めている。その中にはかつて精神外科手術を受け、新たな障害を押し付けられ苦しんでいる仲間もいる。これらの方は高齢化し一刻も早い救済がなされなければならない方たちである。ハンセン病訴訟で語られた強制隔離による人生被害を受けた方たちである。

厚生労働大臣、法務大臣の今回の答弁によれば、法の目的が社会復帰と医療である以上、これらの方たちも一切被害を受けていないということになる。国は何もしない責任もとらないという宣言とさえ受け取れる。長期入院者の社会復帰やら精神医療福祉の充実という厚生労働省の言葉の欺瞞が今明確になった。

精従懇シンポジウム参加者に訴える。一切の幻想を捨て、特別立法廃案に向け私たち「精神病」者とともに闘うことを!

資料(厚生労働省が水島議員の要請にもとづきだしたもの)

指定入院医療機関における医療の基本的考え方

1 基本的な医療

入院患者に対しては以下のような医療を行う本日6時半からの集会ではアメリカの「精神病」者シルビア・カラスさんにこうした攻撃に対する「精神病」者の反撃の活動を報告していただく。

@症状改善のための薬物療法

@疾病理解を促しつつ、患者を心理的に支える個人精神療法

@他者との交流に重点をおく集団精神療法

@疾病再発の防止方法を習得させる心理教育

@基本的な社会生活の技法を習得させる社会生活技能訓練

@作業療法などを通じた社会復帰に向けた訓練

@家族へのカウンセリング(患者への心理的指示、服薬管理について助言)等

2 専門的な医療

再び重大な他害行為を行うおそれのある精神障害者については、衝動性が強い等の特性がありうるため、ここの特性に応じ、上記の基本的な医療に加え、以下の医療を行う

@「怒りのマネージメント」等の暴力の自制能力向上のための個人精神療法

@重大な他害行為について内省させ、また被害者への共感をはぐくむとともに、患者に対し療養に取り組むインセンティブを与える個人・集団精神療法

@適切な人間関係を築く技能を習得させる社会生活技能訓練

@家族へのカウンセリングでは、重大な他害行為の再発防止等について助言

@患者の行動観察を入念に行い、「おそれ」を評価 等


夏季カンパにご協力ありがとうございました。

夏季カンパ総額168,250円、ニュース代61,000円となりました。お約束の昨年度の会計報告は紙面の都合で次号に回させていただきます。

カンパに寄せられた一言から

*その後元気に指定ます。カンパに使ってください。体のほうもだいぶよくなり、作業者の行事やグループホームの行司で結構楽しく暮らしています。少し疲れるけどよく眠っています。それで少し負荷を掛けて疲れをとる練習をしています。この調子で3,4年後は社会に戻れるかもしれません。

*東京の佐藤健二様が国会へ議員を送り出そう! 私は心より支援し、少しでもカンパを送り、滋賀県よりこれを送ります。

*わずかですがご笑納ください。がんばってください。

*小額ですが、いつものニュースの郵便料にでもと思います。

*特別立法反対のための諸活動にわずかながら支援を送ります。

*給料が入りました、仕事をしています。住所が変わりました。

*映画「REDS」を見た。そう見ても、ジョン・リードの死に方はおかしい。なぜコミンテルンはアメリカの少数革命派を受け入れなかったのだろう。ジョン・リードがフィンランドに投獄されたとき、確かレーニンは「彼が解放されるのなら数住人の学者と好感してもよい」といったそうである。ならば、ジョン・リードの存在はレーニンの耳にも入っていたはずである。当時は政権をとったばかりでボルシェビキも混乱状態にあったようだ。過剰労働でノイローゼになったという友達の情報が入った。自然科学の寄り道をする余裕がない今日この頃である。

*ニュース購読料にはなりませんが、せめてもの夏季カンパ。解雇撤回闘争中ゆえご勘弁を。

*大変すばらしいニュース。ありがたく読ませていただいております。今後ともよろしく。

*カンパとして受け取ってください。7月の保護費が入りましたので、少しですが、送ります。受け取ってください。絆社ニュースのスタッフの方も全員体調の具合でいつも忙しいとのこと2ヶ月に1度の発行ですが、届けばすごく安心感があります。

少しずつですが、カンパしますのでぜひ休刊にならないようお願いします。

*いつもありがとうございます。あまり無理して体調を壊さないようにしてください。またお会いできるとうれしいです。

*いつも絆社ニュースを送っていただき、ありがとうございます。些少ではありますが、カンパをお送りいたします。今後ともよろしくお願いいたします。

*この間大変世話になっております。ありがとうございます。いったり来たりとお疲れ様でございます。少し休めるといいのですが、ニュース郵送代です。みんなについていきながら私も廃案まで闘っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

*少なくてすみません切手代です。

(略)


全国「精神病」者集団ニュース2002年9月号

2002年9月発行の「ニュース」抜粋です。

一般定期購読
は有料
(年6回程発行1年分5000円)です。(
病者である会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

全国「精神病」者集団ニュース


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ごあいさつ

 酷暑もようやくすぎて、しのぎやすい季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか?
 夏の疲れが出てくる時期ですので、体調を崩す方も多いでしょうし、
恒例の秋のうつにおびえておられる方も多いのではないでしょうか?

(略)

 ニュース発行が遅れたことをお詫びいたします。
この1年余りの特別立法粉砕闘争の疲れそして秋に向け闘いの準備等で遅れました。
お手紙へのお返事も遅れがちとなっていることお許しください。この暑さのためかご投稿が少なく、
ほとんど資料だけのニュースとなってしまいました。皆様からのご投稿だけが便りのニュースです。
季節もよくなったことですし、次号にはぜひ多くのご投稿を期待しております。

 


★お手紙、各地のニュース、住所変更、
ニュース申し込みはすべて

〒923-
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(土日以外 午後1時から4時まで)

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00130-8-409131 名義:絆社ニュース発行所


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北から 南から 東から 西から


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(略)


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「予防拘禁法案を廃案へ! 秋季共同行動」
への呼びかけ 
    

 先の通常国会に上程された【心神喪失者等医療観察法案】の廃案を共に目指している皆さん。

 7月30日に国会の任期は終了し、この法案は継続審議となりました。したがって、
法案の審議はこの秋に行われる臨時国会の場に移されることとなりました。しかし、国会の動きとして、
廃案へ向かっているわけでは決してありません。30日の法務委員会では、社民党、共産党の反対はありましたが、
採決により継続審議となりました。

 私達は、これまで実行委員会を作って5.6集会(360人)、6.23集会(200人)、7.
18国会デモ(130人)を行ってきました。

 情勢は非常に厳しいものはありますが、私達はこれまでの運動の実績を踏まえて、
この秋に向けて廃案を目指した闘いを多くの人達と共に作っていきたいと考えています。

 8月11日に秋の闘いに向けた相談会がもたれ、以下の内容で実行委員会への呼びかけが話し合われました。

 

 名称 精神障害者差別・保安処分を許すな!予防拘禁法案を廃案へ! 秋季共同行動 
 共闘の基本原則
    ① 「廃案!」の一点での共闘
    ② 共に討論、共に闘いながら相違を埋めていく
 賛同人(個人、団体)を募る
 集会、デモ 10月6日(日) 2時~ 文京区民センター
 第1回実行委員会  8月22日(木) 7:00~ 
 第2回実行委員会  9月8日(日) 6:00~ 
 豊島区民センター(池袋駅東口徒歩5分)    
 豊島区東池袋1-20-10  TEL03-3984-7601
 「予防拘禁法を廃案へ!秋季共同行動」実行委員会(準)
 連絡先 陽和病院労働組合 03-3924-6646
               090-1254-8360

 


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『精神医療ユーザーのめざすもの――欧米のセルフヘルプ活動』著者
メアリー・オーヘイガン来日

スケジュール

10月13日 町田 (詳細未定)
10月14日から18日 DPI札幌大会

10月19日 仙台 (詳細未定)

10月21日 小松  午後1時から3時 南加賀保健福祉センター 講演
10月26日 午後1時30分 西宮市総合福祉センター研修室 
10月28日 久留米 (詳細未定)

各地の詳細はまだ未定です。参加ご希望の方は窓口までお問い合わせくださいませ。


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『心を乗っとられて』ある精神障害者の手記

  森実恵 潮文社 千二百円

人間の深遠を垣間見せる心の病――奇怪な幻聴、幻覚は何に由来するものか――あなたがあなたであり、
私が私であるために何が求まられているのか。

☆強い心と弱い心☆心も捨てて☆自殺未遂☆お金は何様☆空笑い☆葬られた青春☆男の基準☆プライド☆不気味な幻聴、
幻覚 等など

私は大阪精神障害者連絡会(大精連)に属する会員で、長年統合失調症を患ってきたものです。
この度自らの闘病体験を一冊の本にまとめ潮分社から『心を乗っとられて』を出版することになりました。

 このことが同じ病気で苦しむ皆さんの大きな励みになればうれしく思います。
精神障害者の方々が置かれている社会的状況が少しでもよくなるよう、日々文筆を通じて精進していくつもりです。
一般書店でお求めになれます。
ぜひ会員の皆様にも読んでいただきたく思いますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。


オンライン本屋での注文はここから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


道路交通法の「改正(?)」について

              長野英子

障害者への差別欠格条項の廃止に向けた闘いの中で自動車運転免許が精神障害者にも与えられることになりましたが、
そこに選別が伴うことになったのは先にニュースでお知らせしたとおりです。

6月1日より新しい法律が思考されるようになりましたが、今までの書類に加え新しく、「病状申告」
がすべての人に求められることになりました。

病状申告について、運転免許申請、更新申請等の書類上でそれぞれ、記載事項以下の欄が設けられています。

(略)

 


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国連特別委員会でのWNUSPの発言

           長野英子

昨年12月に国連総会は、障害者の権利条約を検討する特別委員会設置を決定した。

 すでに93年に国連総会で採択された「障害者の機会均等化に関する基準規則」
があるがこれは条約ではなく強制力がない。

 「基準規則は障害者の社会参加を妨げる障壁(バリア)が全ての国にあるとし、
障壁を取り除くことが政府の責任である、と明記した。主な内容は建物・乗り物・情報を誰もが使えるようにすること
(アクセス)、統合教育の原則(手話を用いる聾学校は別)、職業に関する差別禁止、性的関係・
結婚に関する差別禁止である。

 基準規則の実施には、自ら視覚障害者である特別報告者や障害者組織が積極的に取り組んできた。しかし、
ガイドラインではなく、批准国政府に義務を課す国際条約の実現も障害者側からは訴えられてきた。
そうした要請を受けて、2000年には中国政府、アイルランド政府が国連で条約提案を行ったが、実現しなかった。
またもや挫折かと思われたところ、昨年秋の国連総会で、今度はメキシコ政府が条約提案を行い、
ねばり強い説得工作をして、特別委員会を設置する決議の採択にこぎ着けたのである」(長瀬修 『毎日新聞』
2002/01/21朝刊・「発言席」より)

 2002年7月30日から8月9日にかけ国連で「障害者の権利条約を検討する特別委員会が開かれ、
「精神病」者の国際組織としてWNUSPが歴史上はじめて公式に発言した。
NGOの正式の発言そのものが前例がなくまた前例としないということで認められた。

 WNUSPはすでにこの特別会議に先立って開かれたメキシコでの専門家会議にも代表を送り、
メキシコ草案にも治療の名の下での強制的介入の禁止が取り入れられ、
1991年12月の国連総会において採択された「精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための原則」
の廃棄とともにいよいよ私たち「精神病」者の声が国連条約に反映される道が開かれたといってよい。

 このWNUSPの主張どおりの権利条約が成立しそしてそれを日本政府が批准したとしたら、
特別立法のみならず、精神保健福祉法撤廃の日が確実に訪れるといってよい。
WNUSPの発言内容はこの30年間の私たち「精神病」者の各国での闘いを踏まえたものであり、
私は全面的に支持する。

 条約の成立までは5年ほどはかかるという話もあり、今後の流れはどうなるかは予断を許さないが、
今は私たちの代表が国連で声をあげたことをまず喜びたい。

以下国連でのスピーチ

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精神障害とレッテルを貼られたものの人権問題とは何か、
そしてそれらの人権問題は障害者の人権条約によってどのように取り扱われるのが最良か?

1私たちの問題は私たちが定義する

 最初に以下を明らかにしておく。
過去30年の運動においてこれらの人権問題について考え続け努力し続けてきたのは、
そしてこれらの人権問題とは何かを発言すべきは、精神障害とレッテルを貼られたわれわれ自身である。

 われわれの間で最も重要な問題として認識されているのは以下である。

* 障害を根拠とした監禁

* 治療という名目による強制的介入

* 精神障害というレッテルに屈服する結果としての法的地位と市民権の剥奪

* そして地域社会において習慣的に繰り返されるわれわれの自己決定を否定する人権侵害、
報道と専門家がさまざまな言葉をつかい偏見と差別を増幅していること。

さらにそれぞれが結びついたものであるが、適切な生活を営む権利、家をもつ権利、
消費者自身が管理する支援サービスへの権利、懲罰的あるいは制限された差別的状況からの自由、
これらの権利は下記で論じるように、上述したほかの権利と相互に密接に結びついている。

監禁

 われわれは差別的な根拠により押し付けられたものである限り監禁は決して正当化されないと確信している。
精神病とか精神障害と人が診断されただけで、社会にとって危険であると判断されることになり、
その人はたとえば強制入院のような形で監禁される、そうした監禁は決して正当化されないと私たちは確信している。
同じ差別的な根拠によってなされているので、自ら傷つけるなど危険から本人を保護するという名目でなされる監禁も、
同様に私たちは正当化され得ないと確信している。地域で生きる人々の自らを守る能力を支え、
基本的要求にこたえるやりかたはいくらでもある。監禁自体が個人の能力で対抗し得ないほどのさまざまな害を及ぼす。
肉体的性的暴行、強制的介入、プライバシーの剥奪、肉体的な状態への無視そして不適切な食事、不衛生、
社会的活動の不足、自ら主導権をもった活動の機会と条件の剥奪、強制的隔離などなど。このように、
人を監禁するということは統合と自己決定の原則そして同様に非差別の原則に真っ向から反することである。

 障害を根拠とした監禁はそれ自体が人権侵害と認識されるべきである。
監禁に対する救済手続きは本質的な問題に対処するものにはなりえない。
そしてそうした救済手続きは人を虐待するシステムの合法化をもたらしまた根本的変革を避ける口実の議論を生み出すだけである。

治療という名目での強制的介入

 また治療という名目によって強制的介入が正当化されてはならないとわれわれは確信している。
正常な脳の機能に働きかけ同時にあるいは脳組織を破壊する、精神外科、
電気ショックそして向精神薬やその他の薬といった精神医学の介入は本質的に疑わしい。神経学的病気ではないのに、
人間の行動を肉体的原因に帰そうとする専門的精神医学の試みは、実際のあるいは認識されている障害のある人々を、
いかにもわけありげに劣等であるとする、偏見による決めつけそして差別であると認識されなければならない。
そうした試みは人種差別と優生思想と同様でありそしてこれらと密接に結びついている。

 治療という名目による強制的介入は拷問の一形態と認識されるべきである。
そしてそれは取り分けて差別的に障害のあるあるいは障害があるとレッテルを貼られた人々に押し付けられる。

法的地位と市民権の剥奪

 投票権のような法的地位と市民的権利の剥奪は精神障害とレッテルを貼られた人を人類でないかのように差別的に扱う好例である。
こうしたことがなされると、
精神障害とレッテルを貼られた人は自らの利益のために組織化し権利を主張する能力を抑圧されてしまう。
そして同様に法の下で平等な人として認識されまたわれわれの生きている社会に平等に参加する基本的人権が侵害される。
その結果通常の生活におけるあらゆる種類の虐待や差別たとえば隔離、強いられた貧困、
社会的に作られた弱者として強者である人たちの犠牲にされること、などに全く無抵抗でさらされることになる。
また監禁と強制的介入はさらに弱い立場に人々を追い込む。

地域社会で行われていること

習慣的に地域社会で行われ続けていること、たとえば他者に依存せざるをえないサービス、
精神障害とレッテルを貼られた人への家族による支配や監禁、あるいは社会から人を排外し、政治活動を制限し、
または強制的介入や有害な対応に屈服を強いたりするさまざまな文化的影響力の行使もまた人権侵害と認識されるべきである。
他のさまざまな差別と偏見と同じように、
精神病とレッテルを貼られた人への差別的決めつけと虐待は多くの社会で長い歴史があり、
有害な行為をやめさせるための必要な措置をとり被害を食い止めること、
そして社会的個人的なニーズにこたえる適切な文化的オールタナティブを開発することなどだけではなくて、
文化的な変革をも求めなければならない。

経済的社会的権利

 賃労働が常にできる能力があるか否か、
あるいはたとえば親としてなどの社会的なさまざまな役割が求める要件を満たしているか否かに関わらず、
社会に生きる誰もがその社会の資源を分かち合いそして社会的文化的生活に参加する権利がある。
適切な住宅や生活費を確保するために支援や援助が必要ならば、障害を根拠とした人権を制限するような条件なしに、
必要に応じ援助や支援がなされなければならない。特に、住宅や生活費援助をえる資格のためにプライバシーの権利、
自分の日常生活を管理する権利、移動の自由、交際の自由、
あるいは強制的介入の拒否権などを放棄することを要求されてはならない。
このことは市民的政治的権利と経済的社会的権利が密接に結びついていることを明らかにしている。
すなわち自由で明白な条件のもとに経済的援助がなされないなら、自己決定、
統合そして平等な権利という原則に反して、
差別的で強制的支配体制を維持するためにいともたやすく経済的援助が利用されることになるからである。

2.国連決議46・119 「精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための原則」
を私たちは拒否する

 第二に国際的な原則はわれわれ自身すなわち障害者の経験と専門的知識を反映しなければならない。
何が人権侵害なのかの定義に関しては取り分けてこのことが必須である。それゆえに、国連決議46・119、
「精神病者保護等のための原則」はわれわれの人権のガイドラインの根拠として正統性がなく、
障害者の人権条約を練り上げていく過程では廃棄され無視されるべきものである。

 WNUSPはその立場表明の文書で「国連原則」の廃棄を主張した。
われわれはこの基準規則が障害への人権の視点からのアプローチと両立しえず、
むしろ時代遅れの医学モデルによるアプローチを反映していると確信している。
この医学モデルに基づくアプローチは医学的レッテルを人権に優先し、
われわれは自分たちのために発言することができない、
あるいは平等な存在として完全参加できない存在であると仮定し決めつけている。
詳細はWNUSPの見解文書を参照されたい。

 上記の見解をとっているのはWNUSPだけではない。国連原則が採用された際に、
DPIは国連の小委員会において以下の発言をしている。「われわれにとって、
このことは何もないよりましであると判断するべき分野の問題ではない。
原則はわれわれのためにわれわれによって作られなければならない。
そしてわれわれ自身の権利を防衛するために有益なものでなければならない。
そうでなければわれわれはこの原則採決を阻止するためにあらゆる可能な努力をしなければならない。
もしわれわれが敗れ採決されるのであれば、われわれは国内においてこの原則を無視する」
(国連文書 E/CN.4/1989/NGO/75,
国連文書E/CN.4/Sub.2/1988/NGO/27)

 またこの原則の廃棄を求める国連人権高等弁務官への人権に関する請願もある。

世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP)
を代表して国連障害者の人権条約のための特別委員会においての発言 ティナ・
ミンコウィッツ 2002年8月2日

(仮訳 長野英子)


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精神保健従事者団体懇談会特別フォーラムに参加された皆様へ

「心神喪失者等医療観察法案」を廃案へ

  長野英子 http://www.geocities.jp/jngmdp/

  「心神喪失者等医療観察法案」が今国会で継続審議となり、秋の臨時国会で再び審議されようとしている。
この法案は「再犯のおそれ」を要件として「再犯を防止すること」を目的に、犯罪にあたる行為をし、
心神喪失等で不起訴や無罪・執行猶予などとされた人を対象とし、予防拘禁しようとする法案である。
この法案の対象とされ特別の施設に収容されれば、「再犯のおそれのなくなるまで」おそらく終生の拘禁が予想される。
かつて反対運動で頓挫した刑法保安処分新設と同質の保安処分であり、
手続き的にはそれ以上に問題のある法案である。
この法案について賛成の立場から発言している山上皓東京医科歯科大学教授は、欧米の保安処分制度を高く評価し、
その宣伝に努めている。しかしながら、
たとえばイギリスの保安病棟の実態あるいはそのシステムが取り返しのつかないほどの人権侵害を引き起こしていることを、
ちょうど今イギリスのインデペンデント紙がキャンペーンを行っている
(ここで取り上げた記事翻訳及びWNUSPの国連特別委員会でのスピーチ翻訳は長野英子のホームページに掲載中)。

不定期拘禁の実態

 インデペンデント紙「たとえ回復しても出口のない高度保安病棟」(6月16日付)
では3つの高度保安処分病院(ブロードモアなど)には、すでにそこにいる必要がないと判断されている患者が、
行き場がないため400人待機リストに載せられたまま拘禁され続けていることを暴露している。
権利擁護のための審査機関もその審査そのものが間に合わずに迅速な審査すら行われていない実態である。

 またひとつのケーススタディとしてすでに22年間ブロードモアに拘禁されている女性作家の例も挙げられている
(インデペンデント紙「高度保安病棟 ジャネットは22年間入れられている。
狂っていると認めない限り彼女は釈放されない」6月16日付)。彼女は殺人事件をおこしたわけでもなく、
菜切り包丁で精神科医のおしりを刺したというだけで22年間拘禁されている。

 年間一人当たり直接費用だけで2600万円以上もの費用を使い、
日本より少なくとも法的にはましな人権救済システムを用意されていても、上記のような実態だ。今回の法案が
「社会復帰」を目的と称していても、現実には受け入れ場がなくなり、
特別な施設に拘禁され続ける実態を生み出すこともこの記事で明らかになっている。

対象者の拡大 恐怖に支配されていく精神医療

 さらに最近イギリス政府が発表した精神保健法「改正」の草案によると、
なんら犯罪にあたる行為をしていない患者でも高度保安病院に収容できるようになり、
また治療可能性のない人格障害者であっても収容できることになる(「精神病者は法律を破る前に収容される」
6月23日付)。

今回の特別立法や「処遇困難者病棟」あるいは何らかの特別病棟の新設によって、「精神病院の開放化がすすむ」
あるいは「地域精神医療が促進する」「精神医療が本来の医療に専念できる」などという、
宣伝あるいは意図的誤解が日精協を中心になされているが、このインデペンデントの記事(「恐怖製作所」
6月30日付)を読む限り、むしろ「危険な精神障害者を選別し特別施設に送る体制」
である保安処分の存在するがゆえに、精神科医はじめソーシャルワーカーなどなどすべてのサービス提供者側に対して、
「犯罪の危険の予測とその防止」の任務が押し付けられ、訴えられるというおびえゆえに、
強制力の行使が行われるという実態が明らかになっている。「ますます強制的になる医療サービスの一つの目安として、
精神病院に強制的に入れられた人の数が、過去10年において1.5倍に増えていることがある。
1990年から1991年に18000人だったのが、2000年から2001年には26700人になっている。
これらに加えて、何千人という患者が治療のために自主的に入院して、その後で退院が認められなくなっている。
この数もまた明確に増えている。その結果約50000人の人が去年精神病院に拘禁されており、
その数は10年前より20000人多い」(「恐怖製作所」6月30日付より)

インデペンデント紙では「犯罪の予測と防止」
というできないことを要求される精神科医の困惑というか苦悩が語られているが、今回の特別立法を許せば、
こうしたことは日本でもおきてくる。もちろん今での措置解除に関しての「おびえ」は精神科医にあるが、
それをどこかに判断してもらう体制を求めることでかえって、
精神医療全体が社会防衛的治安の道具にしてしまうことは明らかだ。

精神医療の国際的反動の流れの中で

 60年代後半から70年代初頭に掛けて各国で「精神病」者自身の解放闘争が全国化していった。
80年代には欧米ではこうした「精神病」者運動の主張が一定精神医療体制の中に受け入れられ、
とりわけアメリカにおいてはセルフヘルプ・オールタナティブが活発化していった。
こうした動きに対して精神科医の一部からは「精神科医のやることはない。
ソーシャルワーカーでも素人のほうがいいサービスができるなどという風潮」
という苦々しげなコメントが出てくるようになった。

90年代になってこうした精神科医と製薬資本の巻き返しが本格化した。各国での地域での強制医療体制
(裁判所命令によって強制的に注射を受けさせられ、拒否すれば強制入院となるなど)、
英米から世界化した電気ショックの再評価と強制の動き、ロボトミーの復活などの動きも見逃せない。
アメリカではブッシュ大統領のもと各地の「精神病」
者活動への援助をしている全国センターへの連邦資金が0にされるという攻撃もある。

さらにヨーロッパにおいてはヨーロッパ評議会(Council of Europe )
の生命倫理に関する運営委員会作業班の
「精神障害者とりわけ精神保健施設に入れられているものの人権と尊厳を保護する白書(2000年1月)、が出され、
ヨーロッパユーザー・サバイバー・ネットワークはこの白書は題名と異なり「精神病」
者の人権をいかに侵害するかという内容であり、強制医療の拡大、とりわけ地域での強制医療を強化するものと、
厳しく批判している。この白書に続き
「精神障害者とりわけ精神保健施設に入れられているものの人権と尊厳を保護するための参加国への閣僚委員会勧告草案
(2001年9月)」がだされ、精神障害の定義として精神病、知的障害、人格障害があげられ、なんと
「例外的ケース」とは限定されているものの、強制的不妊手術と強制的中絶を法定するよう勧告しているとのことだ。
イギリスの精神保健法案もこのヨーロッパ評議会の一連の動きを背景に出てきたものといってよい。

アメリカ一極支配の下での歴史的反動の中で、弱い環である「精神病」
者への攻撃が一挙に強まったともいえるし、精神医療の政治利用治安弾圧への活用が図られているとも言える。
ちなみにイギリスでは反テロ法によって逮捕された人が病院当局の反対にもかかわらず特別病院に監禁され続けているとのことである
(インデペンデント7月21日付)。

 日本の特別立法も精神医療全体の反動化の流れの中にあることは、
このWPA世界大会が製薬資本の金まみれであること一つを持っても明らかである。
ちなみにWPAの世界大会はいわば製薬資本からの金のマネーローンダリング大会であり、
大会は必ず利益を生み出しWPA本部にその利益を上納する仕組みとなっている(日本精神神経学会総会。
評議会議事録参照)。また特別立法が、盗聴法、組織犯罪防止法、個人情報保護法案、
有事立法案といった一連の治安弾圧立法の中で位置付けられていることはいうまでもない。

 一方「精神病」者もこうした反動を決して見逃してはいない。象徴的なのが、
国連の障害者権利条約のための特別委員会においての障害者NGOの闘いであり、
とりわけ歴史上初めて世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)は「精神病」
者の国際組織として声をあげた。WNUSP他「精神病」
者団体は30年間の各国での闘いを踏まえ差別にもとづく強制医療体制の廃絶を訴えた。

本日6時半からの集会ではアメリカの「精神病」者シルビア・カラスさんにこうした攻撃に対する「精神病」
者の反撃の活動としてアメリカの活動報告、国連特別委員会の報告をしていただく。

特別施設での医療内容

法案の特別施設でいかなる医療が施されるかほとんど明らかになっていないが、坂口厚生労働大臣によれば、
一般的精神医療と「矯正医療」とのことであり、水島広子議員の要請により厚生労働省が出した
「指定入院医療機関における医療の基本的考え方」(長野英子のページに掲載中)というメモによれば、「矯正医療」
の中身はいわゆる「人格障害者」に対する「矯正プログラム」を想定していると見られる。
こうしたプログラムを重篤な「精神病」者に強制することは恐るべき病状悪化を招くことは明らかである。

またあいまいな「人格障害」概念規定を肯定し、この法案の対象者とするならば、
いかようにも対象の拡大はなされうる。

しかも電気ショックやロボトミーなど精神外科手術あるいは薬物去勢などがこの施設で行われない保障は一切ない。
各国の保安処分施設が研究者による人体実験所として利用されてきた歴史もあり、
83年に暴露された入院患者が虐殺された宇都宮病院で東大の精神科医が人体実験を行っていたことも記憶に新しい。
宇都宮病院は私設保安処分施設と呼ばれていた。

すでに電気ショックは精神科救急の現場で濫用されており、
この6月にも電気ショックによる死亡を疑われる事件が神奈川県立病院でおきたばかりだ。
ロボトミーも国際的には80年代より復活しており、
スコットランドでは重症のうつ病患者に強制的にロボトミーできる法案すら準備されている
(ガーディアン6月12日付)。厚生労働省の「精神科の治療指針」(昭和42年改定)
はロボトミーなど精神外科手術を掲げており、この通知はいまだ廃止されていない。

私たち「精神病」者に人権なしという国の姿勢

この1ヶ月の国会審議においてこの法案の問題点は次々と暴露され、とりわけ「再犯予測の可能性」
の根拠は完全に崩れ、この法案の運用自体が成り立たないことが明らかになっている。もちろん仮に「再犯のおそれ」
が100%だと証明されたとしても、やってもいない行為の「おそれ」を持って人を拘禁することは、
あってはならないことはいうまでもない。

 7月5日の法案の法務厚生労働連合審査において、森山大臣および坂口大臣は到底見逃しがたい答弁を行った。

 佐藤議員は再犯予測ができるのか、といった再犯予測可能性をめぐる質問をし、100%
というのはできないだろうという坂口大臣の答弁を引き出した。

 その流れで、佐藤議員はもしこの法案が動き出して、それによって被害が出たとしたら、
それに対して大臣は責任が取るのか、と追求したところ、坂口大臣は、
被害というのはどういうことか分からないとした上、この法案の対象者は重大な犯罪を犯した人であって、
その人たちに治療を提供するのだから迷惑をかけるなどということはない、むね答弁した。

 一方森山大臣も、十分なケアをし、社会復帰を目指すのだから、被害というのは分からない。
人権上の問題を指しているとしたら人権問題が全くないよう、人権保障は大前提としている、と答弁した。

 すなわち「再犯のおそれ」鑑定が誤り、「再犯のおそれ」のない人を処分の対象として拘禁しても、これは
「医療と社会復帰を目的」としているのだから、なんら不利益を与えないのだ、という論理である。

 開き直りとしかいえない答弁である。法案対象者とされた人には人権なしという宣言である。

 この論理では法の目的さえ「医療と社会復帰」であれば、その法にもとづき強制収容され、
いかなる医療を施され、実りあるべき人生を奪われても、なんら被害ではない、ということになる。私たち「精神病」
者には人権なし、という論理だ。

 現行の精神保健福祉法においてもその目的は「医療と保護および社会復帰」となっている。

 しかしながら、この国の精神病院では医療的に入院が不要でありながら、
行き場がないために精神病院での暮らしを余儀なくされている人たちが7万とも10万とも言われている。
このことは坂口厚生労働大臣自身が国会答弁で認めている。その中にはかつて精神外科手術を受け、
新たな障害を押し付けられ苦しんでいる仲間もいる。
これらの方は高齢化し一刻も早い救済がなされなければならない方たちである。
ハンセン病訴訟で語られた強制隔離による人生被害を受けた方たちである。

 厚生労働大臣、法務大臣の今回の答弁によれば、法の目的が社会復帰と医療である以上、
これらの方たちも一切被害を受けていないということになる。
国は何もしない責任もとらないという宣言とさえ受け取れる。
長期入院者の社会復帰やら精神医療福祉の充実という厚生労働省の言葉の欺瞞が今明確になった。

 精従懇シンポジウム参加者に訴える。一切の幻想を捨て、特別立法廃案に向け私たち「精神病」
者とともに闘うことを! 

資料(厚生労働省が水島議員の要請にもとづきだしたもの)

指定入院医療機関における医療の基本的考え方

1 基本的な医療

入院患者に対しては以下のような医療を行う本日6時半からの集会ではアメリカの「精神病」者シルビア・
カラスさんにこうした攻撃に対する「精神病」者の反撃の活動を報告していただく。

@症状改善のための薬物療法

@疾病理解を促しつつ、患者を心理的に支える個人精神療法

@他者との交流に重点をおく集団精神療法

@疾病再発の防止方法を習得させる心理教育

@基本的な社会生活の技法を習得させる社会生活技能訓練

@作業療法などを通じた社会復帰に向けた訓練

@家族へのカウンセリング(患者への心理的指示、服薬管理について助言)等

2 専門的な医療

 再び重大な他害行為を行うおそれのある精神障害者については、衝動性が強い等の特性がありうるため、
ここの特性に応じ、上記の基本的な医療に加え、以下の医療を行う

@「怒りのマネージメント」等の暴力の自制能力向上のための個人精神療法

@重大な他害行為について内省させ、また被害者への共感をはぐくむとともに、
患者に対し療養に取り組むインセンティブを与える個人・集団精神療法

@適切な人間関係を築く技能を習得させる社会生活技能訓練

@家族へのカウンセリングでは、重大な他害行為の再発防止等について助言

@患者の行動観察を入念に行い、「おそれ」を評価 等

 


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夏季カンパにご協力ありがとうございました。

夏季カンパ総額168,250円、ニュース代61,000円となりました。
お約束の昨年度の会計報告は紙面の都合で次号に回させていただきます。

カンパに寄せられた一言から

*その後元気に指定ます。カンパに使ってください。体のほうもだいぶよくなり、
作業者の行事やグループホームの行司で結構楽しく暮らしています。少し疲れるけどよく眠っています。
それで少し負荷を掛けて疲れをとる練習をしています。この調子で3,4年後は社会に戻れるかもしれません。

*東京の佐藤健二様が国会へ議員を送り出そう! 私は心より支援し、少しでもカンパを送り、
滋賀県よりこれを送ります。

*わずかですがご笑納ください。がんばってください。

*小額ですが、いつものニュースの郵便料にでもと思います。

*特別立法反対のための諸活動にわずかながら支援を送ります。

*給料が入りました、仕事をしています。住所が変わりました。

*映画「REDS」を見た。そう見ても、ジョン・リードの死に方はおかしい。
なぜコミンテルンはアメリカの少数革命派を受け入れなかったのだろう。ジョン・
リードがフィンランドに投獄されたとき、確かレーニンは「彼が解放されるのなら数住人の学者と好感してもよい」
といったそうである。ならば、ジョン・リードの存在はレーニンの耳にも入っていたはずである。
当時は政権をとったばかりでボルシェビキも混乱状態にあったようだ。
過剰労働でノイローゼになったという友達の情報が入った。自然科学の寄り道をする余裕がない今日この頃である。

*ニュース購読料にはなりませんが、せめてもの夏季カンパ。解雇撤回闘争中ゆえご勘弁を。

*大変すばらしいニュース。ありがたく読ませていただいております。今後ともよろしく。

*カンパとして受け取ってください。7月の保護費が入りましたので、少しですが、送ります。
受け取ってください。
絆社ニュースのスタッフの方も全員体調の具合でいつも忙しいとのこと2ヶ月に1度の発行ですが、
届けばすごく安心感があります。

少しずつですが、カンパしますのでぜひ休刊にならないようお願いします。

*いつもありがとうございます。あまり無理して体調を壊さないようにしてください。
またお会いできるとうれしいです。

*いつも絆社ニュースを送っていただき、ありがとうございます。些少ではありますが、
カンパをお送りいたします。今後ともよろしくお願いいたします。

*この間大変世話になっております。ありがとうございます。いったり来たりとお疲れ様でございます。
少し休めるといいのですが、ニュース郵送代です。
みんなについていきながら私も廃案まで闘っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

*少なくてすみません切手代です。

 

(略)

 

 

 


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全国「精神病」者集団ニュース 2002年6月号

2002年6月発行の「ニュース」抜粋です。 一般定期購読は有料(年6回程発行1年分5000円)です。(病者である会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

全国「精神病」者集団

ニュース


ごあいさつ

しのぎやすい季節になったと思っていたらもう夏がやってきました。

皆様いかがお過ごしでしょうか?

池田小事件以来この1年間、私たち「精神病」者に対する保安処分攻撃のあらしの中、反保安処分の戦いの中で消耗し尽くしておられる方、地域での「精神病」者差別の強まりの中でいきづまる思いで生活しておられる方、今年の春以来異常気象の中で体調を崩しておられる方など、さまざまな形で苦しい状況が続いております。

4月1日から精神保健福祉が都道府県から市町村に管轄が変わり、地域での福祉サービスなるものが始まったということになっております。窓口にはホームヘルパー派遣にかかわり非常に差別的な評価表が使われ、本人抜きの評価会議の中で、「精神病」者差別はますます厳しくなっているという告発も届いております。

合同検討会の主意書がすでに地域では実体化しているのかもしれません。

巻末にあるように、「私たちに関することを私たち抜きで決めてはならない」という原則は残念ながらまだまだ遠い現状があります。

ぜひ各地の皆様のご体験をこのニュースにお寄せいただきたいと存じます。

体験の共有、情報の共有こそこのニュースの目的のひとつです。そこから私たち自身の将来を導き出していきたいと考えております。

会員の皆様よろしくお願いいたします。

(略)

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北から 南から 東から 西から


(略)


全国「精神病」者集団から国会議員を送り出そう!

東京 佐藤健二

全国「精神病」者集団の私設ホームページを管理しています佐藤健二と申します。

ホームページとはインターネットという世界中に広がった通信網上のコンピュータに設置する広告用掲示板のようなものです。

パソコンや携帯電話の「インターネット」機能を使えるのであれば、全国「精神病」者集団の私設ホームページは、ssko.tripod.comというように指定すれば見ることができます。

今まで我々精神病者は他の障害者などと比べてその病状や社会的立場ゆえか大きな政治活動ができませんでした。そのため、国家権力、一般大衆、マスコミは我々精神病者に対して不利となるような法律を制定したり報道をして我々精神病者に対する偏見を助長してきたといえます。

そこで、精神病者の政治的主張を一層世の中に反映させるため、また、我々精神病者の自己防衛のために、全国「精神病」者集団から国会議員を送り出すのがいいのではないかという結論に達しました。以下は具体的な提案項目です。

①衆議院解散後の衆議院選挙にて、比例代表制方式の全国区に、全国「精神病」者集団として立候補する。

②比例代表制の候補として、会員から数名出馬する。

③NHKの政見放送に出て、我々の主張を訴える。

④『全国「精神病」者集団』という党名は長いし投票用紙に記載しにくいので、『キティ集団』、『キティ解放党』、『キティ党』、『解放党』、『精神病者解放党』のような、短い党名で出馬することも検討する。(キティとは精神病者を意味する俗語であり、英語では猫を意味します。)

⑤出馬には数百万円の保証金が必要ですが、佐藤健二が立て替える用意があります。

みなさん、よろしく検討のほどよろしくお願いします。


◆詩集のお知らせ◆

詩集『奇跡ではなくて~躁鬱(そううつ)病とのたたかい~』 1,000円好評発売中。送料240円で送本いたします。

連絡先

(HP管理人のkenjisatoaddress@hotmail.comまで)


(略)


窓口から

★世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP)総会決議

昨年7月世界ユーザー・サバイバーネットワークの初の総会がカナダバンクーバーで開かれました。1991年に発足以来全国「精神病」者集団は組織参加しておりますが、この組織は資金不足により活発な動きをとれず、昨年ようやく総会を開くことができました。

以下が総会で決議された決議文です。

ユーザーというのは精神医療の利用者を指し、サバイバーというのは精神医療および「精神病」といわれる体験から自らの力で生還し生き延びている者とをさします。

「完全な情報公開に向けて」

WNUSPの2001年バンクーバー総会にて承認

(WFMHの2001年総会と合同)

○世界精神医療のユーザー・サバイバーのネットワークは、十分なインフォームドコンセント(十分に説明を受けた上での本人の同意)のない、強制的な精神医療での薬物使用が、国際的に増加していることに、異議がある。そして、

○WNUSPは、精神医療の製薬資本が、精神医療業界に対しての影響力を及ぼし支配しようとする傾向が、またもや、増長しつつあることを問題とする。

○したがって:WNUSPは、精神保健に関する世界会議を含む、精神医療の問題に関わる全ての組織および協議会などに対して、精神医療の製薬資本より受け取っている資金の総額を、全て情報公開するよう、要求する。このことを、ここに決議する。

「強制的電気ショック療法反対」

  WNUSPの2001年バンクーバー総会にて承認

(WFMHの2001年総会と合同)

○世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワークは、電気ショック療法の使用による人権侵害を憂慮する。そして、

○各国政府は、概して、この処置が国際的に増加しているように見えるにも関わらず、電気ショック療法に関する報告および規制を、十分に公表していない。そして、

○電気ショック療法は未だに、本人のはっきりした意思表示に反して、多くの人々に対して、強制されている。

○したがってWNUSPは、誰に対してであれ、本人の表明した意志に反して行われる電気ショック療法を、犯罪であるとする。このことを、ここに決議する。

「狂人としての誇り(マッドプライド)」

WNUSPの2001年バンクーバー総会にて承認

○2001年7月、5カ国においてマッドプライドのイベント(行事)が行われ、精神医療サバイバーの社会変革活動が顕彰された。そして、

○これらの「狂人としての誇り」を示すイベント(行事)は、精神医療制度における人権侵害が世界的に広がっていることに対すて大きな関心を集めた。

○したがってWNUSPは2001年において「狂人として誇り」をそしてマッドプライドのイベントの意義を確認する。このことを、ここに決議する。

(訳注 「マッドプライド」というのはロンドンの「精神病」者グループが始めた活動で、「ゲイプライド」のパレードにならい、自分たちの「狂気の文化、自らの誇りの回復」をめざし、毎年7月に世界各地で行われるイベント。コンサートパフォーマンスその他いろいろな活動が行われている。)

「私達に関係することは、何事も、私達抜きであってはならない」

WNUSPの2001年バンクーバー総会にて承認

(WFMHの総会を通して、WFMHの委員会においてさらに検討)

○精神医療制度により影響を受ける人々は、彼らの生活に影響する政策決定の、作成また再考に対して、完全に参加しなければならない。そして、

○WNUSPは、「私達に関係することは、何事も、私達抜きであってはならない」という原則を、主張する。しかしながら、

○精神保健の政策とサービスに関する国際協会(the International Consortium for Mental health Policy and Services)は、世界銀行を含めて、国際的に参考になるものとして、「精神保健政策の原則(Mental Health Policy Template)」を定めたのだが、

○この原則を作った人々も、精神医療からのサバイバーおよび精神医療制度のユーザーより十分な助言を得ておらず、またそれらの人々が十分に参加しないで作られた原則であることを、認めている。

○したがって:WNUSPは、精神医療のサバイバーおよび精神医療制度のユーザーが助言し、関与することで、彼らの見方がこの原則に反映される時まで、この精神保健の政策の原則を参考として示すことを、保留することを要求する。このことを、ここに決議する。

(訳注;この「精神保健政策の原則(Mental Health Policy Template)」というものがどういう内容でどれだけ影響力のあるものかは調査中です。発展途上国への影響が大きいもののようですが、ご存じの方がおられたらご教授くださいませ)

「強制治療反対」

  WNUSPの2001年バンクーバー総会にて承認

(WFMHの総会を通して、WFMHの委員会においてさらに検討)

○精神医療関係者は、「精神病」が、ガンや糖尿病、結核、肺炎のような、解剖学上あるいは生理学上の欠陥を、明白に論証できる特性を持つ、医学上の病気であることを、証明できていない。そして、

○精神医療において、生理学的「治療」として行われる、向精神薬の投与、電気ショック療法、脳外科手術(訳注:ロボトミーの類)が、脳や、体の他の器官に対して、深刻な、取り返しのつかない損害を、与え得るし、与えていることは、多くのところで明白に証明されている。

○したがって:WNUSPは、誰に対してであれ、本人の意志に反して行われるか、もしくは、本人の紛れもない完全な同意を得ないで行われる、精神医療における生理学上の治療行為に反対することを断言する。

(翻訳は全国「精神病」者集団の会員によりますが、文責は長野英子にあります)


★    特別立法関係情報

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全国「精神病」者集団ニュース 2002年4月号

2002年4月発行の「ニュース」抜粋です。

全国「精神病」者集団

ニュース


ごあいさつ

あわただしいまでに早い春の訪れでしたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

この季節は毎年体調を崩しつらい日々を送っておられる方も多いかと思います。後一月の辛抱かと思います。どうかお大事に。

国はいわゆる「精神科救急」を各地に広め強化しようとしています。他の科の救急体制とは違い、精神科の救急は私たちの求めに応じて私たちのためのものというよりは、強制的であり、社会防衛あるいは家族のために運用されているのが実態です。精神科救急のために強引に措置入院させられ、電気ショックを強制されたりひどい処遇を受け、それによりさらに追い詰められ、病状を悪化させられた例すらあります。精神科救急さえなければなかったと思える違法行為もあります。今回の保険点数の改訂では精神科救急の施設基準として、(1) 病棟の半数が保護室か個室であること(2) 都道府県の措置入院の4分の1以上を受け入れていること、があげられているそうです。

これこそ「処遇困難者専門病棟」であり、「特別病棟」「保安病棟」です。すでに実態として措置入院制度は保安処分として機能していますが、こうした機能をより近代的に、効率よく合理的に運用していこうとする動きといわざるをえません。保険点数という経済的な武器で病院をより保安処分的に再編成していこうという動きです。特別立法のみでなく、こうした国会にすらかけられない行政主導の保安処分攻撃を見逃すことはできません。都道府県にひとつの特別病棟に措置入院されて地域から切り離される動きが今後全国化し強化されていきそうです。措置入院先を選択することすらできない、つまり医者も病院も選べない今の精神保健福祉法は撤廃しかありません。

(略)

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(略)


詩集を出版

奈良 藤井わらび

私は20歳の時に躁鬱病になりました。直接のきっかけは阪神大震災です。しかし、思い返してみれば小学生の頃から心を病んでいました。私は一見「フツウの子」でしたが、軍隊式の学校でのプレッシャーに耐え切れず、心や思考は歪んでゆきました。その積み重ねが「精神病」として姿を現しただけのことでしょう。

私は発病して2年間、自分を病気だと認めるのが大変恐ろしく、病気と向き合おうとしませんでした。その結果、ただの鬱病だったのに、躁状態が発生し、大学四回生の冬、両親に連れられて大学病院へ行くことになりました。

ずっとずっとフツウに憧れ、一般企業の事務職に就くことを夢見ていたのですが、その夢も無残に崩れ去ったのでした。その後、アルバイトで生計を立てるようになりますが、夢もなく行き先もわからず、虚しく、大変苦しい日々でした。その暮らしを救ってくれたのが、吐き出すようにつけ始めた詩でした。誰も聴いてくれる人がいない、病気や生活の辛さを吐露し、それがだんだん生きる支えとなっていったのです。苦しい時には詩として表現することを考え、苦しみを紛らしました。いつか病気が治った時、この書き溜めた詩をまとめて本にするぞ!と希望を抱きながら…。

そして、2000年の春に詩集は完成しました。本として出版することはなりませんでしたが、前径書房社長の原田奈翁雄氏とおつれ合いが編集・出版をされている季刊誌『ひとりから』に一部掲載して頂くことになったのです。その年の12月号(8号)に載りました。

昨年11月ぐらいから、完全版の出版を考え、出版社をあたってみましたが反応はなく、昨年末、自費出版することを決めました。体裁は立派ではありませんが、この本によって、病気の人には仲間がいることを感じて、症状がいつかは和らぐ日が来るという希望をもってほしいです。また、病気でない人には、どんな病気なのか、どういう気持ちで過ごしているのかを知って、真の医療・治癒を考え、理解し、少しでも活動してもらえたら、と思います。

是非、詩集をお読み下さい。そして、お読み頂ける場合には、

郵便振替口座番号・00950-3-110466、加入者名義・京谷裕彰、

通信欄には著書名(『奇跡ではなくて』)と部数をお書き下さい。

定価1部1,000円、1冊だと送料240円の合計1,240円をご入金願います。

送料は、2冊310円、3冊340円。

連絡先は(略)、

メールアドレスfrieden22@hotmail.comです。よろしくお願いします。

地味な活動しかできませんが、地道にこつこつゆきたいと思っています。


特別立法制定阻止のための実行委の呼びかけ

龍眼

いわゆる「触法精神障害者」対策として特別立法が国会に上程されました。審議は法務委員会で(厚生労働委員会でもという声もありますが)、審議入りは早ければ4月上旬とも言われ、このニュースがお手元につくころには審議入りしている可能性もあります。法案が明らかになってくるにつれて、その重大な人権侵害の本質も明らかになってきました。それゆえ精神医療関係だけでなく、法律家団体も含めさまざまな団体が反対の意思表示をしているところです。しかしながら、その動きはいまだ大きなうねりとなって制定阻止の流れを作るにはいたっていないと判断します。今こうした反対の声を一つにしていくことでしか、この悪法を阻止することができないと考えます。

それゆえさまざまな違いを乗り越えてこの法律制定に反対する声を一つにしていくために緊急の実行委を作ろうという呼びかけがされております。

私自身の考え方から言うと、むしろ保安処分推進論か?といいたくなるような見解や声明を出している団体もないではありませんが、とりあえずこの法案阻止のためには、法案制定阻止の声を広げ権力にぶつけていかねばなりません。

立場も反対の根拠の違いもあることから、別紙のような表現になりました。3月23日呼びかけ人会議を経て今後の日程としては

(略)

のみが案として出ております。

これ以上精神障害者に対する隔離と差別の強化を許さないためにも、ぜひ私たちとともに討論し反対の声を上げてくださるよう訴えます。個人団体を問いません。

参加してくださる方は呼びかけ人か賛同人となっていただき、一口千円の分担金をご負担いただきます。振込先口座はまだ準備中です。連絡先は以下です。

東京都練馬区大泉町2-17-1 陽和病院労働組合気付 暫定実行委事務局

電話・ファクス 03-3924-XXXX

メール sosi-owner@egroups.co.jp

呼びかけ人賛同人になれない方も5月6日に集会でお目にかかれることを祈っております。


資料

朝日新聞特集

「心神喪失者の処遇法案」内容と焦点

<2002年3月16日朝日新聞>

「心神喪失者の処遇法案」内容と焦点

再犯のおそれどう判断

15日の閣議で、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」が決定された。「再犯のおそれ」の有無を基準に、裁判官と精神科医が入院や通院を命じ、保護観察所がケアに関与するという、これまでにない制度の導入をめざす。手続きの流れや精神医療の現状、今後の国会審議の焦点をまとめた。

新制度の流れ

★目的

法案はその目的を、心神喪失等の状態で他人に害を及ほす重大な行為をした人に対し、「継続的かつ適切な治療と、その確保のために必要な観察・指導を行うことによって、病状の改善、同様の行為の再発防止、社会復帰の促進を図る」、と定めている。

74年に法制審議会がまとめた改正刑法草案は、「保安上必要があると認められるとき」に患者を施設に収容できるとしていた。これが厳しい批判を浴びて国会提出に至らなかったことを踏まえ、今回は患者の治療と社会復帰を前面に打ち出した作りとなっている。

★対象

「重大な他害行為」とは、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ(いずれも未遂を含む)、傷害致死、傷害(軽微なものを除く)を指す。

これらの行為をした当時、①心神喪失あるいは心神耗弱で刑事責任能力が問えないとして、検察官が不起訴処分とした人②心神喪失により裁判で無罪が確定した人③心神耗弱により裁判で刑を軽くされ、執行猶予などで実際に刑に服することがなかった人--が新制度の対象となる。政府は不起訴事件などの統計から、その数は年間300~400人と試算する。

★判断機関

対象者の処遇を判断するのは全国の地方裁判所に置かれる合議体で、裁判官1人と新設される精神保健審判員1人で構成する。

同審判員は、厚生労働相から最高裁に提出された学識経験をもつ精神科医の名簿の中から、事件ごとに地裁が任命。評議のときに意見を述べる義務を負う。裁判官でない者が判断権をもって裁判に参加する、日本では初めての制度となる。

★申し立て

検察官は、継続的は治療をしなくても精神障害による再犯のおそれが明らかにないと認める場合を除き、審判を申し立てなければならない。

現行の措置入院制度では、責任能力がないとして不起訴処分となったが、措置入院の要件である「自傷他害のおそれ」はないとの理由で、治療が施されないケースがある。これに対する批判を踏まえ、原則として審判を開く仕組みにした。

★審判

申し立てを受けた裁判所はまず、対象者に鑑定のための入院を命じる。その後、決定が出るまでの間、対象者は在院しなければならない。期間は2ヵ月までで1カ月の延長が認められる。

審判には対象者、付添人(弁護士)、検察官が出席。裁判所が必要性を認めれば、精神保健福祉士らの専門家(精神保健参与員)も関与する。裁判所の許可により、被害者や家族も傍聴できる。

★決定

裁判所はまず①対象者が本当に殺人などにあたる行為をしたか②心神喪失・耗弱者であるか、の2点を判断し、当てはまらない場合は申し立てを却下する。①の判断は裁判官が担当する。

合議体は入院、通院、入・通院の必要なしのいずれかの決定をする。判断基準は「医療を行わなければ心神喪失または心神耗弱の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれ」の有無で、裁判官と精神保健審判員の意見が一致しなければならない。

★入・通院

入院決定の場合は、厚労相指定の医療機関に入院する。期間に定めはない。医療機関は、入院しなくても再犯のおそれがないと判断したら、裁判所に退院許可の申し立てをする。継続する場合は裁判所がその必要性を6ヵ月ごとに決定する。

通院決定の場合、期間は3年間で、2年以内の延長が可能とされた。保護観察所が対象者の生活環境の調整や観察・指導にあたる。専門知識をもつ精神保健観察官が中心的役割を果たす。保護観察所長は通院期間の延長や再入院の必要性があると判断したら、地裁に申し立てる。継続、延長、再入院の決定に、鑑定は必ずしも必要ではない。

★警察の介入

審判や決められた治療に対象者が従わなかった場合、裁判所は警察に「必要な援助」を求めることができる。

★対象者の権利など

対象者は弁護士を付添人に選任でき、いない場合は裁判所が必ず付けなければならない。審判で対象者や付添人は、意見陳述をしたり資料を提出したりできる。ただし、証拠調べは裁判所が職権で行うとされており、証人申請などは権利としては認められていない。

入・通院などの決定に不服があれば高裁に抗告できる。抗告権は検察官、保護観察所、入院医療機関にも付与される。

刑事処分と精神医療をめぐる現状「精神障害者」4割が起訴

検察庁の統計によると、00年までの5年間で心神喪失などにより不起訴(起訴猶予を含む)になったのは3157人、起訴されたが裁判で無罪あるいは刑を軽減されたのは383人だった。

両者を合わせた3540人の中で、今回の処遇制度が対象とする殺人、放火、強姦などの重大犯罪にあたる行為をしたのは2037人になる。

うち殺人の702人について見ると、過去10年にさかのぼって重大犯罪の前科・前歴がある人は6%、事件を起こした当時の治療状況は「治療中」と「治療なし」がほぼ半々、措置入院の経験がある人は7%、事件後の処遇では71%が措置入院、12%が懲役などの実刑--となっている。

検察庁の事件処理をめぐっては、「安易な鑑定で安易に不起訴としている」との批判がある。これに対し法務省は、00年に重大事件を起こした後、鑑定(簡易鑑定を含む)で精神障害者と診断された756人のうち、4割以上が起訴されている点をあげ、「批判は当たらない」としている。

入院300日超、医者も少なく

日本の精神医療は、病床数の多さと入院日数の長さが際立っていると批判されて久しいが、この10年をみても状態はほとんど変わっていない。

経済協力開発機構(OECD)加盟10カ国の精神病床数を人ロ1千人あたりで比べた90年の統計によると、最も多い日本が2.9床(全体で35万床)。英国が1.5床、フランスと旧西ドイツが1.3床で、最も少ない米国は0.4床だ。

60年代以降、各国が「病院中心の医療から地域福祉へ」のスローガンの下、病床数を減らしてきたのに対し、日本の病床数は戦後一貫して増加してきた。精神病院の多くが国公立の欧米諸国と違い、日本では約8割を民間病院が占める。このため、政策転換ができないまま今日に至っている。

この「隔離・収容」を中心とした精神医療政策が長期入院を生む。厚生労働省によると、欧米の平均入院日数は半月から長くても3ヵ月程度であるのに対し、日本は300日を超えている。

一般医療との格差も目立つ。100病床あたりの医師数は、一般病床が11.3人であるのに対し精神病床は2.9人。看護者数は一般46.9人に対し、精神28.5人でしかない。背景には「精神病院は一般病院よりも医師や看護師の数が少なくてもよい」とした58年の厚生事務次官通知(いわゆる「精神科特例」)がある。この特例自体は昨年廃止されたものの、格差は残っている。

「措置入院」運用に地域差

刑事責任を問えずに不起訴や無罪になった精神障害者への手当てとして「措置入院」がある。精神保健福祉法に基づく強制入院のひとつで、新しい処遇制度が導入された後も、この仕組みは存続する。

人権侵害を招きかねないだけに、法改正のたびに手続きの厳格化が図られてきた。現在では、都道府県の職員の立ち会いの下、2人以上の精神保健指定医が一致して「入院させなければ自分自身を傷つけるか、他人に害を及ぼすおそれがある(自傷他害のおそれ)」と診察した場合にのみ、入院が認められる。

措置入院の患者を受け入れている病院は、6カ月ごとに患者の症状などを都道府県知事に報告する必要があり、自傷他害のおそれがなくなった場合は、直ちに退院させなければならない、と定められている。

しかし実際には、都道府県ごとに運用面で大きな格差がある。精神病院の全入院患者に対する措置入院患者の割合(措置率)は、最も高い滋賀県が3.2%、最低の香川県が0.2%で、実に10倍以上の差がある。また20年以上入院している長期入院患者の割合は、山口県で69%に達する。一方、千葉県、京都府、大阪市などは0%だ。

「自傷他害のおそれ」の有無の医学的判断になぜこれほど違いが出るのか。厚労省は「格差は認識しているが理由は検証できていない」と話す。

鑑定困難医師ら反発も判定の基準は

裁判所の処遇決定の基礎となるのが鑑定だ。法案によると、裁判所から鑑定を命じられた医師は「継続的な医療を行わなければ、精神障害のために再び対象行為を行うおそれの有無」を判定しなければならない。日本精神神経学会などは「精神科医にそうした任務は担えない」と反発する。

犯行当時の精神状態の評価は通常の刑事裁判でも大きな争点になり、鑑定医によって結論が分かれる場合が少なくない。近い将来の「自傷他害のおそれ」を判断する措置入院の診察にもばらつきがあると指摘される。まして数カ月、数年先の「再犯のおそれ」をどうやって判定するのか。

制度の根幹が、実は大きな揺らぎの中にある。

人材は十分か

対象者の入院治療を行う医療機関として、厚労省は10年間のうちに全国に30の国公立病院を指定する構想をもっている。同省幹部は「専門知識を身につけた医療スタッフを手厚く配置し、早期の社会復帰を実現する理想的な精神医療を実現する」と言う。しかし現場の医師は「治療が難しい措置入院患者を受け入れている国公立病院に、予算と人手を手厚く配分するだけで、医療の中身が大きく変わるわけではない」と冷ややかだ。

ほかにも、通院命令を受けた患者を地域で支えるための福祉施設や精神保健福祉士(PSW)に優秀な人材を確保できるのか、病院-保健所-保護観察所の間の連携をどう図るのかなど、「人」を巡る課題は尽きない。

入院長期化の心配

「対象者に必要な治療をする」という目的との整合性から、法案は入院期間の上限は設けていない。通院の場合の上限は5年だが、その間も保護観察所は入院・再入院の申し立てをすることができる。

入・通院、入院継続、再入院の判断基準はいずれも「再犯のおそれ」の有無だが、再入院については、一定の住居に住むなどの決まりを守らなかっただけでも申し立ての対象となる。

また、入院継続と再入院に際しては、精神科医による鑑定は必ずしも必要とされていない。日ごろその対象者の治療にあたっていない第三者の視点が入らないまま、入・通院が長期化する懸念が指摘されている。

入院施設側が.「もはや治療することはない」と判断しているのに、裁判所が「再犯のおそれ」を認めた場合はどうか。法の趣旨を外れ、治安確保のために入院が続くことにもなりかねない。

保護観察所 機能するか

批判が強い保安処分との違いを強調するため、法案は退院後のケアを担当する精神保健観察官制度の新設を打ち出した。しかし、これが狙い通りに機能するかどうかは不透明だ。全国50カ所の保護観察所に配置するには「200人程度は必要」(与党)との声があるが、行革の流れの中、新規の大量採用は簡単な話ではない。

同観察官には精神障害者福祉に詳しい精神保健福祉士を起用することが想定されていた。だが、法案は「専門的知識に基づき、事務に従事する」と規定するにとどめ、資格を義務づけなかった。今いる保護観察官に精神福祉・保健の分野を学ばせて担当させるにしても、新年度予算案に研修などの予算措置はとられていない。

社会復帰できるのか

法案が目標とする対象者の社会復帰は、退院後の生活の場を確保できるか否かにかかっている。だが、新たな処遇制度について患者団体などは「精神障害者であり犯罪にあたる行為をしたという二重のらく印を押されることになり、差別、偏見が強まる」と懸念する。

現在でも精神科の入院者33万人のうち7万人が、帰る家がないことによる「社会的入院」とされる。新制度のもとでも地域での生活の見通しが立たなければ、この事態は変わらない。ケアにあたる人材の育成と社会復帰施設の整備。ソフト、ハード両面で課題は山積している。

その他の資料

☆ 法案そのものは厚生労働省のホームページに掲載してあります。インターネットをお使いでない方は厚生労働省にご請求くださいませ。

☆ そのほかの資料各団体の声明見解等も以下のページに掲載してあります。

全国精神医療労働組合協議会

http://www.seirokyo.com/

☆ 長野英子のページには法務委員会、厚生労働委員会の名簿が掲載されています。

多くの方の声が議員さんたちに集まることは今とても重要だと思います。

インターネットをお使いの方はぜひご自分の声を議員さんにお届けくださいませ。

なおファックス郵便のリストも準備中です。お問い合わせは窓口まで。

(略)


「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行なった者の医療及び観察に関する法律(案)」について

弁護士 八尋光秀

1 問題点

政府は2002年3月15日表記の法案について、国会上程の閣議決定をしたという。この法案は、新たに「精神障害者」だけに対して「隔離規定」を適用する特別立法である。この法案により国は新たにこの人たちの人生のすべての時間を閉鎖した病棟に閉じ込め、選択の余地なく治療を強いることができる、ということになる。もちろん、「一定の要件」に基づいてではある。

法案第1条の「目的」及び法案提出「理由」は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行なった者に対して」、「その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的とする」という。この目的のために、期限の定めのない患者隔離とその中での治療の強制を手段とするのである(法案第42条1項1号、43条1項、45条、51条1項1号、61条1項1号)。

そのための法律要件としては「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行なった」こと、現に(審判時に)「精神障害者と認められる」こと、「原因となった精神障害のために再び対象行為(重大な他害行為)を行なうおそれ(以下、「再犯のおそれ」という)がある」ことの3つである(法案第37条1項、同42条1項1号)。

刑法第39条第1項は「心神喪失者の行為は、罰しない」とし、第2項は「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と定める(以下、問題を絞り込むために「心神喪失」に限って言及する)。すなわち、傷害以上のいかに重大な犯罪であっても、心神喪失の状態で行なったとされれば、例外なくすべての人は刑法第39条1項により処罰されることはない。これは近代法の原則、「法はできないことは強制しない」という責任主義によるものである。いかに結果が重大であっても、責任を完うしたとしても避けられなかったならば、国が国民を処罰することを許さない、という法原則である。

今回の法案は、国が本来刑法第39条第1項により処罰することが許されないはずの人のうち、「再犯のおそれ」が認められる「精神障害者」については無期限で閉鎖病棟に隔離収容し、治療を強制することを認めるものである。仮に「再犯のおそれ」がどれほど強く認められても、「精神障害者」でさえなければ何らの強制を受けることはない。この意味で、この法案は「精神障害者」にだけの隔離収容法の実質をもつものである。

この法案で検討されなければならないのは、「重大な犯罪はできる限り予防された方が良いかどうか」でもなければ「犯罪被害者の苦しみは筆舌に尽くし難いかどうか」でもない。「犯罪はできる限り予防された方が良い」し、「犯罪被害者の苦しみは筆舌に尽くし難い」ことには誰も何の異論もない。

検討されなければならないのは、法案は果たして法律としてもつべき正義に適っているかどうかである。法が備えるべき正当性、公平性、合理性をもっているか、科学的、客観的な根拠に基づくか、である。

患者に対して隔離医療を許容する法律が憲法に合致するかどうかを判断した判例はひとつしかない。患者隔離法は憲法違反であるとして確定したハンセン国賠訴訟である。この判決は次のように指摘する。

(隔離規定について)

入所命令や入所の即時強制のほか、「入所者には、療養所長が退所を許可しない限り、療養所にとどまるべき義務(在所義務)があると解され」、これらを隔離規定という(1、279~282頁)とした。

(隔離の必要性について)

「患者の隔離は、患者に対し、継続的で極めて重大な人権の制限を強いるものであるから、すべての個人に対し侵すことのできない永久の権利として基本的人権を保障し、これを公共の福祉に反しない限り国政の上で最大限に尊重することを要求する現憲法下において、その実施をするに当たっては、最大限の慎重さをもって臨むべきであり、少なくとも、ハンセン病予防という公衆衛生上の見地からの必要性(以下「隔離の必要性」という)を認め得る限度で許されるべきものである。」(同267頁)とした。

(患者隔離による人権制限について)

隔離規定による「ハンセン病患者の隔離は、通常極めて長期間にわたるが、例え数年程度に終わる場合であっても、当該患者の人生に決定的に重大な影響を与える。ある者は学業の中断を余儀なくされ、ある者は職を失い、あるいは思い描いていた職業に就く機会を奪われ、ある者は結婚し、家庭を築き、子供を産み育てる機会を失い、あるいは家族との触れ合いの中で人生を送ることを著しく制限される。その影響の現れ方は、その患者ごとに様々であるが、いずれにしても、人として当然にもっているはずの人生のありとあらゆる発展可能性が大きく損なわれるのであり、その人権の制限は、人としての社会生活全般にわたるものである。このような人権制限の実態は、単に居住移転の自由の制限ということで正当には評価し尽くせず、より広く憲法13条に根拠を有する人格権そのものに対するものととらえるのが相当である。」(同282頁)とした。

(患者隔離規定の違法性について)

患者の「隔離規定は、新法(らい予防法のこと)制定当時から既にハンセン病予防上の必要を超えて過度な人権の制限を課すものであり、公共の福祉による合理的な制限を逸脱していた」(同286頁)とした。

このように、患者の隔離規定に関して確定する唯一の憲法判断を示したハンセン国賠訴訟判決に従えば、本法案の患者隔離規定についても、その目的と手段の合理性と必要性が「最大限の慎重さをもって」検討され、認められなければならないことになる。

以下の点に要約できる。

①「精神障害者」だけを対象とすることの必要性及び合理性の有無。すなわち「精神障害者」は重大な犯罪をその障害ゆえに行なうと認められるか。言い換えると「精神障害者」は危険な存在か。

②「再犯のおそれ」を独自の法律要件となすことの合理性の有無。すなわち、「精神障害者」の再犯(危険性)予測は法的な認定が可能か。言い換えると再犯予測は確実にできるか。

③「患者の病状を改善し、再犯を防止し、もって社会復帰を促進する」という目的のために、患者隔離ないし通院を強制して行なう制度新設が必要かつ合理的か。すなわち、患者隔離、通院強制による精神科治療は病状改善、犯罪防止、患者の社会復帰に他に替え難い程度に有効だと認められるか。その前提としてまず治療は再犯防止等に有効か。

これらの点について、人権制限規定としての合理性及び必要性、法律概念としての確かさ、科学的根拠に基づくか、が肯定されなければならない。そうでなければ、本法案の患者の隔離規定は、らい予防法と同様に、いたずらに患者の「人格権を侵害」し、「人生被害を与える」ものとして、憲法13条に違反することになるからである。

以下に、まず、「精神障害者」が置かれている状況を素描し、検討項目としてあげた3点に言及し、最後に私見を簡単に述べたい。

2.「精神障害者」に対するこれまでの患者隔離(略)

3.「精神障害者」は危険か(略)

4.再犯は予測可能か(略)

5.治療は再犯防止等に有効か(略)

6.見 解

精神医療に限らず、医療の必要性や患者の社会的危険性を理由として、病院収容による患者の隔離、治療強制を行なうことは、厳に慎まなければならない。

現在の我国の「精神障害者」をめぐる問題は、低質の安上がりな医療を患者隔離によって維持し続けているところに主たる原因が存する。この問題の克服は、精神医療の質を一般医療の質へと格段に高めることと、今ある患者の隔離規定を見直すことから始めなければならない。

誤って信じられていることは正さなければならないし、誤った社会認識の上に立った「世論」「民意」に正当性はない。専門家はこれを是正すべき義務こそあれ、追随することは許されない。

バリアフリーを唱え、「精神障害者」の社会復帰がこれほど求められている時代は、我国においてかつてない。33万人~34万人の患者を病院収容し社会から隔離している現状において、このうえことさらに「精神障害者」に対する患者の隔離規定を新設することに正当性は見出せない。その弊害の大きさは途方もない。

最後に、この法律の国会審議のあり方に注目したい。本法案審議は、党議拘束を廃し、国会議員のひとりひとりに真摯な討議と判断が求められる課題であると思う。

ハンセン国賠訴訟判決では国会議員ひとりひとりの法的責任が問われた。いわく、法の患者隔離規定は、「患者隔離という他に比類のないような極めて重大な自由の制限を課する」ものであり、「少数者であるハンセン病患者の犠牲の下に多数者である一般国民の利益を擁護しようとするものであり、その適否を多数決原理にゆだねることには、もともと少数者の人権保障を脅かしかねない危険性が内在されている。」(1、284~285頁)とした。そもそも患者の隔離規定の合理性・必要性の判断は、立法裁量事項ではなく、国会議員ひとりひとりの人権判断を要する事項であるとされたところにあった。

本法案も同様に、患者の隔離規定の合理性・必要性の判断が問われ、立法裁量ではなく、ひとりひとりの人権判断にゆだねられなければならない事項である。少数者である「精神障害者」の人権保障を脅かしかねない隔離規定をもつ法案の審議だからでもある。党派ではなく、国会議員ひとりひとりの判断に基づく意見表明と表決が求められ、かつ、その法的責任が問われ得る課題なのである。

以 上

参考文献

1 解放出版社編 「ハンセン病国賠訴訟判決」 2001年11月15日

2 2002年3月9日読売新聞(日刊)

3 法務省 「検察統計年報」

4 法務総合研究所編 「犯罪白書」

2001(平成13)年11月30日

5 公衆衛生法規研究会編 「精神衛生法詳解」 第3版中央法規出版 1985(昭和60)年11月20日

6 厚生省保健医療局精神保健課監修 「新精神保健法」中央法規出版 1988(昭和63)年6月20日

7 大谷實著 「精神保健福祉法講義」 成文堂 1996(平成8)年7月1日

8 2002年2月1日読売新聞(夕刊)

9 2002年2月2日講演会 日本精神保健政策研究会主催

10 Henry J Steadman (吉田哲雄訳) 「危険性の予測」

精神経誌 90巻(3号) 1989年

(八尋光秀さんの論旨は非常に明快で、かつ人権という基本的な視点を私たち「精神病」者に対しても留保しない点とても勇気付けられます。長文のため大半を省略しております。全文をお読みになりたい方は窓口までご請求くださいませ…編注)


特別立法関連パンフ紹介

『許さない! 保安処分新設立法』 代金500円プラス送料

岡田靖雄さん(精神科医)の保安処分の歴史に関する講演および巻末年表が有益。

発行 刑法改悪阻止!保安処分粉砕!全都労働者実行委員会

注文先 出版センター気付 電話・FAX 03-3221-1521

『「触法精神障害者処遇新法」に反対します』 代金500円プラス送料

各団体の特別立法に関する声明・見解等が掲載されています。

発行 全国精神医療従事者連絡会議事務局

注文先 あおば病院 富田三樹生気付 電話042-393-2881 FAX042-393-2880

メール CZX00547@nifty.ne.jp

『保安処分を許さない学習討論会・記録』 代金300円プラス送料

中島直さん(精神科医)の講演が刑事司法手続きにおける精神障害者の問題を分かりやすく説明しています。

発行 「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議

『精神保健福祉法の撤廃と精神障害者復権への道』300円プラス送料

特別立法・保安処分の対案ではなく、そして私たち「精神病」者を客体とした差別的な対策対案ではなく、真に私たちの求めるものを獲得するための指針。

久良木幹雄さんの遺稿。オープンスペース街発行

注文先 上記2冊は全国「精神病」者集団窓口まで。連絡先はニュース表紙に記載されています。


予防拘禁、不定期拘禁に反対しよう!

今法務省は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行ったものの医療及び観察等に関する法案」の上程(この文書がお渡りになるころには上程されてしまうかもしれませんが)を企画しています。この立法は人を予防的、不定期的に拘禁することになります。この法律は、「対象行為の防止」を理由として拘禁する悪法です。

これを阻止するために小異を捨て大同につくこととし、大規模な人々の広範な集いを立ち上げてこの悪法を阻止しようと思っています。

是非、実行委員会に参加されるようお願い申し上げます。

2002年3月27日(五十音順)

呼びかけ人

(略)

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