武蔵病院の非公務員型独立行政法人化へのびほう策への抗議

高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律施行令(政令第41号)が2010年3月19日に閣議される可能性が高いとの情報を得ました。医療観察法は、法の破たんを隠すために、これまでも数々の省令改正による小手先調整をしてきました。今後は、国立武蔵に新たに設置される第九病棟の指定のために、わざわざ改正したものです。

2010年3月13日、緊急要請書を総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、法務大臣、内閣府特命担当大臣、国家戦略担当大臣に提出しました。

しかし、残念ながら2010年3月19日に閣議決定され、3月31日に抗議要請書を出しました。

総理大臣 鳩山由紀夫様

総務大臣 原口一博様

厚生労働大臣 長妻昭様

法務大臣 千葉景子様

内閣府特命担当大臣 福島みずほ様

国家戦略担当大臣 仙石由人様

抗議・要請文

全国「精神病」者集団 2010年3月30日

東京都中野区中央2―39―3 (〒164-0011)

電話 080-1036-3685 fax 03-5942-7626

e-mail contact@jngmdp.org

日ごろの障害者の人権および福祉に関するご尽力に敬意を表します。

私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成した全国の「精神病」者団体・個人の連合体です。

私どもは、再犯予測という非科学的な根拠を持ち出し、精神障害者を他の者と異なる手続きで不定期拘禁を可能とする医療観察法を反対してまいりました。

さて、鳩山政権は、3月19日、高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律施行令(政令41号)が閣議決定されました。耳慣れない法律だが、要は、国立精神・神経センターが4月1日から非公務員型独立法人に移行することで「このままでは、医療観察法で入所させられなくなる」(厚労省)事態を回避するために、「センター全体を国とみなす」政令で取り繕うというものです。
医療観察法16条は、「国、都道府県又は特定独立行政法人が開設する病院」以外は指定入院医療機関にできないと規定しています。「特定独立行政法人」とは「その役員及び職員に国家公務員の身分を与えることが必要と認められるもの」であり、国立精神・神経センターが、国立のままか、公務員型の独立行政法人であるかどちらかでないと、指定入院医療機関としての指定を受けられないのです。しかし、国立精神・神経センターは4月1日から非公務員型独立行政法人になるので、医療観察法第16条を満たせなくなり、新たに開棟する第9病棟(合併症中心)は、法律上も、厚労省令上も違法となります。そこで、このほころびを繕おうというのが政令第41号です。
医療観察法入院施設は、法にその設置基準が定められているにも関わらず、自公政権は厚労省令で「みなし」改悪を繰り返してきました。政令による弥縫策は今回で3回目となります。しかし、法の趣旨や規定を政令や省令で変えることはできないはずであり、このような内閣・官僚の独断専行を認めれば、立法府の権威は地に落ちざるをえません。政令41号は、決して、施設の認定に関する「手続き」的な問題ではないのです。

医療観察法16条の趣旨は、医療観察法の「入院処遇」「医療」は権力行使・強制であるがゆえに公務員が当たるということにあります。しかし、この間の厚労省令、そして今回の政令は、医療観察法の「医療」を非公務員が行うことを可能にし、更なる改悪に道を開くものです。他方、医療観察法の対象者が次々と自殺している実態があり、こういった問題を深刻化させる結果にもなりえます。政令による法の実質的な改悪などという違法かつ越権的な行為を絶対に許すべきではありません。

政令41号が閣議決定されたことに抗議するとともに、実態把握の要請及び真摯に検討していただきたい事項を、以下に箇条書きとします。

①障害者制度改革も政治主導で行うため、内閣府に障がい者制度改革推進本部を設置し、障害者権利条約の批准に向けた法整備のために、障がい者制度改革推進会議を開催している。もちろん、障がい者制度改革推進会議でも医療観察法の非人道性については議論されている。こちらの議論をしっかりと行っていくことが求められる。それなのに、政治主導のエンジンたる障がい者制度改革推進会議での議論内容と逆行した閣議決定が出されたことが、障がい者制度改革推進本部の設置目的から矛盾する可能性はないのか。

②年間235億円もの莫大な予算を投入しながら、このような弥縫策をとらなければならない原因を明確にすべきである。地域住民や自治体が施設建設に反発するのは、精神障害者危険論に基づいて医療観察法が作られ、事実、重警備の施設建設によって差別的なキャンペーンを行っているからではないのか。

③非公務員型独立行政法人化することとで国立精神・神経センター新病棟に法律上の問題が生じることは、自公政権当時からわかっていたはずだが、何らの手当てもしていない。現政権は医療観察法に反対してきたのに、なぜその責任も追及せず、パブリックコメントを実施することもなく、官僚の言いなりになって問題を糊塗する方策をとるのか。
④5年間の施行状況が7月以降に国会報告されることになっているのに、その確認もせずに、障害者権利条約の精神に違反すると指摘される医療観察法を追認するような政令をなぜ決定したのか。
⑤全国ひとつの合併症病棟に遠距離から病人を移動させることは負担が大きく反医療といえるのか

⑥心神喪失者等医療観察法下では鑑定入院・入院医療・通院医療と分断されており医療上問題とされているうえに、さらに合併症ゆえに医療が分断され地域から切り離されることになるのではないか。

⑦心神喪失者等医療観察法対象者以外の精神障害者も合併症の際に医療を受けることが困難であり、治療拒否も全国で頻発しているが、心神喪失者等医療観察法でこうした合併症病棟を作ることはこうした実態に悪しき前例を作り、すべての精神障害者の医療保障に重大な悪影響を及ぼす恐れがないか。



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