医療観察法国賠訴訟 次回期日 2018年1月17日 10時より

【次回期日】
第5回口頭弁論期日
2018年1月17日(水)10:00
東京地方裁判所615号法廷

医療観察法国賠訴訟第4回口頭弁論期日のご報告

11月15日10時から、東京地裁615号法廷で期日が開かれましたので、ご報告いたします。

【医療観察法国賠訴訟とは】
精神遅滞及び広汎性発達障害という診断を受けており、医療観察法に基づく医療の必要性がないのに、鑑定入院(医療観察法に基づく入院を決定する前の精神鑑定のための入院)として58日間にわたり精神科病院に収容された方(原告)が、2017年2月13日、国を被告として、慰謝料等の損害賠償を求めた訴訟です。主に、精神遅滞及び広汎性発達障害の医療の必要性(治療可能性など)と検察官の事件処理の遅れ(事件発生から2年経過してから医療観察法に基づく手続を開始するための審判申立を行った)が問題となっています。

【前回期日までの流れ】
原告は、第3回口頭弁論期日(前回)において、原告準備書面(2)を提出し、主に、医療観察法の審議過程における国会の議事録を証拠として提出し、検察官の審判申立や裁判官による鑑定入院命令が、立法経緯や審議過程における議論の内容と乖離しており、違法な運用であることを指摘していました。

【提出書面】
原告:平成29年9月21日付文書送付嘱託申立書補充書
※ 開示を求める不起訴記録を特定して証拠開示を求める書面。
甲第2号証
被告:平成29年11月15日付被告準備書面(2)
平成29年11月15日付文書送付嘱託の申立てに対する意見書
乙第3号証

【法廷における主なやり取り】
1 裁判所は、不起訴記録の文書送付嘱託申立のうち、⑵被疑者の供述調書又は聴取した内容に関する報告書と⑹捜査関係事項照会書・同回答書(病院に対する照会記録)のみ採用しました。
2 次回期日までに、原告が、被告準備書面(2)に対する反論と原告の精神的苦痛に関する補充主張(鑑定入院中の処遇を中心に)を提出することを確認しました。

【次回期日】
第5回口頭弁論期日
2018年1月17日(水)10:00
東京地方裁判所615号法廷

(参考)
【平成29年11月15日付被告準備書面(2)の概要】
1 医療観察法の仕組みについて
(原告の主張)
医療観察法の立法経緯や審議過程から、原告のように精神遅滞及び広汎性発達障害の診断を受けており、専門医に定期的に通院し、事件発生後長期にわたり社会内で平穏に生活している者については、医療観察法の対象外と考えられていた。
(国の反論)
「衆議院及び参議院法務委員会の議事録・・を見ても、精神遅滞や広汎性発達障害の診断を受けている者が全て医療観察法の対象外であると考えられていたとみることはでき」ない。(2頁)
「医療観察法の対象であるかどうかの判断がなされるのは、・・・検察官による申立や、・・・鑑定入院命令時ではなく、同法40条(申立ての却下)又は同法42条(入通院命令等の決定)に係る決定の時点である。」(2頁)

2 裁判官の職務行為についての違法性判断基準について
(原告の主張)
鑑定入院命令は、争訟の裁判ではなく事後的に国家賠償による救済の可能性が極めて高く、実質的に行政処分というべきものであるから、いわゆる違法制限説に立つべきではない。
(被告の反論)
「最高裁昭和57年判決以後、下級審判決の大勢は争訟以外の裁判についてもいわゆる違法限定説を採用」している。(3頁)

3 裁判官の鑑定入院命令の取消しを行う作為義務の有無
(原告の主張)
最高裁判所平成3年4月26日第二小法廷判決を手がかりに、裁判官は、医療観察法鑑定書によって入院の必要自体がないことが明らかになった以上、直ちに身柄を解放すべきであった。
(国の反論)
「最高裁平成3年判決は、『・・・作為義務・・・に違反したといえるためには、客観的に行政庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分ができなかったことだけでは足りず、その期間に比してさらに長期間にわたり遅延が続き、かつ、その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要である・・・』・・・原告の入院期間は、2か月未満・・・であり、上記判決のいう作為義務が認められるような状態であったとはいえない。」(5頁乃至6頁)

4 検察官は、医療観察法33条1項の申立てに当たり、医師の意見を考慮した上で判断すべきであること
(原告の主張)
検察官の審判申立時において、原告について、明らかに医療の必要性がなかった。
(国の反論)
「検察官が、医療観察法33条1項の申立ての要否を判断するに当たっては、通常、・・・精神鑑定ないし精神診断の結果も考慮して、・・・判断するところ、・・・その診断を踏まえて示された処遇上の意見についても、・・・これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、専門家である医師の意見を十分に尊重した上で判断すべきである(最高裁判所平成20年4月25日第二小法廷判決・・・)。・・・精神衛生診断書(甲第6号証)において、・・・『今後の処置に対する意見』として、医療観察法33条1項の申立て又は精神保健及び障害者福祉に関する法律25条通報[注:現行24条]の必要性の有無に関し、必要である旨の意見が述べられていたのであるから・・・、申立時点において、・・・『この法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合』には該当しないことは明らかである。」(6頁乃至7頁)

5 著しく不相当な申立遅延となる「期間」
(原告の主張)
対象事件の発生から1年を経過した時点で審判申立がなされなければ、その後の審判申立は、著しく不相当に申立てが遅延したものとして、違法である。
(国の反論)
「『6か月以内であれば病状等に変化を生じないが、6か月を経過した場合には変化が生じうる』との見解については、・・・通知・・・の別添に記載がなく、いかなる医学的根拠・知見に基づいた意見なのか不明である上、そもそも経験則上も甚だ疑問である。・・・実務上、短期間に連続して、かつ、同一の内容で退院等の請求がなされることがままあることに鑑み、再度の請求がなされるまでの期間及び請求の内容からして、前回の意見聴取時と病状に特段の変化がないものと考えられ、再度の意見聴取に及ぶ必要性が乏しいと認められる場合には、意見聴取を実施しないことができるとの指針を示すものであって、『6か月』をその判断のための一応の目安としているにすぎない。したがって、・・・厚生労働省通知別添の『6か月』との記載は、検察官が・・・申立てを行うべき合理的期間を考える上で、何ら参考とならないことは明らかである。」(8頁乃至9頁)
「ガイドラインには、入院から退院までの流れとして、『おおむね18か月以内の退院を目指す』としか記載されておらず、これを一応の目安として、退院に向けて努力する旨の指針が示されているにすぎないのであるから、・・・合理的期間を考える上で、何ら参考となるものではない。」(9頁)
「原告の主張によると、重大な他害行為に及んだ精神障害者について、例えば、①対象事件の発生から1年経過後に検挙され、所要の捜査の結果、心神喪失により不起訴裁定がなされた場合のみならず、②対象事件の発生から1年経過後に心神喪失を理由とする無罪判決が確定した場合においても、不起訴裁定がなされる前又は無罪判決が確定する前に申立てを行うことは期待し得ないことから、検察官は、およそ医療観察法33条1項の申立てをすることができなくなるが、このような結論は、全く法の想定しない事態であって、著しく不合理かつ非現実的なものといわざるを得ない。」(9頁乃至10頁)

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