全国「精神病」者集団ニュース2011年11月号ニュース

ごあいさつ

 全国各地に「精神病」者は、必ずいます。大震災の被災地にもいますし、会社にも、学校にも、親戚にも、必ずいます。そして、その多くの仲間が孤立しています。私たちは、もっと、仲間の存在に気づき、連帯していく必要があります。

その存在に気づくべき仲間の一人についてです。死刑が確定し、獄中で死刑の恐怖にさらされている仲間がいます。袴田巌さんという元ボクサーです。彼は、どう考えても冤罪でありながら、死刑が確定してしまいました。いま、当時の裁判官が、冤罪であると声を大にして語りだし、それらが映画になるなどの動きが見られます。

さて、私たちは、2009年総会で死刑廃止を決議しましたが、実際に、何に向かうべきでしょうか。おそらく、死刑の台に立たされようとしている無実の死刑囚という仲間に向けて、なんらかの行動をとることだと思います。

わたしたちは、休みながらも、仲間の存在に気づき、行動できる「病」者の運動を目指していくことが求められていると思います。(桐原)

 

 

書評

桐生敦代著

『統合失調症の治療のしくみを国で根本的に見直してください』

2010年刊、東宣出版

近藤凱彦

 著者の長男は、22歳の時、統合失調症を発病した。それから約20年の間に、10回くらいの入院、そのほとんどが、措置入院だった。この本が出た時点で、なお、入院中である。母親としての立場から、病気との格闘を描いた。

私は、複雑な思いにとらわれた。著者は、非常に強い人である。それに対して、著者の夫である、父親の立場の人は、影が薄い。世の中の常識では、父親の方が母親よりも強く、妻は夫に従うべきと考えられている。

妻の方が強い、という夫婦はあるわけで、それに不思議はない。でも、社会の常識と異なっている。子どもは両親を見、また社会とも関わるから、いくらかとまどうわけである。生きるのが難しくなる、要因となる。父親の方が強ければ、子どもはもう少し違った生き方を身につけたかもしれない。

でも、だからと言って、両親が悪いわけでも、子どもが悪いわけでもない。夫婦も家庭も多種多様であって、それをありのままに、社会は受け入れるべきなのである。男女平等も道半ば、ということか。

長男が発病してから15年くらいは、医者の言う通りに薬を飲ませていた、という。だが、10年目くらいから、幻聴や幻覚が出るようになった。そして、著者は、薬の服用に、疑問を持つようになっていった。

最初の入院から12年たって、長男は、措置入院させられてしまう。措置入院は、通算8回に及ぶが、2回目が終わって退院した頃から、薬を飲ませるのをやめてしまう。その後は、退院しては薬をやめ、薬をやめては再発して入院し、と何度もくり返すことになる。

薬の長期の連用が、病状を悪化させている、と著者は考えるのだ。だが、精神科医は、そうは考えないだろう。薬をやめるから再発するのだ、と考えているだろう。どちらが正しいのか。それはわからない。

著者が主張するように、薬を完全に切るための施設を作って、そこに入るようにすれば、長男は救われるのかもしれない。薬もやめられて、病気も治るのかもしれない。

私は、22歳の発病以来、46年間、向精神薬を飲み続けている。その間、3度入院している。幸い、仕事につけて、32年間、サラリーマン生活を送った。

薬を飲みながら、勤めを続けている、という人も多くいる。それでも、私は、向精神薬の連用には反対である。

向精神薬は、精神病の病気そのものには、効かない、と言われる。精神病に伴う、いくつかの症状を取るだけだ、という。要するに、患者の管理のための薬である。

モシャーとブルチの『コミュニティメンタルヘルス』(92年、中央法規出版)を読んで、印象に残っていることが、2つある。1つは、基本的に向精神薬は使わないということ、2つは、精神病院への入院はできるだけ避け、生活の中で病者を支えていく、ということである。米国での実践例である。

その中で、向精神薬を長期に服用している場合に、それをやめようと試みた、という話が出てくる。薬をやめると、どうしても精神病の症状がでてきてしまう。薬をやめることはできなかった。減らすことはできた、というのである。

患者会の仲間の話を聞くと、多少事情が異なる。薬を飲まないで、元気に働いている人もいる。薬を飲まないと眠れない、というのは思い込みで、肉体労働で疲れると、ぐっすり眠れる、という人もいた。私は薬がやめられない。私の仕事は肉体労働ではなく、事務だった。

著者の長男は、やはり統合失調症を発病したが、薬は早くやめることができて、今は元気に働いているという。

日本では、多種類の向精神薬をいっしょに飲ませることが多い。外国では、1種類だけというのが通例である。ひとり当たりの服用量は、日本が圧倒的に多い。

この本の問題提起を正しく受け止めて、議論し研究し、対策を立てることを、切に望む。

 

アウトリーチ事業に関して厚生労働省担当部局に質問状

 

厚生労働省精神・障害保健課への質問

全国「精神病」者集団

1 精神科病院敷地内「地域移行型ホーム」、「退院支援施設」について以下質問する

今現在何箇所あり、それぞれ何床であるか、個別施設名も含め明らかにされたい

それぞれの施設がどれだけの地域移行を果たしたのか実績を明らかにされたい

それぞれの施設の入所期間分布を明らかにされたい

2 福祉ホームB型について以下質問する

今現在何箇所あり、それぞれ何床あるのか、個別施設名も含め明らかにされたい

それぞれの施設の入所期間分布を明らかにされたい

3 精神科療養病床について以下質問する

精神科療養病床は全国何箇所、それぞれ何床あるのか明らかにされたい

精神科療養病床における、入院期間別統計を明らかにされたい

4 アウトリーチ事業について

声明にあるようにこの事業は人権上および医療上も多大な問題があり、地域移行のためにはむしろ地域の支援団体障害者団体が精神病院や刑事施設にアウトリーチ(出張すること)の方が重要と考えるが、実態について以下説明を求める

① 誰からの通報で、誰がどうした過程手続きで判断し、派遣を行うのか?

② 事業実行の過程において責任を持つのは誰なのか、あるいはどの機関なのか?

③ 現在2012年度の目標25都道府県のうち、手を挙げている都道府県機関はどれほどあるのか

③2011年度の試行実態について以下明らかにされたい

*何箇所で実施されたのか、施設名も含め明らかにされたい 実際費やされた費用についても明らかにされたい

*全国何名を対象にしたのか施設別対象者数を明らかにされたい

*この事業の実績としていかなる成果があったのか、その実態把握を行っているのか明らかにされたい

 

 

■ 年金診断書書式変更

今年8月から障害年金の診断書書式が変更されました。「みんなねっと」誌によると、まったく一方的変更で全国「精神病」者集団は当然、当事者団体はどこもヒアリングすら受けていないそうですが、裏面の日常生活能力の判定その他いろいろ変わっていますが、問題は新たに追加された現在時の就労状況、勤務形態や一月の給与仕事内容まで書くことになっています。これって年金切るためではないかと疑いたくなりますが、そもそも外来の医師がそこまで把握しているなんてありえないので、「みんなねっと」誌によると医師が診断書に書くべきことではないとして、日本精神科病院協会が年金局に交渉し、この部分に記載がないからという理由で受け付けずに返送するということをしないことを各年金機構に周知させることを約束させたとのことです。(日精協もたまにはいいこともする)。

今後診断書で更新手続きなさる方この点十分ご注意を、そして必ずコピーをとっておくこと重要。被災などしたら大変ですし、万一変更などあった場合の不服申し立てにも重要。

新たな書式で更新された方で影響があった方などいらしたら、ぜひ窓口まで情報を集中してください

 

 

■「強制の廃絶」を巡って―私の立場

            運営委員 桐原尚之  

全国「精神病」者集団の組織目的は、「差別と排除を許さない 強制医療・入院に反対する」である。組織目的の後ろ半分は、強制の廃絶を主張していると解するのが妥当かもしれない。一方で、強制が問題ではなく、実態としてある精神病院が問題であり、精神病院の廃絶が実態に即したスローガンであるとする立場もある。私は、こうした議論を重ねなければならないと思っている。スローガンとは、われわれの運動や差別の実態を端的にあらわす言葉であり、運動体として、もっともよい言葉を探さなければならないのだと思う。

その中で、私は「強制の廃絶」に拘りたいと考えている。もちろん、瀕死状態の者の緊急避難による医療を否定するつもりもない。まずは、生命が優先であるが、意識が回復した段階で治療を拒否した場合で生命の危機にある場合、ここから先の議論を詰めなければならないと思う。はたして、医療拒否を自己決定として最優先し権利として認めるのか、そのような自己決定が生命倫理の観点から認められないとするのか、考えなければならないだろう。でも、この投稿では、それについて触れることはしない。あくまで、「強制の廃絶」の意味を考えることにとどめたい。

強制とは、手続に関する概念である。強制という手続のはなし以前に、実態としての精神病院が問題とされなければならないことは言うまでもない。ほとんどの精神病院の中では、虐待、虐殺、脅迫、暴力、拘束、隔離、過剰投薬、電気ショックがある。これを問題にするのは当然であるが、運動という観点からは、一歩踏みとどまり、なぜ、このような理解不能な人権侵害の収容所が出来上がったのかを考える必要がある。ひとつは、偏見や差別といった社会的背景があるだろう。確かに、これを論じる必要もある。が、偏見や差別だけでは、精神病院がここまで膨れ上がる理由として、あまりにも不十分といわざるを得ない。偏見や差別を実体化させたのは、精神病院や精神科医に強制という権限を持たせた精神衛生法制であると考える。精神病院・精神科医に強制という権限を持たせたために、ここまで腐敗したのだということを私は言いたい。それから、精神病院・精神科医に強制という権限を与えたままにしているから、社会的入院の解消が進まないのだとも言いたい。故に、「強制の廃絶」とは、最終目標に設置するべき性質のものと理解しておらず、実態を改善するための一方法論(方法論としての強制の廃絶)として理解している。精神病院の権限を弱めることが、実態の改善に貢献できるものと思っている。

 

 

 

「強制の廃絶」を巡って―私の立場

 

            運営委員 桐原尚之  

全国「精神病」者集団の組織目的は、「差別と排除を許さない 強制医療・入院に反対する」である。組織目的の後ろ半分は、強制の廃絶を主張していると解するのが妥当かもしれない。一方で、強制が問題ではなく、実態としてある精神病院が問題であり、精神病院の廃絶が実態に即したスローガンであるとする立場もある。私は、こうした議論を重ねなければならないと思っている。スローガンとは、われわれの運動や差別の実態を端的にあらわす言葉であり、運動体として、もっともよい言葉を探さなければならないのだと思う。

その中で、私は「強制の廃絶」に拘りたいと考えている。もちろん、瀕死状態の者の緊急避難による医療を否定するつもりもない。まずは、生命が優先であるが、意識が回復した段階で治療を拒否した場合で生命の危機にある場合、ここから先の議論を詰めなければならないと思う。はたして、医療拒否を自己決定として最優先し権利として認めるのか、そのような自己決定が生命倫理の観点から認められないとするのか、考えなければならないだろう。でも、この投稿では、それについて触れることはしない。あくまで、「強制の廃絶」の意味を考えることにとどめたい。

強制とは、手続に関する概念である。強制という手続のはなし以前に、実態としての精神病院が問題とされなければならないことは言うまでもない。ほとんどの精神病院の中では、虐待、虐殺、脅迫、暴力、拘束、隔離、過剰投薬、電気ショックがある。これを問題にするのは当然であるが、運動という観点からは、一歩踏みとどまり、なぜ、このような理解不能な人権侵害の収容所が出来上がったのかを考える必要がある。ひとつは、偏見や差別といった社会的背景があるだろう。確かに、これを論じる必要もある。が、偏見や差別だけでは、精神病院がここまで膨れ上がる理由として、あまりにも不十分といわざるを得ない。偏見や差別を実体化させたのは、精神病院や精神科医に強制という権限を持たせた精神衛生法制であると考える。精神病院・精神科医に強制という権限を持たせたために、ここまで腐敗したのだということを私は言いたい。それから、精神病院・精神科医に強制という権限を与えたままにしているから、社会的入院の解消が進まないのだとも言いたい。故に、「強制の廃絶」とは、最終目標に設置するべき性質のものと理解しておらず、実態を改善するための一方法論(方法論としての強制の廃絶)として理解している。精神病院の権限を弱めることが、実態の改善に貢献できるものと思っている。

利用者数の増加ではなく貧困の拡大が問題である~「生活保護利用者過去最多」に当たっての見解~

生活保護問題対策全国会議 、全国生活保護裁判連絡会、全国生活と健康を守る会連合会、近畿生活保護支援法律家ネットワーク、東海生活保護利用支援ネットワーク、生活保護支援ネット ワーク静岡、生活保護支援九州ネットワーク、神戸公務員ボランティア、関西合同労働組合、北九州市社会保障推進協議会、福岡生存権裁判弁護団、生存権裁判 新潟弁護団、NPO法人青森ヒューマンライトリカバリー、東京借地借家人組合連合会、無年金者同盟、NPO法人多重債務による自死をなくす会コアセン ター・コスモス、和歌山あざみの会、くにたち・あみてぃ、反貧困ネットワーク、反貧困ネットワーク栃木、反貧困ネットワーク神奈川、反貧困ネットワーク埼 玉、反貧困ネットワークあいち、反貧困ネット北海道、ユニオンぼちぼち(関西非正規等労働組合)、京都健康よろずプラザ、兵庫県精神障害者連絡会、NPO 法人神戸の冬を支える会、釜ヶ崎医療連絡会議、女性ユニオン東京、女性と貧困ネットワーク、しんぐるまざあず・ふぉーらむ、NPO法人しんぐるまざあず・ ふぉーらむ・福岡、しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄、女性のための街かど相談室 ここ・からサロン、発言するシングルマザーの会、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会、全国クレジッ ト・サラ金問題対策協議会、笹島診療所、生活保障支援の会・名古屋、自由と生存の家実行委員会、NPO法人ほっとプラス、ホームレス総合相談ネットワー ク、野宿者ネットワーク、みなから相談所、派遣労働ネットワーク・関西、社会保障解体に反対し公的保障を実現させる会、ホームレス法的支援者交流会、大阪 いちょうの会(大阪クレジット・サラ金被害者の会)、非正規労働者の権利実現全国会議、全国追い出し屋対策会議、全国公的扶助研究会、夜まわり三鷹、日本 アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会、首都圏青年ユニオン、労働者福祉中央協議会(中央労福協)、反貧困ネットワークえひめ、NPO法人松山たちば なの会、全国「精神病」者集団(以上60団体)

(問合先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
℡06-6363-3310 FAX 06-6363-3320 生活保護問題対策全国会議 弁護士 小久保哲郎

厚労省は、本日、2011年7月の生活保護利用者数が現行生活保護法において過去最多となったと発表した。利用者数に関するこの間の報道は、その増加自体 が問題であるかのようなものが多い。しかし、現在の経済不況や震災失業といった未曾有の危機的状況においても多数の国民が飢えることなく生活できているの は、憲法25条で保障された生活保護制度があればこそである。最後のセーフティネットとして機能している生活保護制度そのものの評価を下げるような報道に は違和感を覚える。問題とすべきは、貧困そのものの拡大である。その結果として、やむなく生活保護を利用せざるを得ない人が増加しているのが実状である。
当会議は、「生活保護利用者数過去最多」に当たって、以下の見解を公表するものである。

第1 見解の趣旨
第 1に、2011年6月の保護利用者数は204万1592人であったが、同年7月の同利用者数が約205万人となったといっても、保護率(保護利用者数の人 口比)は約1.6%にとどまり、現行生活保護法において過去最多数の1951年時の保護率2.4%に比してまだ3分の2程度であり、実質的には過去最多と はいえない。
第2に、すべての国民、市民に最低生活を保障するという生活保護の目的からみると、貧困率16%(2009年)に対して、保護率は1.6%にとどまり、やっと10分の1しか捕捉していない。資産要件(貯金)を加味しても3割余りの捕捉にとどまる。
第3に、諸外国との比較においても、日本の生活保護率、捕捉率は際立って低い。よって、生活保護がその役割を十分に果たしているとは到底いえない。
現在求められているのは、貧困の拡大に対して、社会保障制度を拡充し、雇用を立て直すとともに、生活保護制度の迅速な活用によって生活困窮者を漏れなく救済することである。

第2 見解の理由
1 過去最多は過去最大を意味しない ~1951年204万6千人との比較の意味~
(1)利用者数ではなく、保護率で比較するべき
1951年度の保護利用者数は204万6千人であるが、当時の人口は8457万人であるから、保護率は2.4%になる。これに対して、2011年7月の利 用者数が約205万人に達したといっても、現在の推計人口は1億2691万人であるから、保護率は1.6%にとどまる。すなわち、現在の保護率は、 1951年の3分の2程度である。当時と同等の保護率になるには、保護利用者が現在の約1.5倍の309万人に達する必要がある。
このように、実質的に「過去最高水準」と言えるか否かは、利用者数ではなく保護率で比較すべきである。保護率で見ると、近年増加しているとはいえ、未だ「過去最高水準」には遠く及ばないことに留意すべきである。

(2)当時も膨大な漏給(保護漏れ)状態であった
当時は戦後の混乱期の影響が色濃く残っており、膨大な生活困窮者が存在していたが、生活保護によって救済されていたのは2割にも満たなかった。例えば、 やっと戦後が終わったといわれる1955年でも、当時の厚生行政基礎調査(現・国民生活基礎調査)によれば、生活保護世帯の消費水準と同等かそれ以下の水 準に留まっている世帯は、204万2千世帯、999万人にも上っていた。これに対して、当時の保護利用者は、66万1千世帯、192万9千人にとどまって いた。したがって、1951年の保護利用者204万6千人といっても、膨大な生活困窮者の中のごく一部分であることに留意すべきである。

(3)当時は社会保障制度が未整備であり、生活保護がワーキングプアを引き受けていた
当 時は、戦後の混乱期の影響から、低賃金労働者が広範に存在していたが、社会保障制度が未整備な段階であった(最低賃金法は1959年、国民皆年金皆保険は 1961年)。このため、1951年では、世帯主稼働世帯(世帯員のみ稼働除く)55.3%、1958年では稼働世帯(世帯員のみ稼働も含む)57.7% であった。これに対して、2010年11月の稼働世帯は13.4%にとどまる。1951年当時は、現在以上にワーキングプアを生活保護で支えなければなら ない状況であり、生活保護への負担がかかって当然であった(にもかかわらず、漏給が多かったのは(2)で述べたとおり)から、この点も留意すべきである。

2 先進諸外国に比べて日本の保護率は著しく低い
参考図 にあるように、日本の保護率は異常に低い。諸外国では、スウェーデンを始め、少なくとも日本の3倍以上である。また、捕捉率(収入ベースで、貧困水準未満の世帯中の保護利用世帯)も、イギリスを始め、少なくとも日本の3倍以上である。

3 生活保護利用者増加の背景にある雇用と社会保障制度の不全
(1)なぜ生活保護利用者が増えているのか
近年、稼働年齢層を含む「その他世帯」の比率が増加しているとはいえ13.5%にとどまり、高齢者世帯(44.3%)と傷病・障害者世帯(34.3%)が 約8割を占めている(21年度)。すなわち、日本で生活保護利用者が増えているのは、まずもって、年金制度が未成熟で生活保障機能に乏しく、無年金低年金 の高齢者や障害者が多数存在することに原因がある。また、非正規雇用の蔓延等によって雇用が不安定化し低賃金の労働者や長期失業者が増えたこと、雇用保険 のカバー率が失業者の2割程度と著しく低いこと、子育て世代への支援が乏しく、低所得者に対する住宅セーフティネットもほとんど存在しないことなど、生活 保護の手前にある雇用や社会保障制度の手薄さに原因がある。
こうした状況の中で「最後のセーフティネット」と言われる生活保護の利用者数が増えることはむしろ当然のことであり、多くの生活困窮者の生存を支えているという積極的な面にこそ目を向けるべきである。
問 題は、「生活保護利用者が増えていること」や「生活保護利用者そのもの」にあるのではなく、そうならざるを得ない雇用やその他の社会保障制度の脆弱性にあ る。こうした生活保護利用者増加の真の原因を解決しないまま、生活保護制度や制度利用者を問題視することでは解決にならないし、中長期的には却って問題を こじらせることが明らかである。生活保護制度を切り縮めることではなく、低賃金・不安定雇用への規制を強化し、雇用保険、年金、健康保険、児童扶養手当、 子ども手当、住宅手当、生活保障付き職業訓練などの中間的セーフティネットを充実することこそが求められている。

(2)すべての市民に最低生活を保障するという生活保護の目的からみてどうか
上記のとおり、貧困が広がる中、生活保護制度が積極的な機能を果たしつつあるものの、未だ十分にその本来の機能を果たし得ているとは言えない状況にある。
す なわち、相対的貧困率(2009年)は過去最高の16%に達している(2011年7月厚労省 )。これに対して、保護率は1.6%にとどまり、生活保護で救済されているのは、やっと1割である。資産要件(貯金)を加味しても3割余りの捕捉にとどま る(2010年4月厚労省)。この要因は、①生活保護水準以下の収入で生活しているにもかかわらず、現行の厳しい受給要件(最低生活費の1か月分以上の預 貯金を保有していると保護が開始されない。自動車の保有や使用は原則として認められない。64歳まで稼働能力の活用を求められるなど)を満たさず受給でき ない世帯、②現行の受給要件を満たしているにもかかわらず、行政の違法な窓口対応(いわゆる「水際作戦」)や違法な指導指示によって保護から排除されてい る世帯、③行政の広報不足から自らが受給要件を満たしていることを知らない世帯、④世間の偏見、スティグマから申請を思いとどまっている世帯等、膨大な生 活困窮者が生活保護から排除されていることにある。
以上のように、1951年当時の人口、生活保護での救済率、生活保護の目的、海外主要国の公的扶助率等から検証すると、日本の生活保護がその機能を十分に果たしているとは到底いえない。

4 「不正受給」は実態に即した冷静な議論と対策が必要
不正受給報道が多いため、生活保護=不正受給というイメージが蔓延している。しかし、「不正受給」の実態を、量的・質的な両側面から冷静に捉えることが必要である。
確かに、不正受給の絶対額は年々増えているが、それは、受給者増に伴い生活保護費の総額が増えていることに伴う当然のことである。発生率で見ると、2009年度では1.54%(発生件数/世帯数)、金額では0.33%にとどまり(別図表 )、大きな変動はない。
ま た、不正受給とされるケースの内実はさまざまである。北海道滝川市で06年-07年に起きた元暴力団員による巨額の通院移送費不正受給事件のように悪質な ものもあるが、これは役所の姿勢の甘さにも根本的な問題がある。一方で、わずかな勤労収入の不申告が不正受給とされることも多い。そこには、高校生のアル バイト収入の扱いなど制度の側を見直すべきものも含まれる。
不正受給を解決するには、「不正受給」の背景や要因を、行政の責任も含めて明確にし、高校生のアルバイト収入等などの収入認定除外などの運用の改善、利用者へ申告義務の徹底、ケースワーカーの基準に従った配置(80利用世帯に対して1名)と専門性の向上などが重要である。
さ らに、無料低額宿泊所、「福祉」アパート、悪質医療機関など、いわゆる「貧困ビジネス」といわれる問題についても、当事者が生活保護を受給していることに 問題があるわけではない。生活保護受給者を食い物にする業者と、それを容認し、むしろ活用している行政に問題があるのであって、悪質業者に対する規制を強 化することによって対応すべき事柄である。

第3 まとめ
現在求められているのは、過去最 高の貧困の拡大に対して、雇用を建て直し、雇用保険を始めとする社会保険の充実、第2のセーフティネットなど生活保護に至る前の社会保障制度を拡充して、 生活保護制度への負担を軽減することである 。また、それらの社会保障制度から漏れる市民を、生活保護制度の迅速な活用によって漏れなく救済することである。
以 上

(1)保護率・捕捉率の国際比較
1 保護率 ~日本の保護率(利用者/人口)は異常に低い。
(注)アメリカはSNAP(補足的栄養扶助)
注1

2 捕捉率  ~日本の捕捉率(貧困水準未満の世帯中の保護利用世帯)も低い。
(注)日本・スウェーデンは当該国の公的扶助水準比、独・仏・英はEU基準比(所得中央値の60%、英は求職者)

gazo2

(2) 相対的貧困率…日本に住む人を、所得の低い人から高い人からへ順番に並べ、まん中にあたる人の所得(中央値)の半分(112万円)に満たない人の割合。収 入金額では、単身世帯では月収9万3千円未満、4人世帯では同じく18万6千円未満の世帯に属する人口の割合。結果的には生活保護基準とさほど変わらな い。

(3)
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(4) 雇用状況等のデータ一覧
○ 完全失業率4.3%、完全失業者数276万人。有効求人倍率0.66倍(パート込み)。正社員は0.39倍。91万人分の仕事が足りない状況(いずれも2011年8月))
○ 完全失業者に対する失業給付のカバー率は20.9%(2008年)。
○ 基礎年金のみか旧国民年金受給者数は852万人、年金月額4万8,900円(2009年)
○ 国民健康保険料滞納世帯445万(全加入世帯中20.8%)、短期証交付世帯数120万、資格証世帯31万(いずれも2009年)。資格証の受診率は一般世帯の53分の1。国民年金保険料滞納世帯は4割超
○  2011年10月から職業訓練中の生活保障給付制度が法制化され、求職者支援法が施行された。これは一歩前進といえるが、現在実施されている住宅手当制 度も支給対象や内容を拡充したうえで、欧米諸国と同様に、より普遍的な家賃補助制度として法制化することが求められる(このままでは2012年3月で終 了)。

 

日弁連『死刑を考える日」

本年は、韓国の実話をもとにした映画「ハーモニー 心をつなぐ歌」を上映し、韓国の制度およびそれを取り巻く環境と、我が国の状況を比較しながら、死刑についての議論を深めるため、イベントを開催することといたしました。

「死刑を考える日」
★日時:2011年12月9日(金)午後6時~午後8時30分
○会場:弁護士会館2階クレオA
(東京都千代田区霞が関1-1-3)
○内容
韓国の実話をもとにした映画「ハーモニー 心をつなぐ歌」を上映
し、韓国の制度およびそれを取り巻く環境と、我が国の状況を比較
しながら、みなさまとともに、死刑についての議論を深めるため、
イベントを開催することといたしました。
 プログラム(予定)
・映画「ハーモニー 心をつなぐ歌」の上映
・解説 韓国と日本の死刑制度について
・人権擁護大会シンポジウム報告 など
○参加費:無料
○主催:日本弁護士連合会
○問合せ先:日本弁護士連合会 法制部法制第二課
TEL:03-3580-9948
※詳細は以下のページをご参照ください
http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2011/111209.html

国内人権機関をつくろう パンフダウンロード

〈国内人権機関と選択議定書を実現する共同行動〉で発行した「国内人権機関を作ろう」というパンフレットを以下かダウンロードできるようにいたしました。

 

国内人権機関をつくろう ワード版

国内人権機関を作ろう PDF版

 

〈国内人権機関と選択議定書を実現する共同行動〉とは

国内人権機関と選択議定書という2つの人権救済制度を日本でも利用できるようにするために、2009 年にいくつかの市民団体と個人が集まったゆるやかなネットワークです。主には、この2つの制度の実現を求める要請や提言発表、院内集会、議員との情報交換などをおこなってきました。

ゆるやかなネットワークとして活動しているため、確定した参加団体があるわけではありません。しかし、これまで会議や要請をおこなってきた際に主に参加した団体としては、

公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本

移住労働者と連帯する全国ネットワーク

外国人人権法連絡会

外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会

監獄人権センター

コミュニティサポート研究所

「婚外子」差別に謝罪と賠償を求める裁判を支援する会

在日韓国人問題研究所

在日無年金問題関東ネットワーク

人権市民会議

全国「精神病」者集団

反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)

フォーラム平和・人権・環境

などがあります。