2010年4月号ニュース抜粋

ごあいさつ

お陰さまで、なんとか生きています。

政令41号が閣議決定され、医療観察法はまた一歩、我々を侵食しました。

民主党政権下の障がい者制度改革推進会議へ全国「精神病」者集団も関わることになりましたが、これ事態をどう考えるのかは、あまり整理できておりません。もちろん、病者集団内部でも「政府との関わりは避けるべき」という意見もありました。しかしながら、中村かれんの『抵抗と同化』でいうなら、病者集団は、結成当時から抵抗の勢力であったわけで、政府に殴りこむことはあっても、招待されることはありませんでした。その当たり、折角の機会を強制の廃絶に向けて意見していくことも非常に重要と考え参加に至りましたが、それをどう考えるのかについては、もう少し、じっくり考えたいです。

ただ、障害者権利条約第四条の障害者団体参画を決定付けたものであることにかわりはなく、その点は評価できると思います。

とはいえ、結局のところ、最終的には「精神病」者運動という「精神病」者の連帯と運動でしかすべては成し得ないわけで、障がい者制度改革推進会議を機軸にした意見収集も含めて、「精神病」者運動であると思います。一方で批判の声もありますが、批判の立場の「精神病」者運動からもニュース投稿を歓迎しています。(桐原)

障害者制度改革と精神障害者

2010年3月 関口明彦

障がい者改革本部制度推進本部は21年12月8日に以下の目的で閣議決定された。

1(目的) 障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行い、関係行政機関相互間の緊密な連携を確保しつつ、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、内閣に障がい者制度改革推進本部(以下「本部」という。)を設置する。

障がい者制度改革推進会議はそのもとに作られたエンジン部隊である。第一回会議で福島特命担当大臣は、9月までに、障害者基本法、自立支援法=総合福祉法、障害者差別禁止法について議論し、骨格を示してほしいと述べた。この3法に精神障害者の問題が否応なく関係しているのは言を待たない。基本法、自立支援法は、本来昨年度の課題であったのが今年度にずれ込んでいるのだが、差別禁止法は新しいものだ。一方で精神保健福祉法及び医療観察法は今年度が見直しの時期にあたる。

現在制度改革推進会議で進んでいること

具体的な、日程とテーマは以下である。

第一回 2010/1/12 議長選出、運営、日程 等

第二回 2010/2/2 障害者基本法

第三回 2010/2/15 自立支援法=総合福祉法

第四回 2010/3/1 雇用、差別禁止法、虐待防止法

第五回 2010/3/19 教育、政治参加、障がいの表記

第六回 2010/3/30 医療、司法手続き、障害児

第七回 2010/4/12 交通・建物・情報アクセス、所得、財政

基本文書

障害者権利条約の批准と完全履行が大前提、その他自立支援法訴訟基本合意文書及び和解文書、ILO条約、与党マニフェストなど

特徴

会議の構成員が障がい当事者中心、

5年間を改革時期とする 遅くともH25/8までに基本法を総合福祉法にする(H24/4との説も)

取り敢えず、総合福祉法部会を先行して立ち上げる その後順次多くて10の部会を立ち上げる

改革の可能性と立ちはだかる壁

障がい当事者が多くを占めている 政権のスタンスが生活者の為の政治と言っている

壁は国・地方の財政状況と、既存の制度/利権及び考え方の慣性力

精神障害者医療保健福祉に関して特徴的なこと

1.既存の制度及び予算がそれぞれ医学モデル、医療偏重であること

ami58号によれば、精神医療保健福祉 総額 1兆9,300億円、医療約 1兆8,800億円、入院医療  1兆4,000億円、 地域生活支援  500億円で 医療対地域は 97:3 である。

2.強力な医学モデル偏重の慣性力と既存制度に基づく利害関係が存在している。

成し遂げなければならない課題

条約の締結に当たって、明確に改廃しなければならないのが、精神保健福祉法と医療観察法だ。会議では基本法の議論の折に、差別の要件として、直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如の加えて、特定の生活様式を強制されないことが挙げられた。社会的入院や多くの施設入所がこれに当たる。

条約から見た精神医療

医療は救急救命医療を除き本来自らの利益の為に自由な同意に基づく契約により行われるべきものだ。条約25条健康、により規定されている事柄が、現下の状況を見る限り、日本で担保されているとは言い難い。条約を批准するには、医療基本法ないしは患者の権利法が必要だ。つまり国策としての医療から生活者の為の医療への転換が必須となる。

問題となる、精神保健福祉法

目的が医療と保護になっており、その出自も強制入院担保法であった。

保護が入っているために、社会的入院が正当化されているほか、強制入院に際しても患者の人権を軽視した構造になっている。保護入院は保護者制度と共に即時に撤廃しなければ条約の批准は出来ない。他のものとの平等に基づく医療制度とは言えないからだ。

最も問題となる、医療観察法

1.入り口が刑法6罪種であるにもかかわらず、刑法の原則である、罪の責任とそれに対する制裁の均衡が排除されている。すなわち、刑法39条は刑の減免を定めた条項であるにもかかわらず、不定期無期限に拘禁できる。

2.罪の属人主義というか属疾病主義というか、危険性が無くなるまで、あるいは治るまで拘禁、監視し続けることが可能。

3.基本にあるのは、本来不可能な未来予測とそれに基づく社会防衛の為には人権を無視して良いという考え方だ。

4.医療観察法の審判での事実関係証拠調べは適正手続きを欠いている。弁護士も付添人でしかない。

5.精神障害者を特別な処分対象にすることで偏見を助長する。心神喪失等と精神障害はイコールではないが、処遇が精神科医療なので、医療観察法により、精神障害者の凶悪犯罪が多いとか、精神障害者が危険で何をするかわからないというイメージが強化される。

6.「手厚い医療」は「本人のため」ではない。再犯防止に向けた医療ではあるであろうが、13人もの自殺者を出しているように「本人のため」の医療ではない。つまり、行われているのは自由な同意に基づく本来の医療の構造を持ち得ない。

7.刑事司法と精神医療のキメラであり、人員基準と1人あたりの予算以外は、一般精神医療にとって見習うべき点は無い。

条約の批准に必要なこと

精神障害者にとって、医療の占める割合が予算の97%であることを考えると

医療法、精神保健福祉法、医療観察法が問題となる。

しかし、精神障害者にとって人権侵害の強い法律は、医療観察法>精神保健福祉法>医療法だ。医療法の中の特例により入院患者48人に一人の医師しか配置されない。他科なら16人に一人だ。

さらに、入院は精神科のあるところでないと出来ないというのも、現に法令にある差別だ。

結語

障害者権利条約の批准にあたって、最も障害者の人権を侵害している現にある法律は、心神喪失者等医療観察法である。制度改革推進会議が、法律で定められた順番に沿って、基本法、自立支援法、の次に取り上げるべきは医療観察法、精神保健福祉法だと考える。

NPOおかやま入居支援センターの実態

運営委員 佐々井 薫

高齢者や障害者の住宅確保が困難であり長期入院や施設からの地域移行が難しい事で対策が急務とされる今、岡山県に「NPOおかやま入居支援センター」と言う法人が出来ました。

いろいろと悪いうわさも耳にしていたので電話で支援を受けたいと言う話しで問い合わせてみると、まずケースワーカーとの関わりを聴かれ「あります」と答えると次に成年後見制度か、権利擁護の財産管理を受けているかと聞かれ「いいえ」と答えると「誰でも保証人になるわけではない」と言われケースワーカーと同伴で面接に来るようにといわれました。

とりあえず案内書が送られてきて「当NPOは高齢者、障害者を対象に住宅の確保が困難な方々の支援をするため、関係機関とネットワークを形成し、必要に応じて入居時の保証人となるなどの方法により、住居を確保し、もって、誰もが安心して暮らせる街づくりの一翼を担う事を目的としている」とあり構成員には県下の弁護士、司法書士、社会福祉士などで、協力会員として医療機関、福祉関係機関、不動産仲介業者等となっている。

その後のネットワークの図を見ると本人を中心に、センター、行政、介護支援事業者、病院、財産管理者、仲介業者が周りを囲み、相互にネットワークを形成しているように矢印が示されているが本人は入っていない。

しかも、申込書には本人の生活のほとんどを支援センターにゆだね、年会費5千円を払って会員になることを承諾するようにとの書名欄がある。

さらに「フェイスシート」なるものがあり、経歴や家族構成などの個人情報を事細かく書き込むようになっている。

実際に面接に言った仲間に話を聞くと、事務局は弁護士法人の事務所内にあり、応対に出たのは弁護士で、「フェイスシート」なるものによってくどいほどの質問を受け、ネットワークの形成、財産管理契約、センターへの入会は絶対との説明で、部屋の下見はおろか、部屋を選ぶ事すらできず、センターから指示された部屋に入るしかなく、アパートの全室に精神障害者が病状の重い、軽いのバランスを取って、入らされ、お互いに助け合って生活してくださいとの説明であったと言う。

当然、その仲間は怒りながら帰ってきたと言うことで、話を聞いただけでも怒りが走り、今の時代に、このような法人が存在した事にあきれて言葉も出ない。

何かの利害関係が有るのかはわからないが、人権などと言う事以前に人間として考えていない。

生活保護受給者の皆様

通院にかかる交通費が生活保護から移送費として

支給されるのをごぞんじですか?

東京 山本眞理

厚生労働省は2008年4月、生活保護利用者の通院移送費(交通費)を実質廃止する通知を出しました。これによると、130万件(2007年度)に及ぶ通院移送費のほとんどが、今後支給されなくなってしまう可能性がありました。

この通知は、北海道滝川市で起きた通院移送費の詐取(不正受給)事件に端を発したものですが、影響を受ける生活保護利用者の被害は甚大であり、医療受診機会を実質的に奪われることによって症状が重篤化し、生命の危険にさらされるといった事態も予想されました。

私たち全国「精神病」者集団は反貧困ネットほか多くの仲間とともにこの局長通知撤回に向け闘ってまいりました。その過程でびっくりしたのはそもそも移送費という制度をご存じなく請求しておられない方、あるいはごぞんじでも行政が怖くて請求できない方が多いということでした。

今回上記の局長通知が改正され主な点は以下であり、従来どおり移送費が支給されることとなりました。

改正の内容は

○ 「一般的給付」「例外的給付」の別をなくしたこと

○ 電車バスの場合の「へきち」や「高額」というしばりをなくしたこと

○ 「原則管内」「最寄り」が「比較的近距離」という表現になったこと

○ さらに、傷病等の常態や治療実績、主治医との信頼関係等を総合考慮し適切な医療機関への通院を認めたこと

○ 給付手続の周知を明示した。

○ やむを得ない場合には事後申請も可としたこと

などにより、必要な場合については、きちんと出せるようになっているはずです。

是非、仲間で共有し、必要な方に届けてください。

「生活保護法による医療扶助運営要領について」の一部改正(通院移送費関係)

については下記を参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000004ucp.html

精神病者の人身保護裁判を支援する会

カンパ要請





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