全国「精神病」者集団ニュース 2001年12月号

2001年12月発行の「ニュース」抜粋です。

目録

ごあいさつ

いわゆる「触法精神障害者」への特別立法に反対の声を

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全国「精神病」者集団

ニュース


ごあいさつ

2001年も終わろうとしています。皆様いかがお過ごしでしょうか?

いよいよ保安処分新設の特別立法が準備される時代となりました。

私たち「精神病」者を「犯罪を犯しやすい者」と差別的に規定し、精神医療そして福祉総体を「犯罪防止」に向けて動員していく時代がやってこようとしています。患者会やボランティアまで保安処分に動員しようという「精神医療と福祉の改善」がたくらまれています。そしてその極に特別病棟として「専門治療施設」が作られようとしています。

私たち全国「精神病」者集団が結成以来阻止し続けてきた、保安処分を決して許してはなりません。一人一人の知恵を集めそして一人一人の力を集めて、この保安処分と闘う陣形作りを始めましょう。

私たち「精神病」者が当たり前の医療保障を、そして当たり前の人間として生きていける保障をかちとるためにも今この保安処分を許してはなりません。

厳しい年の瀬であり、そして厳しい時代の始まりでもあります。

年末年始はなにやら気ぜわしく、また町を行き交う人々から取り残されたような寂しさも感じる季節です。家族団らんのお正月をよそ目に、孤立をかみしめる仲間も多いことと存じます。年末年始仲間の集える場所を、と切に願わずに入られません。読者の皆様が無事に年越しを済ませ、新年を迎えられますようお祈りいたします。

(略)

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(略)


いわゆる「触法精神障害者」への特別立法に反対の声を

長野英子

11月12日与党「心神喪失者等の触法および精神医療に関するプロジェクトチーム」が報告書(以下「報告書」とする)を公表した。

これは6月の池田小事件以降「危険な精神障害者の犯罪に対して何らかの対策を」という声に応えて出されたものである。

内容は別紙図のような「心神喪失等の触法精神障害者」に対する特別施設への収容を中心とした特別立法の提案と「精神障害者医療および福祉の充実強化」の提案である。

☆ 保安処分としての特別立法

保安処分とは何か? 「精神障害者」に対する保安処分に限ってみれば、「精神障害者を犯罪を犯しやすい危険な者とみなし、何らかの犯罪を犯す危険性を要件として、予防拘禁や人権制限を行い、その危険性を取り除くことを目的として強制医療を施すこと」と定義できる。

今回出された「報告書」は

①重大な犯罪にあたる行為を行ったが心神喪失あるいは心神耗弱を理由に不起訴となったものあるいは心神喪失あるいは心神耗弱と認められ裁判で無罪等(執行猶予となったものも含むのか?)となったものを対象として

②全国の地方裁判所に判定機関を置き、精神科医による鑑定を参考に対象者の処遇を判定する

③判定の結果は国立病院内におかれた専門治療施設に収容するか、保護観察所の観察下の通院を命令されるかであり、さらに責任能力ありと判断されれば検察官にその結果が通知されることとなる。

④専門治療施設からの退院や通院措置の解除、また観察下の通院からの再収容も判定機関が決定する。

としている。

施設への収容や強制通院命令の要件は明確にされていないが、「精神障害者」の中でとりわけ「事件を起こした精神障害者」を対象とする以上、「再犯防止」すなわち「危険性」が要件となることは明らかであろう。

まさに保安処分である。

☆ 一生出られない「専門治療施設」

再犯防止を目的として予防拘禁や通院の強制を行う以上、判定機関は「万一何か事件を起こされたら」という恐怖から、「社会にとって安全=すなわち危険ではない」と確信できるまで拘禁や強制通院の解除の決定を下さないことになる。すなわち永久の拘禁が必然となる。

一切希望が持てず監禁され続ける特別病棟で医療など成り立つであろうか? 人を監禁する専門家の法務省ですら、管理の困難を理由に「終身刑」導入をためらっている。一切の希望を絶たれた人間を管理するには、徹底した抑圧と厳重な警備、そして秩序維持を目的とした強制医療が必要となる。患者をおとなしくする目的で電気ショックや薬漬け、縛り付けが横行するであろう、そして脳外科手術すら復活しかねない。

報告書はこの特別病棟内での、治療拒否権も人権擁護システムについても何も述べていない。

たとえ特別病棟への入所ではなく強制通院を命じられたり、あるいは特別病棟を退所できても、いつまた再収容されるかわからない管理下での生活が続くことになる。こうした状況で医師や援助者との信頼関係を築き、医療を受け入れることは不可能である。

特別立法の対象者が、本来の意味での医療(=患者本人の利益のための医療)を保障される体制はどこにもない。

☆ 特別立法は「精神障害者」差別

「危険性」を要件として国家が人を予防拘禁したり人権を制限することはそもそも許されてはならないことである。こうした予防拘禁や予防的な人権制限を許せば、国家はほしいままに人の人権制限や予防拘禁を行ってしまうようになる。それゆえ、この国は少なくとも刑法において「再犯を行う可能性」を根拠に人を予防拘禁することを許していない。

しかしながら「精神障害者」に限って特別の法律を作り「再犯防止」を目的とした予防拘禁や人権制限を科すことの合理的根拠はなんだろうか? 「精神障害者」差別以外の根拠はあるだろうか?

「報告書」はこの疑問に全く答えていない。

しかもすでに建前上は本人の「医療と保護」を目的としながら、運用実態としては「犯罪防止」を目的として「人」を永久に拘禁できる措置入院制度をこの国は精神保健福祉法に定めている。99年6月末の時点で措置入院の30%あまりが20年以上の長期拘禁となっている。すでにこの国では「自傷他害のおそれ」を要件として、健常者が受ける刑期以上の拘禁が公然と行われているのだ。

措置入院下では医療が成立せず、ひたすら監禁のみある実態、電気ショックの乱用が暴露されている。

こうした強制医療の実態の中でさらに屋上屋を重ねる形の特別立法下ではどんなことが予想されるであろうか?

よくあるミステリーの書き出し。深夜帰宅すると夫が刺されて倒れていた。妻の私は悲鳴を上げながら駆け寄ってナイフを抜く。そこに悲鳴を聞きつけた隣人が駆けつける。隣人の目撃したのは血まみれのナイフを持って呆然と立っている私。私が呆然としてかつ病状も悪く何がなんだかわからなかったとしたら、そのまま警察に逮捕され取り調べられる。当然混乱している私は当番弁護士など呼ぶことなどできない。

検察は私の病状を判断してとても責任能力を問えないとして不起訴にし、特別立法下の判定機関にまわす。私は何がなんだかわからないまま身柄を拘束されており、自分が犯人とされていることなど理解する余裕もない病状である。当然自分はやっていないということを説明する余裕もなく、判定機関にかけられるとき、つける事ができるという弁護士を呼ぶ知恵すら浮かばない。私が孤立していれば私の身柄がどこにあるか探してくれる人もなく、私は闇から闇に葬り去られることになる。

判定機関は裁判でないので、検察がいう私が犯人というストーリーを検察官に物証を要求して証明を迫ることはできない。私は「重大な犯罪にあたる行為をした精神障害者」として専門治療施設に送られ、一生監禁されるか保護観察の対象となる。

今現在の措置入院もこうした冤罪事件で措置なっている人はありうる。

また現実に私が夫を刺していたとしても、夫が私を殺そうとして正当防衛で夫を刺したので、裁判にかけられれば無罪となったり、あるいは日ごろ夫がDVを振るっていたということで情状が酌量されてそれなりの刑期となることだってありうる。そして刑期さえ過ごせば私は再び自由の身となれる。

しかし「重大な犯罪にあたる行為をした精神障害者」とレッテルを貼られれば、一生監禁されたり、保護観察の対象となってしまうのだ。

国家が人を監禁するというのは国家による最大の人権侵害行為であるから、刑罰を科すには刑事訴訟法上の手続き保障が重要視され、検察は被告の有罪を立証する責任があり、刑罰を受けるとしたら「裁判を受ける権利」が確保されていなければならず、その裁判も公開を原則としている。

しかし判定機関はこうした手続きを一切省き人を監禁できるのだ。

この「精神障害者」差別を許してはならない。

☆ 特別立法とセットの精神医療改善?

「報告書」は特別立法とセットとして「精神障害者医療および福祉の充実強化について」を提案している。

国境なき医師団は、アフガン爆撃と同時に医療品や食料を投下する米英の「同時作戦」を厳しく批判し、空爆下にある人々を「人道的援助」全てを疑わなければならない状態に追い込むとしている。

「報告書」のいう「医療福祉の充実」も同じである。片方で特別立法という最大の「精神障害者」差別を行い、「精神障害者」を「犯罪防止」のために監禁しておいて、医療福祉の充実をいわれても、私たち「精神病」者は医療と福祉を疑いの目で見るしかなくなる。

私たちを「犯罪を犯しやすい危険な者」という色眼鏡で見て、「犯罪を犯させないため」に監視や管理をすることが精神医療や福祉充実の目的ではないか?と私たちは疑わざるをえない。患者会への援助だって相互監視へのご褒美なのかと疑ってしまう。医者も保健婦もホームヘルパーもボランティアもみな警察官になるとしか思えない。

おびえる「精神病」者は医療や福祉に近づくことすらできなくなるであろう。

今なすべきことはこの国の論外の精神医療システムを根底的に改善することである。そして精神医療を批判してきた私たち「精神病」者の言葉に耳を傾け、精神医療の被害を受け苦しむ仲間に謝罪し学ぶことである。

そこからしか精神医療の改善はありえない。

この特別立法阻止のため葉書運動が始められている。読者の方にご協力ご支援を訴えたい。

窓口入手資料

*特別立法関係

①与党政策責任者会議「心神喪失者等の触法および精神医療に関するプロジェクトチーム報告書」

②「触法精神障害者の対策論――精神科医の最近の論議の検討」 中山研一 判例時報

この問題をめぐる議論の歴史を、は保安処分の法律家の立場からまとめたもの、歴史的な流れがよくわかります。

③「どうする触法精神障害者と社会」 法学セミナー

特集ですが、この中の石塚伸一さんのドイツ保安処分の解説は参考になります。ちなみに森山法務大臣は8月にドイツの保安処分施設を視察しましたが、その中で、「精神障害者」の保安処分施設だけではなく、「常習累犯者」に対する保安処分施設をも視察したとのこと、政府の動向が気になります。

③山上晧医師の厚生科学研究の「触法行為を繰り返す治療困難者が入院する施設の設備構造、人員配置、治療内容に関する研究」(「精神病院等の設備構造及び人員配置のあり方に関する研究(主任樋口昭彦)」の分担研究班)

の行ったアンケートのアンケート用紙(プライバシー侵害の調査です)

この研究は山上晧によると以下の目的とのこと。「厚生労働省研究班『触法行為を繰り返す治療困難者が入院する施設の設備構造、人員配置、治療内容に関する研究』分担研究者代表=山上皓・東京医科歯科大学難治疾患研究所教授)は罪を犯し、措置入院となった精神障害者の入院処遇実態を調べる初の全国調査に着手した。すでに複数の病院から回答が寄せられ、今夏をめどに調査結果をまとめる。日本には罪を犯した精神障害者を診る専門病棟はなく、他の患者の動揺や安全性を考え、長期隔離や過剰拘禁、未治癒での早期退院をもたらすなどの弊害が指摘されている。長年タブー視されてきたこの問題に厚労省と法務省は1月、初の合同検討会を立ち上げたところ。調査にあたる山上教授は「調査結果を国民のコンセンサス確立に役立てて、(公的な専門病棟を整えて)精神病院の機能分担を図り、触法精神障害者の適切な処遇と再犯防止につなげて、精神障害者への社会の偏見をなくしたい」と調査の意義を語っている。

日本では罪を犯した精神障害者の約9割が責任能力がないとして不起訴となる。その後は措置入院となって医療に処遇が委ねられるケースが大半。イギリスなどの先進諸国は裁判所が触法精神障害者の入退院の決定に関与し、公的な専門施設で処遇している。日本でも公立病院が中心となってこうした精神障害者を受け入れる地域も出始めているが、精神医療の開放化の流れが進むなか、国による公的専門施設の整備を求める声は強い。

今回の研究では、日本精神病院協会、全国自治体病院協議会精神科部会の協力のもと、全国約1200の精神病院を対象に、触法精神障害者の処遇実態調査を実施。責任能力がないとして不起訴または無罪となった措置入院者について、1998年~2000年の3年間の治療実態を分析する。調査項目は罪を犯すまでの通院・入院歴、隔離・拘束の有無や頻度、退院時の病状、退院後の処遇、入院時に起こした問題行動や問題行動への対処―など詳細にわたっており、山上教授は病院での処遇実態を明らかにしたうえで、触法精神障害者とその他の精神障害者双方にとって最良な精神医療システムの確立につなげたいとしている。

④緊急研究討論合宿「触法精神障害者の処遇と精神医療における患者の権利」報告集

福岡県弁護士会精神保健委員会


冬季カンパ要請

北風の季節となりました。向かい風に抗って歩むとき返ってすがすがしささえ覚えるときもあります。私たち「精神病」者にとっても今厳しい向かい風が襲っています。

保安処分新設の特別立法です。

全国「精神病」者集団が結成以来戦ってきた反保安処分闘争の正念場を迎えています。

この危機的状況の中で会員は飛躍的に増えており、また有料購読者も増加しております。しかしながら、全国「精神病」者集団の財政は今なお約40万円の赤字を抱えております。

全国「精神病」者集団事務局員は会議への出席や闘争参加、日ごろの病院面会や仲間の援助活動の交通費は全て自前、資料収集などの費用も手弁当で活動しております。この状況下で事務局員全員が経済的疲弊の中で倒れております。赤字分は「精神病」者の一会員が借金をして穴埋めしている実態があります。京都事務所年内に撤退しますので来年は財政状況が好転するかとも思いますが、まだまだ赤字解消には時間がかかります。

一方で会員増加に伴い、相談や交流のための郵送料負担も増加しております。また反保安処分闘争のための資金も必要です。一人でも多くの方にカンパにご協力いただきたくお願いするしだいです。

ニュース有料購読者で今回購読料切れのご請求をさせていただいた方はぜひ購読料をお振込みいただきたくお願いいたします(同封の振替用紙は請求書ではありません。カンパお振込みの便宜のために全員に同封させていただいております。「精神病」者会員は会費、購読料とも無料ですのでご心配なく)。

年賀状などの書き損じ葉書や未使用切手のカンパも歓迎いたします。また読者の中で余裕のある方はぜひ有料購読者拡大にご協力いただけますようお願いいたします。窓口にご連絡いただけましたら、見本誌とニュースのご案内ビラを送らせていただきます。

なにとぞよろしくお願いいたします。

2001年12月

全国「精神病」者集団

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与党政策責任者会議 心神喪失者等の触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム報告書

平成13年11月12日
与党政策責任者会議 心神喪失者等の触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム報告書

第1 触法心神喪失者等の処遇の改革について

1 新たな処遇決定手続きの創設

ア 検察官は、殺人、放火等の重大な犯罪に当たる行為を行った者について、心神喪失者又は心神耗弱者と認め、
不起訴処分にしたときは、地方裁判所(全国50か所)に対し、処遇の決定を申し立てる。

イ 地方裁判所の判定機関は、裁判官、精神科医、精神保健福祉士等により構成し、処遇を決定する。

ウ 処遇は、より確実な治療効果・
病状の判断の下で入退院や通院の要否が決定されるべきであるという視点から精神科治療を受けさせるものとする。

エ 処遇は、専門治療施設への入院又は観察下の通院とする。

オ 処遇の決定に当たっては、精神科医による対象者の適切な鑑定を行う。

カ 処遇の期間については、不当に長期にわたることがない制度とする。

キ 判定機関に対する不服申立手続きを定める。

ク 処遇を申し立てられた者については、弁護士による援助を受けることができることとする。

ケ 被害者及びその遺族については、一定の範囲で審判の傍聴を許すこととする。

コ 判定機関は、処遇を申し立てられた者が責任能力を有すると認めたときは、その旨を検察官に通知するものとする。

サ 刑事訴訟において、裁判所が被告人を心神喪失者又は心神耗弱者と認めて無罪等としたときは、
検察官はアの手続きを取るものとする。

2 対象者の処遇施設の整備

ア 対象者を適切に治療するため、医療従事者や設備を充実した専門治療施設を整備する。

イ 専門治療施設は、国公立病院の中に設ける。

ウ 専門治療施設は、入院治療、社会適応訓練等を提供する。

エ 専門治療施設の長は、退院を許可すべきと考えるときは、地方裁判所に対し、退院許可の申立てをし、判定機関がこれを決定する。

3 退院後の体制の確立

ア 判定機関が退院を許可したとき及び観察下の通院措置を決定したときは、その旨を保護観察所(全国50か所)に通知する。

イ 保護観察所は、対象者の観察、生活環境の整備、継続的な治療を確保するための指導監督等を行う。

ウ 保護観察所は、専門治療施設、保健所、精神保健福祉センター、社会復帰施設等と連絡調整を図るなどして連携を確保する。

エ 専門治療施設は、通院治療、社会適応訓練等を確保する。

オ 保健所、精神保健福祉センター、社会復帰施設等は、精神保健福祉サービスを提供する。

カ 退院許可の取り消し、通院措置の終了については、判定機関が決定する。

4 司法精神医学研究・研修体制の充実強化

触法心身喪失者等に対する治療及び社会適応プログラム、社会復帰のための訓練、
精神鑑定等に関する研究及び人材の育成を進めるため、その体制を充実強化する。

第2 精神障害者医療及び福祉の充実強化について

1 精神障害者の保健・医療・福祉充実のための計画の策定、実施

(1)患者の病態に応じた適切な入院医療の充実

ア 急性期の医療、早期の社会復帰を目指した医療、また、思春期精神医療、薬物依存の治療等の専門的医療等、
患者の病態に応じた適切な医療を行えるよう、精神病床の機能分化について早急に検討を深め、これを推進する。

イ 病院の情報公開と外部評価を促進する。

(2)在宅生活を支える、医療及び福祉対策の充実

ア 施設中心の精神医療から、地域医療への転換を図る。

イ 患者が地域で安心して生活できるよう、精神科救急体制の整備を急ぐとともに、
精神科診療所等も活用した地域医療体制の充実を図る。

ウ ホームヘルプ、ショートステイ、グループホーム等、在宅生活を支援する福祉対策の充実を図る。

エ 当事者どうしが相互支援活動を行う、自助グループ活動(ピアサポート)の支援を図る。

(3)社会復帰施設の充実

入院患者が、円滑に社会復帰できるよう、生活訓練、授産、生活の場の提供等を行う社会復帰施設の充実を図る。

(4)心の健康対策の充実

PTSD対策、自殺予防等、幅広い心の健康問題に対する研究や相談の充実を図る。

(5)精神疾患の予防、診断、治療に関する研究の推進

精神疾患の予防、診断、治療に関する研究を推進する。

(6)精神保健、医療、福祉を担う専門スタッフの養成、確保

医師、看護職員、精神保健福祉士等の専門職種の確保及び資質の向上を図る。

(7)精神障害者に対する差別・偏見の解消への取り組み

精神障害者への偏見・差別を解消するためのアクション・プランを策定する。

2 診療報酬のあり方の改善

精神障害の特性に応じ、効果的、効率的な医療が提供されるよう、診療報酬体系の見直しを行う。

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与党政策責任者会議

心神喪失者等の触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム

自由民主党 佐藤剛男(座長)、持永和見、山本幸三

公 明 党 福島 豊、漆原良夫、山下栄一

保 守 党 小池百合子、松浪健四郎

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心神喪失者等の触法及び精神医療に関する施策の改革について

心神喪失者等の触法及び精神医療に関するPT報告(案)

座 長 熊代昭彦(平成13年11月9日)

当プロジェクトチームは、平成13年6月29日以来9回の会合を重ね、表記の課題を検討してきた。またこの間、
有識者並びに関係者(資科1)からのヒアリングを実施し、広く衆知を集約することに努めた。その結果、
以下のような結論に達したので報告する。

第1 基本的認識

1.精神障害者は、我々の社会の大切な構成員である。精神障害者の犯罪率は、社会全体の犯罪率に比ベ、
かなり高いのではないかと一般に漠然と考えられているが、その認識は正確な資科によって改められる必要がある。(資料2)

また、精神障害者対策の現状を見るとき精神障害者のための医療及び医薬品の研究開発、
医療及び福祉の充実並びにノーマライゼーションのための施策の抜本的改革を図ることが急務であると言わなければならない。

2.一方、今回検討した触法心神喪失者及び心神耗弱者(以下「心身喪失者等」という。)の問題は、
殺人等の重大な犯罪行為をした者の処遇に関する問題であり、
普通の生活を送っている精神障害者の問題と混同して議論する事は厳に慎まなければならないものである。

3.本PTはこのような基本認識に立って、先ず触法心神喪失者等の処遇の改革について取り上げ、
並行して精神障害者対策の改革についても検討した。

第2 触法心神喪失者等の処遇の改革について

1.問題点

次のような問題点が指摘された。

(1)
重大な犯罪行為を行った心神喪失者等の処遇について裁判所の判断がなされていない殺人や放火等の重大な犯罪行為を行った触法心神喪失者等の約8割が不起訴
(起訴猶予を含む。以下同じ。)になっていて、裁判所の判断が仰がれていない。この問題点の指摘は有識者、関係者、
犯罪行為の被害者の家族等から広く行われた。
又加害者となった精神障害者の側からも自らの裁判を受ける権利を奪わないで欲しいとの声が出されている。

また、検察庁において、責任能力に関する捜査を十分に行わず、安易に不起訴処分にしているのではないかとの疑念を生じさせている。

(2)医師の鑑定の信頼性に疑問が抱かれている

司法精神医学の研究・教育が充分でないため、責任能力の判断に関する医師の鑑定の信頼性に疑間が抱かれている。

(3)触法心神喪失者が一般の措置入院制度で処遇されている

触法心神喪失者が触法していない一般の精神障害者と同じ措置入院制度で処遇されているため、
専門的な治療を受けることが困難となっており、また他の患者にも悪影響を及ぼしている。また退院して良いか否かの判断について、
医師に過剰な責任を負わせることになっている。

(4)心神喪失で無罪の場合に、それに変わる措置が定められてない

心神喪失だけの理由で無罪とされる場合に、それに変わる刑法上ないしはそれに準ずる措置が定められていないのは、
裁判による正義の回復を期待する国民感情に反するという意見もある。

(5)退院後のシステムが確立されていない

退院後にも適切な医療を継続させる必要がある場合に、通院医療を確実に継続させるシステムが確立されていない。

2.改革案

上記のような問題点を踏まえ、次のような内容の新法の制定を提言する。

(1)「治療措置(仮称)」制度の創設

重大犯罪行為をした者を心神喪失等のみの理由で不起訴(起訴猶予を含む。以下同じ。)
にしているケースはすべて起訴して裁判官の判断を仰ぐよう制度改正すべきではないかとの強い意見もあり、傾聴に値するが、
起訴便宜主義と起訴法定主義の2者択一の立場を取るよりも、第3の道として「治療措置(仮称)申し立て制度」を創設すべきである。

ア.治療措置申し立て制度の概要

(ア)検察官は、重大な犯罪行為をした者について心神喪失等と認め、不起訴処分にした時は、地方裁判所(全国50カ所)
に治療措置の決定を申し立てる。

(イ)地方裁判所に冶療措置判定機関(以下「判定機関」という。)を置き、治療措置を決定する。

(ウ)被害者又はその遺族は、判定機関の審議を傍聴することが出来る。

(工)治療措置は、専門治療施設への入院又は保護観察下の通院とする。

(オ)判定機関は裁判官を長とし、精神科医のほか、精神保健福祉士等の精神医療関係者で構成する。

(カ)専門治療施設は国公立病院の中に設ける。

(キ)治療措置の期間については、不当に長期にわたることがない制度とする。

(ク)専門治療施設の長は、退院を許可すべきと考えるときは、地方裁判所に退院許可の申し立てをし、裁判所がこれを決定する。
退院取り消し、通院治療終了も裁判所が決定する。

(ケ)裁判所は、(イ)の手続きで、責任能力があると認めた時は、当該案件を検察官に差し戻さなければならない。

イ.起訴された者が心神喪失と決定された場合の取り扱い

通常の訴訟の過程に於いて、裁判所が、起訴された者が心神喪失により無罪と判定したときは、検察官は(ア)
の手続きを取らなければならない。

ウ.退院後の体制の確立

触法心神喪失者等が退院した後の体制の確立は極めて重要である。退院後に規則正しい服薬通院等が行われれば、
普通の生活を送ることが可能であるからである。また、孤立感を抱くことがないよう、仲間作りや仕事場や生活の場の確保も重要である。
これらのことを可能とするため、
中心的役割を担う機関として全国に50ケ所ある保護観察所を活用することが適切であるので新法の中に位置付ける。

工.保護観察所の役割

(ア)地方裁判所が退院の決定をしたとき及び保護観察下の通院措置の決定をしたときは、その旨を保護観察所に通報する

(イ)保護観察所の役割

通院の必要な当該者の処遇のための中心的な機関として保護観察所を位置付け、
在宅又は中間施設で生活する当該者の処遇を抜本的に改善する。

その具体的役割の主なものは次のとおりとする。

①当該者の生活状況の把握、生活環境の調整、相談援助並びに継続的な治療を確保するための指導監督を行う。

②当該者が社会的に孤立しないよう、精神障害者団体、支援ボランティア団体等との連携協力を緊密に行う。

③専門治療施設、保健所、医療機関、社会復帰施設、地方公共団体の担当部署等の連携協力機関の連絡調整会議を開催する等、
当該者の医療及び福祉に十分配意できる体制作りをする。

(2)司法精神医学研究・研修体制の抜本的充実

触法心神喪失者等に対する治療及び社会適応プログラム、精神鑑定等に関する研究や人材育成体制を抜本的に充実する。

第3 精神障害者医療及び福祉の充実強化について

1.精神障害者医療及び福祉の問題点

次のような問題点が指摘された。

(1)精神病院のスタッフ体制が弱い

(2)長期入院者の割合が高い

手厚い医療によって、早期の退院を可能にする体制が不十分である。

(3)在宅者の日常生活への支援が不十分

在宅者が、24時間いつでも精神医療にかかれる体制や日常生活の困難さへの支援が不十分である。

また、入院患者の退院後の受け皿が不十分である。

(4)幅広い心の問題に対応する体制が不十分

悲惨な経験後のストレス・不調(PTSD)、3万人を超えた自殺の増加、その他の幅広い心の問題に対応する体制が不十分である。

(5)福祉対策が、知的障害者対策、身体障害者対策と比較し、かなり遅れている。

2.精神障害者医療及び福祉対策の改革案

上記の問題点を踏まえ、以下の改革を行う。

(1)精神障害者医療保健福祉対策5ケ年計画(ダイヤモンド・プラン(仮称))の策定、実施

知的障害者対策、身体障害者対策に早急に追いつくことを一つの目標とし、且つ精神障害者対策の質を高めるため、高齢者のための
「ゴールド・プラン」に勝るとも劣らないダイヤモンド・プラン(仮称)を平成14年度中に策定する。なお、
他の障害者対策も含めた心身障害者対策総合プランを策定することもより良い選択であり、検討すべきである。

ダイヤモンド・プランには、できる限り広範囲な施策を取り込むことが必要であるが、少なくとも次のような事項を含むものとする。

ア.患者の病態に応じた適切な入院医療の充実

急性期の医療,早期の社会復帰を目指した医療、また、思春期精神医療、薬物依存の治療等の専門的医療等、
患者の病態に応じた適切な医療を行えるよう、精神病床の機能分化について早急に検討を深め、これを推進する。

(現在の医療体制の基準等については、資科3)

イ.在宅生活を支える、医療及び福祉対策の充実

患者が地域で24時間いつでも安心して生活できるよう、
24時間オープンしている精神科救急体制並びに相談体制の整備を急ぐとともに、ホームヘルプ、ショートステイ、グループホーム等、
在宅生活を支援する福祉対策の充実を図る。

ウ.社会復帰施設の充実

入院患者が、円滑に社会復帰できるよう、生活訓練、授産、生活の場の提供等を行う社会復帰施設の充実を図る。
(現行の社会復帰施設。資科4)

工.心の健康対策の充実

PTSD対策、自殺予防等、幅広い心の健康問題に対する研究や相談の充実を図る。

オ.精神疾患の診断及び治療薬の研究開発並びに治療方法の研究、改善

上記の研究開発、改善は遅々としており、思い切った対策を講ずる必要がある。

カ.精神保健、医療、福祉を担う専門スタッフの養成、確保

上記の専門スタッフの養成、確保は急務である。特にPSWの養成、確保並びにその診療報酬上の位置付けを改善する必要がある。

(2)診療報酬のあり方の改善

精神科の診療報酬(資料5)体系をさらに改善する必要があるが、
現行体系をさらにより良く活用することも精神病院に於て検討される必要があろう。

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(資料1)自由民主党政務調査会

心神喪失者等の触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム

開催経過

第1回会合:平成13年6月29日(金)参議院本会議終了後、10:48~

議 題:法務省、厚生労働省よりヒアリング

第2回会合:平成13年7月10日(火)12:00~

議 題:(法務省、厚生労働省より提出資料説明)プロジェクトチーム検討項目及び

今後の運営について

第3回会合:平成13年8月3日(金)12:00~

議 題:法務省・厚生労働省合同検討会の概要について

プロジェクトチーム検討項目並びに今後のスケジュールについて

第4回会合:平成13年9月7日(金)11:30~

議 題:岩井宜子専修大学法学部教授、前田雅英東京都立大学教授よりヒアリング

第5回会合:平成13年9月14日(金)12:00~

議 題:古川元晴 元東京地検検事正、吉丸眞 元札幌高裁長官よりヒアリング

第6回会合:平成13年9月21日(金)12:00~

議 題:久保潔読売新聞社編集委員、岡村勲弁護士、犯罪被害者関係者からのヒアリ

ング

第7回会合:平成13年9月28日(金)12:00~

議 題:西島英利 日本医師会常任理事よりヒアリング

第8回会合:平成13年10月3日(金)12:00~

議 題:日本精神病院協会、全国精神障害者家族会連合会、日本精神保健福祉士協

会、日本弁護士連合会よりヒアリング

第9回会合:平成13年10月30日(火)11:30~

議 題:党プロジェクトチーム報告(案)の検討

第10回会合:平成13年11月9日(金)11:00~

議 題:党プロジェクトチーム報告(案)の検討

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(資料2)心神喪失者等の検察庁受理人員に占める割合等(省略)

(資料3)病床種別による医療体制の基準等(省略)

(資料4)精神障害者社会復帰施設の概要(省略)

(資料5)入院基本料診療報酬点数(省略)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

平成13年11月1日

新たな精神障害者の触法行為に対する処遇システムについて

公明党触法精神障害者の判定・処遇に関するプロジェクトチーム

池田小学校事件などを契機として重大犯罪を犯した精神障害者に対する処遇のあり方に対する見直しを求める声が高まった。
一方で精神障害者に対する偏見と差別が未だに強いことを指摘する意見、
また精神障害者に対する医療福祉のさらなる充実が必要であるという指摘がある。

公明党は精神障害者の医療福祉の充実を図り、差別と偏見を解消するため、また、
そうした偏見と差別の一因ともなっている重大な触法行為に対する処遇システムの見直しのため以下の提案を行う。

1 触法行為に対する処遇の決定手続き

①対象者

*心神喪失又は心神耗弱の状態で殺人、放火等の重大犯罪に当たる行為を行った精神障害者

*不起訴処分又は裁判で無罪等の判決が確定した者

②新たな審判機関の設置

*地方裁判所に①の者の審判のための機関を設置する。

*同機関は裁判官、精神科医、精神保健福祉士等により構成し、精神医学・精神保健福祉的判断を踏まえ、処遇を決定する。

③同機関の役割

*同機関は触法行為の事実を踏まえ、精神科治療(入院又は通院の要否、退院の可否、通院治療の終了の可否等)
に関する処遇の決定を行う。

④処遇の決定にあたっての留意点

*精神科医による対象者の適切な鑑定。

*対象者の生活環境等、処遇に密接に関連する事項の確認。

⑤審判の開始

*検察官の申し立てによる

⑥処遇の決定

*処遇は重大な触法行為を行った場合には、より確実な治療効果・
病状の判断の下で入退院や通院の要否が決定されるべきであるという視点から精神科治療を受けさせる処分を科すものとする。

⑦審判を受ける者の権利の擁護

*不服申し立て手続き、弁護人による付添選任権を保障する。

⑧被害者・遺族等への対応

*一定の範囲で審判の手続きの傍聴を許可する。

2 対象者の処遇施設

①触法精神障害者専門治療施設の整備

*対象者を適切に治療するため、医療従事者や設備を充実した専門治療施設(病棟)を整備する。

*同施設では入院・通院治療や社会適応訓練や精神保健福祉サービスを提供する。

*同施設は対象者の病状に応じて審判機関に対して退院の許可の申し立てを行う。

②退院後(通院治療)のシステム

*専門治療施設又は同施設と連携をとる治療施設において処遇の決定に基づき通院治療(又は訪問診療)を継続する。

*同施設は、保健所、精神保健福祉センター、社会復帰施設など精神保健福祉サービス提供機関と連携をとり、
対象者の生活環境等を踏まえた総合的な対応を行う。

*同施設等との連携のもとに観察機関(保護観察所)は、審判機関の決定に基づき対象者の観察、生活指導、生活環境の整備等を行う。
ただし、保護司の関与のあり方については十分に検討する。

3 司法精神医学研究・研修体制の整備

*精神鑑定に関する研究並びに人材の育成を進める。

*重大な触法行為をした精神障害者に対する治療ならびに社会復帰のための訓練等に関する研究及び人材の育成を進める。

4 精神保健医療福祉の充実

*現在の障害者プランの終了をふまえ新たな精神障害者福祉ブランを策定する。

*精神科医療のさらなる充実、また急増する精神疾患への対応のため予防・治療をあわせ21世紀の精神医療ビジョンを策定する。

5 精神障害者への偏見・差別への取り組み

*精神障害者への偏見・差別を解消するためのアクション・プランを策定する。

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全国「精神病」者集団ニュース 2001年10月号

2001年10月発行の「ニュース」抜粋です。 一般定期購読は有料(年6回程発行1年分5000円)です。(病者である会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

目録

ごあいさつ

警察庁へのメール

精神障害者の「事件」を考える

集会「“当事者からの発信”精神障害者の『事件』と医療・福祉を考える」 での発言

声明文

全国「精神病」者集団愛知分会0の会

政府及び与党による「触法精神障害者」に対する特別立法立案に抗議するとともに「触法精神障害者」対策議論の中止を訴える

保岡興治(元法務大臣自民党「触法障害者問題」国会議員プロジェクトチームメンバー)議員からの電話に思うこと

特別立法反対の意思表明を

資料

「司法精神病棟」建設をはじめ精神障害者に対する隔離・収容施策の強化に反対する声明

大阪精神障害者連絡会(ぼちぼちクラブ)


全国「精神病」者集団
ニュース

反保安処分特集号


ごあいさつ

すがすがしい青空の季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか? 冷房すら入院患者の保障できないこの国の精神病院の貧しさは今年の酷暑のなかで深刻な問題でした。夏の疲れが出て体調を崩しておられる方や、毎年恒例の秋のうつ期におびえておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか? ひたすら休息がとれることをお祈りいたします。

「ほっとできるニュースであってほしい」という要請が会員からありましたが、今回は保安処分特集号で、お読みになるのがつらくなるような記事ばかりとなってしまいました。興味のおありのところだけでも拾い読みしていただければ幸いです。次号は多様な内容でできるだけ早く出すつもりでおります。

余裕のある方は会員からの厚生労働省法務省への抗議要請呼びかけに応じていただけたらと存じます。

(略)

★お手紙、各地のニュース、住所変更、ニュース申し込みはすべて

〒923-8691 石川県小松郵便局 私書箱28号 絆社ニュース発行所

E-mail address

Tel: 090-8091-5131(土日以外 午後1時から4時まで)

★会員の運営している私設ホームページ

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北から 南から 東から 西から


警察庁へのメール

愛知 ASKA

情報を見ました。

私も障害者です。

私たち障害者には、色々な欠格条項で縛られているという息苦しさがあります。

その私たちに対して、これ以上に厳しくして、免許を取らせなくしたり、取り上げたりして、私たちの生活を、これまで以上に厳しくするつもりですか。

あなた方にはもっと他に、するべきことがあると思います。

この前テレビで見た、トラックのコンテナの積荷の問題などです。

あの問題では、年間100件以上の事故があるそうです。

そのような問題には手をつけずに、障害者には、締め付けをするなんて、あなた方は、血の通った人間ですか?

私たちにとって免許は、通院したりするなど、とても重要なものなのです。

これ以上障害者いじめはしないでください。


編注……先の国会において道路交通法の「改正」がされ、それにより、以下の者については、政令で定める基準に従い、免許を与えず若しくは保留し、又は免許を取り消し若しくは免許の効力を停止することができるとされました。これ自体おおいに問題であったのですが、私自身は何の闘いもできませんでした。

次のような法文になったところです。

一 次に掲げる病気にかかつている者

イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの

ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの

ハ イ又はロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの

二 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者

三 第六項の規定による命令に違反した者

幻覚の症状を有する精神病には免許を与えないことができるという条文自体が問題であったのですが、今回警察庁がこの「政令」に関する部分の「素案」を作り意見募集をしています。以下のページにありますが、欠格条項がなくなるどころか、いま免許を持っている人間もとりあがられる可能性が高い内容です。運転免許を通した新たな保安処分制度といっていいでしょう。

インターネットと官報(?)だけで広報して、しかも期間1ヶ月では意見を聞いたということにはなりませんので、この期間にこだわる必要はないと思います。すでにこのニュースがお手元につくころには意見募集の締め切りは終わっていますが、各地の討論ご意見を窓口までお寄せくださいませ。

警察庁のホームページ

http://www.npa.go.jp/

抗議先は以下

警察庁交通局運転免許課法令係
〒100-8974 千代田区霞が関2-1-2
ファックス 03-3591-8692

以下内容抜粋を掲載いたします。

1 幻覚の症状を伴う精神病関係

精神分裂病にかかっている者については、以下のようにします。

ア 寛解の状態(残遺症状がないか極めて軽微なものに限ります。)その他の自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがないことが明らかである場合については、処分の対象としません。

イ 6月以内にアの状態になると見込まれる者については、免許の保留や効力の停止を行うこととします。

ウ ア及びイ以外の者については、免許の拒否や取消しを行うこととします。

<備考>

この結果、これまでは、精神分裂病にかかっている者については、一律に免許を受けることができないこととされていましたが、アの者については、免許を受けることができることとなります。

2 病気等に係る免許の拒否や取消しの基準等に関する規定の整備について

(1)免許の拒否や取消し等の基準等について

本年の道路交通法の改正により、障害者に係る免許の欠格事由が廃止され、その一方で、次の病気にかかっている者や身体の障害がある者等について免許の拒否や取消し等の処分ができることとされましたが、その処分の基準等について定めることとします。

(2)臨時適性検査に係る規定の整備について

1 運転免許試験に合格した者に対して臨時適性検査を行う場合の免許の保留等の基準について定めることとします。

2 一定の病気にかかっている者について、公安委員会は、必要に応じ期間を定めて、臨時適性検査を行うことができることとします。

3 臨時適性検査をやむを得ない理由がなく受けない者に対する免許の取消しや効力の停止の基準について定めることとします。

(3)免許申請書等への病状等の記載の義務付けについて(府令事項)

免許申請書や更新申請書に、病状等(例えば、過去に一定の病気にかかったことがあるかどうか、病状が悪化したかどうか)についての記載を求めることについても併せて検討しています。

(臨時適性検査について)

臨時適性検査は、試験に合格しても、通知をうければ、応じなければならない。拒否した場合、免許は交付されないか、停止される。また、病状に変化のあるものについて、一定の期間ごとに臨時適性検査を行う。(精神分裂病、てんかん、躁うつ病、筋ジス、パーキンソン病など)

(病気等の申告義務)

免許交付時、申請時に、病気、既往症、経過など病状について記載を求めることを検討している。


精神障害者の「事件」を考える

集会「“当事者からの発信”精神障害者の『事件』と医療・福祉を考える」 での発言

於 福岡市・市民福祉プラザ

主催 障害者・難病医療費問題福岡県連絡会

四方木屋

今日お配りした資料は、全国「精神病」者集団の長野英子さんの声明です。

私には説明できませんが、こういう声明もあるという事で、参考資料にいたしました。

私は精神障害者といういい方は正しくないと思います。

障害なれば何時障害をうけたか、何故障害なのかはっきりと本人に言って欲しいと思います。

それは、仕事が長続きしなかったり、社会との融合が自然にできなかったり、難しかったりしますが、私自身は障害者と言うより、いつもは現在及び過去に精神医療を使った意味で、“精神医療ユーザー”と言っています。簡単に、ユーザーと言っています。

ここでは、“いわゆる”精神障害者と言う事で、敢えて精神障害者と言います。

私は、私の体験から「事件」と“いわゆる”精神障害者の事について話させていただきます。

私は今では“くるめ出逢いの会”の世話人の一人として活動しています。元気にそれなりに、楽しい生活を送っています。

若い頃にさかのぼりますと、私は18歳の高校3年生の正月に、受験の返事を待ちきれなくて、気がすさんでいました。また今考えると恋愛を一方的にしていた事。そんな事が集中的に起こり、傷ついていました。

決して入院するまでもないのに、ちょっとした間違い(私の戸惑い)により入院致しました。

その時、若いあの頃の当直のインターンの医師によって、電気ショックをかけられて本物の精神障害者になりました。

保護室の、食事を受け取る狭い穴から、「足をばたばたした」と、一週間後に看護婦さんから聞きました。

その間の、一週間の記憶が全くありません。

私はその医師を、その時も今も恨んでいませんが、あの時の治療は果たして正しかったのか時々疑問になります。

今だったら、通院ですむと思います。

それから記憶力と論理的に考える力が衰えました。高校3年間で覚えた事などはほとんど忘れました。

どうでも良い大学には一応行きましたが、続くわけが無く、中退して本当の精神障害者として再入院しました。

合計、5回の入退院を繰り返し最後の退院より、5年になります。

今でもいろんな薬をもらっています。

精神科入院によるPTSDだと信じています。 もう一つ電気ショックによるPTSDだと信じています。

医師のつける病名は精神分裂病ですが、残念ながら私には妄想も幻聴も起きません。幾分の生きにくさと、周囲の環境が今私を必要としている事への感謝とが、混在しています。

ただ、気の短い変わった小父さんです。

暴力を教育する精神病院

私が二度目に入院した病院は、開設まもなく、看護士の暴力は日常化し、また患者同士のささいな原因から始まる喧嘩も毎日のようにありました。

私はその頃体も細く、また若く、いつもまるで暴力団の抗争みたいに、病院自体が全て暴力に支配されていました。

私はその病院内で、暴力を振るった事があります。

やはり、病院内ではナーバスになり、患者同士の揉め事もおこります。かえって、病院内のほうが私にはストレスが加わります。

ちょっとした事で暴力を振るって、保護室に入れられたことがあります。

そうして暴力をふるう事を覚えてしまいました。

3回目の入院は、家庭内暴力でした。

大した原因もなくて、私は母を足蹴にしました。止めた、今は亡くなった父を殴りました。

今でも母には済まないと思います。

死んだ父には今もって後悔しています。

思い出したくない事ですが。

その前にちょっとした事で、自転車屋さんの店員さんともみ合いになって、けがも大した事ないのに、相手は包帯グルグルまいて1週間の診断書をもらってきていて、私は事情調書を取られとことがあります。

私もかすり傷を受けたのですが、まるで私1人が事件を起こした取り扱いでした。

警察官によると、相手は私が謝ると許すとのことですが、私には見覚えのない事で謝る事はないと思い、それは拒否しました。

約1ヶ月経ったころ、警察の呼び出しがありました。

私は遠くから警察署に駆けつけました。

その時の経験から言えば、警察官は事件を捏造できると思います。

私の主張は全く受け入れずに、ただ相手の事ばかりに傾いた事をオウム返しに聞かされて、僕は「どうでも良いや」と思いました。相手側の主張どおりに、警察の作った作文に拇印を押すしか、家に帰る方法が無かったからです。

マスコミ報道の影響

今も時々精神障害者の事件がある度に考えさせられます。

事件があるたび被疑者の「名前」が出ないと、私はいろいろ考えます。

殺人事件の件数ははるかに多いのに何故精神科に通っていたかだけで、マスコミの過大な反響があるのだろうかと。

ずっと以前のM事件(いわゆる連続幼女誘拐殺人事件被告)では、何回もワイドショーを見ていると、まるで私が事件を犯したような錯覚に陥りました。

本当に辛く悲しくなります。

何故こんなに、精神科に通った、入院しただけで容疑者が特別に扱われるのかわかりません。

何度も何度も精神障害者・精神分裂病が原因で、事件を犯したような場面が覚えてしまうように何回も何回も写されます。

精神障害者に対するマスコミの過剰報道、過大報道が、一般市民が精神障害者をまるで別の人類の如く扱っているのに加担しているのに味方している。

別のいい方をすれば、何故精神障害者の事件だけ特別枠で、伝えなければいけないか、いつも事件のある度に思う事です。

それによって、精神障害者に対する世間での風当たりはますます冷たくなり、

今度のように、措置入院の解除に二人の医師が立ち会うようになったり、だんだんと精神障害者がちょっとした事をするだけで、強制的に病院に入れられます。

かえって普通の犯罪者で無期の懲役では平均15年間で刑務所をでられるのに、精神障害者というだけで、ちょっとした犯罪で処置入院されて、何年間もの入院のあげく、病院のたらい回しにあい、最後は自殺という非業の最后をとげた友人もいます。

大分の女子短大生婦女暴行事件の誤審、冤罪により当番弁護士制度ができました。

また、福岡県弁護士会が全国に先駆けて、精神科の当番弁護士制度をつくりました。

本当の精神障害者は、刑事の追及には、検事の取調べには弱いのではと思えてなりません。

普通の精神障害者は、割と簡単に罪を認めるように見えます。

精神障害者の犯罪率が、普通の人より、多いという調査結果は知りません。

かえって、カナダのバンクーバーでは少ないという調査がある事を、佐賀大学の田中英樹助教授の講演会で聞きました。

糖尿病の人が犯罪を犯しても問題にもなりません。

高血圧の人が犯罪を犯しても問題にもなりません。

何故これほど精神障害者の事件が問題になるのでしょうか?

精神障害者の殺人事件が大きく取り扱われる中で、新聞の三面の小さい記事に、一杯、普通の人の殺人事件が山ほどあります。

僕は犯罪までは至っていませんが、取調べを受けた身として、もしあの時に精神科に入院歴があることがばれたら、大変な事になったと思います。

私も措置入院されて、あげくの果てに、最近問題になっている処遇困難者病棟に強制執行されるでしょう。

決して精神障害である故に事件を起こしているわけではなく、ただ事件の犯人が精神障害者である事に過敏に、過大に反応しないようにしてください。

私の少ない事件との関わりより、以上の事が言えます。

どうも、つたない私の話を聞いてくださりありがとうございました。

皆さんにお礼がしたいです。

主催者の方々や、参加している皆さんと 一緒にいる偶然を感謝します。

どうも、ありがとうございました。

2001年9月9日


声明文

全国「精神病」者集団愛知分会0の会

2001年6月16日

6月8日大阪府池田小学校で小学生が多数殺傷された。

その残忍さと痛ましさは、全国民を強い憤りとやり場のない悲しみに陥れた。

「容疑者」といわれる者が精神病院通院中であったことから、一挙にその特殊性へと関心がそそがれ、メディアは連日そのセンセーショナルな報道を繰り返した。

その加熱ぶりは、おおむね「精神障害者」を「犯罪予備軍(犯罪を犯しやすいもの)」と決め付け、「精神障害者」の対策議論を繰り返し、隔離収容の強化が叫ばれた。

私たち「精神障害者」は、あたかも外出禁止令を受けたようにおびえ、政府・精神神経医学界・法曹界の動向に注目し始めた。

これによって6月15日法務・厚労省は重大な犯罪行為をした「精神障害者」を強制入院させる専門治療施設「特定精神病院」(刑務所に限りなく近いもの)の検討をはじめている。

マスコミを筆頭に「重大な犯罪を犯した『精神障害者』のみに限定する特定精神病院」があれば社会的合意が得られるかのような錯覚に陥っている。

この対策は「精神障害者」の「再犯防止の観点」で描かれている。

しかし、池田小学校事件では、「容疑者」といわれる者の苦悩が、精神科治療関係者に受けとめられず、その意味では医療関係者との信頼関係を問題とすべきではないか?

その点を重視し、事件の解析と解明に努力がなされるべきと私たちは考える。

そして私たちは今回の「特定精神病院」を以下批判したい。

第1に、この「特定精神病院」が整備されれば、「違法行為者」の裁判で争う権利が奪われる。まさに「裁きのない拘禁」で、前近代的・人権侵害である。

第2に、「医師」「法曹関係者」「有識者」を加えた判定機関が「特定精神病院」の入退院を判断する新たな方式が想定されると報道された。その人々によって退院が拒否されれば、「刑期のない予防拘禁であり、終身刑」にすらなりかねない。人権侵害である。

第3に、ここでは「心神喪失」者(刑法39条の不起訴処分)が、施設入所対象者になるように描かれているが、そのような重篤なものに、果たして弁明を含めて防御能力が発揮できるであろうか? 防御もできない拘禁は人権無視である。

以上「精神障害者」への隔離収容対策の動向には断固抗議し声明とする。


政府及び与党による「触法精神障害者」に対する特別立法立案に抗議するとともに「触法精神障害者」対策議論の中止を訴える

全国「精神病」者集団会員 長野英子

当事者抜きの議論は誤りの元

まず確認しておきたいことは、今回のいわゆる「触法精神障害者問題」が当事者抜きで議論され続けてきているということである。私自身は障害年金2級を受給中の精神障害者ではあるが、「重大な犯罪を犯した精神障害者」ではない。その意味で私も当事者ではない。いま肝心の当事者を完全に排除した形で論議が進められ、結論さえ出されようとしている事態、この誤りをまず確認してほしい。

そうである以上特別立法に反対するのみならず、いかなる対案提起もなされるべきでないことを私は主張する。当事者抜きの議論は直ちに中止されるべきである。

しかしながら特別立法は私たち精神障害者全体への差別であり攻撃だある側面を持っていることと、沈黙のまま特別立法を認めるわけにいかないという緊急性ゆえ、非原則的ながらやむをえず以下批判点を述べる。

保安処分としての特別立法

この6月の池田小事件以降、事件を起こした精神障害者に何らかの特別な施策、施設を、という保安処分攻撃が具体化されてきている。その中心となっている日本精神病院協会、および与党プロジェクトチームは、刑法でも精神保健福祉法でもなく特別な法律をつくり「触法精神障害者対策」を進めるとしている。内容はいまだ明確にされていないがマスコミ報道によると

①重大な犯罪を犯した精神障害者につき特別の強制入院制度新設さらに地域での強制通院等の強制医療体制を新設する

②新たな強制入院及び退院あるいは地域強制医療体制適用の判断は裁判官を入れた特別の審査機関で行う

③こうした強制入院のために特別の病棟を新設する、

などを骨子としている。

まさに保安処分体制である。

精神障害者に対する保安処分とは、すでに行った行為に対する刑罰でもなく、また本人の利益のための医療でもなく、「犯罪を犯すかもしれない危険性」を要件として予防拘禁し、「危険性の除去、再犯防止」を目的として強制医療を施すことである。

精神障害者以外はいかなる重大な犯罪を犯したとしても、「再犯の恐れ」を要件として予防拘禁されることはない。精神障害者のみが「再犯の恐れ」を要件として予防拘禁されるのは精神障害者差別にほかならない。

現行の精神保健福祉法体制化の措置入院は、「自傷他害のおそれ」を要件としていることで明らかなように、すでに保安処分制度である。現実に違法行為を行い措置入院となった患者の中には退院の望みなど一切持てず、20年30年と長期にわたり監禁され続けている患者が存在する(99年6月末調査では措置入院の30%あまりが20年以上の長期である。措置が解除になって医療保護入院となる場合もあるので、現実の拘禁はさらに長期化しているはずである)。健常者が受ける刑期以上の監禁が公然と行われている。

それにもかかわらずこの措置入院に屋上屋を重ねる形で今特別立法が作られようとしている。

一生出られない特別病棟の新設

いま現在の、建て前上は「本人の医療と保護」を目的とした措置入院の運用ですら、精神障害者に対する差別的予防拘禁として機能している実態を見れば、「再犯予防」を目的とした特別立法が何を生み出すかは明らかである。特別病棟への監禁の目的が「再犯防止」である以上審査機関は「社会にとって安全で再犯の恐れがない」と確認されるまでは拘禁を続けることになる。再犯が起こったときの非難を恐れ、審査機関は釈放には消極的にならざるを得ない。

一切希望をもてず監禁され続ける特別病棟で、医療など成立しようはずがない。絶望しきった人間を拘禁し管理するには徹底した抑圧と厳重な警備、そして秩序維持を目的とした強制医療(いや医療とは呼べない懲罰としての医療)が必要となる。薬漬けや電気ショックの横行が予想される。精神外科手術すら復活しかねない(精神外科手術は決して過去のものではない。少なくとも80年代からは強迫性障害の「治療法」としてロンドン、ストックホルム、ボストンでは精神外科手術が復活している。イギリスでは手続きも公に定められている)。

たとえ特別病棟を退所できたとしても、退所者には強烈な烙印が付きまとう。果たして地域での生活など可能だろうか? さらにいま議論されているように退所後も特別な監視体制下におかれるとしたら、人間らしい生活など一生奪われることになる。おそらく毎日こうした強制的な医療体制と付き合うだけの人生を押し付けられることになるだろう。

この保安処分を決して許してはならない。

「触法精神障害者」という用語は医療の用語ではない

「触法精神障害者」とは何らかの刑法に触れる行為をした精神障害者をさす言葉だ。これは医療の言葉ではない。医療は患者本人の苦痛を取り除き病を癒すものであり、それはその患者が犯罪を犯したか否かによって対応の変わるはずのないものである。「犯罪を犯した糖尿病患者」と「犯罪を犯していない糖尿病患者」で治療内容が異なるなどということはありえない。それはたとえ「精神病」であろうと同じである。

「精神障害者」を「触法精神障害者」と「非触法精神障害者」に分け、それによって処遇や対応を変えよう、という発想は本来医療の側から出てくるはすのないものであり、警察や検察官の「犯罪防止、再犯防止」を目的とした発想である。

精神科医はじめ医療従事者が「触法」という色眼鏡を通し患者を見るとき、すでに彼らは医療従事者の立場を捨て、警察官になるのだ。そこに医療的な関係など成り立つはずがない。

こうした用語自体が私たち精神障害者に対する差別であり、この用語が精神医療業界で使われていること自体に私は抗議する。

今なぜ「触法精神障害者」対策か?

それにもかかわらず一部の精神科医は「触法精神障害者」という言葉を乱発し対策の必要性を主張する。なぜか?

法務省と厚生労働省は昨年「重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇決定及びシステムのあり方などについて」合同検討会発足させた。発足にあたっての主意書にも「精神障害者」の犯罪がとりわけ増加している事実はないことが述べられている。法務省も厚生省もそこでは現在は国が何かしようとしているのではなく精神科医から「触法精神障害者問題」が提起されている、としている。

たしかにこの間の「触法精神障害者問題」の提起は日精協を中心として精神科医から出されてきたことは事実だ。

日本精神病院協会は98年9月25日付で定期代議員会および定期総会声明として「触法精神障害者の処遇のあり方に現状では重大な問題があり、民間精神病院としても対応に限りがあることから、何らかの施策を求めたい。こうした問題に対して全く対応がなされない場合、止む(ママ)なく法第25条(検察官の通報)第25条の2(保護観察所の長の通報)、第26条(矯正施設の長の通報)等患者の受け入れについては、当分の間協力を見合わせることもありうる」と恫喝した。

また99年の精神保健福祉法見直しへの意見書の中では以下の意見が出さた。

*措置入院の解除については指定医2名で行うことにする

(国立精神療養所院長協議会、日本精神神経科診療所協会)

*措置入院の措置解除に際し、6ヶ月間の通院義務を課すことができることとする。

(国立精神・神経センター)

*措置入院を、特別措置(触法精神障害者――犯罪を犯した者、検察官、保護観察所の長等の通報による入院)と一般措置に分ける。特別措置については、国・都道府県立病院及び国が特別に指定した病院に入院することとする。

(日本精神病院協会)

*触法行為のケースの治療、措置解除時の司法の関与を明確化

(精神医学講座担当者会議)

こうした精神医療従事者団体の要請を受け、国会においても、99年の精神保健福祉法見直し議論の中で、衆参両院の委員会は法「改正」の付帯決議として「重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇のあり方については、幅広い観点から検討を行うこと」旨の決議をした。

周知のごとくこの国の精神医療がさまざまな問題を抱え、いつでも誰でも、どこでも安心して受けられる精神医療にはほど遠い実態がある。それにもかかわらず、医療従事者の側は、「触法精神障害者対策」にターゲットを絞った対策を論じなければならない根拠を、どこにも明らかにしていない。

彼らの本音は精神病院経営上扱いやすい儲かりやすい患者以外は受け入れたくない、入院中や退院後何らかの事件がおきて非難されたり、賠償金を請求されるのは避けたい、ということである。そのためには「厄介な患者」をどこかほかのところに追いやりたい、入退院について医療だけで判断して責任を追及されることを避け、責任をほかのところにおわせたいということになり、措置入院の入退院判断の審査機関創設やら、「触法精神障害者」向けの特別施設新設の提言となる。

一方で現実に多くの「触法精神障害者」を引き受けている、という公立病院としても、それを根拠に予算請求して行くために何らかの制度として特別病棟の新設を要求して行くことになる。

貧しい医療費、人手不足という物理的問題を抱えてゆがんだこの国の精神医療全体を底上げすることなく、その場しのぎで特別な病棟を作れば、精神医療全体の貧しさはむしろ固定化されていくのではないか? いや87年精神保健法成立以来の精神保健予算の減額につぐ減額の状況を見れば、この貧しさは固定化されることは確実である。

国家の犯罪こそまず問われなければならない

毎年精神病院での患者虐待が告発されている。虐待を受けた本人、そして虐殺を目撃した患者の心の傷は癒しがたい。日常的に「精神科救急」の名のもとに私たちは誘拐され監禁され、身体拘束、薬漬けや電気ショックで傷つけられている。まず精神医療によって癒されるどころか、まず傷つけられている精神障害者があまた存在する。犯罪被害者のPTSD同様こうした精神医療の被害者のPTSDは深刻ではあるが問題にさえされていない。いやこうした精神医療の被害者もまた犯罪被害者である。

退院して暮らす場所がないゆえに長期入院のままで10年20年と精神病院にとどめられている患者が10万ともそれ以上とも言われている。その中には同意など一切なく精神外科手術をされた方たちもいる。手術によって新たな障害を押し付けられた方たちである。

戦争によるPTSDを発病した方たちは戦後もそのまま閉鎖病棟に入れられたままでなくなっている。戦争中戦争直後にかけてたくさんの精神病院入院患者が餓死した。

これらは歴史的構造的に精神医療体制を作り出した国家の責任である。国家としての犯罪といわなければならない。

いま現在も進行しているこうした精神障害者の人権侵害と虐待を許したままで、新たに「触法精神障害社」なる用語をもって、人を人間を予防拘禁する制度を作ることなど一切認めることはできない。精神障害者もいわゆる「重大な犯罪を犯した精神障害者」も人であり人間である。

政府は精神病者監護法(1900年)以来百年間の国家の犯罪を償うことからすべてをはじめなければならない。「医療中断防止」「早期発見早期治療」対策を言い立てる前に精神科医そして精神医療従事者は日常的な医療行為の点検と当事者からの批判に答える作業を開始すべきである。

たとえば長期入院患者の高齢化を考えただけでも、「触法精神障害者対策」など今論じている暇など本来ない。それとも国家的犯罪の被害者である、長期入院患者が死に絶えるのをこの国は待っているのか?

本来国がなすべきことをサボタージュし、目くらましとして「触法精神障害者」とレッテルを貼られた方たちをいけにえにすることを許してはならない。

2001年8月20日


保岡興治(元法務大臣自民党「触法障害者問題」国会議員プロジェクトチームメンバー)議員からの電話に思うこと

全国「精神病」者集団会員 長野英子

特別立法に反対する声明を出しましたが、与党および自民党のプロジェクトチームの議員に送ったところ、その一員である保岡氏より8月20日に電話がありました。

完璧にメモをとってはいませんしテープで録音したわけではないので、私の思い違いもあるかもしれません。それを前提での報告ですが、この間の「触法精神障害者対策」の本質がとてもよく出ている話だと思いますので報告させていただきます。

声明を読んだが問題であると思ったの説明したい、とのことで20分あまりも説明なさいましたが、彼が法相在任時代からこの問題で法務省厚生労働省が対立しているのを何とか連携させたいと、精神科医、弁護士、家族会、精神障害者当事者、犯罪被害者等の話を聞き勉強した。その上で法務省と厚生労働省のこの問題に関する合同検討会を発足させ主意書も自分が書いたとのこと。

彼が強調していたのは、

「精神医療全体の改善底上げとこの問題は車の両輪」

ここがまさに問題点だと私は考えます。昨年合同検討会の主意書を読んで私は震え上がりました。私の立場であれを読むと精神医療、保健、福祉、総体を「犯罪防止」に向け動員して行こうとしているとしか読めないのです。

彼が車の両輪といいますが、そのたとえを使えば両輪を貫く車軸は「社会防衛と治安」でしょう。「犯罪防止」のために人を予防拘禁することをいったん認めてしまえば、その精神障害者差別、そうした差別に基づく精神障害者観は精神医療および保健福祉総体を根底から規定してしまいます。

「精神医療の改善」やら「医療福祉、本人支援の充実」は無条件に「よいこと」とみなされがちですが、強制医療体制下においては、必ずしも「本人の利益」になるものではありません。ましてや「犯罪防止」のための予防拘禁制度と両輪の「精神医療の底上げ」は私たちにとって「管理監視の強化」「人権制限の強化」につながります。

私自身は強制入院制度撤廃を主張していますが、少なくとも強制入院制度下においては「精神医療福祉、本人支援の充実」は常に「人権擁護システム強化」と車の両輪でなければなりません。

保岡氏のいう「精神医療の底上げ」と「特別立法」を両輪とする体制は、恐るべき体制といわなければなりません。その車はどこに行くのでしょうか?

保岡氏はさらに「当面対象者は違法行為を行い不起訴や無罪となった人たち」であるが「やがてこの制度施設が国民の信頼を受けるようになったら、受刑出獄後の精神障害者、緊迫した犯罪の恐れがある処遇困難者、家庭内で暴力をふるう人、なども対象にしていくことも考えている」といいました。

さらに「初犯の防止も考えて行かなければならない」とも。

何度も強調しますが、私は特別立法は人を「予防拘禁」するシステムであり差別だから反対なのであって、この対象者が拡大適用されるから反対なのでも、犯罪防止に無効だから反対なのでもありません。

しかしこの特別立法が動き出そうとも、犯罪は起こり続けますし、その中に健常者も胃潰瘍の患者も精神病の患者もいておかしくありません。

特別立法が仮に施行された後、一度でもまた精神障害者による違法行為が起きたら、ただちに特別立法の対象者の拡大、強化が図られることになるのは明白です。そして「初犯の防止に無効」では意味ないということで、彼のいうもう一方の車輪である「精神医療の改善」「医療保健、福祉の充実」はより治安的社会防衛的に変化して行くことも明らかでしょう。

とりわけ今回の特別立法で導入されようとしている地域での強制医療システムは地域での精神医療保健、福祉の治安的再編に拍車をかける形に必ずなります。

精神病者監護法以来百年の誤りをいま再び繰り返さないために、特別立法新設阻止に向け全力をあげて闘いましょう。


特別立法反対の意思表明を

長野英子

現在与党は「触法精神障害者対策」のプロジェクトチームを作り、特別立法提案に向け作業中です。自民党のプロジェクトチーム9月中に案をまとめて10月2日には決定し3党プロジェクトへの段取りのようだと伝え聞きます(9月14日現在)。

臨時国会には間に合いませんが、11~12月には法案の形となり、1月の国会で上程かということです。

厚生労働省・法務省に特別立法反対の意思を、手紙、ファックス、メールで集中していただきたいと存じます。

抗議要請先

厚生労働省精神保健福祉課

〒100-8916 千代田区霞ヶ関1-2-1
メールアドレス www-admin@mhlw.go.jp
ファックス 03-3593-2008(直通)

法務省刑事局

〒100-8077千代田区霞ヶ関1-1-1
メールアドレス webmaster@moj.go.jp
ファックス 03-3592-7393(代表)

文章例

私は「触法精神障害者」とされた人たちへの特別立法、特別施設新設に反対します。特別立法は私たち精神障害者に対する差別的予防拘禁制度でありいかなる形でも認めるわけにはいきません。

なお、特別立法をめぐる動きは急速であり、2ヶ月1回のニュースでは情報提供が間に合いません。(略)


資料

精神科医療懇話会2001年6月27日付け声明の添付資料を借用。

【2-1 起訴前簡易鑑定】関連資料

1)刑法犯検挙人員に占める精神障害者の実数

(平成10年、業務上過失死傷および重過失致死傷を除く刑法犯検挙人員、犯罪白書より)

総 数

精神障害者

精神障害の疑いのある者

32万4,263

634(0.2%)

1,378(0.4%)

この数字を多いと見るか少ないと見るかは議論があろう。但し政府が出す各種資料においては、この「精神障害の疑いのある者」が含まれて見かけ上数が多くされている場合がある。実際に心神喪失や心神耗弱となる者の数は次表のとおりである。

2)心神喪失・心神耗弱者数と不起訴、裁判との関係(犯罪白書より)

年次

総数

不起訴

裁判

心神喪失

心神耗弱

心神喪失

心神耗弱

(起訴猶予)

(無罪)

(刑の減軽)

6

775

387

317

5

66

7

842

403

331

4

86

8

849

399

350

3

97

9

735

371

277

3

84

10

622

354

213

2

53

11

599

350

192

0

57

心神喪失や心神耗弱の多くが裁判ではなく起訴される前の段階で処理されていることがわかる。

3)精神障害名別処分結果(平成6年~10年の累計、犯罪白書より)

不 起 訴

裁 判

総数

心神喪失

心神耗弱

心神喪失

心神耗弱

総数

3805

3402

1914

1488

403

17

386

精神分裂病

そううつ病

てんかん

アルコール中毒

覚せい剤中毒

知的障害

精神病質

2264

259

61

309

194

150

48

2157

216

51

250

166

88

36

1323

120

30

126

71

30

8

834

96

21

124

95

58

28

107

43

10

59

28

62

12

9

2

1

1

1

1

98

41

9

58

27

61

12

その他の精神障害

520

438

206

232

82

2

80

覚せい剤中毒や精神病質など、通常の精神科医療の対象となりにくいものも不起訴となっている例が多いことがわかる。

4)1998年度の措置申請等と診察・入院

(厚生省統計より。数字は件数、括弧内は申請等の件数に対する割合)

申請等

非診察

措置入院

一般

414

118(.29)

231(.56)

警察官

4707

1500(.32)

2403(.51)

506(.52)

1(.09)

検察官

977

284(.29)

保護観察所

11

8(.73)

矯正施設

311

215(.69)

52(.17)

精神病院長

52

1(.02)

47(.90)

合 計

6472

2126(.33)

3240(.50)

不起訴となって検察官通報により司法から精神科医療に渡された数は977人で、資料3)に示される同年度の心身喪失・心身耗弱総数の622人を大きく上回る。この中には医療の対象ではなく起訴されるべき人が相当数含まれている。刑務所出所者等に対する矯正施設長等からの通報件数は311人であるが、本来の数より少なく、この群は受刑中の医療保障が論じられなければならない(2-2参照)。

【2-2 刑事施設における精神科医療の貧困ないしは不在】関連資料

1)新しく収容された精神障害者数(犯罪白書より)

行刑施設/うち精神障害者
少年院/うち精神障害者
精神障害者計

1996年

1997年

1998年

22433/1146

  • 4208/169

  • 1315

    22667/1007

    23101/840

  • 4989/179

    5388/209

  • 1186

    1049

    2)受刑者総数に占める精神障害者の実数(犯罪白書より)

    平成10年12月31日現在受刑者総数

    43245人

    うちM級(精神障害者)

    444人(1.0%)

    1)、2)より、かなりの数の精神障害者が刑務所等に収容されていることがわかる。

    【2-3 精神障害者の再犯の問題】関連資料

    1)平成5年出所者の再入率(平成5年から各年末までの累積の比率、犯罪白書より)

    出所事由

  • 出所人員

  • 平成5年

    6年

    7年

    8年

    9年

    10年

    総 数

    満期釈放

    仮釈放

  • 22036

    9504

    12532

  • 6.4

    11.6

    2.5

    23.6

    34.5

    15.4

    34.8

    46.7

    25.8

    41.1

    53.3

    31.9

    45.4

    57.8

    36.0

  • 48.2

    60.8

    38.7

  • 2)5年再入率の年次推移(犯罪白書より)

    出所年から5年間における再入率

    出所事由

    平成元年
    2年
    3年

    4年

    5年

    総数

    満期釈放

    仮釈放

  • 41.2

    53.1

    31.9

  • 42.0

    54.1

    32.6

    42.6

    54.7

    33.7

    44.1

    55.4

    35.3

    45.4

    57.8

    36.0

    1)、2)は精神障害者以外も含む全出所者のデータであるが、30~60%という高い再入所率が続いており、むしろ増加傾向であることがわかる。

    3)精神障害者の再犯率

    昭和55年の精神障害犯罪者946例のうち、

    昭和60年12月末までに再犯のみられた例 68例、7.1%

    1981年(昭和56年)~1991年(平成3年) 207例が合計487件の再犯、再犯率21.9%

    事件後に精神病院に入院294例、うち166例が5年以内に退院、うち21例が再犯

    (山上皓ら:触法精神障害者946例の11年間追跡調査(第1報)-再犯事件487例の概要-。

    犯罪学雑誌、61-5,201,1995。山上皓:司法精神医学の領域におけるいくつかの課題。日精協誌、14-9,947,1995)

    4)殺人、放火における精神障害者と一般犯罪者の再犯率の比較

    1980年から1991年までの再犯数の比較

    総人員

    再犯

    再犯率

    殺人

    精神障害者

    一般犯罪者

    205

    180

    14

    51

    6.8%

    28.0%

    放火

    精神障害者

    一般犯罪者

    139

    185

    13

    64

    9.4%

    34.6%

    (山上皓ら:触法精神障害者946例の11年間追跡調査(第1報)-再犯事件487例の概要-。犯罪学雑誌、61-5,201,1995)

    3)、4)をみると精神障害者の再犯率はむしろ高くない。調査にも限界があるので、単純に結論を出すことはできないが、少なくとも精神障害者の再犯率が高いという根拠はない。


    「司法精神病棟」建設をはじめ精神障害者に対する隔離・収容施策の強化に反対する声明

    大阪精神障害者連絡会(ぼちぼちクラブ)

    2001年7月1日

    池田小学校事件の痛ましい結果について心よりお悔やみ申し上げるしかありません。

    事件直後から報道の洪水の中、精神障害者全員が無関係にも関わらず、日々脅かされ、まるで精神障害者であることが悪い事であるかの様な裁かれる心境に追いやられました。

    6月26日には「法務厚生労働両省は重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇において、各都道府県に司法精神医療審判所、特定精神病院を新設する方針を協議している」との報道がなれさました。

    約300万人の精神障害者の人権に関わる問題であるにも関わらず、慎重な議論を抜きにして、政府は急激な展開を強行しようとしている事に大きな危倶の念を抱いています。

    以下、今、議論となっている点についての見解を述べます。

    (1)新法制定はまさに「保安処分」そのものです。「保安処分」とは精神障害者に対する予断と偏見に基づく予防拘禁の制度であり、許す事はできません。現行の医療と司法の責任を厳密に区別して対応することで問題の多くは解決可能です。

    (2)起訴前鑑定は、約9割が不起訴処分となっています。検察は無罪判決で成績が下がる事を避けるためにこれを利用する事が多いのが事実です。ここを是正し責任能力のある人は処罰を受ける運用とすべきです。重大な犯罪を行った時の精神状態の診断については起訴前鑑定ではなく本鑑定で行われるべき課題です。

    (3)他の疾患同様に治療優先で「公判の一時執行停止手続き」を取り入れ、状態が裁判の維持に耐えられる時に再手続きを行い、本人の事実認否や同様に関する意見表明が行われるよう配慮すべきです。

    (4)措置入院の入院退院時のチェック機構に「精神医療審査会」をとの意見があります。

    しかし、入院患者の人権を擁護する立場から、医療機関に対して第三者的にチェックを行う機関と、治安管理を視野に入れた退院のチェックとは、同じ名前でも仕事が異なります。似て非なる仕組みを合体させることは結局のところ、「精神医療審査会」を「治安管理の道具」にすることに他なりません。より冷静な議論が必要です。

    (5)重大な事件を精神病の初発時起こす場合が多く見られます。また精神障害者が適切な治療を受ける環境がなく事件いたる事があります。そうした事実は地域で精神医療が安心してかかれる体制になっていない事に原因があります。現行の精神医療の底上げをはかり、人員のゆとりのあるチーム医療の提供こそ急務です。

    日本の精神医療は隔離収容主義の下、安上がりで劣悪な医療体制の中、患者を長期間病院に押し込めてきました。さらに医師数は他科の1/3、看護数は2/3、でよいとする差別がまだ残っています。そうした本来解決すべき重大な人権侵害を改めようとせず、「触法精神障害者」問題のみ取り扱う姿勢は根本的に間違っています。大切な事は本人が苦悩の段階で安定した関係を築けなかった地域における教育・生活支援と医療体制のあり方の変革ではないでしょうか。私たち精神障書者が主張し実践してきた「ひとりぼっちをなくそう」こそ社会全体に問われているテ一マであり課題です。


    (略)


    政府及び与党による「触法精神障害者」に対する特別立法立案に抗議するとともに「触法精神障害者」対策議論の中止を訴える

    = 政府及び与党による「触法精神障害者」に対する特別立法立案に抗議するとともに「触法精神障害者」
    対策議論の中止を訴える=

    2001年8月20日

    全国「精神病」者集団会員 長野英子

    ☆当事者抜きの議論は誤り

     まず確認しておきたいことは、今回のいわゆる「触法精神障害者問題」が当事者抜きで議論され続けてきているということである。
    私自身は障害年金2級を受給中の精神障害者ではあるが、「重大な犯罪を犯した精神障害者」ではない。その意味で私も当事者ではない。
    いま肝心の当事者を排除した形で論議が進められ、結論さえ出されようとしている、この誤りをまず確認してほしい。

     そうである以上特別立法に反対するのみならず、いかなる対案提起もなされるべきでないことを私は主張する。
    当事者抜きの議論は直ちに中止されるべきである。

     しかしながら特別立法は私たち精神障害者全体への差別であり攻撃であるという側面があることと、
    沈黙のまま特別立法を認めるわけにいかないという緊急性ゆえ、非原則的ながらやむをえず以下批判点を述べる。

    ☆保安処分としての特別立法

     この6月の池田小事件以降、事件を起こした精神障害者に何らかの特別な施策、施設を、という保安処分攻撃が具体化されてきている。
    その中心となっている日本精神病院協会、および与党プロジェクトチームは、刑法でも精神保健福祉法でもなく特別な法律をつくり
    「触法精神障害者対策」を進めるとしている。内容はいまだ明確にされていないがマスコミ報道によると

    ①重大な犯罪を犯した精神障害者につき特別の強制入院制度新設さらに地域での強制通院等の強制医療体制を新設する

    ②新たな強制入院制度において入退院あるいは地域強制医療体制適用の判断は裁判官を入れた特別の審査機関で行う

    ③こうした強制入院のために特別の病棟を新設する、

    などを骨子としている。

     まさに保安処分体制である。

     精神障害者に対する保安処分とは、すでに行った行為に対する刑罰でもなく、また本人の利益のための医療でもなく、
    「犯罪を犯すかもしれない危険性」を要件として予防拘禁し、「危険性の除去、再犯防止」を目的として強制医療を施すことである。

     精神障害者以外はいかなる重大な犯罪を犯したとしても、「再犯の恐れ」を要件として予防拘禁されることはない。精神障害者のみが
    「再犯の恐れ」を要件として予防拘禁されるのは精神障害者差別にほかならない。

     現行の精神保健福祉法体制化の措置入院は、「自傷他害のおそれ」を要件としていることで明らかなように、すでに保安処分制度である。
    現実に措置入院となった患者の中には退院の望みなど一切持てず、20年30年と長期にわたり監禁され続けている患者が存在する
    (99年6月末調査では措置入院の30%あまりが20年以上の長期である。措置が解除になって医療保護入院となる場合もあるので、
    現実の拘禁はさらに長期化しているはずである)。健常者が受ける刑期以上の監禁が公然と行われている。

     それにもかかわらずこの措置入院に屋上屋を重ねる形で今特別立法が作られようとしている。

    ☆一生出られない特別病棟の新設

     いま現在の、建て前上は「本人の医療と保護」を目的とした措置入院の運用ですら、
    精神障害者に対する差別的予防拘禁として機能している実態を見れば、「再犯予防」を目的とした特別立法が何を生み出すかは明らかである。
    特別病棟への監禁の目的が「再犯防止」である以上審査機関は「社会にとって安全で再犯の恐れがない」
    と確認されるまでは拘禁を続けることになる。再犯が起こったときの非難を恐れ、審査機関は釈放には消極的にならざるを得ない。

     一切希望をもてず監禁され続ける特別病棟で、医療など成立しようはずがない。
    絶望しきった人間を拘禁し管理するには徹底した抑圧と厳重な警備、そして秩序維持を目的とした強制医療
    (いや医療とは呼べない懲罰としての医療)が必要となる。薬漬けや電気ショックの横行が予想される。精神外科手術すら復活しかねない
    (精神外科手術は決して過去のものではない。少なくとも強迫性障害の「治療法」としてロンドン、ストックホルム、
    ボストンでは精神外科手術が復活している。イギリスでは手続きも公に定められている)。

     たとえ特別病棟を退所できたとしても、退所者には強烈な烙印が付きまとう。
    果たして地域での生活など可能だろうか? さらにいま議論されているように退所後も特別な監視体制下におかれるとしたら、
    人間らしい生活など一生奪われることになる。おそらく毎日こうした強制的な医療体制と付き合うだけの人生を押し付けられることになるだろう。

     この保安処分を決して許してはならない。

    ☆「触法精神障害者」という用語は医療の用語ではない

    「触法精神障害者」とは何らかの刑法に触れる行為をした精神障害者をさす言葉だ。これは医療の言葉ではない。
    医療は患者本人の苦痛を取り除き病を癒すものであり、それはその患者が犯罪を犯したか否かによって対応の変わるはずのないものである。
    「犯罪を犯した糖尿病患者」と「犯罪を犯していない糖尿病患者」で治療内容が異なるなどということはありえない。それはたとえ「精神病」
    であろうと同じである。

    「精神障害者」を「触法精神障害者」と「非触法精神障害者」に分け、それによって処遇や対応を変えよう、
    という発想は本来医療の側から出てくるはすのないものであり、警察や検察官の「犯罪防止、再犯防止」を目的とした発想である。

    精神科医はじめ医療従事者が「触法」という色眼鏡を通し患者を見るとき、すでに彼らは医療従事者の立場を捨て、警察官になるのだ。
    いったん「触法精神障害者」などという用語を使い、「犯罪防止」の発想を身につけた医師、医療従事者は、いま現在「触法精神障害者」
    とレッテルを貼られている患者だけではなく、私たち患者全員を「何をするか分からない危険な存在、
    犯罪防止のために管理監視しなければならない存在」という目で見ることが習慣となる。
    私たちはそうした人たちを医者とか医療従事者とか認めることはできない。そこに医療的な関係など成り立つはずがない。

    こうした用語自体が私たち精神障害者全員に対する差別であり、この用語が精神医療業界で使われていること自体に私は抗議する。

    ☆今なぜ「触法精神障害者」対策か?

    それにもかかわらず一部の精神科医は「触法精神障害者」という言葉を乱発し対策の必要性を主張する。なぜか?

    法務省と厚生労働省は昨年「重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇決定及びシステムのあり方などについて」合同検討会発足させた。
    発足にあたっての主意書にも「精神障害者」の犯罪がとりわけ増加している事実はないことが述べられている。
    法務省も厚生省もそこでは現在は国が何かしようとしているのではなく精神科医から「触法精神障害者問題」が提起されている、としている。

    たしかにこの間の「触法精神障害者問題」の提起は日精協を中心として精神科医から出されてきたことは事実だ。

    日本精神病院協会は98年9月25日付で定期代議員会および定期総会声明として
    「触法精神障害者の処遇のあり方に現状では重大な問題があり、民間精神病院としても対応に限りがあることから、何らかの施策を求めたい。
    こうした問題に対して全く対応がなされない場合、止む(ママ)なく法第25条(検察官の通報)第25条の2(保護観察所の長の通報)、
    第26条(矯正施設の長の通報)等患者の受け入れについては、当分の間協力を見合わせることもありうる」 と恫喝した。

     また99年の精神保健福祉法見直しへの意見書の中では以下の意見が出さた。 

    *措置入院の解除については指定医2名で行うことにする

     (国立精神療養所院長協議会、日本精神神経科診療所協会)

    *措置入院の措置解除に際し、6ヶ月間の通院義務を課すことができることとする。

     (国立精神・神経センター)

    *措置入院を、特別措置(触法精神障害者――犯罪を犯した者、検察官、保護観察所の長等の通報による入院)と一般措置に分ける。
    特別措置については、国・都道府県立病院及び国が特別に指定した病院に入院することとする。

     (日本精神病院協会)

    *触法行為のケースの治療、措置解除時の司法の関与を明確化

     (精神医学講座担当者会議)

    こうした精神医療従事者団体の要請を受け、国会においても、99年の精神保健福祉法見直し議論の中で、衆参両院の委員会は法「改正」
    の付帯決議として「重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇のあり方については、幅広い観点から検討を行うこと」旨の決議をした。

    周知のごとくこの国の精神医療がさまざまな問題を抱え、いつでも誰でも、どこでも安心して受けられる精神医療にはほど遠い実態がある。
    それにもかかわらず、医療従事者の側から「触法精神障害者対策」
    にターゲットを絞った対策を論じなければならない根拠はどこも明らかにしていない。

    彼らの本音は精神病院経営上扱いやすい儲かりやすい患者以外は受け入れたくない、入院中や退院後何らかの事件がおきて非難されたり、
    賠償金を請求されるのは避けたい、ということである。そのためには「厄介な患者」をどこかほかのところに追いやりたい、
    入退院について医療だけで判断して責任を追及されることを避け、責任をほかのところにおわせたいということになり、
    措置入院の入退院判断の審査機関創設やら、「触法精神障害者」向けの特別施設新設の提言となる。

    一方で現実に多くの「触法精神障害者」を引き受けている、という公立病院としても、
    それを根拠に予算請求して行くために何らかの制度として特別病棟の新設を要求して行くことになる。

    貧しい医療費、人手不足という物理的問題を抱えてゆがんだこの国の精神医療全体を底上げすることなく、
    その場しのぎで特別な病棟を作れば、精神医療全体の貧しさはむしろ固定化されていくのではないか?
     いや87年精神保健法成立以来の精神保健予算の減額につぐ減額の状況を見れば、この貧しさは固定化されることは確実である。

    ☆国家の犯罪こそまず問われなければならない。

    毎年精神病院での患者虐待が告発されている。虐待を受けた本人、そして虐殺を目撃した患者の心の傷は癒しがたい。日常的に
    「精神科救急」の名のもとに私たちは誘拐され監禁され、身体拘束、薬漬けや電気ショックで傷つけられている。
    精神医療によって癒されるどころか、まず傷つけられている精神障害者があまた存在する。
    犯罪被害者のPTSD同様こうした精神医療の被害者のPTSDは深刻ではあるが問題にさえされていない。
    こうした精神医療の被害者もまた犯罪被害者である。

    退院して暮らす場所がないゆえに長期入院のままで10年20年と精神病院にとどめられている患者が10万ともそれ以上とも言われている。
    その中には同意など一切なく精神外科手術をされた方たちもいる。手術によって新たな障害を押し付けられた方たちである。

    戦争によるPTSDを発病した方たちは戦後もそのまま閉鎖病棟に入れられたままでなくなっている。
    戦争中戦争直後にかけてたくさんの精神病院入院患者が餓死した。

    これらは歴史的構造的に精神医療体制を作り出した国家の責任である。国家としての犯罪といわなければならない。

    いま現在も進行しているこうした精神障害者の人権侵害と虐待を許したままで、新たに「触法精神障害者」なる用語をもって、
    人を予防拘禁する制度を作ることなど一切認めることはできない。精神障害者もいわゆる「重大な犯罪を犯した精神障害者」も人間である。

    政府は精神病者監護法(1900年)以来百年間の国家の犯罪を償うことからすべてをはじめなければならない。「医療中断防止」
    「早期発見早期治療」
    対策を言い立てる前に精神科医そして精神医療従事者は日常的な医療行為の点検と当事者からの批判に答える作業を開始すべきである。

    たとえば長期入院患者の高齢化を考えただけでも、「触法精神障害者対策」など今論じている暇など本来ない。
    それとも国家的犯罪の被害者である、長期入院患者が死に絶えるのをこの国は待っているのか?

     本来国がなすべきことをサボタージュし、目くらましとして「触法精神障害者」
    とレッテルを貼られた方たちをいけにえにすることを許してはならない。

     

    全国「精神病」者集団ニュース 2001年8月号

    2001年8月発行の「ニュース」抜粋です。 一般定期購読は有料(年6回程発行1年分5000円)です。(病者である会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

    目録

    ごあいさつ

    長野県当局とのやりとり

    お礼と報告(0の会より)

    精神病者差別発言・差別表現の抗議運動を盛り上げよう!

    窓口入手資料

    夏期カンパ御礼

    資料と本パンフの販売

    編集後記


    全国「精神病」者集団
    ニュース


    ごあいさつ

    酷暑が続きます。皆さまいかがお過ごしでしょうか? 冷房のない精神病院の病室で、あるいはアパートの一室で眠れぬ熱帯夜に耐えておられる仲間も多いことと存じます。脱水症や熱中症、症状の再燃などを何とか避けられますよう、秋風がたつ日を待ち望みながらお祈りいたします。

    池田小の事件以来、さまざまな保安処分攻撃がなされております。政府与党の動きだけでなく、各地でのイヤガラセなどの報告があります。しかしながら各新聞紙上での記事も「危険な者を閉じこめろ」というばかりではなく、精神医療の現状を暴露し根本的な改革を求める記事も見られます。いわば「論外」の精神医療と刑事司法制度の運用実態、獄中処遇をどう変えていくのか、原則的な議論を求めていかなければなりません。

    また8月15日がやってきました。小泉首相の靖国神社参拝、「守る会」の教科書採択の動きに象徴されるように、戦争の歴史を直視するのではなく歪曲していこうとする強力な流れが作られようとしています。

    ナチスによる障害者「精神病」者の大量虐殺を知っている方は多いのですが、戦争中そして戦後この国の精神病院で大量の餓死者が出たことは以外と知られていません。松沢病院に対しては陸軍から、「誤爆」ということにして入院患者を皆殺しにしてしまうという案まで戦争中に出されました。私たちは動物園の「猛獣」と同じ扱いを受けたのです。

    さらに今でいうPTSDを発病し精神病院に送られた日本人兵士あるいは朝鮮人軍属は、戦後も各地の国立療養所(大半が元軍の病院)の閉鎖病棟に監禁され続け、差別の中で故郷に帰ることすら許されず、すでに多くの方が閉鎖病棟の中でなくなっています。

    こうした戦争の犠牲者の歴史を抹殺しようとする動きを私たちは許してはなりません。戦争が私たち「精神病」者に何をしたのか、8月15日を迎え私たちは歴史を見つめそしてその中で今現在の保安処分攻撃を見つめていかなければなりません。

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    北から 南から 東から 西から


    (略)


    長野県当局とのやりとり

    長野 T

    意 見 書

    私は精神分裂病、精神障害者です。日ごろのつもる思いからこのような意見書をお送りすることにしました。

    この意見書を書くにあたり、様々な団体、個人、仲間たち等に相談しました。文章の書き方としては、理屈をこねるのではなく率直な気持ちを、という意見を取り入れ、このような形としました。内容については具体的過ぎて危険だ、という意見もありました。全く知らない人が読めば、キチガイのたわごと、になってしまう、とも言われました。しかし、このまま出せ、と背中を押す方がいて、このままご提出することにしました。この意見書は書きかけです。

    骨子にある「生活保障」と「社会・企業への啓蒙」については文章を書いてありません。また、書いてある文章も、練られた文章ではありません。書いたあとに勉強して加筆・修正したい部分もあります。しかし、練られた文章で無いからこそ、率直な気持ちが出ているかも知れず、この文章から読み取るべきものを読み取ってくださる方もいるかもしれない、と、そう思っています。

    悲しみ、怒り、情けなさ、やるせなさ、……そういったものが私を動かしています。

    私たちの活動は始まったばかりです。

    この意見書は第1弾。

    御回答を踏まえながら、これからも意見を訴えていきます。

    読み取るべきものを読み取り、世の中を変えていって欲しい、そう願っております。

    なお、文章は書いてありませんが、「生活保障」「社会・企業への啓蒙」についても、どのような展望を持っているのかご回答をお願いしたいと思っております。

    ご検討のほど、どうぞよろしくお願い致します。

    ご回答をお待ちしております。


    骨子

    Ⅰ.就労上の問題

    1.就業上の差別の撤廃

    就業規則等

    待遇

    2.障害者の雇用の促進

    身体・知的・精神、それぞれ雇用パーセントを設ける

    雇用義務を果たさない企業に罰則

    3.メンタルヘルス

    企業へのメンタルヘルスの義務付け

    発病・症状悪化は企業の責任

    Ⅱ.生活保障(いろいろあるが)

    障害者手帳の充実

    障害者年金

    生活保護

    各種施設・サービス

    Ⅲ.医療の向上(いろいろあると思う)

    医者のレベルの向上=医師の資格制度

    病院の中

    Ⅳ.いわゆる移送問題

    病者の話を良く聞き、納得した上での治療下への誘導

    現時点では、行政(保健婦等)にはその力量は無い。県内の医者にもその力量は無い。

    比較的健康な病者を掘り起こし育成するか。病者の家族を育成するか。極めて優秀な医者を探して育成するか。

    Ⅴ.企業・社会への啓蒙

    「精神障害者」の存在を知らせる

    ありのままの理解


    Ⅰ.就業上の差別の撤廃

    私が勤務している企業の就業規則には、「就業禁止」規定として

    「職員が、次に掲げる病気にかかった場合には就業させない」

    という条文があり

    その第1項に

    「精神病」

    と記載されています。

    就業させず、どうなるかといえば、「必要な期間」「休職」させる、

    という内容となっています。

    私は精神分裂病ですので、この条項にひっかかり、また、おそらく完治することは無いでしょうから、条文どおり私に適用されれば、私は退職するまで休職する、ということになるのでしょう。

    しかし、私は十分余裕を持って現在の仕事をしていますし、とはいえ現在の仕事は極めて簡単な仕事なのですが、それ以前配属されていた職場でも、十分高い実績を上げていました。

    まず、就業規則等に定める差別条項は少なくとも撤廃させて欲しい。

    私の勤務する企業の就業規則は絶対おかしいです。精神病なら就業を禁止するというのはおかしいです。精神病だから就業を禁止するというような条項は禁止させてください。

    また、私は現在35歳でヒラ社員、十分実績を上げていたのに精神分裂病であることが分かった途端に極めて簡単な仕事に左遷(就業規則は厳密に適用されなかった)、この差別的待遇には当然不満があります。

    でも、責任も無く、比較的自由に休めて、残業もほとんど無く、休日には釣りに出かけたりしてのんびりしている、そんな生活も悪くない、なんて私自身は思い始めているのですが、それは諦めにも似た気持ちです。しかし、しかしながら、職務能力に関係なく、精神病であることを理由に差別的待遇がなされるのはおかしいと思っています。

    就業規則等の差別条項の禁止と、職務遂行能力に関係ない差別的待遇の禁止を、まず、訴えたいと思います。

    Ⅰ-2.障害者の雇用の促進

    障害者雇用促進法という法律がありますが、この法律では、精神障害者は部分的に適用されているだけです。

    具体的には精神障害者は雇用義務の対象としてはカウントされず、ほとんど、身体障害者と、知的障害者の為の法律となっています。

    しかも、現在、その身体障害者と知的障害者についても、8割の企業が雇用義務を果たしていません。

    障害者雇用促進法は全く機能していないのです。

    そして、実態として、就職の際、私たちが精神障害者です、と言えば、職務遂行能力のあるなしにかかわらず、門前払いということは良くあることです。

    臨時雇い、アルバイトなどなら、採用してくれることもありますが、それも障害者に対する理解がある企業だけです。

    私は、私自身が病気であることを知らないで現在の企業に転職しました。だから転職できたわけです。(前述のような就業規則のある企業に)(農林水産省採用時も知りませんでした。)

    また、比較的高い能力を必要とする(と言う表現が適切かどうかわかりませんが)仕事に就いている人は、発病前に就職したか、病気を隠して就職した人たちばかりです。更に、求職の際、職安に自分は精神障害者であると言って、求職する人はほとんどいません。

    お調べになれば、精神障害者の求職者が異常に少ないことが分かると思います。就業している精神障害者の数字も極めて少ないはずです。私たちは病気であることを隠して生活しているからです。

    ただ、精神障害者といっても人により、職務遂行能力には差があります。もともとの能力差もあるし、症状の差もある。しかし、職務遂行能力を勘案せず、精神障害者、ということだけで、就職できないと言うのは納得できません。

    まず、精神障害者への理解を深めると言う意味で、雇用の促進を図っていただきたい。

    また、精神障害者は、就職できないことによって、極めて貧しい生活を強いられています。生活保障の充実もさることながら、障害者の自立、更に社会への参加と言う意味も踏まえて職務遂行能力に支障のある障害者の雇用促進をぜひ図っていただきたいと思います。

    なお、雇用義務を数値で決める場合は、既に職務に就いている職務能力に支障の無い障害者を掘り起こして雇用義務を果たしています、と言う企業が多く出てくるはずなので、精神障害者の雇用率は高く設定していただきたいと思います。

    身体、知的、精神の3障害の障害者人口はそれぞれ異なるので、それぞれ義務雇用率を設定するのが適切かと思います。

    また、上記に述べたように現状では雇用義務を果たさない企業が8割と言う実態を踏まえて、罰則規定を設けていただきたいと思います。

    雇用促進法の趣旨に反することではないので、条例・事業で出来ると思います。

    Ⅰ-3.メンタルヘルス

    現在、安全衛生委員会等によって取り組んでいる企業もあると聞いていますが、また、全く取り組んでいない企業も多く、制度としては十分でないと思います。

    例えば、うつ病になったとして、長期にわたって休暇を取ったら、首ということもあります。うつ病は仕事が原因で発病することは多く、まさに労災ともいえるのですが、労災扱いにはせず、首にする、というのはあまりにも理不尽だと思います。

    分裂病も、私の体験から、症状が悪化するときは職場環境(仕事の内容ではない)が原因になっています。

    しかし、労災とは認められない。(私が働いている企業はメンタルヘルスには全く取り組んでいません。というか、その逆をやっている面がある。)

    また、リストラとなったとき、ほかの人に対しては希望退職レベルの状態であっても、精神障害者に対してはなにかと言いがかりをつけて首にする、ということもあるようです。

    このような実態は納得できません。

    精神障害といってもいろいろな病気の種類があり、十把一絡げというわけにはいきませんが、発病・症状悪化が企業に起因することは多いのです。

    メンタルヘルスを企業に義務付け、発病・症状の悪化の際は、企業の責任を明確にする、

    このことを訴えたいと思います。

    Ⅲ医療の向上

    私は何人も医者を替えています。しかし、それには理由があります。例をあげると、長野県の医者はこんな医者ばかりです。

    医者A

    担当医が転勤になった、そのあとの担当医。

    自分が勤めている私立病院なら土曜もやっているから仕事に差し支えがなくなるし、私立病院のほうへ来い、というので、そちらに行った時。

    「農水省で……」と過去の話を出したら「農水省ってなんだ?」ととぼけたことを訊くので、「カルテを読んでないのか?」と尋ねたら、「読んでない」と開き直った医者がいた。

    医者B

    悩みを話してもどうも反応が悪いので、医療費に「精神療法」と掲載されているが精神療法とは何をやっているのか?と尋ねると、「ふん、ふん」と言って話を聞くのが精神療法だという。前に話したことを覚えていないじゃないかと問えば、1日20人も30人も「さばいて」いるんだから覚えてられるか、と開き直った医者。更にこの医者は、転院時、薬の量を間違えた。つまり、紹介状も十分読まず、まさにいいかげんに「さばいて」いるだけの医者でした。

    医者C

    企業でいろいろと困った問題が起きていることを話していたら、薬を増やそうか、と言う。どういうことか訊いてみたら、どうやら、すべて妄想のような「症状」としてとらえているらしかった。しかも、社会のことは全く無知であることが分かった

    以上の3人は短期間の間に替えました。

    そして何より、官僚時代の2年目に病気であることが分かっていたにもかかわらず、まともな治療下に誘導できず、現在の社会的な位置まで落としてくれた医者(彼の書いた紹介状は、とんでもない誤解だらけで、薬もとんでもない薬だったようです。)

    これを「キチガイのたわごと」と受け止めるかどうか、わかりませんが、少なくとも私が精神分裂病であることを10年以上前に分かっていた医者がいたのは確かで、その当時から適切な治療がなされていれば、現在もよりましな生活をしていたはずです。

    そう思うと怒りが込み上げてくるのですが。

    更に補足すると、長野県の医者は精神療法が出来ません。精神療法の報酬は取っていますが、できません。さる講演会では、「精神病は薬で治すもので、あとは患者自身が治すのだ」と言い張っていたそうですが、ならば、精神療法の報酬は取るべきではない。

    確かに、分裂病の場合、その仕組みは、脳内の情報伝達物質であるドーパミンが過剰に分泌されると同時に脳の構造的破壊が起こることにより、症状が出るということが通説となっています。だから、薬により、ドーパミンの分泌を抑え、構造的破壊を抑止することは出来るでしょう。

    しかし、脳は心を司る臓器です。過剰なドーパミン、構造的破壊により、心を病むのです。そのために社会生活もつらくなるのです。

    薬を出すだけなら薬剤師で十分。精神科医なら心のケアをして欲しい。

    私の場合、4年前に分裂病であることを自覚してから、自分で精神病に関する文献を読みあさり、ネットの討論に参加するなどしてリハビリをし、そして、メールフレンド等とのやり取りの中で、精神的に立ち直ってきたのですが、その間、医者は何もしませんでした。上述のような医者ばかりで、現在、精神に踏み込む会話は医者とはしていません。

    ただ、信州大学の教授は精神療法的な事をしてくれて、手がかりを与えてくれた。半年だけでしたが、このことにはとても感謝しています。その次の信州大学の担当医(この方も半年)も丁寧に診てくれました。

    しかし、そのあとの医者は上述のような医者ばかりなのです。

    それでは困るのです。

    それから、安穏と生活している医者達は社会について無知ですが、それも困る。

    社会に関する理解は精神療法の前提となるものです。

    私自身の転勤、担当医の転勤等を含め、私は10人くらいの医者をみていますが、長野県の医者は、適切な薬選びは出来ないけどとにかく薬を出すだけと言うレベルで普通、適切な薬を出せれば上等、精神療法が出来るのは教授だけ、というレベルのようです。

    それでは困ります。

    そういったことを踏まえて以下のような提案をしたいと思います。

    ○精神科医の技術の程度もしくは特徴を明確にする認定制度の導入

    現状では医者になればあとは適当に患者を捌いているだけで、患者がどうなろうと医者を辞めることにもならないし、それどころか高い収入をえられる、というのが実態です。

    医者です、だけなのか、自分は薬選びなら出来ます、程度なのか、精神療法(カウンセリング・心理療法)を適切に出来るのか、或いはうつ病が専門とかそううつ病が専門とか人格障害が専門とか分裂病が専門とか、医療技術のレベル・特徴を明確にする認定制度を導入し、その難易度に応じて医療報酬にも格差を設けるようにしたらいかがかと思います。

    それも、一度認定されれば永久ということではなく、数年ごとに医者個々人の実態を把握した上で認定を更新するような、しかも、厳しく降格になることもある制度にしていただきたいと思います。

    制度を改めることでどの程度医療レベルが向上するか分かりませんが、すくなくとも、なにもしないよりましだと思います。

    Ⅳ.いわゆる「移送」問題

    精神を病みながら、精神科に行かない人はかなりいるようです。

    精神病に関する知識の欠如もありましょう。

    また、「病識が無い」(自分が病気であると言う認識が無いという意味だが、正確には、或いは多くは、自覚はあるのだが、病気であることを認めたくないという精神状態といえる。)ことにより、病院にいく事を拒否する場合もあります。

    しかし、家族や周辺の人たちは気づいていることは多いようです。

    私の場合を話しましょう。

    官僚時代、帰省したとき、家族とひと悶着あった次の日、私には何の断りも無く、精神科医師と看護士・看護婦が大勢で私の部屋へ押しかけました。

    その時、ほとんど会話は無かったように覚えています。

    その時、私は決して納得して病院に行ったわけではなかった。

    その時考えたことは、「親が困って医者を呼んだのだろう。多勢に無勢。問答無用の状態だ。このまま職場へ戻れなければ職を失うことになるだろうが、そうはしないはずだ。今日中に戻れるかもしれない。入院させられても数日で出られるはずだ。ならば、病院に行ってお茶を濁しておこう。」と、だいたいそんなことを考えました。

    そして、病院に行っても、医者は親にも正確かつ詳細な病気の説明はしませんでしたし、私にも説明はしませんでした。私は、薬を飲まされて、閉鎖病棟の中でマージャンを打っていただけ。

    しかも、予想通り、数日で退院。

    その時、医者は紹介状を私に持たせたのですが、その内容が出鱈目。

    その紹介状は今も手元にありますが、今読んでも誰が読んでも出鱈目です。

    それを読んで、あ、医者が誤解しているだけで、私は病気ではない、と思ってしまった。職場に戻っても病院には行きませんでした。

    失敗例です。

    (医者のレベルはその程度ということもいえる。)

    成功例もあります。

    4年前のこと。

    私の病勢が悪化していたとき。

    ある係長に呼ばれました。

    会議室に呼ばれたのですが、私と仲の良い同僚2人と私と仲の悪い直属の上司がいました。

    ある係長は、自分がうつ病であること、自分の体験などを話した上で、あなたは病気の疑いがあるから、病院へ行くようにと勧めました。

    詳しくはかけませんがその時は納得しました。

    私が定期的に病院に通うようになったのはそれからです。

    上述のように、薬をもらうだけ、手がかりを与えてくれたのは信州大学の教授だけ、程度の低い医者ばかりですが……。

    これは、私の体験ですが、いわゆる「病識の無い」病者はかなりいるようですので、以下のような提案をしたいと思います。

    前述のとおり、医者の技術の向上を前提として、ですが。

    2001年6月18日送付


    県からの回答

    長野県衛生部長のKともうします。T様、このたびは、県政に関する貴重なご提案をいただきありがとうございました。

    ご提案のありました意見書につきまして、早速、業務を担当しております保健予防課長渡辺庸子に指示し、検討を行いました。

    ご意見をいただきました中で、就業上の差別の撤廃の件につきまして、お答えいたします。

    はじめに、就業規則に精神病を就業禁止としている規定につきましては、いただいた意見書の内容を読ませていただいた範囲では、この規定が法令等に明らかに違反しているとはいえませんので、行政として規定の改正を命ずることは現段階ではできないと考えております。

    なお、労働安全衛生法におきましては、労働者が特定の疾病になった場合は、就業を禁止してその健康を守ることを事業者に義務づけておりますが、措置入院により就業禁止と同等の措置が担保されること等の理由により、平成12年4月に就業を禁止するこのから「精神障害のため、現に自身を傷つけ、又は他人に害をおよぼすおそれのある者」という規定が削除されました。

    Tさんのお勤めの企業の就業規則の改正につきましては、まず労働組合等を通じてお話しされてはいかがでしょうか。

    次に、職務遂行能力に関係ない差別的待遇の禁止についてですが、労使間で特別な約束がない限り、労働者は使用者の配転命令に従わなければならないというのが原則ですが、使用者の配転命令の理由が、「権利の乱用」と認められるような場合には、その命令は違法となります。Tさんの配転の理由が、病気の状態と業務量・業務内容を配慮した結果なのか、職務遂行能力と関係なく精神病であることのみをもっての処遇なのか、上司の方に相談されてはいかがでしょうか。

    次に精神障害を持つ方の雇用の促進についてですが、まず、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に関しては、法自体はすべての障害者をその障害の種類の如何を問わず対象とするものとされていますが、ご指摘のとおり法の規定する雇用義務(雇用率制度)は現在のところ身体障害者および知的障害を持つ方のみを対象とし、精神障害の方はその雇用率算定に含まれておりません。その理由としては、雇用に適するかどうかについての判定が困難なこと、その雇用に伴う問題点を解決するための条件整備等の状況等にかんがみ、現時点においては、事業主への雇用の義務を課すことが適当でないためと説明されております。

    法で定められた雇用率(法定雇用率)をどのくらいの企業が達成しているかという点に関しては、法律により報告義務が発生する従業員56人以上の企業に限ったデータですが、法定雇用率(1.8%)を達成している長野県内の企業の割合は55.1%(長野労働局調べ 平成12年6月1日現在)となっております。

    条例で身体、知的、精神のそれぞれの障害ごとに雇用率を設定し、あわせて事業主に対する罰則規定をとのご提案ですが、法律で定めている以上の率やその率に基づく罰則規定までを自治体の条例レベルで制定することは困難であります。

    従いまして、県と致しましては、長野労働局他関係機関と協力して障害を持つ方が就職しやすい環境づくりをめざし、県民の方の理解が深まるような広報等を推進してまいります。

    続きましてメンタルヘルスの企業への義務づけについてですが、労働安全衛生法において、「事業者は労働者の健康の保持推進を図るために必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるようにつとめなければならない」とされています。

    また、心の健康が大切になってきておりますので、厚生労働省では、平成12年8月に、事業場における労働者の心の健康の保持増進を図るため事業者が行うことが望ましい基本的な措置(メンタルヘルスケア)の具体的な実施方法を示した「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を策定し、事業者団体に対し幅広く同指針の周知を要請する等その普及・定着を図るとともに、普及啓発、教育研修等を推進しています。

    県におきましても、事業所等を対象とした各種セミナー・研修会などでメンタルヘルスの講座をも受けておりますが、今後ともその普及定着に努めてまいりたいと考えております。

    企業の責任につきましては、仕事に起因して疾病等にかかった場合は、労働基準法において、使用者には必要な保障を行うべき責任が課されているところであり、労働災害補償保険法に基づく労災認定の対象になることは、精神障害につきましても同様です。

    なお厚生労働省では平成11年9月に精神障害の労災認定のための指針を策定し迅速かつ適正な対応に努めています。

    次に医療の向上についてですが、

    まず、医師の資格制度を見ますと、医師は、医師法の規定により医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けた者のであって、臨床研修の努力義務はあるものの、どういった科目を診療するかは、個人の選択・努力にまかされています。

    いわゆる精神科医については、精神保健福祉法で、人権上適切な配慮を要する精神科医療に当たる医師について、一定の精神科実務経験を有し法律等に関する研修を終了した医師の内から厚生労働大臣が「精神保健指定医」を指定する制度があります。この精神保健指定医は、指定後も5年ごとの研修を義務づけられております。

    精神科に限らず、どういった診療科においても医師は十分な研鑽を積むべきではありますが、医療技術が高ければその人にとって必ずしも「良い医者」というものでもありません。従って、県が個々の医師のレベルを判定、評価し報酬に反映させることは、上記のような理由と国の権限との関係からできません。不幸にして、いわゆる相性が悪い医者に遭遇したときは、たまたま自分にはあわないだけであると考えてみてはいかがでしょうか。お互いの信頼がなければ、本当の医療は成りたちません。その中で、患者の信頼を得られない医者は自然淘汰され、結果として信頼される医者のみが残るものと思われます。

    これからは、患者自身が自分の基準で医者を選択する時代ではないでしょうか?

    次に、いわゆる移送問題についてですが、

    病識のない人を、強制的にではなく如何に医療に誘導するかは難しい問題です。県では、その手助けとして、保健所及び精神保健福祉センターで、精神保健相談の窓口を開設し、専門家が相談に応じる体制を整えております。

    また、精神障害者を子弟等に持つ家族の団体である長野県精神障害者家族会連合会に、このような相談を含めお願いしています。

    ご提案のありました自ら病気を体験した人及び精神障害者の家族による相談事業については、研修(訓練)を含めて検討してまいりたいと考えております。

    今後一人でも多くの精神障害者が社会復帰し、地域でごく普通に生活できる社会の実現に向け努力してまいります。

    最後に、生活保障と啓蒙についてですが、

    県としましては、障害者の生活を支える住まいや活動の場の確保を始め、保健・医療・福祉等地域での暮らしの基盤となるサービスの質的・量的充実を図っております。

    今後とも、精神障害への正しい知識の普及啓発を図り、偏見と差別の是正に努めてまいりますのでよろしくお願いします。

    また、ご不明な点やご意見などがございましたら、お手数ですが、

    (略)

    まで、それぞれご連絡いただきますようお願い申しあげます。

    長野県では、県民の皆さまとご一緒に、皆さまの目線にたった、開かれた県政を育んでまいります。今後ともよろしくお願い申しあげます。

    平成13年6月25日

    T様

    長野県衛生部長 K


    精神障害に関する「意見書」への6月25日付回答に対する意見・質問

    前回は拙い意見書に対し、丁寧な回答ありがとうございました。

    今回は回答の中で、主に、大きな認識のズレがあった点について意見及び質問をさせていただきたいと思います。精神障害者を取り巻く問題はトータルで考えるべきと考えており、また、文書にて回答をいただきたいとも思っておりますので、今回も、「県民のこえホットライン」へお送りいたします。

    ご回答よろしくお願い致します。

    県民のこえホットライン 御中

    2001年7月9日


    ①T就業上の差別の撤廃について。

    企業というものの説明が不足しておりましたので、まず、簡単に説明します。

    生協では「構造改革」という名の下、リストラを進めつつあります。生協は理念は立派ですが、(どこの企業でも言える事ですが、)「タテマエ」と「ホンネ」というものがあります。

    私の病気については、上層部の人は知っていますが、うやむやにしています。配置転換の理由もうやむやです。労働組合でとりあげたり、直接上司に相談したりすれば、私の立場は悪くなるだけでしょう。表沙汰にすれば、就業規則どおり休職にされるか、それが嫌なら辞めてくれ、と言われかねません。

    ご助言はありがたいのですが、非常識です。

    県ではこのような助言を他の精神病者に対してもしているのでしょうか? 不適切な助言だと思います。

    さらに、就業規則については、雛型があるらしく、他の企業でもこのような差別的規則が定められているようです。1年6ヶ月という期限の定められているところもあります。

    いくらメンタルヘルスに取り組むといっても、それが休職させること、あるいは更に期限か来れば退職させることであれば、メンタルヘルスなど無意味ではないでしょうか?また、差別規定があれば雇用促進も図りようがありません。 メンタルヘルス、雇用促進などと併せて考えると甚だ疑問です。

    差別は精神病以外の病気についてもあるでしょうし、さらに田中康夫知事も述べているように国籍差別もあります。

    条例で就業規則・就業条件等におけるすべての差別規定を禁止することは出来ませんか? 部分的でも結構です。

    また、さらに、県庁、県の機関、関係施設等で、積極的に精神障害者を雇用し、他の企業・都道府県への模範を見せていただくことは出来ないでしょうか?

    また、現在、精神障害者の雇用をとりまく諸制度について、精神障害者は無知です。(私自身も保健所等との付き合いはありますが、知らないことが多いです。)諸制度について、精神障害者への情報提供もぜひ図っていただきたいと思います。これは、行政機関が待っているのではなく、積極的に就業する障害者にアプローチしていただきたいと思います。

    ②医療の向上について

    現地機関の「専門家」はここに記述された15行の内容を精神障害者に助言しているのでしょうか?

    国の権限との関係から長野県では出来ない、ということは私も理解できますが、その他の文言は全く理解できません。

    「上記の理由」の「上記」はどの範囲を指すのか私には読み取れませんが、段落の最初の3行を含むとすれば暴論となりましょう。

    「精神科に限らず……」以下を指すと解釈すればよいのでしょうか。

    「精神保健指定医」に関する記述がありますが、「精神保健指定医」は要するに誰でも取ることが出来るものです。簡単に言えば、強制入院させる権利を持つ医者のことで、病気を治癒させる技術が高い医者と言うわけではありません。精神科医の技術の側面である人間性を表す尺度でもありません。この資格を持つ事は病院の経営上は有利になりますが、最近では、強制入院などの人権侵害的な仕事をすることを嫌い、純然たる心の病の治療をしたい、という意思から、この資格をあえて取らない医師もいます。

    病院経営の為に「精神保健指定医」の資格を取る医者より、「精神保健指定医」の資格を敢えて取らない医者のほうが、より良い医者である「可能性」が高いとは思いませんか?

    「相性」の問題を提起されていますが、いくら相性が良くても技術の低い医者では治るものも治りません。私は発病15年にして優秀な医者(教授)と出会うことが出来ましたが、教授と同等のレベルの医者ばかりの中で「相性」を論ずるなら納得できますが、低レベルの争いの中で「相性」を持ち出しても、何も生み出すものはないでしょう。

    更に「信頼」云々の記述、自分で医者を選択する時代、との記述が続いていますが、全く現実的な認識ではありませんね。

    私の場合は下手な医者の手に掛かって薬漬けにされなかった、地元の医療技術の低い(精神保健指定医です)医者の言うことをきかず、薬をあまり飲まなかった為に現在比較的健康でいられるという解釈も出来ますが、20年前に優秀な医者に出会っていれば、現在、社会で活躍できていたかもしれないのです。それを「自分には合わないだけ」「自分の基準で医者を選択する時代」と切って捨てるのがパブリックサーバントたる県の見解なのでしょうか?

    あまりにも不適当な記述です。

    もう少し補足すると、私たちの情報は限られています。私たちは隠れて生活しています。お互いの交流も少ないです。全く交流の無い人のほうが多いです。作業所、デイケアなどに顔を出すのは最悪期を過ぎ、良くなってきている障害者だけです。また、精神病院や精神科医の噂話など一般の人の間ではすることはありません。また、精神医療に関する情報は全く地域の中で流れていません。さらにいえば、精神分裂病の場合、初期においては「病識」がありません。良くなってきている障害者の中には経済的余裕が全くなくなってしまっている人も多いです。(近くの病院に行くしかない。)

    情報が限られ、精神障害特有の病識の欠如があり、経済的余裕も無い中で、「より重要な医療を必要とするとき」、私たち、そしてこれから発病する人たちが、自分の基準で医者を選択することが出来るのでしょうか?

    県の見解としては不適切であると思います。

    さらに、不幸にしてたまたま自分に合わないだけ、という記述に対し、大阪で流れた新聞記事を別添資料として添付し問題提起しておきます。そのような認識では済まない問題かと思います。

    さて、否定的なことばかり書いてきましたが、建設的な意見に結び付けたいと思います。

    まず、精神病者はもちろん、すべての県民が精神病になりうることを考え、精神病と精神病院、精神医療に関する情報を可能な限り県民に流すこと。

    各種マスコミ・ミニコミ、市町村、各種病院等を通じて、情報を流していただけないでしょうか?

    次に、通院交通費を県で負担すること。

    患者自身が自分の基準で医者を選択するようになるのは、比較的症状が安定してきてからですが、そのときにはたいてい経済的に余裕がなくなっています。経済的余裕が無い中でもわざわざ遠くの病院まで通っている人は多いです。

    医者を選ぶ時代というなら、交通費を負担していただけませんか?

    さらに、田中康夫知事も述べていますが、精神科医の数は圧倒的に少ないです。

    県立の精神病院は駒ケ根病院だけではないでしょうか?(私の認識不足かもしれませんが)

    医者の質の向上が県では出来ないなら、量を増やしていただきたい。郡及び市に一つくらい県立病院を建てることは出来ませんか?

    医療の向上に関して以上の3点いかがでしょうか?

    ③生活保障について

    精神障害者へのアンケートを拝見させていただきました。アンケートの結果を踏まえ、可能な限りの施策の充実を図っていただくようお願い致します。

    さらに、アンケートの結果を公表していただければなおありがたいと思っております。

    啓蒙に関する記述で、「差別」があることを認める記述がありました。

    重く受け止めております。

    以上


    (略)


    お礼と報告(0の会より)

    全国「精神病」者集団ニュース読者のみなさんへ

    今回は0の会よりの火災カンパにご協力いただき事務局員および罹災者一同大変感謝いたしております。

    カンパ金額は別紙のように498,100円となりました。

    このうち、見舞金として497,000円を16名の罹災者へ、残りの1,100円は雑費として使わせていただきました。

    こんなに多くのカンパが寄せられたことに、われわれは、まだ世の中も捨てたもんじゃないこと、病者の心の優しさを感じることができて大変うれしく感じました。

    ここに、善意でカンパしていただいた皆さまにお礼を申し上げ、皆さまのご自愛をお祈りしご報告させていただきます。

    2001.5.6

    0の会会計担当 K

    火災カンパの内訳

    (略)


    精神病者差別発言・差別表現の抗議運動を盛り上げよう!

    東京 けん

    全国「精神病」者集団の会員私設ホームページを作っています「けん」と申します。2年ほど前にはNHKやコンピューター会社への抗議の件で何回か投稿しましたが、今回は久しぶりの投稿になります。

    前号で報告いたしましたように、先日5/15にまた国会で精神病者に対する差別発言があり、私は達増議員に電子メールで抗議文を送りました。

    しかし現在返事はありません。

    我々精神病者は様々な場面でこのような精神病者差別発言・差別表現によく出くわします。特に日常会話においてはTVよりもひどい表現が使われることが多いですし、そのような表現が大量に用いられています。

    このような差別発言・差別表現を許してしまっているために、精神病者に対する差別は当然のことであるように思っている人が多いように感じられます。結果として、我々精神病者は生活上の苦労を強いられ、また精神病者の家族が周辺から差別されるのを恐れて精神病者が家から排除されることが多くなっています。

    私はこの状況をなんとしても改善しなければと思っています。しかし、精神病者が1人で相手側と対決するのでは負担が大きすぎます。相手側は弱い精神病者1人に対しては動きが鈍いでしょうし、また、我々は一般人とは違い、制度上、権力側が気に入らなければ「強制診察」→「措置入院」によって簡単に長期拘束されうるのです。

    このように精神病者が1人で相手側と対決するのが難しいので、全国「精神病」者集団のような団体が団体として抗議する役割が非常に大きいのではないでしょうか。 また数多くの精神病者差別発言・差別表現があっても抗議活動をしなかったのが現実です。

    そこで、私からの提案です。精神病者差別発言・差別表現があった場合、全国「精神病」者集団の会員の一人一人がその差別発言・差別表現を見逃さずに、全国「精神病」者集団の窓口係などに知らせて全国「精神病」者集団として抗議活動をして、抗議活動の全体的な量を多くすると効果的なのではないでしょうか。

    投稿執筆中に小学生8人殺人事件が発生しました。これをきっかけとして一気に保安処分攻撃が襲いかかっています。一般大衆はマスコミ・保安処分推進派の世論操作により、「精神病」者に対して実体とはかけ離れた偏見を強くしています。今こそ我々の運動を強くしていかなければなりません。


    窓口入手資料

    ①第1回第2回第3回法務省・厚生労働省合同検討会議事録

    ②法務省厚生労働省合同検討会傍聴メモ(4回、5回)と配付資料(1回から5回)

    ③法務省・厚生労働省合同検討会主意書完全版(ニュースに掲載したものには略という部分がありましたがその部分を補ったもの)

    ④この間の保安処分攻撃に対する各団体の声明

    ⑤「裁判を受ける権利」論批判として

    季刊福祉労働「保安処分制度のないことを誇りに」 池原毅和

    たとえば「殺人」に関して不起訴は「精神障害者」のみではなく健常者にも適用されていること、すべての犯罪を国家が罰することは望ましいことか?

    ⑥保安処分攻撃の中の「移送制度」新設

    季刊福祉労働 長野英子

    ⑦昨年長野英子の行った講演内容。

    久留米障害者生活支援センターによるケアマネージャー養成講座の一環で「エンパワーメントとケアマネイジメント批判」が内容。

    (略)


    夏期カンパ御礼

    夏期カンパに多くの方からご協力をいただきました。総額275,540円となりました(7月30日現在)。

    厳しい経済状況の中、多額のカンパをしていただき本当にありがとうございました。

    カンパに寄せられた一言から

    *三種代として。がんばりましょう。

    *昨6月29日会館での集会顔を見せただけで出なくてはならず、大変残念でした。次回からはしっかりと参加させていただくつもりです。ちょうど29日委員会での質問で大臣の「しっかりやります」答弁を引き出したところです。精神医療を何とかすると終わってからも大臣はいいに来ました。

    *大野萌子さんの名を監修者か顧問として前面に出し、徹底的に利用すること。この雑誌の運命にかかわることとして……。大野さんは聖女である。死刑から赤堀さんを救出した。

    *がんばってください。

    *T氏の件でめげずにがんばってください。アルバイトやパートで食いつないでいます。法改正で欠格条項からアマチュア無線技師が復権しました。私は引っかからなかった。

    *みんな仲間

    *保安処分策動に反対して闘いましょう。

    *寄付金です。わずかですが足しにしてください。

    *いつもニュース楽しみにしています。少額ですがカンパします。

    *何とか耐えられることを祈ります。小生E-mailアドレスを持ちました。PCにどこかトラブルがあるらしく、受信はできますがまだ送信できません。ニュースに掲載していただきありがとうございます。

    *少額で済みませんが、カンパ送らせて下さい。

    *がんばってください。今度お便りします。とてもためになります。

    *少額ですが送金させていただきました。何かの役にたてば幸いです。小さな集団でも全国のみなさんと共にたとえ精神障害があったとしても負けない自分でありたいと思っています。これからもがんばってください。

    *いつも機関誌の発送ありがとうございます。生活保護なのであまりお金が使えないのが通常です。絆社ニュースは精神病なので無料です。少しですが切手代印刷代にしてください。

    *ニュースが続くために

    なお「一部の篤志家に頼らず、せめて年金受給者からは会費を取ってはどうか」というご意見を会員の方からいただきました。現在事務局員が全員倒れているため(窓口係の山本は事務局員ではなく暫定的に任務を引き受けています。昨年来事務局員全員事務局体制再建のため必死の努力は重ねておりますが、その結果また病状悪化をきたしている者もおります)、組織内の討論ができない状況ですのですぐ議論できませんがいずれきちんと議論したいと思います。

    窓口としてはそれぞれの仲間の生活状況は把握しかねますので、一律の会費というのは難しいかなというのが窓口係山本の率直な感想です。しかし一方でそれぞれのご事情を申告していただき対応するとなると事務処理が大変です。ただ年間500円でも千円でも会員のみなさまで出せる方はカンパをお寄せいただけたらと思います。

    なお未使用切手、書き損じ葉書などのカンパも歓迎いたします。また長野英子発行の「反保安処分資料集1」の売り上げも全国「精神病」者集団の収入となります。お買いあげの程よろしく。

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    資料と本パンフの販売

    池田小事件以来、地域で生きる私たち「精神病」者に対して「強制入院」を筆頭にして弾圧の強化が図られようとしています。弾圧から身を守る知識として以下のパンフをおすすめいたします。

    ☆『改訂精神病院に入院している方へ ――権利助言パンフレット』

    東京精神医療人権センター 2001年3月31日発行

    代金と送料含め340円

    ☆『救援ノート 逮捕される前に読んどく本』

    救援連絡センター 2001年4月20日発行

    代金送料含め592円

    保安処分攻撃に関しては長い歴史と討論がありますが、そうした流れを理解するために以下の資料、本をおすすめいたします。

    ☆『精神医療』フォービギナーシリーズ

    長野英子著 現代書館1200円プラス税

    精神医療の実態そしてそれ法的に支える精神保健福祉法、そして精神医療行政を一貫して貫く保安処分思想について「精神病」者の立場から説明した本です。

    ☆『「処遇困難者」だぞ文句あっか! 1991.2.2今迫る保安処分――「処遇困難者専門病棟」新設を許すな学習討論会報告集』

    精神衛生法撤廃全国連絡会議発行

    代金送料含め700円

    ☆『異議あり! 「処遇困難者専門病棟」新設』

    「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議編

    代金送料含め140円

    ☆「反保安処分資料集 1」

    長野英子発行 B5判16ページ2001年4月1日

    500円(送料含む)

    内容:法務省・厚生省の検討会立ち上げにあたっての主意書、日弁連要綱案に抗議する全国「精神病」者集団声明、日弁連要綱案、復刻版「保安処分推進勢力と対決するために 日弁連要綱案―意見書―野田報告書を結ぶものへの批判(全国「精神病」者集団発行)」

    ☆「精神保健福祉法の撤廃と精神障害者復権への道」

    久良木幹雄著 オープンスペース街発行

    送料代金含め420円

    精神保健福祉法の撤廃とそれに代わる精神障害者復権法の提案。素晴らしい内容です。ぜひご一読を

    ☆オランダの保安処分TBSの当局側の説明資料および施設入所者のための施設生活案内書

    英文からの翻訳 A4判 28ページ

    送料含め1000円

    ☆「報告集1997年世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワークミーティングに参加して」

    世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワークジャパン発行

    送料含め1180円

    上記のTBS施設訪問の報告が掲載されています。

    その他

    ☆『精神医療ユーザーのめざすもの――欧米のセルフヘルプ活動』

    メアリー・オーヘイガン著 長野英子訳 中田智恵海監訳

    解放出版社 1800円プラス税

    窓口からは送料無料1890円でお送りいたします。

    著者はニュージーランドで初めて患者自身による既成の精神医療体制に代わるサービスを発足させた方。「精神病」者解放闘争の理念および患者会の運営について、実践に基づき論点を整理したとても参考になる本です。

    以上を窓口にお申し込みになる方は、電話以外の手紙、ファックス、メールでお申し込みください。ご住所は郵便番号からお願いいたします。それぞれ発送時に郵便替用紙を同封いたしますので、郵便局でお振り込みくださいませ。

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    編集後記

    *池田小事件以降嵐のような保安処分攻撃の中、翻弄され続けた毎日でした。

    小泉首相の刑法改悪発言、政府与党の特別立法案、そして精神保健法改悪による新たな措置入院制度の新設などなど。こうした動きの中でかなり真面目に精神医療を実践してきた部分ですら、「特別立法への対案路線」に突っ走ってきています。

    *典型的なのは全国自治体病院協議会(全日自病)の声明ですが、もしかしたら、刑法改悪→特別立法→精神保健法内での改悪という流れは実は出来レースで、厚生労働省・法務省と日精協・全日自病の間ですでに談合済みで、落としどころは精神保健福祉法改悪ということで手打ちがされているのではという疑念を私個人はもっています。

    (略)


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