全国「精神病」者集団ニュース 2002年9月号

2002年9月発行の「ニュース」抜粋です。 一般定期購読は有料(年6回程発行1年分5000円)です。(病者である会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

全国「精神病」者集団ニュース


ごあいさつ

酷暑もようやくすぎて、しのぎやすい季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか? 夏の疲れが出てくる時期ですので、体調を崩す方も多いでしょうし、恒例の秋のうつにおびえておられる方も多いのではないでしょうか?

(略)

ニュース発行が遅れたことをお詫びいたします。この1年余りの特別立法粉砕闘争の疲れそして秋に向け闘いの準備等で遅れました。お手紙へのお返事も遅れがちとなっていることお許しください。この暑さのためかご投稿が少なく、ほとんど資料だけのニュースとなってしまいました。皆様からのご投稿だけが便りのニュースです。季節もよくなったことですし、次号にはぜひ多くのご投稿を期待しております。

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北から 南から 東から 西から


(略)


「予防拘禁法案を廃案へ! 秋季共同行動」への呼びかけ

先の通常国会に上程された【心神喪失者等医療観察法案】の廃案を共に目指している皆さん。

7月30日に国会の任期は終了し、この法案は継続審議となりました。したがって、法案の審議はこの秋に行われる臨時国会の場に移されることとなりました。しかし、国会の動きとして、廃案へ向かっているわけでは決してありません。30日の法務委員会では、社民党、共産党の反対はありましたが、採決により継続審議となりました。

私達は、これまで実行委員会を作って5.6集会(360人)、6.23集会(200人)、7.18国会デモ(130人)を行ってきました。

情勢は非常に厳しいものはありますが、私達はこれまでの運動の実績を踏まえて、この秋に向けて廃案を目指した闘いを多くの人達と共に作っていきたいと考えています。

8月11日に秋の闘いに向けた相談会がもたれ、以下の内容で実行委員会への呼びかけが話し合われました。

名称 精神障害者差別・保安処分を許すな!予防拘禁法案を廃案へ! 秋季共同行動
共闘の基本原則
① 「廃案!」の一点での共闘
② 共に討論、共に闘いながら相違を埋めていく
賛同人(個人、団体)を募る
集会、デモ 10月6日(日) 2時~ 文京区民センター
第1回実行委員会 8月22日(木) 7:00~
第2回実行委員会 9月8日(日) 6:00~
豊島区民センター(池袋駅東口徒歩5分)
豊島区東池袋1-20-10 TEL03-3984-7601
「予防拘禁法を廃案へ!秋季共同行動」実行委員会(準)
連絡先 陽和病院労働組合 03-3924-6646
090-1254-8360


『精神医療ユーザーのめざすもの――欧米のセルフヘルプ活動』著者
メアリー・オーヘイガン来日

スケジュール

10月13日 町田 (詳細未定)
10月14日から18日 DPI札幌大会

10月19日 仙台 (詳細未定)

10月21日 小松 午後1時から3時 南加賀保健福祉センター 講演
10月26日 午後1時30分 西宮市総合福祉センター研修室
10月28日 久留米 (詳細未定)

各地の詳細はまだ未定です。参加ご希望の方は窓口までお問い合わせくださいませ。


『心を乗っとられて』ある精神障害者の手記

森実恵 潮文社 千二百円

人間の深遠を垣間見せる心の病――奇怪な幻聴、幻覚は何に由来するものか――あなたがあなたであり、私が私であるために何が求まられているのか。

☆強い心と弱い心☆心も捨てて☆自殺未遂☆お金は何様☆空笑い☆葬られた青春☆男の基準☆プライド☆不気味な幻聴、幻覚 等など

私は大阪精神障害者連絡会(大精連)に属する会員で、長年統合失調症を患ってきたものです。この度自らの闘病体験を一冊の本にまとめ潮分社から『心を乗っとられて』を出版することになりました。

このことが同じ病気で苦しむ皆さんの大きな励みになればうれしく思います。精神障害者の方々が置かれている社会的状況が少しでもよくなるよう、日々文筆を通じて精進していくつもりです。一般書店でお求めになれます。ぜひ会員の皆様にも読んでいただきたく思いますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

オンライン本屋での注文はここから


道路交通法の「改正(?)」について

長野英子

障害者への差別欠格条項の廃止に向けた闘いの中で自動車運転免許が精神障害者にも与えられることになりましたが、そこに選別が伴うことになったのは先にニュースでお知らせしたとおりです。

6月1日より新しい法律が思考されるようになりましたが、今までの書類に加え新しく、「病状申告」がすべての人に求められることになりました。

病状申告について、運転免許申請、更新申請等の書類上でそれぞれ、記載事項以下の欄が設けられています。

(略)


国連特別委員会でのWNUSPの発言

長野英子

昨年12月に国連総会は、障害者の権利条約を検討する特別委員会設置を決定した。

すでに93年に国連総会で採択された「障害者の機会均等化に関する基準規則」があるがこれは条約ではなく強制力がない。

「基準規則は障害者の社会参加を妨げる障壁(バリア)が全ての国にあるとし、障壁を取り除くことが政府の責任である、と明記した。主な内容は建物・乗り物・情報を誰もが使えるようにすること(アクセス)、統合教育の原則(手話を用いる聾学校は別)、職業に関する差別禁止、性的関係・結婚に関する差別禁止である。

基準規則の実施には、自ら視覚障害者である特別報告者や障害者組織が積極的に取り組んできた。しかし、ガイドラインではなく、批准国政府に義務を課す国際条約の実現も障害者側からは訴えられてきた。そうした要請を受けて、2000年には中国政府、アイルランド政府が国連で条約提案を行ったが、実現しなかった。またもや挫折かと思われたところ、昨年秋の国連総会で、今度はメキシコ政府が条約提案を行い、ねばり強い説得工作をして、特別委員会を設置する決議の採択にこぎ着けたのである」(長瀬修 『毎日新聞』2002/01/21朝刊・「発言席」より)

2002年7月30日から8月9日にかけ国連で「障害者の権利条約を検討する特別委員会が開かれ、「精神病」者の国際組織としてWNUSPが歴史上はじめて公式に発言した。NGOの正式の発言そのものが前例がなくまた前例としないということで認められた。

WNUSPはすでにこの特別会議に先立って開かれたメキシコでの専門家会議にも代表を送り、メキシコ草案にも治療の名の下での強制的介入の禁止が取り入れられ、1991年12月の国連総会において採択された「精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための原則」の廃棄とともにいよいよ私たち「精神病」者の声が国連条約に反映される道が開かれたといってよい。

このWNUSPの主張どおりの権利条約が成立しそしてそれを日本政府が批准したとしたら、特別立法のみならず、精神保健福祉法撤廃の日が確実に訪れるといってよい。WNUSPの発言内容はこの30年間の私たち「精神病」者の各国での闘いを踏まえたものであり、私は全面的に支持する。

条約の成立までは5年ほどはかかるという話もあり、今後の流れはどうなるかは予断を許さないが、今は私たちの代表が国連で声をあげたことをまず喜びたい。

以下国連でのスピーチ

―――――――――――――――――

精神障害とレッテルを貼られたものの人権問題とは何か、そしてそれらの人権問題は障害者の人権条約によってどのように取り扱われるのが最良か?

1私たちの問題は私たちが定義する

最初に以下を明らかにしておく。過去30年の運動においてこれらの人権問題について考え続け努力し続けてきたのは、そしてこれらの人権問題とは何かを発言すべきは、精神障害とレッテルを貼られたわれわれ自身である。

われわれの間で最も重要な問題として認識されているのは以下である。

* 障害を根拠とした監禁

* 治療という名目による強制的介入

* 精神障害というレッテルに屈服する結果としての法的地位と市民権の剥奪

* そして地域社会において習慣的に繰り返されるわれわれの自己決定を否定する人権侵害、報道と専門家がさまざまな言葉をつかい偏見と差別を増幅していること。

さらにそれぞれが結びついたものであるが、適切な生活を営む権利、家をもつ権利、消費者自身が管理する支援サービスへの権利、懲罰的あるいは制限された差別的状況からの自由、これらの権利は下記で論じるように、上述したほかの権利と相互に密接に結びついている。

監禁

われわれは差別的な根拠により押し付けられたものである限り監禁は決して正当化されないと確信している。精神病とか精神障害と人が診断されただけで、社会にとって危険であると判断されることになり、その人はたとえば強制入院のような形で監禁される、そうした監禁は決して正当化されないと私たちは確信している。同じ差別的な根拠によってなされているので、自ら傷つけるなど危険から本人を保護するという名目でなされる監禁も、同様に私たちは正当化され得ないと確信している。地域で生きる人々の自らを守る能力を支え、基本的要求にこたえるやりかたはいくらでもある。監禁自体が個人の能力で対抗し得ないほどのさまざまな害を及ぼす。肉体的性的暴行、強制的介入、プライバシーの剥奪、肉体的な状態への無視そして不適切な食事、不衛生、社会的活動の不足、自ら主導権をもった活動の機会と条件の剥奪、強制的隔離などなど。このように、人を監禁するということは統合と自己決定の原則そして同様に非差別の原則に真っ向から反することである。

障害を根拠とした監禁はそれ自体が人権侵害と認識されるべきである。監禁に対する救済手続きは本質的な問題に対処するものにはなりえない。そしてそうした救済手続きは人を虐待するシステムの合法化をもたらしまた根本的変革を避ける口実の議論を生み出すだけである。

治療という名目での強制的介入

また治療という名目によって強制的介入が正当化されてはならないとわれわれは確信している。正常な脳の機能に働きかけ同時にあるいは脳組織を破壊する、精神外科、電気ショックそして向精神薬やその他の薬といった精神医学の介入は本質的に疑わしい。神経学的病気ではないのに、人間の行動を肉体的原因に帰そうとする専門的精神医学の試みは、実際のあるいは認識されている障害のある人々を、いかにもわけありげに劣等であるとする、偏見による決めつけそして差別であると認識されなければならない。そうした試みは人種差別と優生思想と同様でありそしてこれらと密接に結びついている。

治療という名目による強制的介入は拷問の一形態と認識されるべきである。そしてそれは取り分けて差別的に障害のあるあるいは障害があるとレッテルを貼られた人々に押し付けられる。

法的地位と市民権の剥奪

投票権のような法的地位と市民的権利の剥奪は精神障害とレッテルを貼られた人を人類でないかのように差別的に扱う好例である。こうしたことがなされると、精神障害とレッテルを貼られた人は自らの利益のために組織化し権利を主張する能力を抑圧されてしまう。そして同様に法の下で平等な人として認識されまたわれわれの生きている社会に平等に参加する基本的人権が侵害される。その結果通常の生活におけるあらゆる種類の虐待や差別たとえば隔離、強いられた貧困、社会的に作られた弱者として強者である人たちの犠牲にされること、などに全く無抵抗でさらされることになる。また監禁と強制的介入はさらに弱い立場に人々を追い込む。

地域社会で行われていること

習慣的に地域社会で行われ続けていること、たとえば他者に依存せざるをえないサービス、精神障害とレッテルを貼られた人への家族による支配や監禁、あるいは社会から人を排外し、政治活動を制限し、または強制的介入や有害な対応に屈服を強いたりするさまざまな文化的影響力の行使もまた人権侵害と認識されるべきである。他のさまざまな差別と偏見と同じように、精神病とレッテルを貼られた人への差別的決めつけと虐待は多くの社会で長い歴史があり、有害な行為をやめさせるための必要な措置をとり被害を食い止めること、そして社会的個人的なニーズにこたえる適切な文化的オールタナティブを開発することなどだけではなくて、文化的な変革をも求めなければならない。

経済的社会的権利

賃労働が常にできる能力があるか否か、あるいはたとえば親としてなどの社会的なさまざまな役割が求める要件を満たしているか否かに関わらず、社会に生きる誰もがその社会の資源を分かち合いそして社会的文化的生活に参加する権利がある。適切な住宅や生活費を確保するために支援や援助が必要ならば、障害を根拠とした人権を制限するような条件なしに、必要に応じ援助や支援がなされなければならない。特に、住宅や生活費援助をえる資格のためにプライバシーの権利、自分の日常生活を管理する権利、移動の自由、交際の自由、あるいは強制的介入の拒否権などを放棄することを要求されてはならない。このことは市民的政治的権利と経済的社会的権利が密接に結びついていることを明らかにしている。すなわち自由で明白な条件のもとに経済的援助がなされないなら、自己決定、統合そして平等な権利という原則に反して、差別的で強制的支配体制を維持するためにいともたやすく経済的援助が利用されることになるからである。

2.国連決議46・119 「精神病者の保護及び精神保健ケア改善のための原則」を私たちは拒否する

第二に国際的な原則はわれわれ自身すなわち障害者の経験と専門的知識を反映しなければならない。何が人権侵害なのかの定義に関しては取り分けてこのことが必須である。それゆえに、国連決議46・119、「精神病者保護等のための原則」はわれわれの人権のガイドラインの根拠として正統性がなく、障害者の人権条約を練り上げていく過程では廃棄され無視されるべきものである。

WNUSPはその立場表明の文書で「国連原則」の廃棄を主張した。われわれはこの基準規則が障害への人権の視点からのアプローチと両立しえず、むしろ時代遅れの医学モデルによるアプローチを反映していると確信している。この医学モデルに基づくアプローチは医学的レッテルを人権に優先し、われわれは自分たちのために発言することができない、あるいは平等な存在として完全参加できない存在であると仮定し決めつけている。詳細はWNUSPの見解文書を参照されたい。

上記の見解をとっているのはWNUSPだけではない。国連原則が採用された際に、DPIは国連の小委員会において以下の発言をしている。「われわれにとって、このことは何もないよりましであると判断するべき分野の問題ではない。原則はわれわれのためにわれわれによって作られなければならない。そしてわれわれ自身の権利を防衛するために有益なものでなければならない。そうでなければわれわれはこの原則採決を阻止するためにあらゆる可能な努力をしなければならない。もしわれわれが敗れ採決されるのであれば、われわれは国内においてこの原則を無視する」(国連文書 E/CN.4/1989/NGO/75, 国連文書E/CN.4/Sub.2/1988/NGO/27)

またこの原則の廃棄を求める国連人権高等弁務官への人権に関する請願もある。

世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP)を代表して国連障害者の人権条約のための特別委員会においての発言 ティナ・ミンコウィッツ 2002年8月2日

(仮訳 長野英子)


精神保健従事者団体懇談会特別フォーラムに参加された皆様へ

「心神喪失者等医療観察法案」を廃案へ

長野英子 http://www.geocities.jp/jngmdp/

「心神喪失者等医療観察法案」が今国会で継続審議となり、秋の臨時国会で再び審議されようとしている。この法案は「再犯のおそれ」を要件として「再犯を防止すること」を目的に、犯罪にあたる行為をし、心神喪失等で不起訴や無罪・執行猶予などとされた人を対象とし、予防拘禁しようとする法案である。この法案の対象とされ特別の施設に収容されれば、「再犯のおそれのなくなるまで」おそらく終生の拘禁が予想される。かつて反対運動で頓挫した刑法保安処分新設と同質の保安処分であり、手続き的にはそれ以上に問題のある法案である。この法案について賛成の立場から発言している山上皓東京医科歯科大学教授は、欧米の保安処分制度を高く評価し、その宣伝に努めている。しかしながら、たとえばイギリスの保安病棟の実態あるいはそのシステムが取り返しのつかないほどの人権侵害を引き起こしていることを、ちょうど今イギリスのインデペンデント紙がキャンペーンを行っている(ここで取り上げた記事翻訳及びWNUSPの国連特別委員会でのスピーチ翻訳は長野英子のホームページに掲載中)。

不定期拘禁の実態

インデペンデント紙「たとえ回復しても出口のない高度保安病棟」(6月16日付)では3つの高度保安処分病院(ブロードモアなど)には、すでにそこにいる必要がないと判断されている患者が、行き場がないため400人待機リストに載せられたまま拘禁され続けていることを暴露している。権利擁護のための審査機関もその審査そのものが間に合わずに迅速な審査すら行われていない実態である。

またひとつのケーススタディとしてすでに22年間ブロードモアに拘禁されている女性作家の例も挙げられている(インデペンデント紙「高度保安病棟 ジャネットは22年間入れられている。狂っていると認めない限り彼女は釈放されない」6月16日付)。彼女は殺人事件をおこしたわけでもなく、菜切り包丁で精神科医のおしりを刺したというだけで22年間拘禁されている。

年間一人当たり直接費用だけで2600万円以上もの費用を使い、日本より少なくとも法的にはましな人権救済システムを用意されていても、上記のような実態だ。今回の法案が「社会復帰」を目的と称していても、現実には受け入れ場がなくなり、特別な施設に拘禁され続ける実態を生み出すこともこの記事で明らかになっている。

対象者の拡大 恐怖に支配されていく精神医療

さらに最近イギリス政府が発表した精神保健法「改正」の草案によると、なんら犯罪にあたる行為をしていない患者でも高度保安病院に収容できるようになり、また治療可能性のない人格障害者であっても収容できることになる(「精神病者は法律を破る前に収容される」6月23日付)。

今回の特別立法や「処遇困難者病棟」あるいは何らかの特別病棟の新設によって、「精神病院の開放化がすすむ」あるいは「地域精神医療が促進する」「精神医療が本来の医療に専念できる」などという、宣伝あるいは意図的誤解が日精協を中心になされているが、このインデペンデントの記事(「恐怖製作所」6月30日付)を読む限り、むしろ「危険な精神障害者を選別し特別施設に送る体制」である保安処分の存在するがゆえに、精神科医はじめソーシャルワーカーなどなどすべてのサービス提供者側に対して、「犯罪の危険の予測とその防止」の任務が押し付けられ、訴えられるというおびえゆえに、強制力の行使が行われるという実態が明らかになっている。「ますます強制的になる医療サービスの一つの目安として、精神病院に強制的に入れられた人の数が、過去10年において1.5倍に増えていることがある。1990年から1991年に18000人だったのが、2000年から2001年には26700人になっている。これらに加えて、何千人という患者が治療のために自主的に入院して、その後で退院が認められなくなっている。この数もまた明確に増えている。その結果約50000人の人が去年精神病院に拘禁されており、その数は10年前より20000人多い」(「恐怖製作所」6月30日付より)

インデペンデント紙では「犯罪の予測と防止」というできないことを要求される精神科医の困惑というか苦悩が語られているが、今回の特別立法を許せば、こうしたことは日本でもおきてくる。もちろん今での措置解除に関しての「おびえ」は精神科医にあるが、それをどこかに判断してもらう体制を求めることでかえって、精神医療全体が社会防衛的治安の道具にしてしまうことは明らかだ。

精神医療の国際的反動の流れの中で

60年代後半から70年代初頭に掛けて各国で「精神病」者自身の解放闘争が全国化していった。80年代には欧米ではこうした「精神病」者運動の主張が一定精神医療体制の中に受け入れられ、とりわけアメリカにおいてはセルフヘルプ・オールタナティブが活発化していった。こうした動きに対して精神科医の一部からは「精神科医のやることはない。ソーシャルワーカーでも素人のほうがいいサービスができるなどという風潮」という苦々しげなコメントが出てくるようになった。

90年代になってこうした精神科医と製薬資本の巻き返しが本格化した。各国での地域での強制医療体制(裁判所命令によって強制的に注射を受けさせられ、拒否すれば強制入院となるなど)、英米から世界化した電気ショックの再評価と強制の動き、ロボトミーの復活などの動きも見逃せない。アメリカではブッシュ大統領のもと各地の「精神病」者活動への援助をしている全国センターへの連邦資金が0にされるという攻撃もある。

さらにヨーロッパにおいてはヨーロッパ評議会(Council of Europe )の生命倫理に関する運営委員会作業班の「精神障害者とりわけ精神保健施設に入れられているものの人権と尊厳を保護する白書(2000年1月)、が出され、ヨーロッパユーザー・サバイバー・ネットワークはこの白書は題名と異なり「精神病」者の人権をいかに侵害するかという内容であり、強制医療の拡大、とりわけ地域での強制医療を強化するものと、厳しく批判している。この白書に続き「精神障害者とりわけ精神保健施設に入れられているものの人権と尊厳を保護するための参加国への閣僚委員会勧告草案(2001年9月)」がだされ、精神障害の定義として精神病、知的障害、人格障害があげられ、なんと「例外的ケース」とは限定されているものの、強制的不妊手術と強制的中絶を法定するよう勧告しているとのことだ。イギリスの精神保健法案もこのヨーロッパ評議会の一連の動きを背景に出てきたものといってよい。

アメリカ一極支配の下での歴史的反動の中で、弱い環である「精神病」者への攻撃が一挙に強まったともいえるし、精神医療の政治利用治安弾圧への活用が図られているとも言える。ちなみにイギリスでは反テロ法によって逮捕された人が病院当局の反対にもかかわらず特別病院に監禁され続けているとのことである(インデペンデント7月21日付)。

日本の特別立法も精神医療全体の反動化の流れの中にあることは、このWPA世界大会が製薬資本の金まみれであること一つを持っても明らかである。ちなみにWPAの世界大会はいわば製薬資本からの金のマネーローンダリング大会であり、大会は必ず利益を生み出しWPA本部にその利益を上納する仕組みとなっている(日本精神神経学会総会。評議会議事録参照)。また特別立法が、盗聴法、組織犯罪防止法、個人情報保護法案、有事立法案といった一連の治安弾圧立法の中で位置付けられていることはいうまでもない。

一方「精神病」者もこうした反動を決して見逃してはいない。象徴的なのが、国連の障害者権利条約のための特別委員会においての障害者NGOの闘いであり、とりわけ歴史上初めて世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)は「精神病」者の国際組織として声をあげた。WNUSP他「精神病」者団体は30年間の各国での闘いを踏まえ差別にもとづく強制医療体制の廃絶を訴えた。

本日6時半からの集会ではアメリカの「精神病」者シルビア・カラスさんにこうした攻撃に対する「精神病」者の反撃の活動としてアメリカの活動報告、国連特別委員会の報告をしていただく。

特別施設での医療内容

法案の特別施設でいかなる医療が施されるかほとんど明らかになっていないが、坂口厚生労働大臣によれば、一般的精神医療と「矯正医療」とのことであり、水島広子議員の要請により厚生労働省が出した「指定入院医療機関における医療の基本的考え方」(長野英子のページに掲載中)というメモによれば、「矯正医療」の中身はいわゆる「人格障害者」に対する「矯正プログラム」を想定していると見られる。こうしたプログラムを重篤な「精神病」者に強制することは恐るべき病状悪化を招くことは明らかである。

またあいまいな「人格障害」概念規定を肯定し、この法案の対象者とするならば、いかようにも対象の拡大はなされうる。

しかも電気ショックやロボトミーなど精神外科手術あるいは薬物去勢などがこの施設で行われない保障は一切ない。各国の保安処分施設が研究者による人体実験所として利用されてきた歴史もあり、83年に暴露された入院患者が虐殺された宇都宮病院で東大の精神科医が人体実験を行っていたことも記憶に新しい。宇都宮病院は私設保安処分施設と呼ばれていた。

すでに電気ショックは精神科救急の現場で濫用されており、この6月にも電気ショックによる死亡を疑われる事件が神奈川県立病院でおきたばかりだ。ロボトミーも国際的には80年代より復活しており、スコットランドでは重症のうつ病患者に強制的にロボトミーできる法案すら準備されている(ガーディアン6月12日付)。厚生労働省の「精神科の治療指針」(昭和42年改定)はロボトミーなど精神外科手術を掲げており、この通知はいまだ廃止されていない。

私たち「精神病」者に人権なしという国の姿勢

この1ヶ月の国会審議においてこの法案の問題点は次々と暴露され、とりわけ「再犯予測の可能性」の根拠は完全に崩れ、この法案の運用自体が成り立たないことが明らかになっている。もちろん仮に「再犯のおそれ」が100%だと証明されたとしても、やってもいない行為の「おそれ」を持って人を拘禁することは、あってはならないことはいうまでもない。

7月5日の法案の法務厚生労働連合審査において、森山大臣および坂口大臣は到底見逃しがたい答弁を行った。

佐藤議員は再犯予測ができるのか、といった再犯予測可能性をめぐる質問をし、100%というのはできないだろうという坂口大臣の答弁を引き出した。

その流れで、佐藤議員はもしこの法案が動き出して、それによって被害が出たとしたら、それに対して大臣は責任が取るのか、と追求したところ、坂口大臣は、被害というのはどういうことか分からないとした上、この法案の対象者は重大な犯罪を犯した人であって、その人たちに治療を提供するのだから迷惑をかけるなどということはない、むね答弁した。

一方森山大臣も、十分なケアをし、社会復帰を目指すのだから、被害というのは分からない。人権上の問題を指しているとしたら人権問題が全くないよう、人権保障は大前提としている、と答弁した。

すなわち「再犯のおそれ」鑑定が誤り、「再犯のおそれ」のない人を処分の対象として拘禁しても、これは「医療と社会復帰を目的」としているのだから、なんら不利益を与えないのだ、という論理である。

開き直りとしかいえない答弁である。法案対象者とされた人には人権なしという宣言である。

この論理では法の目的さえ「医療と社会復帰」であれば、その法にもとづき強制収容され、いかなる医療を施され、実りあるべき人生を奪われても、なんら被害ではない、ということになる。私たち「精神病」者には人権なし、という論理だ。

現行の精神保健福祉法においてもその目的は「医療と保護および社会復帰」となっている。

しかしながら、この国の精神病院では医療的に入院が不要でありながら、行き場がないために精神病院での暮らしを余儀なくされている人たちが7万とも10万とも言われている。このことは坂口厚生労働大臣自身が国会答弁で認めている。その中にはかつて精神外科手術を受け、新たな障害を押し付けられ苦しんでいる仲間もいる。これらの方は高齢化し一刻も早い救済がなされなければならない方たちである。ハンセン病訴訟で語られた強制隔離による人生被害を受けた方たちである。

厚生労働大臣、法務大臣の今回の答弁によれば、法の目的が社会復帰と医療である以上、これらの方たちも一切被害を受けていないということになる。国は何もしない責任もとらないという宣言とさえ受け取れる。長期入院者の社会復帰やら精神医療福祉の充実という厚生労働省の言葉の欺瞞が今明確になった。

精従懇シンポジウム参加者に訴える。一切の幻想を捨て、特別立法廃案に向け私たち「精神病」者とともに闘うことを!

資料(厚生労働省が水島議員の要請にもとづきだしたもの)

指定入院医療機関における医療の基本的考え方

1 基本的な医療

入院患者に対しては以下のような医療を行う本日6時半からの集会ではアメリカの「精神病」者シルビア・カラスさんにこうした攻撃に対する「精神病」者の反撃の活動を報告していただく。

@症状改善のための薬物療法

@疾病理解を促しつつ、患者を心理的に支える個人精神療法

@他者との交流に重点をおく集団精神療法

@疾病再発の防止方法を習得させる心理教育

@基本的な社会生活の技法を習得させる社会生活技能訓練

@作業療法などを通じた社会復帰に向けた訓練

@家族へのカウンセリング(患者への心理的指示、服薬管理について助言)等

2 専門的な医療

再び重大な他害行為を行うおそれのある精神障害者については、衝動性が強い等の特性がありうるため、ここの特性に応じ、上記の基本的な医療に加え、以下の医療を行う

@「怒りのマネージメント」等の暴力の自制能力向上のための個人精神療法

@重大な他害行為について内省させ、また被害者への共感をはぐくむとともに、患者に対し療養に取り組むインセンティブを与える個人・集団精神療法

@適切な人間関係を築く技能を習得させる社会生活技能訓練

@家族へのカウンセリングでは、重大な他害行為の再発防止等について助言

@患者の行動観察を入念に行い、「おそれ」を評価 等


夏季カンパにご協力ありがとうございました。

夏季カンパ総額168,250円、ニュース代61,000円となりました。お約束の昨年度の会計報告は紙面の都合で次号に回させていただきます。

カンパに寄せられた一言から

*その後元気に指定ます。カンパに使ってください。体のほうもだいぶよくなり、作業者の行事やグループホームの行司で結構楽しく暮らしています。少し疲れるけどよく眠っています。それで少し負荷を掛けて疲れをとる練習をしています。この調子で3,4年後は社会に戻れるかもしれません。

*東京の佐藤健二様が国会へ議員を送り出そう! 私は心より支援し、少しでもカンパを送り、滋賀県よりこれを送ります。

*わずかですがご笑納ください。がんばってください。

*小額ですが、いつものニュースの郵便料にでもと思います。

*特別立法反対のための諸活動にわずかながら支援を送ります。

*給料が入りました、仕事をしています。住所が変わりました。

*映画「REDS」を見た。そう見ても、ジョン・リードの死に方はおかしい。なぜコミンテルンはアメリカの少数革命派を受け入れなかったのだろう。ジョン・リードがフィンランドに投獄されたとき、確かレーニンは「彼が解放されるのなら数住人の学者と好感してもよい」といったそうである。ならば、ジョン・リードの存在はレーニンの耳にも入っていたはずである。当時は政権をとったばかりでボルシェビキも混乱状態にあったようだ。過剰労働でノイローゼになったという友達の情報が入った。自然科学の寄り道をする余裕がない今日この頃である。

*ニュース購読料にはなりませんが、せめてもの夏季カンパ。解雇撤回闘争中ゆえご勘弁を。

*大変すばらしいニュース。ありがたく読ませていただいております。今後ともよろしく。

*カンパとして受け取ってください。7月の保護費が入りましたので、少しですが、送ります。受け取ってください。絆社ニュースのスタッフの方も全員体調の具合でいつも忙しいとのこと2ヶ月に1度の発行ですが、届けばすごく安心感があります。

少しずつですが、カンパしますのでぜひ休刊にならないようお願いします。

*いつもありがとうございます。あまり無理して体調を壊さないようにしてください。またお会いできるとうれしいです。

*いつも絆社ニュースを送っていただき、ありがとうございます。些少ではありますが、カンパをお送りいたします。今後ともよろしくお願いいたします。

*この間大変世話になっております。ありがとうございます。いったり来たりとお疲れ様でございます。少し休めるといいのですが、ニュース郵送代です。みんなについていきながら私も廃案まで闘っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

*少なくてすみません切手代です。

(略)




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