心神喪失者等医療観察法 国賠訴訟第7回期日

【次回期日】
第7回口頭弁論期日
2018年5月23日(水)10:00

裁判そのものはすぐ終わりますが、後ほど代理人の弁護士さんから説明があります

東京地方裁判所615号法廷医療観察法国賠訴訟第6回口頭弁論期日のご報告

【医療観察法国賠訴訟とは】
精神遅滞及び広汎性発達障害という診断を受けており、医療観察法に基づく医療の必要性がないのに、鑑定入院(医療観察法に基づく入院を決定する前の精神鑑定のための入院)として58日間にわたり精神科病院に収容された方(原告)が、2017年2月13日、国を被告として、慰謝料等の損害賠償を求めた訴訟です。主に、精神遅滞及び広汎性発達障害の医療の必要性(治療可能性など)と検察官の事件処理の遅れ(事件発生から2年経過してから医療観察法に基づく手続を開始するための審判申立を行った)が問題となっています。

【日時】
第6回口頭弁論期日
2018年3月13日(水)10:00
東京地方裁判所615号法廷

【前回期日までの流れ】
前回提出した原告準備書面(3)と(4)に対する反論を被告(国)で準備することになっていました。また、裁判官から原告に対し、証人申請の予定を検討するよう指示がありました。

【提出書面】
原告:なし
被告:平成30年3月14日付準備書面(3)
乙第4号証~乙第8号証(文献が中心)

【法廷における主なやり取り】
裁判所は、原告に対し、国家賠償法1条1項における違法性判断基準として、予備的には、原告も、職務行為基準説に立つことを確認した上で、職務行為基準説に立つ場合、原告について治療可能性を欠くことが直ちに国家賠償法上の違法に繋がるわけではなく、当時、検察官や裁判官がどのような資料に基づいて判断を行ったかが問題であることを指摘し、被告に対し、判断の際に根拠とした資料の提示を指示しました。

【参考:今回提出された書面の概要:平成30年3月14日付被告準備書面(3)】
1 検察官の審判申立時に原告の精神障害の内容が特定されていたわけではない
・主治医の平成25年7月3日付捜査事項照会回答書(甲24の3)は、現在の病名や状況等を回答するもので、犯行時の原告の精神障害の内容を明らかにするものではない(被告準備書面(3)2頁)。
・精神衛生診断書(甲6)は、精神遅滞及び広汎性発達障害に加えて、他の精神障害に罹患している可能性を医学的に明確に否定したものではない(被告準備書面(3)2頁乃至3頁)。
・本件傷害事件は、犯行動機が不明であって、犯行時、原告に何らかの病的な妄想等が存していた可能性も否定できず、原告が精神遅滞ないし広汎性発達障害の症状として衝動性を出現させて暴行に及んだものなのか、他の精神障害の影響は全く存しなかったのかなどといった点は、本件申立時に存した精神衛生診断書(甲6)及びその他の資料から一義的に断定することはできない(被告準備書面(3)3頁)。
(補足説明)
原告は精神遅滞及び広汎性発達障害と診断されていますが、国側の主張は、審判申立当時、原告がこれ以外の精神障害に罹患していた可能性を否定するだけの資料が存在せず、その有無を確認するために、鑑定入院の必要性があった旨を指摘するものです。

2 精神遅滞及び広汎性発達障害に治療反応性がないとはいえない
・治療反応性の有無及ぶ程度は、精神障害ごとにある程度類型的に考えるとしても、最終的には当該対象者にとっての治療反応性(病状の憎悪の抑制を含む。)を問題にすべきであって、精神遅滞及び広汎性発達障害だからというだけで、これを否定すべきではない(被告準備書面(3)5頁)。
・本件傷害事件は、原告が周囲の状況や被害者の何らかの行動を妄想的に認知して衝動性を出現させた可能性も否定できない(被告準備書面(3)6頁)。
・原告にリスパダール等の抗精神病薬の処方歴がある(被告準備書面(3)7頁)。

3 検察官は事件を放置していない
・原告の通院先に平成24年2月16日(乙7)と平成25年6月27日(甲24)の2度にわたり照会をしている(被告準備書面(3)10頁)。

【本件に関するお問合せ】
〒160-0004 東京都新宿区四谷3-2-2 TRビル7階 マザーシップ法律事務所
医療扶助・人権ネットワーク 事務局長弁護士 内田 明
TEL 03-5367-5142
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心神喪失者等医療観察法国賠償訴訟

2018年3月14日 10時より

東京地裁615号法廷

裁判そのものは書類のやり取りであっという間に終わりますが、その後代理人の弁護士さんから説明があります

この国賠訴訟については以下の心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな! ナットワーク ニュース最新号に代理人の内田さんの報告があります
ぜひご一読を 5ページです
https://nagano.dee.cc/networknews%20No47.pdf

 

医療観察法国賠訴訟 次回期日 2018年1月17日 10時より

【次回期日】
第5回口頭弁論期日
2018年1月17日(水)10:00
東京地方裁判所615号法廷

医療観察法国賠訴訟第4回口頭弁論期日のご報告

11月15日10時から、東京地裁615号法廷で期日が開かれましたので、ご報告いたします。

【医療観察法国賠訴訟とは】
精神遅滞及び広汎性発達障害という診断を受けており、医療観察法に基づく医療の必要性がないのに、鑑定入院(医療観察法に基づく入院を決定する前の精神鑑定のための入院)として58日間にわたり精神科病院に収容された方(原告)が、2017年2月13日、国を被告として、慰謝料等の損害賠償を求めた訴訟です。主に、精神遅滞及び広汎性発達障害の医療の必要性(治療可能性など)と検察官の事件処理の遅れ(事件発生から2年経過してから医療観察法に基づく手続を開始するための審判申立を行った)が問題となっています。

【前回期日までの流れ】
原告は、第3回口頭弁論期日(前回)において、原告準備書面(2)を提出し、主に、医療観察法の審議過程における国会の議事録を証拠として提出し、検察官の審判申立や裁判官による鑑定入院命令が、立法経緯や審議過程における議論の内容と乖離しており、違法な運用であることを指摘していました。

【提出書面】
原告:平成29年9月21日付文書送付嘱託申立書補充書
※ 開示を求める不起訴記録を特定して証拠開示を求める書面。
甲第2号証
被告:平成29年11月15日付被告準備書面(2)
平成29年11月15日付文書送付嘱託の申立てに対する意見書
乙第3号証

【法廷における主なやり取り】
1 裁判所は、不起訴記録の文書送付嘱託申立のうち、⑵被疑者の供述調書又は聴取した内容に関する報告書と⑹捜査関係事項照会書・同回答書(病院に対する照会記録)のみ採用しました。
2 次回期日までに、原告が、被告準備書面(2)に対する反論と原告の精神的苦痛に関する補充主張(鑑定入院中の処遇を中心に)を提出することを確認しました。

【次回期日】
第5回口頭弁論期日
2018年1月17日(水)10:00
東京地方裁判所615号法廷

(参考)
【平成29年11月15日付被告準備書面(2)の概要】
1 医療観察法の仕組みについて
(原告の主張)
医療観察法の立法経緯や審議過程から、原告のように精神遅滞及び広汎性発達障害の診断を受けており、専門医に定期的に通院し、事件発生後長期にわたり社会内で平穏に生活している者については、医療観察法の対象外と考えられていた。
(国の反論)
「衆議院及び参議院法務委員会の議事録・・を見ても、精神遅滞や広汎性発達障害の診断を受けている者が全て医療観察法の対象外であると考えられていたとみることはでき」ない。(2頁)
「医療観察法の対象であるかどうかの判断がなされるのは、・・・検察官による申立や、・・・鑑定入院命令時ではなく、同法40条(申立ての却下)又は同法42条(入通院命令等の決定)に係る決定の時点である。」(2頁)

2 裁判官の職務行為についての違法性判断基準について
(原告の主張)
鑑定入院命令は、争訟の裁判ではなく事後的に国家賠償による救済の可能性が極めて高く、実質的に行政処分というべきものであるから、いわゆる違法制限説に立つべきではない。
(被告の反論)
「最高裁昭和57年判決以後、下級審判決の大勢は争訟以外の裁判についてもいわゆる違法限定説を採用」している。(3頁)

3 裁判官の鑑定入院命令の取消しを行う作為義務の有無
(原告の主張)
最高裁判所平成3年4月26日第二小法廷判決を手がかりに、裁判官は、医療観察法鑑定書によって入院の必要自体がないことが明らかになった以上、直ちに身柄を解放すべきであった。
(国の反論)
「最高裁平成3年判決は、『・・・作為義務・・・に違反したといえるためには、客観的に行政庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分ができなかったことだけでは足りず、その期間に比してさらに長期間にわたり遅延が続き、かつ、その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要である・・・』・・・原告の入院期間は、2か月未満・・・であり、上記判決のいう作為義務が認められるような状態であったとはいえない。」(5頁乃至6頁)

4 検察官は、医療観察法33条1項の申立てに当たり、医師の意見を考慮した上で判断すべきであること
(原告の主張)
検察官の審判申立時において、原告について、明らかに医療の必要性がなかった。
(国の反論)
「検察官が、医療観察法33条1項の申立ての要否を判断するに当たっては、通常、・・・精神鑑定ないし精神診断の結果も考慮して、・・・判断するところ、・・・その診断を踏まえて示された処遇上の意見についても、・・・これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、専門家である医師の意見を十分に尊重した上で判断すべきである(最高裁判所平成20年4月25日第二小法廷判決・・・)。・・・精神衛生診断書(甲第6号証)において、・・・『今後の処置に対する意見』として、医療観察法33条1項の申立て又は精神保健及び障害者福祉に関する法律25条通報[注:現行24条]の必要性の有無に関し、必要である旨の意見が述べられていたのであるから・・・、申立時点において、・・・『この法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合』には該当しないことは明らかである。」(6頁乃至7頁)

5 著しく不相当な申立遅延となる「期間」
(原告の主張)
対象事件の発生から1年を経過した時点で審判申立がなされなければ、その後の審判申立は、著しく不相当に申立てが遅延したものとして、違法である。
(国の反論)
「『6か月以内であれば病状等に変化を生じないが、6か月を経過した場合には変化が生じうる』との見解については、・・・通知・・・の別添に記載がなく、いかなる医学的根拠・知見に基づいた意見なのか不明である上、そもそも経験則上も甚だ疑問である。・・・実務上、短期間に連続して、かつ、同一の内容で退院等の請求がなされることがままあることに鑑み、再度の請求がなされるまでの期間及び請求の内容からして、前回の意見聴取時と病状に特段の変化がないものと考えられ、再度の意見聴取に及ぶ必要性が乏しいと認められる場合には、意見聴取を実施しないことができるとの指針を示すものであって、『6か月』をその判断のための一応の目安としているにすぎない。したがって、・・・厚生労働省通知別添の『6か月』との記載は、検察官が・・・申立てを行うべき合理的期間を考える上で、何ら参考とならないことは明らかである。」(8頁乃至9頁)
「ガイドラインには、入院から退院までの流れとして、『おおむね18か月以内の退院を目指す』としか記載されておらず、これを一応の目安として、退院に向けて努力する旨の指針が示されているにすぎないのであるから、・・・合理的期間を考える上で、何ら参考となるものではない。」(9頁)
「原告の主張によると、重大な他害行為に及んだ精神障害者について、例えば、①対象事件の発生から1年経過後に検挙され、所要の捜査の結果、心神喪失により不起訴裁定がなされた場合のみならず、②対象事件の発生から1年経過後に心神喪失を理由とする無罪判決が確定した場合においても、不起訴裁定がなされる前又は無罪判決が確定する前に申立てを行うことは期待し得ないことから、検察官は、およそ医療観察法33条1項の申立てをすることができなくなるが、このような結論は、全く法の想定しない事態であって、著しく不合理かつ非現実的なものといわざるを得ない。」(9頁乃至10頁)

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医療観察法国賠訴訟第3回口頭弁論期日のご報告

医療観察法国賠訴訟第3回口頭弁論期日のご報告

現在、東京地方裁判所において継続中の医療観察法国賠訴訟について、9月13日(水)に、第3回口頭弁論期日が開かれましたので、そのご報告をいたします。

【医療観察法国賠訴訟とは】
2017年2月13日、精神遅滞及び広汎性発達障害という診断を受けており、医療観察法に基づく医療の必要性がないのに、鑑定入院(医療観察法に基づく入院を決定する前の精神鑑定のための入院)として58日間にわたり精神科病院に収容された方(原告)が、国を被告として、慰謝料等の損害賠償を求めた訴訟です。主に、精神遅滞及び広汎性発達障害の医療の必要性(治療可能性など)と検察官の事件処理の遅れ(事件発生から2年経過してから医療観察法に基づく手続を開始するための審判申立を行った)が問題となっています。

【日時】
第3回口頭弁論期日
2017年9月13日(水)10:00
東京地方裁判所615号法廷

【前回期日までの流れ】
第2回口頭弁論期日において、被告国が反論(被告準備書面(1))を提出し、鑑定入院命令に関与した検察官と裁判官の行為の違法性及び過失を全面的に争ってきました。裁判所より、原告の宿題として、この被告の反論に対する再反論が求められていました。

【提出書面】
原告:原告準備書面(2)
甲17-23(国会の議事録と文献が中心)
文書送付嘱託申立書(医療機関に対して鑑定入院中のカルテ等の提出を求めるもの)
文書送付嘱託申立書(検察庁に対して不起訴記録の提出を求めるもの)
被告:なし

【法廷でのやり取り】
1 文書送付嘱託申立について
⑴ 不起訴記録について
被告より対象文書の特定が不十分であるという意見が出されたため、裁判所から原告に対し、一定程度の文書の特定が認められました。
⑵ 鑑定入院中のカルテ等について
文書送付嘱託が採用されました。医療機関に照会がなされます。
2 警察の事件処理の遅れと検察官の審判申立の違法性の関係
被告国は、検察官が警察から事件送致を受けたのは事件発生から約13か月後であり、検察官のところで事件を抱えていたのは約11か月間に過ぎないから、検察官の審判申立は違法な遅延に当たらないという反論をしていました(被告準備書面(1))。
このような被告の主張を受けて、第2回口頭弁論期日において、裁判所は、原告に対し、警察の事件送致が遅れた場合に検察官の審判申立が違法となる理由の説明を求めました(求釈明)。
これに対しては、原告としては、警察の事件送致が遅れた場合であっても、事件発生から相当期間が経過すると事件当時の症状が分からなくなり、当時の症状を治療するという医療観察法の前提を欠く事態となるから、事件発生から1年経過した検察官の審判申立は時機に遅れたものとして違法となる、と補足説明を行いました(原告準備書面(2))。

【次回期日】
第4回口頭弁論期日
2017年11月15日(水)10:00

あっという間に終わりますがそのあと代理人からの説明あります
東京地方裁判所615号法廷
(宿題)
原告:不起訴記録の特定
被告:反論(11/8まで)

(参考)
【今回提出した原告準備書面(2)の概要】
主に、医療観察法の審議過程における国会の議事録を証拠として提出し、検察官の審判申立や裁判官による鑑定入院命令が、立法経緯や審議過程における議論の内容と乖離しており、違法な運用であることを指摘しています。
第1 医療観察法の法的性格
(国会の答弁で重要なもの)
1 「刑罰にかわる制裁を科すものではない、あるいは、社会防衛を目的とするものではない、・・・本人の社会復帰の促進を目的とするものである」(平成14年12月3日、衆議院法務委員会・漆原良夫議員)
⇒ 刑事手続とは異なる法的性格の手続である。つまり、刑事手続の場合には、検察官が起訴をして無罪となっても検察官の起訴が直ちに違法となるわけではないが、医療観察法を刑事手続と同じように考えてはならない。
2 「本制度による処遇の対象となる者は、・・・医療が必要と認められる者に限られる・・・仮に医療の必要性が認められる者であっても、そのすべてを本制度による処遇の対象とするのではなく、その中でも、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるよう配慮することが必要な者だけが対象となる」(平成14年11月27日衆議院法務委員会・塩崎恭久議員)
⇒ 医療観察法の適用対象者を限定する趣旨で、「医療の必要性」という要件が設けられた。仮に医療の必要性が肯定されても直ちに医療観察法の対象となるわけではなく、「社会に復帰できるよう配慮することが必要な者だけが対象となる」のである。
3 「対象者に十分な看護者がいるなど、その生活環境等にかんがみて社会復帰の妨げとならないと認められる場合には入院の決定は行われない。」(平成14年12月6日衆議院法務委員会・漆原議員)
4 「この法律による手厚い専門的な医療までは特に必要がないと認める場合」には対象者とはならない(平成14年12月6日衆議院法務委員会・塩崎議員)。
⇒ 原告のように、本件傷害事件発生後2年間にわたり、専門医に定期的に通院し、社会内で平穏に生活している者は、「社会に復帰できるよう配慮することが必要な者」に該当しないはずである。
5 浜四津敏子議員の「本制度の処遇の対象からは・・・知的障害者というのは除外されると考えていいんでしょうか、法務省にお伺いします。」という質問に対し、法務省刑事局長樋渡利秋参考人は、「知的障害のみを有する者につきましては、・・・その精神障害につき治癒、治療の可能性がないと判断される場合には、精神障害を改善するため、この法律による医療を受けさせる必要があるとは認められませんから、本制度による処遇の対象とはならないと考えられております。」(平成15年5月8日参議院法務委員会)
⇒ 知的障害について、審議過程においても、治療可能性の存在につき消極的に考えられており、基本的に医療観察法の対象ではないと考えられていた。
第2 検察官の職務行為についての違法性判断基準及び主張立証責任
被告が引用する最判昭和53年10月20日「「逮捕・勾留はその時点において犯罪の嫌疑について相当の理由があり、かつ、必要性が認められるかぎりは適法であり、公訴の提起は、・・・起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りる」は、刑事手続に関するもので法的性格が異なり、医療観察法には妥当しないことなどを指摘してる。
第3 裁判官の職務行為についての違法性判断基準及び主張立証責任
被告が引用する最判昭和57年3月12日「当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別な事情があることを必要とする」は、本件のように国家賠償法による救済の必要性が高い事案(鑑定入院命令に対する不服申立手段が存在しない(医療観察法72条2項))には妥当しないことなどを指摘している。
第4 鑑定入院命令の取消しを行わなかったことの違法性判断基準及び主張立証責任
鑑定入院命令の取消が義務づけられる時期について、応急入院の12時間の時間制限(精神保健福祉法33条4項)や任意入院の72時間の退院制限(同法21条3項)を参考に、これらの時間よりも短時間で解放する義務がある。
第5 検察官の本件申立の違法性(医療の必要性)
医療の必要性が肯定されるためには、治療可能性のほか、「社会に復帰できるよう配慮することが必要な者」(配慮必要性)が必要であることを指摘した。
その上で、知的障害の治療可能性については、国会の審議過程においても否定的に捉えられていたことや精神医学的にも教育や環境調整が想定されており「手厚い専門的な医療」が不要なことのほか、簡易鑑定においても「即時の指導や教育の有効性を否定するものではない」と述べられていたことを指摘し、治療可能性の不存在を主張した。
また、配慮必要性については、原告にとって落ち着いた環境こそが必要なのであり、「社会に復帰できるよう配慮することが必要な者」に該当しないことを指摘した。
第6 検察官の審判申立遅延の不相当性
申立遅延が違法と評価される時期について、再度の退院請求がなされた場合に精神医療審査会が意見聴取を行うかどうかの判断基準(6か月)、医療観察法の入院処遇ガイドラインの入院期間「概ね18か月以内」などを参考に、事件発生から1年を超えれば申立は違法となると主張した。

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医療観察法国賠訴訟第2回口頭弁論期日のご報告

医療観察法国賠訴訟第2回口頭弁論期日のご報告

1 第2回口頭弁論期日について
精神遅滞及び広汎性発達障害という診断を受けており、医療観察法に基づく入院の必要性がないのに、鑑定入院(精神鑑定のための入院)として58日間にわたり精神科病院に収容された方(原告)が、国を被告として、慰謝料等の損害賠償を求めた事案について、2017年7月19日(水)10時、東京地方裁判所615号法廷において、第2回口頭弁論期日が開かれました。多数の方の傍聴ありがとうございました。

2 前回期日までの流れ
  第1回期日において、被告国は答弁書を提出しましたが、具体的な反論は第2回期日までに行うとしていました。

3 提出書面
原告:なし
被告:被告準備書面(1)、乙第1号証~乙第2号証

4 本件訴訟における争点
  被告(国)より被告準備書面(1)が提出されました。被告は、原告の主張に対し、以下のとおり争っています。
争点1 検察官は治療可能性がないのに審判申立をしたのではないか
 (被告の反論)
  検察官による本件申立が違法となるためには、本件申立てが行われた時点における事情を総合勘案して、それが職務行為の性質に照らして、医療観察法の許容するところであるか否か、によって決せられるべきである(被告準備書面(1)10頁)。
  精神障害の「改善」(医療観察法33条1項)には病状の憎悪の抑制も含まれ(同11頁)、かつ医療観察法における治療は薬物療法以外の治療法も含まれる(同12頁)。精神衛生診断において、薬物療法以外の治療手段によって病状の憎悪の抑制につながることが指摘されており(同12頁ないし13頁)、「この法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認められる場合」(医療観察法33条1項)に該当しない。
  また、検察官が警察から事件送致を受けて本件申立に至るまでの期間は約11か月であるところ、この間、検察官が、例えば原告に何らかの重大な不利益が生じることを知りながら、殊更に捜査を遅らせたなどの事情はなく、医療観察法も審判申立時期について何ら規定していないから、検察官の職務上の法的義務に違背していない。
争点2 裁判官は治療可能性がないのに鑑定入院を命じたのではないか
 (被告の反論)
   裁判官の職務行為が違法となるためには、当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれらを行使したものと認めるような特別の事情が必要である(被告準備書面(1)14頁)。
   医療観察法34条1項の「この法律による医療を受けさせる必要が明らかにない場合」とは、例えば、対象者が、一時的に極めて多量のアルコールを摂取したため、一時的に複雑酩酊の状態に陥って、心神耗弱の状態で傷害事件を起こしたものの、現時点では、医師の診断によっても、その精神障害が完全に消失していると認められる場合のように、その者が精神障害を有していないことが明らかである場合をいう(同14頁)。
争点3 裁判官が鑑定入院命令を取り消さなかった不作為の違法性
 (原告の主張)
   鑑定が完了した時点で、鑑定入院を維持する必要性は失われていた。また、鑑定人より医療観察法による医療を受けさせる必要がない旨の鑑定書が提出された時点において、鑑定入院を維持する必要性は失われていた。
 (被告の反論)
   医療観察法には、「この法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合」に鑑定入院命令を取り消さなければならない旨の規定はない。
鑑定人は投薬以外の方法による治療可能性を否定しておらず、「この法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認められる場合」に該当しない。
争点4 不処遇決定に対する補償の有無と差別の
 (原告の主張)
医療観察法の場合には不処遇決定になっても補償がなく、刑事事件における無罪や少年事件における不処分よりも不利な取扱いがなされており、差別にあたる。少なくとも同等の補償がなされるべきである。
 (被告の主張)
   争う。

【次回期日のお知らせ】
第3回口頭弁論期日
2017年9月13日(水)10:00
東京地方裁判所615号法廷

【本件に関するお問合せ】
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