障害者基本法の抜本改正についてのJDF統一要求書

2011年2月 24日

障害者基本法の抜本改正についてのJDF統一要求書

日本障害フォーラム(JDF)

代表 小川 榮一

日本障害フォーラムは、今国会で改正される予定となっている障害者基本法は、「障害者の権利に関する条約」(以下、障害者権利条約)、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(以下、第一次意見)」(閣議決定中心)、「障害者制度改革の推進のための第二次意見」(以下、第二次意見)を最大限尊重し、これらの内容を下回らないことを強く求める。障害者権利条約は、障害者を保護・施策の客体から権利の主体へ捉え直すこと及び差別のない社会づくりを求めており、障害者基本法は、障害者の権利の保障という観点から抜本的に改正されることが求められている

本年2月14日,内閣府より「障害者基本法の改正について(案)」(以下、「改正案」)が障がい者制度改革推進会議に提出された。しかしながら、その内容は、障害者権利条約や第一次意見、第二次意見の内容を十分に反映したものとなっていない。

特に、以下、重要項目についてJDFとしての要求を提示する。

1.前文(新設)

今回の障害者基本法の改正は、障害者権利条約の批准とそれ以降の差別禁止を含む関連法制度の整備、施策のモニタリング等を担保するための抜本改正であるため、前文を設け、そこで改正の経過並びに趣旨を明示すること。

2.目的

今回の障害者基本法の改正は、「障害者の権利を保障する」ための施策を実施するものであることを規定し、障害者の権利の主体性を明確にすべきである。障害者権利条約は、障害者を「保護・施策の客体から権利の主体へ」とパラダイム転換をするための条約であり、それに基づいた目的規定をすること。

3.障害者の定義

障害者を障害の社会モデルとしてとらえることを明確にするため、「改正案」の「~身体障害、知的障害、精神障害、その他の心身の機能の障害(以下、「障害」と総称する)がある者であって、障害及び社会的障壁により(以下略)」を、「~身体障害、知的障害、精神障害その他の機能の障害(以下、「障害」と総称する)がある者であって、障害及び社会的障壁との相互作用により(以下略)」という書きぶりにすること。

また、「継続的」という文言に「周期的または断続的」という文言を追加すること。

理由は、「継続的に」という文言による継続要件により、今まで難病や精神障害など、心身の状態において一定ではなく、周期的または断続的に機能等の低下が起きる障害者が様々な制度から排除されてきた歴史があるためである。

4.地域社会における共生等

障害者が、障害のない人と平等に、どこで誰と生活するかを選択する権利を規定すること。「改正案」における「可能な限り」という文言は、障害のない人と平等にという意味で「障害者でないものと等しく」と変えること。

5.情報アクセスと言語・コミュニケーションの保障

コミュニケーションに困難を抱える障害者が障害のない人と等しく人権が保障されるように、様々な情報にアクセスし、また自ら必要とする言語を使用し、更に多様なコミュニケーション手段を利用することができるよう必要な施策を講ずることを規定すること。

手話等の非音声言語が言語であることを確認し、必要な言語の使用及びコミュニケーション手段の利用が保障されることを規定すること。

「改正案」における「可能な限り」という文言は、「障害者でないものと等しく」とすること。

6.差別の禁止と合理的配慮の定義(改正・新設)

障害者権利条約の「障害に基づく差別」の定義(同第2条)に基づく差別の定義(差別の三類型の定義)、並びに、合理的配慮の定義を行うこと。

障害者権利条約の規定に基づいて、「合理的配慮を行わないこと」(障害者権利条約上の「合理的配慮の否定」)が差別であることを明記すること(新設)。

7.地域生活を支える医療、人的支援(パーソナル・アシスタンスを含む)

国および地方公共団体は、障害者が地域で生活する権利を保障する施策として、医療、介護のほか、人的支援(パーソナル・アシスタンスを含む)の旨を明記すべきである。

医療、介護におけるインフォームド・コンセント(自由な意思に基づく同意・選択)、契約等における適正手続きを保障する旨、規定すること

8.障害のある女性(新設)

障害のある女性についての施策推進等の規定を行うこと。その際に、障害のある女性が複合的な困難を経験していることに十分に留意した規定にすること。

理由は、生殖や子育て、DVおよび性暴力についての障害のある女性に対する支援など、障害のない女性に比べて支援体制は脆弱である。2010年12月に閣議決定された「第三次男女共同参画基本計画」にも、「障害のある女性は、障害に加えて、女性であることで更に複合的に困難な状況に置かれている場合があることに留意する必要がある」とされており、早急に障害のある女性に対する独自の施策を推進する必要があるためである。

9.精神障害者(新設)

障害者権利条約や第二次意見にもとづいて、精神病床を適正な規模とすることや家族に特別な保護の責任を負わせないことを含む精神障害者等の地域移行の政策を規定し、また、精神医療における人権の保障について,障害のない人と平等な保障を担保する規定を入れること(精神障害者を一般社会から排除しないこと)。

理由は、減らない社会的入院、措置入院や医療保護入院等の非自発的医療について精神医療審査会が実質的に機能していないなど、患者の人権が十分に保護されてないことや、保護者制度の存在等により、精神障害当事者の自立(自律を含む)を妨げ、その家族に大きな負担を与えているためである。

10.教育

原則を共に学び育つインクルーシブ教育とし、本人や保護者が選択する場合は特別支援学校等での教育を受けることとすること(障害者が一般教育から排除されないこと)。

すべての障害者のニーズに応じた合理的配慮や支援の充実を明記すること。

言語としての手話での教育など、ろう者、難聴者又は盲ろう者にとって最も適切な言語やコミュニケーションを利用できる環境での教育の保障を明記すること。

11.労働(職業相談等、雇用促進等)

雇用政策において、障害者が必要とする合理的配慮及び必要な支援を確保するための施策を講ずることとすること。

労働政策と福祉政策を一体的に展開し、働くことを希望するすべての障害者が労働者として障害のない人と平等な扱いを受ける旨の規定を行うこと。これを踏まえた条文構成とすること(「改正案」第18条、第19条の一体化)。

12.推進体制

「改正案」では「障害者基本計画の実施状況を監視し」とあるところ、「障害者基本計画並びに障害者政策の実施状況を監視し」とすること。

新たにできる合議制の機関(「改正案」における障害者政策委員会)においては、構成メンバーの過半数を障害者とすること。

新たにできる合議制の機関は市町村も必置とすること。

以 上

日本身体障害者団体連合会

日本盲人会連合

全日本ろうあ連盟

日本障害者協議会

DPI日本会議

全日本手をつなぐ育成会

全国脊髄損傷者連合会

全国精神保健福祉会連合会

全国社会福祉協議会

日本障害者リハビリテーション協会

全国「精神病」者集団

全国盲ろう者協会

全日本難聴者・中途失聴者団体連合会

3・11 院内集会自殺はどうした医療観察法 17名の自殺を隠すのか?

3・11 院内集会
自殺はどうした医療観察法
17名の自殺を隠すのか?
日 時 :3月11日(金) 11:00~13:00
集合時間:10:30
集合場所:衆院第2議員会館ロビー
※入口で係りが入館証を渡します。

「心神喪失者等医療観察法」は昨年、2010年に法施行後5年が経過し、国会報告と法見直しの年を迎えていました。この法は一般の自殺率の50倍にも及ぶ17名の対象者を自殺に追い込み、入院中の24名の自殺未遂者をうみ出しました。これは単なる法の運営の問題ではなく、医療の名の下に無期限に強制入院、強制治療を強いる医療観察法の存在自体が重大な欠陥を有していることに他なりません。直ちに法の運営実態を詳らかに明らかにし、対象者を自殺に追いやったことを反省・謝罪すべきです。

しかしながら、厚生労働省、法務省は具体的な実態が一切明記されていない表面的な数値を並べただけの報告書を作成し、2010年11月26日に国会報告の閣議決定を行いました。国会の場で一切の議論をすることなく、議員に配布するだけで国会報告としたのです。私たちは、対象者を自殺に追いやり、精神障害者の偏見・差別を増長させる法の運営実態を明らかにすることを求め、心神喪失者等医療観察法の廃止に向けて院内集会を行います。ご参加のほどよろしくお願いします。
共同呼び掛け

心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな!ネットワーク
国立武蔵病院(精神)強制・隔離入院施設問題を考える会
心神喪失者等医療観察法をなくす会
NPO 大阪精神医療人権センター
東京都板橋区板橋2-44-10-203 オフィス桑気付
E-mail:kyodou-owner@egroups.co.jp
Fax.03-3961-0212
問合せ先 080-1984-6604
(平日16時~19時)

全国「精神病」者集団の政府部内調整中の障害者基本法改正(案)への意見書

2011年2月21日
全国「精神病」者集団の政府部内調整中の障害者基本法改正(案)への意見書
政府部内で調整中の障害者

基本法改正(案)

基本法改正に当たって政府に

求める事項に関する意見

全国「精神病」者集団の

見解

1)目的 この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有する個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することができる社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすること。 ○障害者が、障害のない人と等しく、基本的人権の享有主体であることを確認し、そのことを前提として障害者基本法の目的を改正すること。

○障害の有無にかかわらず、国民が分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会を実現するために、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて必要な施策を推進する旨を障害者基本法の目的に加えること。

○障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現は用いないこと。

2)定義 この法律において、一及び二に掲げる用語の意義は、それぞれ一及び二に定めるところによること。
障害者の定義を、身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいうものとすること。
社会的障壁の定義を、障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいうものとすること。
○障害の定義は、「社会モデル」の考え方を踏まえたものとするとともに、周期的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける場合も含まれるような包括的で幅広いものとすること。 ・障害の定義に周期的断続的がない。

・「障害および社会的障壁により」という表現は改められるべき。

・障害がimpairmentということになる。障害は、Disabilityであり、また、a social issueであるため、基本法も社会モデルでなければならない。

3)基本理念 1)に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として計画的に図られなければならないこと。

全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。

全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することができること。


全て障害者は、可能な限り、情報の取得若しくは利用又は意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されること。

○すべて障害者は障害のない人と等しく基本的人権の享有主体として個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。

○障害者権利条約における「地域社会で生活する平等の権利」を有することを確認すること。

○すべて障害者は必要とする支援を受けながら、自ら下した決定に基づき、社会を構成する一員として様々な分野の活動に参加する権利を有することを確認すること。

○手話等の非音声言語が言語であることを確認し、障害者が、必要な言語を使用し、必要なコミュニケーション手段を利用するという障害者権利条約における「表現及び意見の自由についての権利」を有することを確認すること。

・可能な限りは、削除されるべき。

・基本法による人権制限規定である。

・全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としているのに、二、三で、それを制限するかのように可能な限りが加えられるのは、おかしい。

4)差別の禁止 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないこと。
社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について合理的な配慮がされなければならないこと。
国は、1の違反の防止に関する普及啓発を図るため、当該違反の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとすること。
○障害者権利条約における直接または間接的な差別や合理的配慮の定義を踏まえ、障害に基づく差別に係る規定を見直すこと。

○国は、障害に基づく差別の実態を明らかにし、その防止に関する普及啓発を図るため、差別及びその防止に関する事例の収集、整理及び提供を行うものとすること。

・合理的配慮の欠如が差別にあたることを明確に示すべきである。

・合理的配慮の具体的な中身に関する議論は、差別禁止部会でされているが、合理的配慮の欠如が差別にあたることは、基本法で示されるべき。

・情報の収集、整理及び提供を行うものとあるが、これだけでは不十分である。施策を講じるとすることはできないのか。

5)障害のある女性 ○複合的な困難を経験している障害のある女性が置かれている状況に十分に配慮しつつ、その権利を擁護するために必要な施策を講ずること。 ・障害のある女性の条文がない。
6)障害のある子ども 国及び地方公共団体は、障害者である子ども及びその保護者が、可能な限り地域社会におけるその身近な場所において、療育の給付その他の支援が受けられるよう必要な施策を講じなければならないこと。
○障害のある子どもが障害のない子どもと等しく児童の権利条約等で認められている「意見表明権」を含む人権が認められ、一人の子どもとして尊重され、地域社会において必要な支援が提供されるとともに、その保護者等に対しても必要な支援が提供されるための施策を講ずること。 ・この場合の保護者とは、児童福祉法、学校教育法、少年法にある保護者に限定すべきであり、その旨が明確にわかるように示すべきである。

・可能な限りは、削除されるべきである。

・意志表明権を明示すべきである。

7)国及び地方公共団体の責務 国及び地方公共団体は、(3)から(5)までに定める基本原則(以下単に「基本原則」という。)にのつとり、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を策定し、及び計画的に実施することにより、障害者の福祉を増進する責務を有すること。 ○障害者権利条約における「地域社会で生活する平等の権利」を保障し、地域生活と社会参加に必要な支援を講ずるとともに、容易に合理的配慮を提供できるための支援を含め障害に基づく差別を防止する責務を有すること。

○障害の種別や程度に基づく不合理な制度的な格差を無くす責務を有すること。

○障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現は用いないこと。

・障害者の福祉を増進する責務とすることで、障害者を福祉施策の客体としてとらえる印象を少なからず与えるため、障害者の福祉ではなく、実施する責務を有すること、でいい。

・「地域社会で生活する平等の権利」についての規定がない。

・不合理な格差や合理的配慮の提供を含む差別の防止がない。

8)国民の理解・責務 (国民への理解)

国及び地方公共団体は、基本原則に関する国民理解を深めるよう必要な施策を講じなければならないこと。

(国民の責務)

国民は、基本原則にのつとり、(1)に規定する社会の実現に寄与するよう努めなければならないこと。

○障害のない人と等しく有する障害者の権利に関する国民の理解を深めるために必要な施策を講ずること。

○国民は、障害の有無にかかわらず、相互に権利を尊重しなければならないこと。

○障害者は庇護される対象であるかのような誤解を招く表現は用いないこと。

○事業者等は、障害者が障害のない人と共に同じ社会の一員であることを踏まえ、合理的配慮等により、その事業活動が障害者にも等しく及ぶことを認識し、障害者の権利の実現とその地位の向上に寄与するよう努めるものとすること。

・国民に障害者が含まれないかのような誤解を与える。
9)国際的協調 (国際的協調

1)に規定する社会の実現は、そのための施策が国際社会における取組と密接な関係を有していることに鑑み、国際的協調の下に図られなければならないこと。

(国際協力)


国は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を国際的協調の下に推進するため、外国政府、国際機関又は関係団体等との情報の交換その他必要な施策を講ずるように努めるものとすること。

○障害者に関する施策は、障害者の尊厳の尊重及び権利の確保に資する観点から、国際的協調の下に行われなければならないこと。
10)障害者週間 1 国民の間に広く基本原則に関する関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することを促進するため、障害者週間を設けること。

2 障害者週間は、十二月三日から十二月九日までの一週間とすること。
3 国及び地方公共団体は、障害者の自立及び社会参加の支援等に関する活動を行う民間の団体等と相互に緊密な連携協力を図りながら、障害者週間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならないこと。

○障害者の社会参加を促進する観点から障害者週間を位置づけ、障害者の団体を始めとする民間団体等の参画を得るとともに、障害者は庇護される対象であるかのような誤解を招く表現は用いないこと。
11)施策の基本方針 1 障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策は、障害者の性別、年齢障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならないこと。
国及び地方公共団体は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を講ずるに当たつては、障害者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければならないこと。
○障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者の自立及び社会参加を困難にする社会的な要因を除去する観点から行うものとし、障害者の性別、年齢、障害の状態に配慮するとともに、それぞれの障害者の選択した生活形態や環境を含む生活の実態やその困難さに基づいて必要な支援の提供が計画、実施されなければならないこと。

○障害者への必要な支援等、障害者権利条約における「地域社会で生活する平等の権利」を踏まえ必要な施策が講じられなければならないこと。

○障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者及び関係者の意見を聴き、当該意見が可能な限り尊重されなければならないこと。

○障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現は用いないこと。

・障害者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければならないこととあるが、努力義務とすべきでない。

・障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を講ずるに当たつては、障害者権利条約第四条に規定された締約国の義務の条項に準拠し、意思決定過程において、障害者を代表する団体を通じ、障害者と緊密に協議し、及び障害者を積極的に関与させること、とすべきである。

・「地域社会で生活する平等の権利」についての記述がない。

12)その他

計画

(障害者基本計画等)

1 政府は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなければならないこと。

2 都道府県は、障害者基本計画を基本とするとともに、当該都道府県における障害者の状況等を踏まえ、当該都道府県における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「都道府県障害者計画」という。)を策定しなければならないこと。

3 市町村は、障害者基本計画及び都道府県障害者計画を基本とするとともに、地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二条第四項 の基本構想に即し、かつ、当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、当該市町村における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「市町村障害者計画」という。)を策定しなければならないこと。

4 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、障害者政策委員会の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないこと。

5 都道府県は、都道府県障害者計画を策定するに当たつては、(34)の1の審議会その他の合議制の機関の意見を聴かなければならないこと。

6 市町村は、市町村障害者計画を策定するに当たつては、(34)の4の審議会その他の合議制の機関を設置している場合にあつてはその意見を、その他の場合にあつては障害者その他の関係者の意見を聴かなければならないこと。

○障害者及び関係者の参画を得て、障害者のための施策に関する基本的な計画(国にあっては障害者基本計画、地方公共団体にあっては都道府県又は市町村障害者計画)を策定すること。

7 政府は、障害者基本計画を策定したときは、これを国会に報告するとともに、その要旨を公表しなければならないこと。

8 2又は3の規定により都道府県障害者計画又は市町村障害者計画が策定されたときは、都道府県知事又は市町村長は、これを当該都道府県の議会又は当該市町村の議会に報告するとともに、その要旨を公表しなければならないこと。

9 4及び7の規定は障害者基本計画の変更について、5及び8の規定は都道府県障害者計画の変更について、6及び8の規定は市町村障害者計画の変更について準用すること。

予算措置 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならないこと。 ○国は、障害者基本法の目的を達成するために、差別禁止法制を含む必要な法制上及び財政上の措置を講ずること。
年次報告 政府は、毎年、国会に、障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を提出しなければならないこと。 ○国は、障害者の状況及び障害者のために講じた施策等の概況に関する報告書を毎年国会に提出すること。
1)地域生活 ○障害者が地域社会において生活する権利を実現する上で必要とする支援が制度の谷間なく、かつ障害者の様々な日常生活や活動において、自らの必要に応じて提供されるよう、多様な選択肢の確保を含む必要な施策を講ずるとともに、障害者の地域移行を計画的に推進すること。

その際、家族に対する支援も含め、専ら家族に依存することがないようにするための必要な措置を講ずること。

○利用者負担に関して、仮に負担が求められる場合でも、定率負担とすることなく、また本人の所得を基礎とすること。

・地域移行の計画的推進などを定めた地域生活の条文をつくるべきである。
2)労働及び雇用 1 国及び地方公共団体は、障害者の雇用を促進するため、障害者の特性を踏まえつつ、優先雇用その他の施策を講じなければならないこと。
2 事業主は、障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適切な雇用の場を与えるとともに、個々の障害者の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならないこと。
3 国及び地方公共団体は、障害者を雇用する事業主に対して、障害者の雇用のための経済的負担を軽減し、もつてその雇用の促進及び継続を図るため、障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等に要する費用の助成その他必要な施策を講じなければならないこと。
○労働政策と福祉政策を一体的に展開し、働くことを希望するすべての障害者が合理的配慮及び必要な支援を受けることにより、障害のない人と平等に労働者としての権利が守られ、生計を立て得る収入が得られるとともに、働く機会が確保されるよう、必要な施策を講ずること。

○障害者が障害のない人と平等に生計を立てる機会を安定的に確保できるよう、自営も含め多様な就業の場を創出するとともに、仕事等の確保も含む必要な施策を講ずること。

○障害者雇用義務の対象を身体障害、知的障害から、他のあらゆる種別の障害に拡大するとともに、職業上の困難さに着目した障害認定を行うために必要な措置を講ずること。

・障害のない人と平等に生計を立てる機会が確保されるよう、必要な施策を講ずるべきである。

・ここの障害者の特性に応じた適正な雇用管理は、障害のない人と平等に生計を立てる機会と矛盾するため、変更されるべきである。

3)教育 1 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢、能力及び障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならないこと。
2 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関する調査及び研究、人材の確保及び資質の向上並びに学校施設の整備を促進しなければならないこと。
3 国及び地方公共団体は、障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならないこと。
○障害のある子どもは、他の子どもと等しく教育を受ける権利を有し、その権利を実現するためにインクルーシブな教育制度を構築すること。

○障害のある子どもとない子どもが、同じ場で共に学ぶことができることを原則とするとともに、本人・保護者が望む場合に加えて、最も適切な言語やコミュニケーションを習得するために特別支援学校・学級を選択できるようにすること。

○就学先の決定に際し、本人・保護者の意に反して決定がなされないことを原則とすること。

○障害のある子どもの個別のニーズに的確にこたえるため、合理的配慮や必要な支援が提供されるために必要な施策を講ずること。

・障害の状態に応じなど分離教育を前提とした条文であるため、全面的に修正されるべきである。院内教室は、地域の学校が担い合理的配慮と位置付けられるべきである。
4)健康、医療 1 国及び地方公共団体は、障害者が生活機能を回復し、取得し、又は維持するために必要な医療の給付及びリハビリテーションの提供を行うよう必要な施策を講じなければならないこと。
2 国及び地方公共団体は、医療若しくは介護の給付又はリハビリテーションの提供を行うに当たつては、障害者が、可能な限り地域社会におけるその身近な場所においてこれらを受けられるよう必要な施策を計画的に講ずるものとするほか、その人権に十分配慮しなければならないこと。
国及び地方公共団体は、1に規定する医療及びリハビリテーションの研究、開発及び普及を促進しなければならないこと。
国及び地方公共団体は、障害者がその性別、年齢障害の状態及び生活の実態に応じ、医療、介護、生活支援その他自立のための適切な支援を受けられるよう必要な施策を講じなければならないこと。
国及び地方公共団体は、1及び4に規定する施策を講ずるために必要な専門的技術職員その他の専門的知識又は技能を有する職員を育成するよう努めなければならないこと。
国及び地方公共団体は、福祉用具及び身体障害者補助犬の給付又は貸与その他障害者が日常生活及び社会生活を営むのに必要な施策を講じなければならないこと。
国及び地方公共団体は、前項に規定する施策を講ずるために必要な福祉用具の研究及び開発、身体障害者補助犬の育成等を促進しなければならないこと。
○障害者の人権を確保しつつ、必要な医療が提供されるために必要な施策を講ずること。

○障害者が地域社会で自立した生活を営むことができるよう、日常生活における可能な限り身近なところで必要な医療や支援サービスが提供されるために必要な施策を講ずること。

○障害の原因となる難病等の治療や症状の軽減に係る調査及び研究を推進すること。

・介護ではなく介助とすべき。

・医療と介護(介助)は別けられるべきであり、同じ条項にまとめられるべきではない。介助の条項を別に定めるべき。

・リハビリテーションは、医療及び介護(介助)の一部ではない。また、リハビリテーションだけではなく、ハビリテーションも入れられるべきである。

・「介護の給付」との規定は、総合福祉法のパーソナルアシスタント等の議論の著しく影響を及ぼすため、削除されるべきである。

・「その人権に十分配慮」という表現では不足。「他のものと平等な自由なインフォームドコンセントの保障、および自発的ものでなければならない」、とすべき。

5)障害原因の予防 1 国及び地方公共団体は、障害の原因となる傷病及びその予防に関する調査及び研究を促進しなければならないこと。
2 国及び地方公共団体は、障害の原因となる傷病の予防のため、必要な知識の普及、母子保健等の保健対策の強化、当該傷病の早期発見及び早期治療の推進その他必要な施策を講じなければならないこと。
3 国及び地方公共団体は、障害の原因となる難病等の予防及び治療が困難であることにかんがみ、障害の原因となる難病等の調査及び研究を推進するとともに、難病等に係る障害者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めなければならないこと。
○障害に対する否定的な考え方を前提とする表現は用いないこと。

○障害の原因の予防のための施策は、公衆衛生又は医療に係る施策の一環として講ずること。

6)

精神障害者に係る地域移行の促進と医療における適正手続きの確保

○精神障害者の社会的入院を解消し、強制的措置を可能な限り無くすため、精神病床数の削減その他地域移行に関する措置を計画的に推進し、家族に特別な保護の責任を負わせることなく、地域社会において必要な支援を受けながら自立した生活を送れるよう通院及び在宅医療のための体制整備を含め必要な施策を講ずること。

○障害者に対する非自発的な入院その他の本人の意思に基づかない隔離拘束を伴う例外的な医療の提供に際しては、基本的人権の尊重の観点に基づき、当該医療を受ける障害者に対して、障害のない人との平等を基礎とした実効性のある適正手続を保障する制度を整備すること。

7)相談等 (相談)

国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者に対する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならないこと。

(職業相談等)

1 国及び地方公共団体は、障害者の多様な就業の機会の確保に努める等、その職業選択の自由を尊重しつつ、障害者がその能力に応じて、適切な職業に従事することができるようにするため、個々の障害者の特性に配慮した職業相談、職業指導、職業訓練及び職業紹介の実施その他必要な施策を講じなければならないこと。

2 国及び地方公共団体は、障害者に適した職種及び職域に関する調査及び研究を促進しなければならないこと。

3 国及び地方公共団体は、障害者の地域における作業活動の場及び障害者の職業訓練のための施設の拡充を図るため、これに必要な費用の助成その他必要な施策を講じなければならないこと。

○障害者が必要なコミュニケーション手段の提供を受けながら身近な地域で相談することができるための施策を講ずること。

○障害者に対する人権侵害に関する事項を含む多様な相談が適切に行われるよう相談体制の整備を図り、障害者自身又は家族による相談やそれ以外の者による相談等、相談を行う者に対する必要な研修等を行い、制度に位置づけること。

・障害者及びその家族その他の関係者による相談業務とするべき。

・成年後見制度を削除すべきである。

8)住宅 (住宅の確保)

国及び地方公共団体は、障害者が地域社会において安定した生活を営むことができるようにするため、障害者のための住宅を確保し、及び障害者の日常生活に適するような住宅の整備を促進するよう必要な施策を講じなければならないこと。

○障害者の地域移行を促進し、地域社会における生活を実現するため、様々な障害者自らの必要に応じた住宅を確保するために必要な施策を講ずること。

(政府に求める今後の取組みに関する意見)

○障害者の個々のニーズに応じた住宅を確保するため、公営住宅を含めた賃貸住宅等が的確に供給されるよう、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。

○住宅のバリアフリー化を促進するための支援策について検討を行い、平成24年内を目途に結論を得る。

○公的な家賃債務保証制度を利用しやすくするための具体的方策や、住宅セーフティーネット法に基づく居住支援協議会が有効に活用されるための具体的方策について検討し、平成24年内を目途に結論を得る。

○民間賃貸住宅の利用に当たり生じ得る障害に基づく入居拒否の問題への対処を含め、障害者が円滑に民間賃貸住宅へ入居できるよう、必要な支援について、差別禁止部会での議論を踏まえて検討し、平成24年度内を目途に結論を得る。

○グループホーム等の建設に際し、地域住民との間において生ずるトラブルへの対応については、差別禁止部会における議論も踏まえつつ検討し、平成24年度内を目途に結論を得る。

9)ユニバ|サルデザインと技術開発 ○ユニバーサルデザインの理念があらゆる施策に反映されるようにすること。

○障害者が自立した日常生活や社会参加を行うために必要な福祉用具等の研究開発や普及のために必要な施策を講ずること。

・規定がない。
10)公共的施設のバリアフリ|化と交通・移動の確保 (公共的施設のバリアフリー化)
1 国及び地方公共団体は、障害者の利用の便宜を図ることによつて障害者の自立及び社会参加を支援するため、自ら設置する官公庁施設、交通施設その他の公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進を図らなければならないこと。
2 交通施設その他の公共的施設を設置する事業者は、障害者の利用の便宜を図ることによつて障害者の自立及び社会参加を支援するため、当該公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進に努めなければならないこと。
3 国及び地方公共団体は、2の規定により行われる公共的施設の構造及び設備の整備等が総合的かつ計画的に推進されるようにするため、必要な施策を講じなければならないこと。
4 国、地方公共団体及び公共的施設を設置する事業者は、自ら設置する公共的施設を利用する障害者の補助を行う身体障害者補助犬の同伴について障害者の利用の便宜を図らなければならないこと。
○切れ目のない交通・移動手段を確保する観点から、障害者のニーズを踏まえ、大都市部のみならず地方部においてもバリアフリー化を計画的に推進するとともに、適切な接遇や合理的配慮を確保するために必要な施策を実施すること。

11)情報アクセスと言語・

コミュニケ|ション保障

(情報の利用におけるバリアフリー化)

1 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、その意思を表示及び他人との意思疎通を図ることができるようにするため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならないこと。

2 国及び地方公共団体は、災害その他非常の事態が生じた場合に安全を確保するため必要な情報が迅速かつ的確に障害者に伝えられるよう必要な施策を講ずるものとするほか、行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に当たつては、障害者の利用の便宜が図られるよう特に配慮しなければならないこと。

3 電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びに電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の製造等を行う事業者は、当該役務の提供又は当該機器の製造等に当たつては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならないこと。

○障害者が様々な情報にアクセスし、また自ら必要とする言語を使用し、更に多様なコミュニケーション手段を利用することができるよう必要な施策を講ずること。

○災害情報の提供に当たっては、障害者の特性に配慮した伝達手段が提供されるよう必要な施策を講ずること。

12)文化・スポ|ツ (文化的諸条件の整備等)
国及び地方公共団体は、障害者が円滑に文化活動、スポーツ又はレクリエーションを行うことができるようにするため、施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等に関する活動の助成その他必要な施策を講じなければならないこと。
○障害者が文化・スポーツ等の分野において様々な活動をすることができるようにするために必要な施策を講ずること。

○文化・スポーツ等の分野において、障害者は庇護の対象であるかのような誤解を招く表現は用いないこと。

○障害者が芸術・文化活動をする際に必要な配慮や支援等が提供されるための環境整備を図るための具体的方策を検討し、平成23年度内を目途にその結論を得る。

○障害者スポーツ振興のために必要な環境整備を図るとともに、障害者スポーツの指導者の育成等の在り方について検討し、平成23年度内を目途にその結論を得る。

13)所得保障 (年金等)
国及び地方公共団体は、障害者の自立及び生活の安定に資するため、年金、手当等の制度に関し必要な施策を講じなければならないこと。

(経済的負担の軽減)

国及び地方公共団体は、障害者及び障害者を扶養する者の経済的負担の軽減を図り、又は障害者の自立の促進を図るため、税制上の措置、公共的施設の利用料等の減免その他必要な施策を講じなければならないこと。

○障害者が地域社会において人としての尊厳にふさわしい自立した生活ができるよう、年金、手当等の制度に関し必要な施策を講ずるとともに、税制上の措置、公共的施設の利用料等の減免、就労支援との連携等、その他必要な施策を講ずるなど障害者が障害のために追加的に要する経済的負担の軽減を図るために必要な施策を講ずること。 ・年金等ではなく、所得保障とすべきである。

・公共交通を明文化すべきである。

14)政治参加 (選挙等における配慮)
国及び地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより行われる選挙、国民審査又は投票において、障害者が円滑に投票できるようにするため、投票所の施設又は設備の整備その他必要な施策を講じなければならないこと。
○障害者の選挙権及び被選挙権の機会の均等を図り、障害の種別や特性に応じた必要な施策を講ずること。

○選挙等の実施において、選挙等に係る情報の提供や投票等について障害の特性に配慮した施策を講ずること。

・投票所の施設又は設備の整備その他とあるが、ハード面のみの規定と読むこともできるので、選挙公報の情報保障などソフト面でのアクセス保障について明文の規定が入れられるべきである。

・被選挙の語がない。

15)司法手続き (刑事手続における配慮等)
国及び地方公共団体は、障害者が刑事事件の捜査若しくは審判又は刑、保護処分その他拘禁の処分の対象となつた場合において、障害者がその権利を円滑に行使することができるようにするため、個々の障害者の特性に応じて必要な意思疎通の手段の確保その他の必要な配慮をするとともに、平素から関係職員に対する研修その他の必要な施策を講じなければならないこと。
○司法手続及び刑事施設等の処遇において、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の確保等の必要な配慮がなされるとともに、関係職員に対して障害の理解等に関する研修を行うなどの必要な施策を講ずること。 ・司法手続きにおける配慮等という表題にして、民事訴訟や行政訴訟等の当事者に障害者がなった場合も同様の合理的配慮がなされるべきである。
16)国際協力 ・ 障害分野における国際協力に必要な取組を行うこと。

・ 障害分野における国際協力は、外国政府、国際機関又は障害者の組織を含む民間団体との連携により行うこと。

・ 障害分野における国際協力について、その取組の担い手及び受益者として障害者が参加できるように、国際協力事業全般のバリアフリーの促進とともに、合理的配慮の提供を確保すること。

○障害分野における国際協力を推進するため、外国政府、国際機関又は障害者の団体を始めとする民間団体等との連携や協力を図るために必要な施策を講ずること。

○国際協力の取組の担い手及び受益者として障害者が参加できるように、障害に特化したものだけではなく、国際協力事業全般において合理的配慮の提供を確保するとともに、バリアフリー化の促進を図ること。

1)

組織

(障害者政策委員会の設置)
内閣府に、障害者政策委員会を置くこと。

(障害者政策委員会の組織)
1 障害者政策委員会は
、委員三十人以内で組織すること。
障害者政策委員会の委員は、障害者、障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者及び学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命すること。この場合において、委員の構成については、障害者政策委員会が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた調査審議を行うことができることとなるよう、配慮されなければならないこと。
障害者政策委員会の委員は、非常勤とすること。
4 1~3に定めるもののほか、障害者政策委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定めること。

○中央障害者施策推進協議会及び障がい者制度改革推進会議を発展的に改組し、障害当事者、学識経験者等で構成する新たな審議会組織を内閣府に置くこと。

○新たに国に置かれる審議会組織は、障害者基本計画及び障害者に関する基本的な政策に関する調査審議を行うとともに、施策の実施状況を監視し、必要に応じて勧告を行うことができるようにすること。

○国に置かれる審議会組織は、改革の集中期間において、制度改革の推進に関する事項についても調査審議を行うものとすること。

○国に置かれる審議会組織が任務を十全に果たせるようにするため、関係行政機関、関係団体等に対し必要な協力を求めることができるようにすること。

○地方に置かれる審議会組織は、現行の事務に加えて、新たに施策の実施状況に関する監視に関する事務を行うこと。

・委員の過半数(三分の二程度)を障害者とすべき。
2)

所掌

事務

(障害者政策委員会の所掌事務)
1 障害者政策委員会は、次に掲げる事務をつかさどること。
一 障害者基本計画に関し、(11)の4((11)の9において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。
二 障害者基本計画に関する事項に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は関係各大臣に対し、意見を述べること。
三 障害者基本計画の実施状況を監視し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告すること。
2 内閣総理大臣又は関係各大臣は、1の三の規定による勧告に基づき講じた施策について障害者政策委員会に報告しなければならないこと。

(資料の提出要求等)


1 障害者政策委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができること。

2 障害者政策委員会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、1に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができること。

3)

地域委員会

(都道府県等における合議制の機関)

1 都道府県(地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)を含む。以下同じ。)に、次に掲げる事務を処理するため、審議会その他の合議制の機関を置くこと。

一 都道府県障害者計画に関し、(11)の5((11)の9において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。

二 当該都道府県における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項を調査審議し、及びその施策の実施状況を監視すること。

三 当該都道府県における障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議すること。

2 1の合議制の機関の委員の構成については、当該機関が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた調査審議を行うことができることとなるよう、配慮されなければならないこと。

3 2に定めるもののほか、1の合議制の機関の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定めること。

4 市町村(指定都市を除く。以下同じ。)は、条例で定めるところにより、次に掲げる事務を処理するため、審議会その他の合議制の機関を置くことができること。

・都道府県の審議会の構成員は、障害者を過半数とすべき(三分の二を障害者とすることなどの規定)。

・市町村についても設置を義務付けるべき。たとえば、小笠原諸島の障害者の実情を新宿にある都庁でのみ議論することは難しい。

市町村障害者計画に関し、(11)の6((11)の9において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。

当該市町村における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項を調査審議し、及びその施策の実施状況を監視すること。
当該市町村における障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議すること。

5 2及び3の規定は、4の規定により合議制の機関が置かれた場合に準用する。この場合において、3中「都道府県」とあるのは「市町村」と読み替えるものとすること。

政府部内調整中の障害者基本法改正(案)に対する意見書

2011年2月21日

内閣総理大臣 菅直人 殿

障がい者制度改革推進本部室長 東俊裕 殿

政府部内調整中の障害者基本法改正(案)に対する意見書

2011年2月14日に開催された第30回障がい者制度改革推進会議で、政府部内調整中の障害者基本法改正(案)が出されました。

私たちは、たとえ調整中のものであっても、障害者権利条約批准に向けた国内法整備としての障害者制度改革の場で、こうした内容のものがだされること自体、非常に問題があると考えます。

つきまして、障害者権利条約批准に向けた国内法整備として相応しい障害者基本法改正となるよう、次のとおり要望をします。

一 障害者制度改革のための第二次意見書の基本法改正にあたって政府に求める

事項に関する意見を全て反映すること。

対照表はこちら

「人としての尊厳を取り戻す闘い」を支援する会 通 信 №13 別冊

知られざる精神科医療の実態

目 次

1 多剤大量処方と妻の死のストーリー

-それは、ただの不眠の受診から始まった-・・・・・・・2

2 体験記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

Aさんの証言-新鮮な空気が吸いたかった…医療保護入院から閉鎖

病棟へ

Bさんの証言-もう少しで強制入院!

Dさんの医療保護入院の事例報告

3 入院患者さんの声・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

4 精神科事件史年表

-精神科で発覚した主な問題事件・・・・・・・・・・・・19

多剤大量処方と妻の死のストーリー -それは、ただの不眠の受診から始まった-

(メルマガ「MRIC」に掲載の記事を寄せて頂きましたので、原文のまま、報告させて頂きます)

私の妻は、軽い不眠で心療内科クリニックの門をたたき、最後は薬物中毒により命を失いました。これは、彼女の死の原因を追及し続け、5年でたどり着いた私の見解です。

自殺対策で、うつ病の早期発見が叫ばれています。ですが、その受け皿である精神科、心療内科にそれを受け止めるだけの能力は果たしてあるのでしょうか?

【治療の経緯】

・初診

不眠と軽い頭痛で訪れたクリニックで最初に処方されたのは、ごく一般的な抗不安剤と睡眠導入剤と鎮痛剤でした。

当時の私は、会社を設立し、事業が軌道に乗り始めた時期でした。仕事や付き合いでの飲酒、タクシーでの深夜に帰宅することも多く、夜にさびしい思いをさせたと思います。悪い夫であったと言われても仕方ありません。そのことが妻の不眠の原因であったのだろうと思います。

・4ヶ月後

通院開始後わずか4カ月で、薬は10種類18錠になりました。いわゆる多剤大量処方の始まりです。

不眠の診断に対し、抗うつ剤、抗精神薬、抗不安剤などの薬が複数処方されました。

一度、一緒に病院に行ってくれと言われたことがあります。当時の私は、大の医者嫌いで、特に心療内科と聞いて、「そんなところに行くな。」と答えました。それから彼女は、私に内緒で病院に通うようになりました。

・17ヶ月後

薬はさらに増えました。12種類24錠。

ここで、私が特に問題視しているバルビツレート酸系睡眠薬が登場します。

この頃の彼女は、(今から思えば)薬の副作用とおもわれる肥満が始まりました。私は、彼女に対して、徐々に女性としての興味を失っていきました。このあたりからあらゆる面での悪循環が始まりました。

・初診から23ヶ月後

多剤大量処方はそのままで、もう一つの問題の薬、別のバルビツレート酸系の薬が登場します。この薬は、ネット上では『飲む拘束衣』などと呼ばれ、覚せい剤の離脱症状を抑える時に使用されます。

・初診から25ヵ月後から4年間

別のクリニックに転院。多剤大量処方ではあるが、バルビツレート酸系の薬は姿を消します。バルビツレート酸系の薬を無くすために、他の薬の量が増えてしまったとの当時の主治医の記録があります。この医師が、バルビツレート酸系の薬のリスクを正しく把握していたことが分かります。

・亡くなる7カ月前

もとのクリニックに戻りました。

これから、亡くなるまで7カ月間、同一の処方が続きます。

多剤大量処方に加え、バルビツレート酸系の薬が復活します。そして抗うつ剤SSRI。

処方された薬は、13種類40錠。問題のバルビツレート酸の睡眠薬の一つは、3剤の合剤であるので、実質15種類です。

この頃の彼女は、明らかに運動能力が低下していました。何も無いところでも良く転びました、夜はトイレに行けず、おむつをして寝るようになりました。また知り合いに意味不明な電話をするようになりました。抗うつ剤SSRIの影響だと思われます。

また、遅く帰ってくると、玄関の扉に鎌が張り付けてありぎょっとしたこともあります。こんなことは彼女の性格上あり得ないのですが、今から思えば攻撃性の副作用が出ていたのだと思います。

さすがに、あまりの様子のおかしさに、彼女のご両親に相談を始めました。おかしくなるのは決まって夜でした。しかし。昼間になると普通に受け答えが出来るために、私は判断を誤りました。私の一番の後悔は、病院に通っているから重大なことにはなるまいと高をくくっていたことです。

・初診から7年と5カ月目

冬のある朝、彼女は亡くなっていました。

自宅で亡くなった為、司法解剖に回されました。3ヶ月後に知らされた死因は、薬物中毒でした。

今から、5年と半年前のことです。

その時から、私自身の贖罪と犯人を求める長い旅が始まりました。

最初の容疑者は、私自身と薬を処方した彼女の主治医です。

【原因の追究】

(1)医師の説明

まず、驚いたのは、彼女に処方されていた薬の量です。

こんなに沢山の種類と量を必要とする病気があるとは、にわかに信じられませんでした。

事情を聴きに、クリニックを訪れるとその医師は留守でした。家族にご不幸があり、不在ということだった。しかし、なぜか、クリニックは開いていました。無視察で薬を処方しているのではないかという疑いを持ちました。

医師と会えたのは、妻の死後、2週間後でした。

私は、医師に疑問をぶつけました。

何故、こんなに沢山の薬がでているのかと。医師は、「これでも、眠れない人は居る。」とだけ答えました。納得のできない私は、妻の死に関してどう考えているのか文章にしてくれと言い、一旦その場から立ち去りました。医師は文章にすることに同意しましたが、その約束はいまだに果たされていません。

これ以降、連絡は不可能となりました。従業員には緘口令が引かれ、弁護士を前面に立てて、私とのコンタクトを拒絶したからです。私に裁判という手段が頭をかすめたのはこの時が初めてでした。

(2)ネットによる情報収集

それから、医師や薬剤師と名のつく人を見つけると、片っ端から質問攻めにしました。

しかし、誰からも、私を納得させる説明は得られることはありませんでした。

私に最初に情報をくれたのは、インターネットでした。ネット上では、すでに精神医療を非難する声と擁護する声が、互いに罵声を浴びせるような勢いで論争されていました。この問題が、「一医師の問題ではなくて、精神医療自体の問題を含んでいること」を理解しました。容疑者に精神医療そのものが加わりました。

多剤大量処方という言葉もネットで初めて知りました。

ネットの力は強力でした。情報の量でいえば、凄まじい量の情報が得られました。しかし、裏付けのある情報をその膨大な情報の中から探し出すのは不可能に思えました。

(3)うつ病受診キャンペーン

その頃、『2週間気分が落ち込んだら病院へ』といったキャンペーンCMがTVに流れました。このCMは実に不思議なCMでした。CMのスポンサーが誰だか分からない所謂イメージCMでした。結局スポンサーは製薬会社であることが後から分かりました。あたかも政府広報かと勘違いしかねないものでした。私は不信感を憶えました。

容疑者に製薬会社とTV局が加わりました。

精神医療そのものに疑問を持ち始めた私には、このキャンペーンが悪魔の囁きに聞こえました。そこに行って、何か解決するのかと。

(4)裁判を阻む壁

いざ、裁判を起こそうと思う段階になって、単純な疑問がわきあがりました。何故、同じような裁判は起きていないのかということです。ネット上にはあんなに被害者が溢れているのに。けれど、その理由はすぐに分かりました。

・裁判費用の問題(訴訟そのものではなくて殆どは弁護士費用)。

・裁判では、相手が医師(その道のプロ)であるのに対して、原告側に立証責任があること。

・診断も曖昧だが、副作用も曖昧、その曖昧な物をさらに多剤大量処方という悪弊が覆い隠していること。曖昧な物を証明するのは不可能であること。

・なにより被害者の気力が続かない事。

・最大の壁は、医師に与えられた裁量権(処方権)の大きさにあること。

・日本人には、裁判に対する漠然とした抵抗感があること。

こうした理由で、なかなか裁判まで辿りつかないのです。

私の場合は、長い社長経験で、裁判に対する抵抗感がありませんでした。

結果、独身になったこともあり、何とか裁判費用を工面することが可能でした。

(5)他の医師の意見の収集

ネットで、私の事を知った新聞記者が、コンタクトをして来ました。すでに妻の死後4年近く経過していました。その新聞記者は、精神医療の問題を長年追っていて、裁判事例を探していたのだそうです。彼女との出会いは、今一つ決め手に欠けていた私に急展開をもたらしました。

彼女は、私の記事を書くために、複数の著名な精神科医、麻酔医、そして妻の行政解剖を行った解剖医にまで、妻のカルテを持って取材をしてくれました。そして、他の被害者の会の人達を紹介してくれたのも彼女です。

妻への処方内容を見た精神科医は、同じ精神科医からみても異常な処方であることを教えてくれました。そして解剖医は、年間の薬物中毒死の中でも、もっとも多剤の部類であったことを教えてくれました。主治医の処方への疑念は確信に変わりました。

実は、この時に意見を頂いた医師は、私の裁判の協力医ではありません。あくまで、匿名での情報提供と言うことで意見を頂きました。匿名である理由は、裁判に協力することが、それぞれの立場を危うくするからということでした。

(6)厚生労働大臣、厚生労働省への陳情

裁判準備と並行し、他の被害者と共に、厚生労働省に要望書を提出に行きました。

内容は、精神医療の多剤大量処方の規制、EBMのガイドライン作成、減薬のガイドラインの作成等です。

厚生労働省に行き、実際に担当者と話して驚いたのは、もう既に、この問題をかなり正確に知っていたということです。容疑者に厚生労働省も加わることになりました。知っていて何もしない監督官庁の責任は問われるべきだと思いました。

これについては、つい先日(6月24日)、『向精神薬等の過量服薬を背景とする自殺について』という要請文が、都道府県・指定都市の精神保健福祉主管部局長、日本医師会を始め、精神医療系団体に向けて出されました。内容は、「自殺者の多くが精神科の受診をしていて、処方薬を服薬してるので、処方に気をつけろ」という内容です。表現が穏やか過ぎで、効果があるのか疑問です。

ですが、その直後、長妻厚生労働大臣は、マスコミの取材に対し「薬漬け医療の問題は認識している」と発言しました。今後の動きを期待したいと思います。

(7)新聞報道

新聞記者と私の間で、裁判の提訴を記事にしたいということになりました。提訴の準備が整い、イザという段階になって、記事が大きく扱えなくなったという連絡が入りました。理由は、新聞社が、大スポンサーの製薬会社に気がねをしたのです。別に圧力があったというわけではありません、単に腰が引けたのです。裁判に勝てるという見込みがなければ記事に出来ないという。私も記者も随分失望しました。それでも都内版の囲み記事で、小さく提訴の記事が掲載されました。新聞では、小さな記事でしたが、インターネットにより全国に配信されました。

その僅か、3カ月後。6月24日の朝刊の一面トップに、救命医療の現場の声として、安易な心療内科クリニックの多剤大量処方の問題が報道されました。このような問題が新聞の一面トップで報道されるのは非常に珍しいことです。

その記事の中で、その多剤大量ぶりについて、救命の医師は、「薬理学上ありえない」と言っています。また、記事で、一番酷い例と引き合いに出されたのは、「抗うつ薬4種類、睡眠薬4種類、抗不安薬2種類など一度に14種類」の例でした。これは亡くなった妻とほぼ同等です。その処方に対する複数の精神科のコメントは、「常軌を逸している。副作用に苦しんだり薬物依存に陥る可能性も高くなる」です。

(8)驚くべき東京都監察医務院のデータ

その証拠を突きつめているうちに、私は、あるとんでもない論文に出合いました。それは、妻を解剖した東京都監察医務院の監察医の論文です。東京都監察医務院へ解剖に回されるのは、東京都24区内の死因が不明なものです(明らかな自殺は含まれません)。

私が驚愕したのは次のデータです。

平成19年度、薬物の検出された検体が全部で1,333件、そのうちアルコールが592件、覚せい剤などの違法薬物が37件、そして一番多いのが医薬品612件である。

さらにその内訳をみてさらに驚きました。

医薬品のほぼすべてが精神科の処方薬であることです。

その中でもダントツに多いのが、フェノバルビタール136件、塩酸クロルプロマジン69件、塩酸プロメタジン88件です。これらは、いずれもべゲタミンの成分です。

このデータは、絶対に見過ごせません。違法薬物の何倍もの死に処方薬が絡んでいるのです。それもほとんどが精神科の処方薬で、さらにその半数以上がべゲタミンという薬なのです。直接の犯人はべゲタミンであることの可能性が高まりました。

いままで、この数字を気にとめた人は誰もいなかったのでしょうか。患者が勝手に乱用したからと言い逃れできるような数字ではありません。今すぐなんらかの規制すべきではないでしょうか。特にべゲタミンは酷い。

今度は、バルビツレート酸系の2つの薬を調べることにしました。すると、この2つの薬はとても古い薬であることが分かりました。そしてなんと、現在の教育では、教科書にも載っていないしろものであることがわかりました。現在では、過去に事故が多かったことと、ベンゾチアゼピン系の比較的安全な代替薬登場で、それらの薬にとって代わられているということです。

意見を聞いた精神科医の中にも、こんな薬は無くなった方がよいという意見は多数あります。無くなっても誰も困らないだろうという医師も複数いらっしゃいます。

しかし、現実には、これらの薬がいまだに多くの精神科医師により処方され、死亡事故が多数起きているのです。薬に罪は無いとの意見もあるが、これだけ事故を起こしている薬は、何らかの規制をされてしかるべきでしょう。

少なくとも、このバルビツレート酸系の薬が、この世に無かったのなら、妻はかなりの確率でまだ生きていたと思います。

こんな薬が残っているのは、薬行政に置いて何らかのシステムの不備があるということです。

(9)医師の医薬品マニュアルの軽視

医薬品の医師向け添付情報を眺めていて、新たな疑問がわきました。

私の妻のケースでは、併用注意だけで物凄い数の組み合わせがあります。慎重投与などの注意を加えるともう数えるのも嫌になるほど注意事項が発見できます。細かく数えて行けば注意違反は、100は超えます。ラボナの医薬品説明には、一番最初に劇薬と書いてあります。依存性薬とも書いてあります。いったい何のための表示でしょう。なんでこんな簡単なルールが守れないのだろうという単純な疑問です。

どうやら一般論として、医師は、医薬品の医師向け添付情報をあまり重視していないようなのです。あれは、製薬会社が自身を守るためにあると思っているふしがあります。製薬会社が身を守るためという認識は正しいと思います。ですが、本来の役割は違うはずです。医薬品の医師向け添付情報が、尊守されていないのであれば、これは重大な問題です。

つい最近、医療過誤裁判から身を守る為の製薬会社主催の医師向けセミナーが開かれたと聞きました。そこで医師向けに説明されたのは、副作用出現率が5%以上と書いてあるものは副作用を事前に患者に伝えなさいということでした。

そんな事を、わざわざ教育しなければならないのかとさらに驚きました。ルールは、患者を守る為だけにあるのではない。ましてや製薬会社を守る為だけでもない。医師そのものを守るためにも必要なものです。

少なくとも、私の生きてきた世界では、ルールとはそういうものでした。

そして、法(ルール)の番人たる司法もその前提で機能しているはずです。

最高裁の判例で、『医師向けの医薬品添付情報に従わない場合には、相当の理由が必要』との司法の判断が現実にあります。

誤解のないように付け加えますが、もっと、裁量権を広く与えられるべき領域の医師もいます。救命医療や新しい先端医療の現場の医師等です。ただしその裁量権もルールで規定されるべきだと思います。

(10)『取りあえず』から始まる薬物依存

ここまで来て、私の妻が受けた治療は、薬の説明書きに従わず、医師の今までの経験と勘で行われていたことを理解しました。

ここまでで、随分色んな問題点を発見しました。これだけの様々な悪条件が重なり、妻が亡くなったという事を理解しました。

けれどまだ、最大の疑問が解決していません。

妻は、いったいなんの病気で、どう診断され、どんな治療を受けたかということです。

精神科の診断は難しいと言われます。それはそうでしょう、診断は、医師の過去の臨床経験と主観に基づくもので、殆ど客観的な診断手段を持たないからです。物差しがないのですから、医師によって診断が異なるのは当り前です。医師が万能だなどとは全く思っていません。

ならば、最初の診断は、そのまま主観に頼っても良いが、いわゆる「除外診断」をして行くしかありません。精神医療での物差しは薬しかありません。抗うつ剤が、効かないなら、うつ病以外の別の病気を疑うというふうに。しかし、私の妻の例のように、最初から多剤大量処方では、それも使えません。ましてや、妻の診断は、最初から、最後まで不眠です。その診断にたいして、睡眠薬、抗うつ剤、抗不安薬、統合失調症薬など全て同時に処方されています。

ここまで来て、妻の本当の病名が私には分かりました。ある精神科の医師が教えてくれた病名です。

それは、『処方薬による薬物依存症』です。

【終わりに】

これが、私の妻の死にまつわる物語です。出来るだけ感情論を排し、事実に沿って記述したつもりです。様々な問題提起をしましたが、今、妻の死は、それらが複雑に絡み合い悲劇的な結果を生んだのだと理解しました。

妻の死の責任は、色々なところにあります。もちろん、私にも、亡くなった妻自身にもあります。被告医師に全て責任をおわせるのは酷だとも思っても居ます。しかし、被告医師には、一定の責任があることを確信しています。なぜなら、彼のやったことは、プロの仕事ではないからです。

相手医師からの回答にはがっかりしました。そこには、いかに私が悪い夫で、亡くなった妻がしつこい薬依存者であったということのみが延々と記述されています。医学的、薬理学的な反論は殆どありません。多剤大量処方については、『皆やっている』。禁忌事項については『そういう記述があるのは認める』。です。

全く議論が噛みあいません。

私は、その医師の人格を攻撃する気はさらさらありません。私が悪い夫で、妻がしつこい薬依存者であったことも反論する気はありません。プロであるはずのこの医師の治療に、重大な過失(ルール違反)があるかないかを問うているのです。

多剤大量処方は、多くの場合、それ自体がルール違反です。ルールを守っていればそもそもできるはずは無いのです。それを許して来たのは、広い医師の処方権(裁量権)です。

逆に処方権が認められるべき医療分野は沢山あると思います。けれど、精神科の街角クリニックといった、外来患者さんのへの処方権は、厳しく規制されるべきだと私は思います。もちろん、同時に、不幸にもすでに『処方薬による依存症』に陥っている患者さんの救済も考えねばならないでしょう。

そして、皆さんに特に伝えたいのは、私の妻が、そもそも「軽い不眠」でクリニックの門をたたいたということです。「軽い不眠」から始まり、最後は「薬物中毒」で亡くなったというその経過です。妻の例のように、日本独自の精神科の多剤大量処方という悪弊が、問題を複雑化、悪化させているのは疑いようの無い事実です。

この物語は、私の妻だけの物語ではありません。

妻は、不眠でしたが、「軽い不眠」を「軽いうつ」と置き換えても、問題は全く同様です。

同じような物語は、文字通り五万とあります。

もう、そろそろ、こんな物語は、終わりにしませんか。

最後に、この精神医療の問題を、他科の問題と混同されないことを強くお願い申し上げます。そして、少なからず、私の主張を応援して頂ける精神科の医師もいることを記しておきたいと思います。

2010年7月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp

2 体験記

(「ほっとスペース」様より寄せられた体験記です。本件控訴審、控訴人第4準備書面の甲27号証として、原文のまま、提出しております)

Aさんの証言 - 新鮮な空気が吸いたかった…医療保護入院から閉鎖病棟へ

おいしい空気が吸いたい。

1月終わり、外の木々が凍えている頃。外出や散歩の許可が出ていない私は、病棟の食堂の下にある、わずか10センチしかない小窓を開けて、床にうつぶせになって小窓から吹いている空気を吸った。・・・おいしい。

今から約6年前。ここはある病院の閉鎖病棟。看護師と一緒にエレベーターに乗り、看護師がカギを持って二重のドアを開けて入る。決して自分で出入りできない。ここは閉鎖病棟。40床位の小さなものである。窓は全く開かない。どこの窓も。唯一、患者が自由に窓を開けられるのは、ナースステーションに近い、食堂の下の小窓である。

私は、当時の夫のドメスティックバイオレンスで精神的に不安定になり、興奮状態になり、夫を殴り返したり、物を壊したりするときがあった。「入院したい」と夫に訴えたら、夫に私の主治医のいるクリニックに連れて行かれた。クリニックの主治医は、私たち夫妻に提携病院を案内し、主治医とその病院に行くことを約束した。

病院に着いたら、さっそく私はMRIに運ばれ、夫は約束で待ち合わせた主治医に会う。それから夫と主治医のやり取りは、決して私にはわからなかった。気がついたら、夫は既に帰ってしまっていた。

MRIなどの検査後、夫にさよならの挨拶もできずに閉鎖病棟に入れられた。保護室ではないが、ドアや窓が文字どおり閉鎖されている。勝手に患者が出られないようになっている。

換気はベッドの上の空調になっている。その薄汚れた汚さが、私の涙を誘った。新鮮な空気が吸いたい。普通の生活に戻りたい。夫に会いたくなってホームシックにかかっていた。

入院後の私の権利は病院食と週2回の風呂、夫から持ってきてもらったパジャマ。パジャマはウエストのひもを抜かれて、ゆるゆるになった。コインランドリーはナースステーションにコインランドリー代を請求し、週2回定められた洗濯日に自分で洗濯。狭い病棟の廊下でぐるぐる歩き回るしか運動が出なくて、フラストレーションがたまった。

10日目。「みんなで売店のアイスクリームを食べに行こう」と誘われた。しかし、看護師は、私をアイス仲間から引き離した。で、若い病棟の主治医に呼ばれ、「あなたは『医療保護入院』です。ご主人の許可が得られるまで、外出や退院ができません」と告知された。私は主人に騙されてしまった。アイスを食べ損ねたということよりも、内緒で「医療保護入院」にさせたクリニックの主治医と夫が許せなかった。

そして、入院中に「溶連菌感染症」に罹り、40℃以上の高熱を出したとき、主治医から「発熱で肝臓に影響する」とすべての向精神薬をカットされた。そしたら、私は服を脱いで暴れたらしい。急きょ数人がかりの男性看護師に取り押さえられ、ナースステーションに運ばれ、当局医に平手で打たれ「*1保護室行きだぞ!!」と叱られたが、私の必死の抵抗と、ある看護師の一人が「保護室は満杯です」と言ったため、保護室行きは免れた。しかし、強い薬を飲まされ、2日位眠らされた。目が覚めても、症状が軽減する数日後まで点滴で眠らされた。

しかし、ここの病棟の雰囲気が悪い。入院患者の暴行が激しい話もよく聞く。点滴が外れ、退院したくても、夫の連絡がつかない。医療保護入院は自分の自由が利かない。退院どころか、散歩もできない。精神病者の自主性を奪うものか?

結局、症状が軽減した後、夫の都合で引き取りたいとのことで、急きょ退院になった。医療保護入院は医師と保護者(今回の場合は夫)のご都合主義なのか?というのが、入院しての疑問である。

橋本注) *1「保護室」とは、精神科における隔離室で、治療上、静穏な環境で安静を保つ必要がある場合、自殺のおそれがある場合、他人に危害を加えるおそれがある場合、感染症の場合など使用するというのが建前で、実態は独房です。狭い個室にむき出しの便器。窓には鉄格子というのが一般的です。24時間施錠がなされ、監視カメラの設置のある場合も。この体験記のように医療者が患者に対して懲罰的に使用したり、脅迫の手段として用いられるほど、劣悪な環境であり、保護室送りは、およそ治療とは言い難いのです。

Bさんの証言 - もう少しで強制入院!

今年8月の熱い中、クーラーもない部屋で私は熱中症に倒れた。猛暑の続く8月末、私は引っ越しをしました。幸いにも、なんとか引っ越しは完了し、新しい住居にクーラーがついていて命拾いをしました。

しかし、猛暑の中の引っ越しは、私には心身ともに、深い深い傷を残してしまいました。

引っ越して数日後の9月5日、私は、極度の過労と緊張のためか、意識障害になっていたようで、どの薬をどれだけ飲めばよいか全く分からなくなっていたようです。

夫が、様子のおかしいわたしを心配してくれましたが、引っ越し前の県営住宅に、住居明け渡しの立ち合いに行かなくてはならず大いに困っていました。場所が遠いので、1泊2日の行程となり、その間を私一人で置いておくしかなかったからです。

夫は、私の薬を調整・整理するために相談したくて、病院に行きました。診察がはじまり、先生が問診・質問をするのですが、私はオウム返しを繰り返すばかりで、どうにも要領をえず、任意入院となりました。その間の事はあまり覚えていません。夫と主治医から聞いた話です。

次の日に、気が付いたら私は保護室にいました。「ここはどこだろう?」と、考えても、初めての経験で、まったく分かりませんでした。誰もいないし、誰もこない。多分保護室だろうと思いました。

なぜか保護室に入れられてしまった私は、ボーとしていました。出される食事と歯磨きをこなすだけでした。1日に一回だけ男の人が入ってきます。「貴方はどなたですか?」と聞くと「院長です」と答えました。「どうですか?」と聞かれ「ここはどこですか?」と聞くと、「保護室です」と答えられ、私は心の中で「やっぱり」と思いました。2泊3日の事ですが、このあとが問題です。

夫が帰ってきて、病院に迎えに来ました。院長が出てきて、「こんな状態で退院なんて認められない!」と、私と夫に怒鳴ってきました。「医療保護入院しか絶対に考えられない!」と、脅しまくられました。夫が、「どうしても*2任意の入院ではだめなのか」と聞くと、「絶対だめだ」と応えました。同席した主治医は、勇気あるドクターで、「まず保護者と本人の考えを聞きましょう」と割って出てきました。すかさず夫が、「帰ろうか?」と聞くので、「帰りたい」と私は言いました。そこで院長は、最後まで怒鳴っていましが、「まあ、あくまで任意の入院なんだから、本人が望めば退院はできなくはないのだが・・・そんなことになったら全く保障できない。」とうそぶきました。夫は意を決して、「何と言われても連れて帰る」と宣言しました。そして、私は友人たちとファミリーレストランで、ささやかな退院祝いをしました。そこで私は、「病院で苦しかった。二度と保護室にいれないで」とつぶやきました。

その後、院長の予想に反して、私は数日で立ち直り、院長の診断・予測と脅しがいかにうそっぱちであったかを知りました。さもさもしく用意された医療保護入院に、もし同意していたなら、数日で立ち直ることなどとてもできず、それどころか、こんなインチキ同然の医者に殺傷与奪の権限を与えてしまいとんでもないことになっていたに違いないと思います。この院長は、書物も何冊も書いていて、各地で講演をしてまわる高名な医師ですが、その現実はこのとおりです。医療保護入院の制度は、この私の通院している病院では、医療とは名ばかりの、まったくのインチキです。

橋本注)*2 精神科には入院形態として「任意入院」「医療保護入院」「措置入院」と三種の形態があり、任意の入院とは、他の一般診療科での入院と同じ形態のことです。皆さんが病気になった際、入院生活そのものに恐怖を感じることのない、当たり前の形態のことです。「医療保護入院」「措置入院」という特殊な形態が存在するのは、精神科だけです。

Dさんの医療保護入院の事例報告

1】強制入院(医療保護入院)までの経過

①通所施設に来るまで

Dさんには幼い娘が一人いるが、育てることができず、今は別れた元夫が娘を一人で育てている。そしてDさんは、働くお母さんと二人で暮らしている。Dさんは、この2か月の間、調子が悪くて、病院にも行けなかった。私たちの通所施設にも行けず、薬も飲んでいなかったという。そして、11月のはじめに、頼りにしているお母さんが遠くの病院に入院してしまい心細い一人暮らしになった。近所に住む二人の男につけ狙われていると3信じているDさんにとって、ひとりっきりの生活は、とても怖く、たまらなく寂しい。お母さんの退院予定日の11月14日まで待ち切れなかった。

何日か過ぎた11月10日の昼、Dさんは、たまらず私たちの施設に、「寂しくてたまらない。助けて!」と電話をしてきた。職員2人が出向き、明日にでも通所するように説得した。しかし、その夜、深夜になって職員の電話に、「サヨナラ」と留守番電話メッセージが入った。それを知った私たちは大変に心配した。

翌朝(11月11日)、10時過ぎに、Dさんから「今朝から何も食べていない、私はどうしたらいい? 助けて!」と、電話があった。職員が、「とりあえず、おかゆを作ってたべて、それから通所したらどうか」と勧めたら、「そうしてみる」と、Dさんは応えた。しかし昼になり、「もうたまらない、早く助けにきて!」との電話があった。

そこで、職員が車で救援に向かったが、向かっている間中、電話で「早く助けて、もう待ちきれない」と訴え続けた。そして、職員が到着する少し前、彼女は両腕に無数の切り傷(リストカット)をつけてしまっていた。Dさんは、「リストカットの時に、布団に血が付いてしまい、おりからの地震*4(幻覚)で怖くなり、パニックが起きて、(血が付いて)気持ち悪くなった布団を窓から投げ落してしまった。部屋の鍵も無くしてしまった。」と電話で訴えた。迎えにいった職員と会えて、Dさんはやっと少し落ち着きを取り戻し、車に乗って、施設にやってきた。

その後、職員ら、仲間数人と話しているうちに、薬は必要だから、病院が診察・投薬に応じてくれるなら、今からでもいっしょに病院いこうということになった。

②通所施設から、病院へ

電話で、診察・投薬を求めたところ、主治医が了解してくれたので、すぐに車に乗り込み、Dさんと、付き添い3人、総勢4人で病院に向かった。30分ほどの移動時間であったが、病院の近くまで来た時、「苦しい。助けて。」と激しく叫んだ。病院へ向かっているという緊張が極度に高まったためであったろうか。

2】病院でのできごと

①主治医が出てくるまでの15分間

病院に着いた私たちを、数人の職員が取り囲んだ。主治医Tドクターはいつまでたっても出てくる気配がない。Dさんは、「T! でてこい! いつまでまたせるか!」と興奮を高めていった。取り囲む人数はどんどん増えて6人ほどになっていく。私たちは、「取り囲むのはよせ! なぜ取り囲む! すぐに主治医を呼んでほしい!」と要求したが、いっこうにTドクターは姿を現さない。

Dさんは、ついにしびれを切らして、ガラスのドアをけり飛ばし、ドアは大破してしまった。さらに数人の男が出てきて、ドアの破損具合を調べたり、割れたガラスの寸法を測ったりしはじめた。

②主治医Tの登場から、診察開始までの10分

やがて、Tドクターが出てきたので、私たちが、「遅いじゃないか。早く診察してくれ。」と要求した。Tは、「母親とまだ連絡がとれない。電話を待っているところだ」といって、また引っ込んでしまった。

10分後、再度登場したTドクターは、「今、母親と連絡がとれた。今から診察をする。」と宣言した。

Tは診察以前に、最初から医療保護入院を決めており、入院中の母親の同意が取れるまで時間稼ぎをやっていたのであろう。こうして、Dさんは診察室に連れて行かれ、やがて屈強な男たちが集まってきた。看護助手か看護師であろう。

③診察室から病棟へ

7~8分の後、診察室のドアが開き、Tが、「Dは医療保護入院。電話で母親の同意をとった。」と宣言。Dさんが連れだされ、「いやだ! 帰る、助けて!」と泣き叫ぶDさんを屈強な男たちが連行していく。Dさんが壊したドアを通って中庭にでて、さらに入院病棟に入り、階段を引きずって上階に上がって行った。この間、私たちは、ドクターに橋本さんの闘いを紹介し、「この医療保護入院で、橋本さんに行われたような、男性看護師によるケアが行われるようなことがあれば、私たちは許さない。あらゆる手段で闘う」と訴えたが、Tドクターは、「私の権限ではどうにもならない」といって、取り合わない。そこへPSW(精神保健福祉士:橋本 注)の女性がきたので、同様の要請をしたが、「そのようなこと(男性によるケア)の無いよう、極力努力する」というばかりであった。

これが、H市でも、「ましなほう」と言われる病院で行われている、医療保護入院の非道な実態である。

橋本注)*3・*4 精神病による「妄想」「幻覚」という症状の一つですが、ここで注意していただきたいのは、当人にとってそれは紛れもない現実であるということです。それほどリアルな現実感をもって「妄想」「幻覚」「幻聴」は現れます。病者にとっては「現実」なのですから、どれほどおそろしく感じているかを理解するべきです。ただし、適切な治療と良好な人間関係や生活環境によって、確かにそれがあっても、病者自身が、幻覚が幻覚であり幻聴が幻聴であることを、自覚できるようになります。多くの病者は、それらと共存する形で社会生活を送っています。

3 入院患者さんの声

(「大阪精神医療人権センター」作成の資料『入院患者さんの声』(20周年誌にまとめられたもの)より抜粋させていただきました)

同センターは、その幅広い活動のなかでも「精神医療オンブズマン活動」を行っており、病院訪問、連絡協議会への報告、検討などに取り組んでいます。そのなかで、本資料は、病院訪問により集められた患者さんの生の声として、たいへんリアルな内容となっています。ここに掲載することができなかった声や、「大阪府精神障害者権利擁護連絡協議会」への「検討項目及び結果分類」の年次ごと一覧表などもあり、

同センターにお問い合わせ頂くことでも入手可能です。

(大阪精神医療人権センター 公式サイト:http://www.psy-jinken-osaka.org/

金銭管理を自分でさせてもらえない

・病院が日用品など買うためのお金を預かっている。自分の手元におきたい。(67)

・お金を病院に預けています。1週間で1500円の現金しか渡されない。(66)

・年金の届出が1ヶ月以上放置され、抗議をしたら、病院側から、他人事のような冷たい対応をされ、意見箱に投書した。(64)

・お金、通帳を病院に預けています。生活保護もその通帳に入るようになっているのですが、ちゃんと入っているのか誰に聞けばよいの? (66)

職員が金銭を使い込む

・病院から、病棟全体などで近くのスーパーに買い物に行くとき、患者(知的障害)のお金で看護師が食事をしたり、病棟へのお土産を買ったりしていたようだ。(64)

使役労働

・入院中に、○○当番というのが廻ってくる。朝起きた時から、「当番やで」と言われる。なんで、こんな思いをしないといけないの。(57)

過剰投薬

・薬を山ほど飲まされる。「減らして」と言うと増やされた。(61)

・きつい薬飲まされて昼間も眠くて昼寝してしまう。起きたら4時ごろ。門の開いている時間が終わり、起きたときには病室から出られない。タバコも買いに行けない。(59)

・医保入院。毎日薬ようけ飲まされる。しんどくてしゃーない。(57)

プライバシーが守られない病棟・職員

・ロッカーや消灯台を開けるよと言われて、拒否したのにも関わらず開けられた。プライバシーの侵害と人権無視だと思う。(68)

・看護師が自分の病気のこと(病名)を他の患者さんに話す。(65)

・病棟によってロッカーの大きさが違い、持つことのできる私物の量が違うのは不公平ということで、看護師に衣装ケースの中の自分の荷物を捨てるよう言われた。(62)

通信・面会の制限

・病院、主治医が人権センターに電話をかけてはいけませんと言う。(61)

・病院では電話が詰所前にあるからかけれない(67)

・妻が入院して40日近くたったのですが、面会できない(61)

・テレホンカードを取り上げられることがある(61)

本人よりも保護者の意見優先

・両親は主治医に言われるがままで、退院させてもらえない。(62)

・主治医は「退院してもいい」というけれど、親が「もうちょっと落ち着くまでいてなさい」って言う。(61)

・「お父さんがよいと言えば退院してよい」と医師に言われた。でも入院のときの病状で、家族関係が悪くなったから、退院、外泊を受けいれてくれない。(67)

医療保護入院への疑問

・「退院したいと言うのなら医療保護入院に替える」と言われた。(58)

・任意入院が医療保護入院になった理由を説明してくれない。聞こうとしても避ける、逃げる。(65)

任意入院の閉鎖処遇

・任意入院なのに、4週間外出制限された。納得できない。(58)

・任意なのに外出も退院も出来ない。医療審査会がとりあってくれない。(57)

・開放病棟なのに鍵がかけられている。(62)

・任意入院。退院させてもらえない。「今はまだ退院の段階ではない」の一点張り(57)

・任意入院だが何をするにも制限がある。(61)

・任意入院中だが「家族が来ないと退院できない」と主治医に言われた。(66)

保護室処遇の問題

・保護室から出してほしいのですが、なかなか出してもらえません。(64)

・保護室ではトイレを使うのも監視カメラで見られていて、はずかしい。(64)

・しょっちゅう保護室にいれられている。保護室の使われ方に疑問を感じるが、どこに聞けばよいのかわからない。(66)

人手不足による放置

・他科の受診をしたいが、人手が足りないと言われ、受診できない。(63)

・歯が痛いと言ってるのにほったらかし。歯の治療を受けたい。(60)

医者による権利侵害

・「ピアカウンセリングのこと知りたい」と言ったら主治医が「そんなんしたらいけません」と言う。(61)

・退院したいが、主治医が「一生ここにいたらよい」と言う。(62)

・Drに「なんで、生活保護を受けてんの?」と聞かれた。怒鳴られたり、ニヤニヤされたり。しんどくて医者に行ってるのに(58)

主治医と滅多に会えない

・主治医は体調が悪いとか言ってあまり診てくれません。(64)

・主治医の診察が30秒くらいで、充分に話をきいてくれない。(65)

・医師に伝えたいことがあるが取り次いでもらえない。(63)

相談したい人に相談出来ない

・主治医も担当ケースワーカーも男性。女性と話したい(61)

・女性の看護師に相談すると、上司の男性看護師に聞くように言うだけで、話を聞いてくれない。若い男性看護師には話しにくいこともある。(67)

・担当*5PSWは忙しそうで、なかなか病棟にきてくれない(63)

・病院にはケースワーカがいない。看護師にきくと、退院については主治医にまかせているから、と取り合わない(66)

病院や第三者に実情を伝えたい

・病院への不満を直接病院職員に言うと、「意見箱に入れてください。」と言われた。患者の訴えが意見箱を通してしか病院側に伝わらないのはおかしい(64)

・意見箱に投書したが答えてくれない(62)

・入院中のつらかったこと、話だけでも聞いてください(61)

・面会に来てください。(58)

必要な時に入院させてくれない

・子どもが精神科で薬をもらい飲んだ。足をひきずり舌が出て、筋肉注射が ものすごく痛い痛いと言っていた。親としては何も言えなかった。わからなかった。3日後自殺した。その後、私も精神科へかかり抗うつ剤を飲んだ。便秘にはなるし吐き下はするし。医者はなぜこんなきつい薬と知ってて緊急入院させてくれなかったのか。(60)

・精神科の救急に電話したら、満員で迎えにいけないと言われた。しばらく待機するように言われ、連休中がまんした。(62)

非人間的な居室空間

・カーテンもナースコールもない。他患者にたたかれた。食べるスペースもない。トイレ、お風呂ゆっくり入れない(60)

・入院の際には開放病棟にあるきれいな個室に入れるとの話だったのに、部屋があいていないという理由で、閉鎖病棟の隔離室に入れられた。トイレに囲いがなく、ダンボールの上で食事をしないといけなかった。(64)

・病棟の廊下、便器に便がついていても、ほったらかしで数日おかれることがある。トイレに落ちていた便もティッシュでとって捨てるだけ。消毒もしない(67)

・日光がよく入る病棟で、エアコンの数が少ないため、病棟の中がとても暑い。(65)

・病棟が暑いのに「修理中」と、冷房を入れない(65)

アメニティのなさ

・入院10日目くらいからやっと魚が食事に出た。それまで野菜ばかり。肉はたまに出ても脂身ばかり。お金もなくてひもじい。(58)

・(病棟で)毎日、ひまで、ひまで困っている。

治療や入院への説明不足・納得出来ない

・入院している子どもが「どうしてここにいなければいけないの?」と泣いて訴える。(62)

・医師の診断に納得がいかない。他の医師にみてもらうことはできるのですか?(67)

・入院の理由が分からない。(62)

・もう6ヶ月になるのに、任意に替えてくれない。もう治っているのに、いつまでもしばられている。(58)

・入院中はおとなしくしていないと退院できないと思い、納得していないが薬を飲んでいた。(63)

・前の病院の主治医は「統合失調症」と言う。今の主治医は「わたしはそうは思わない」と言うだけ。はっきりしないのは不安。(61)

・子どもに会わせてあげると言われて連れて行かれた先が精神病院で、強引に入院させられた。(63)

病院や治療への不信感

・私が入院している病院は、療養環境としてとてもたくさん問題があると思います。ただ、今は、自分にとって入院が必要だと思い、病院を探したが、みんな満床で、入れたのがこの病院だけだった。医師は話をきいてくれるのでここにいたい。苦情を言うことでスタッフから目をつけられたり、「それじゃあ、他の病院に行ってください」と言われるのが怖くて言えない。(67)

・主治医に言っても薬をかえてもらえない。自分のことについての情報の流れが、主治医、看護師、家族の間でどうなっているかわからない。(64)

・保護室から精神医療審査会に電話をかけたかったので、医師に付き添われて電話をしにいった。1回目は話中で電話がつながらなかった。もう一度かけようとしたら、横から医師に電話を切られた。(67)

*6電気ショック、はじめて。気持ちが暗く、まわりに不信感がでてきた。(61)

虐待的言動

・外泊希望したら「まだそんなこと言ってるんか。一生退院できひんで」「あきらめるか」とか言われた。(66)

・5~6年前に退院したいと伝えるとグランドに立たされた。倒れると看護師に腹に蹴りを入れられた(65)

・看護師、ヘルパーに偉そうに言われたり、ひっぱられたりします(66)

強制入院時に感じたショック・屈辱

・家族についてきてもらい急に入院になった。外来で男性看護師と女性看護師5人に、何の説明もなく「着替えをします」の一言もなくパジャマに着替えるのにいきなり押し倒され両手つかまれて男性看護師がかぶさって手を押さえられ、手がはれ上がった。(59)

・「修理に行くから家にいといて」といわれて家にいたら、Drがきて注射打たれて独房に入れられた。なかなか出してもらえない。(60)

・主人に無理矢理入院させられた。診察も説明もなし。(60)

退院時の支援不足

・入院の時にはグループホームがあると聞いていたが女性しか入れない。病院からは病院近くへの退院やアパート暮らしをすすめられ、アパート探しも協力してもらえるという話だったが、その後「アパート探しは家族で」と手紙がきた。(65)

・看護師が退院するように言う。不安。グループホームなどあるらしいがどんなところか?(63)

・主治医が「(退院に向けて)外泊してもいいけど」と言うが、外泊先がない。誰に相談したらよいのか・・・(65)

・入院してもう5年。「保護者いないから単独では退院はあかん」と医師から言われる。このままがまんしないといけないのか。(57)

出たいのに・・・

・主治医がころころ変わって退院の目処がつかない。(65)

・今いる病棟は、自由に外に出られないし、お金を自分で持てないので、ジュースも飲めない。(66)

・10年間、入院している。外出できない。家族に会いたい。(61)

・病院替わりたい。26年間もここにおるんです。(57)

・入院費を払わないと出られないと言われた。(67)

橋本注)*5 「PSW」(Psychiatric Social Worker)とは、「精神保健福祉士」のことです。1997年に誕生した精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格で、社会福祉士、介護福祉士と並ぶ福祉の国家資格(通称:三福祉士)のひとつです。
特にわが国では、精神障がい者に対する社会復帰や社会参加支援の取り組みが、先進諸国の中で制度的に著しく立ち遅れた状況が長年続いたという背景から、近年、関係法の改正などにより、精神障がい者も同じ一市民として地域社会で暮らすための基盤整備が図られることとなり、それらの制度設計の一環として、精神保健福祉領域に特化した資格として、「精神保健福祉士」が創設されました。社会福祉学を学問的基盤として、常に権利擁護の視点を持ちながら、病院の外の他機関とも連携しつつ、精神障がい者の抱える生活問題や社会問題の解決のための援助や、社会参加に向けての支援をすることがその役割と言えます。ちなみに、身体障がい、知的障がいに特化した福祉士の国家資格は存在しません。
しかし、PSWは医療職ではありませんので、医師の指示によって業務を行うものでないにも関わらず、『主治医がいれば、その指導を受けること』もPSWの義務として定められている(精神保健福祉士法第41条第2項)ので、残念ながら、病院の職員として勤務する多くのPSWは、医師の部下としての立場に置かれるのが実情で、PSWとして独自の専門的な視点に基づく判断とそれによる支援を行うのは難しく、また、それだけの技量を持つPSWはめったにいないのが実態です。

*6 「電気ショック」とは、「電気痙攣療法」のことで、頭部(脳)に通電することで症状を改善するとされているものです。救急医療における心肺停止状態の心臓への通電で心拍を回復するのと原理的にはほぼ同じですが、当然、心肺停止しているわけでもない人に通電するのですから、患者には相当な肉体的負荷がかかります。心臓疾患のある人、またはその疑いのある人には禁忌です。古くから行われている治療法で、現在でも一部の精神科では行っていますが、施術前に入念な検査(心肺機能、他、多岐にわたる)を行った上で、麻酔科の診察を受け、全身麻酔下で行われるのが正当な形です。しかしながら、1970年代頃まで、この治療法が患者への懲罰として多用され、麻酔もなしで、多くの病者に苦痛と恐怖を植え付け、今でもその体験のトラウマに苦しむ病者が存在します。通称『電パチ』といって、現在でも病者の間では恐れられています。治療効果についてはたいへん個人差が大きく、あらゆる薬物療法に反応しなかった重い鬱病患者が劇的に回復する例もあれば(ただしこれも一時的で再発は多く、そのため熱心なリピーターとなる例もある)、全く効果の無い例も多々あります。脳に対する通電の治療効果の機序は、実は、現在の医学では解明されておらず、効いたとしてもなぜ効いたのか、科学的に説明できないのです。

4 「精神科事件史年表」―精神科で発覚した主な問題事件

「精神科事件史年表」(読売新聞・原昌平氏作成)から「大阪精神医療人権センター」が抽出したもので、紙面の関係で勝手ながら2000年以前については一部省略し、掲載します。

■ 精神科事件史年表

(注:訴訟や個別過誤、患者同士の刑事事件はあまり収録していない)

発覚年 病院名 所在地 主な内容
2008 12 貝塚中央病院 大阪 違法拘束中の男性患者が重体、転院先で死亡。看護職員の暴力で患者が告訴
12 東京クリニック 東京 元患者につきまとい、脅迫メール。元院長をストーカーと脅迫容疑で逮捕
11 しのだの森

ホスピタル

千葉 男性入院患者の腕をねじ上げ、骨折させたとして看護師を傷害容疑で逮捕
10 大東市の診療所 大阪 向精神薬エリミン約20万錠が不明。暴力団に売った元事務長を近畿厚生局が書類送検
8 米子病院 鳥取 男性入院患者の顔を殴ったとして看護助手を暴行容疑で書類送検(起訴猶予)
7 モリタニ

クリニック

京都 リタリン大量に使途不明。院長を近畿厚生局が書類送検(起訴猶予)
6 初石病院 千葉 火災で保護室の患者が煙を吸い死亡。看護師がカギ開けず。別の患者を放火で逮捕
6 十全病院 石川 患者ら2730人の個人情報がネット流出。職員がメモリーで持ち出していた
4 藤枝駿府病院 静岡 肺炎球菌で院内感染64人、患者4人が死亡。保健所報告は発生の約4週間後
2 光ヶ丘病院 富山 男性患者(84)が同室の男性患者(87)を殴って殺害。のち殺人容疑で書類送検
2007 12 武蔵野病院 群馬 男性看護師が男性患者の頭をけり、死なす。傷害致死で逮捕。以前から暴行
11 県立こころの医療センター 三重 面会室で交際相手の女性を絞殺、入院患者の男を逮捕
11 公立小浜病院 福井 救急搬送の男性に鎮静剤投与後、心肺停止。1年後死亡
11 片倉病院 山口 入院中の女性が病室のベッドで首を圧迫され死亡。殺人で捜査
11 東京クリニック 東京 リタリンを無診察・無資格で処方した容疑で捜索。のち院長を書類送検
10 京成江戸川クリニック 東京 リタリンの無資格処方で院長と事務員を逮捕
10 陽和病院 東京 入院中の少年(18)が男性看護師(33)を刺殺
7 松山記念病院 愛媛 患者13人からの預かり金975万円を男性職員が着服、懲戒解雇
6 しおかぜ病院 香川 入院患者が同室の患者を刺殺
5 宮城県精神医療センター 宮城 看護師が患者2人の預金312万円を着服、懲戒免職
2 東松山病院 埼玉 職員水増しで不正請求。男性看護助手が患者に暴力
1 国立・武蔵病院 東京 患者1688人分の個人情報が入った私有パソコンを医師が紛失
1 東京クリニック 東京 説明を求めた女性患者の頭を院長が壁にたたきつけ負傷。傷害で逮捕、有罪
2006 11 国立・国府台病院 千葉 PTSDの女性患者を男性医師が殴る。民事判決で認定
10 国立・賀茂精神医療センター 広島 看護師が入院患者8人の預かり金の計78万余円を着服、懲戒免職
10 国立・国府台病院 千葉 入院費など計約436万円を着服した係長が着服、懲戒免職
10 成増厚生病院 東京 保護室で患者が放火、女性患者1人死亡、4人重傷。保護室カギあけず
9 新潟県立精神医療センター 新潟 使途不明通帳が2冊(計約77万円分)が見つかる
9 国立・武蔵病院 東京 准看護師が患者のキャッシュカードを盗んで316万円を引き出し、逮捕
9 三船病院 香川 5階病棟の床下に白骨死体。02年6月に行方不明の女性患者
8 岩倉病院 京都 患者の金数百万円が不明。女性看護師長が30万円返還
7 埼玉江南病院 埼玉 准看護師が患者に暴行・負傷。法務局が勧告。傷害で略式命令
6 本舘病院 岩手 女性患者が預けた預金通帳と印鑑で事務職員が890万円を着服
6 都城新生病院 宮崎 閉鎖病棟で火災、男性1人が死亡
4 都南病院 岩手 元通院患者の女性に医師が睡眠薬を飲ませ、準強姦で逮捕、有罪
1 瀬戸内市の病院(廃) 岡山 不当な漫然長期入院・使役労働。弁護士会が人権救済勧告
2005 11 心斎橋みやまえクリニック 大阪 医師がうつ病の女性患者の家に上がり、体を触り逮捕
8 三隅病院 山口 薬剤師が向精神薬約150錠と注射器を外部へ横流し
7 行橋厚生病院 福岡 看護師2人が入院中の小5男児を殴って負傷させる
4 安田メンタルクリニック 愛知 女性の患者の胸をさわったとして院長逮捕、有罪確定
2 長崎県の病院 長崎 看護師を患者への暴行で容疑で逮捕
2004 11 西熊谷病院 埼玉 職員が女性患者に暴行、男性患者の窒息死届けず、不正請求
11 都内の病院

(複数)

東京 身体拘束によるエコノミークラス症候群で5年間の4人死亡
10 土屋病院 山形 無資格の理事長や職員らが4年間、薬を調合
6 海辺の杜ホスピタル 高知 准看護師が入院患者8人の預金643万円を引き出す
1 県立友部病院 茨城 閉鎖病棟の入院患者が抜け出し凍死。鍵かけ忘れか
2003 12 岐阜県の6病院 岐阜 入院患者に掃除や配膳などの院内作業、県も容認
8 福島松ヶ丘病院 福島 作業名目で清掃作業、違法拘束、超過収容
5 三生会病院 山梨 心臓に持病の男性患者に電気ショック療法、死亡
4 松口病院 福岡 任意患者の退院拒否、電話制限、違法拘束
2002 12 上妻病院 東京 任意入院の女性患者の退院を不当に拒否
10 県立会津総合病院 福島 保護室に複数収容、電話面会制限、不正請求
8 宇都宮病院 栃木 O157に123人が集団感染、9人死亡
7 和歌浦病院 和歌山 看護助手が男性患者を殴打して死なせる
4 浜黒崎野村病院 富山 指定医の診察なく隔離、カルテ改ざん
1 豊明栄病院 愛知 男性入院患者が何者かに扼殺。違法な院内作業
2001 12 県立病院静和荘 山口 女性患者の不審死届けず。両親の面会を半年拒否
12 井之頭病院 東京 保護室で抑制中の男性患者が窒息死
8 箕面ヶ丘病院 大阪 職員水増し、違法拘束、外出制限、電話妨害
8 中間保養院 福岡 職員水増し、不正受給、超過収容
3 新門司病院 福岡 事務長が患者の金や市の補助金など9500万円着服
2 真城病院 大阪 看護士がゴルフクラブで頭を殴るなど暴行
1 宝喜クリニック 東京 女性を拘束して病院へ搬送中に窒息死(業過で有罪)
2000 11 朝倉病院 埼玉 不要な中心静脈栄養、違法拘束、病室で手術
9 県立大村病院 長崎 看護士が勤務中に女性患者と性関係
5 埼玉医大 埼玉 中3少女がビタミン併用を怠った輸液で死亡
1999 11 松口病院 福岡 患者の退院・処遇改善請求を取り下げさせる
2 多度病院 三重 インフルエンザで19人死亡。超過収容、使役労働
1998 12 平松病院 北海道 保護室に男性患者2人を入れ、1人が暴行死
11 奄美病院 鹿児島 女性患者を庭木に縛る。ニセ医師が診療
9 国立犀潟病院 新潟 違法拘束中の女性がノドに物を詰めて窒息死
1997 3 大和川病院 大阪 暴行死、違法入院・拘束、電話・面会妨害、使役労働、職員水増し、24億円不正受給
2 山本病院 高知 職員2人が女性患者の頭を壁に打ちつけ死亡
1996 11 栗田病院 長野 院長が死亡患者の預金着服、脱税、患者虐待
1995 12 皆川記念病院 神奈川 男性患者がベッドに縛られたまま流動食を詰め窒息死
1994 12 米沢市立病院 山形 精神科病棟の火災で女性患者がCO中毒死
4 越川記念病院 神奈川 患者にエアガン乱射、違法拘束、職員水増し
1993 9 湊川病院 兵庫 男性患者が何者かに暴行を受けて重傷
2 大和川病院 大阪 男性患者が院内で暴行を受け不審死
1992 6 河野粕屋病院 福岡 電気ショックで82年に患者2人死亡。不当な強制入院
1989 5 河野病院 福岡 違法な入院・拘束、看護士が電気ショック
1986 10 根岸病院 東京 自殺を病死に工作、処方箋の記入を部外に大量発注
5 青葉病院 東京 職員水増し、使役労働、違法拘束
1985 10 青梅成木台病院 東京 乱脈経理、患者の金を理事長らが着服、不要入院
7 吉沢病院 東京 無資格の看護職員が注射やレントゲン
7 大多喜病院 千葉 入院患者の急死、違法入院など
4 厩橋病院 群馬 看護士が患者を殴って頭の骨を折る
1984 10 青山病院 広島 火災で患者、看護婦ら6人焼死
3 宇都宮病院 栃木 患者が職員らのリンチで死亡。院長らが患者虐待、使役労働、無資格診療、違法解剖
1982 6 鴨島中央病院 徳島 患者8人が集団脱走、うち2人は連れ戻されたあと自殺
1980 9 高岡病院 姫路 ガラス店や鉄工所で作業療法と称して低賃金労働
1 大和川病院 大阪 看護人が男性患者に暴行、死なす

あとがき

今回ご紹介したものは、私どもに寄せられたものの一部にすぎません。ですから、精神医療の世界では、この事例の何倍もの人権侵害が、日々起きていると考えるのが妥当であると思います。

精神科病院は、なおその多くが閉鎖病棟であり、人権侵害が発生しやすく、また発生しても顕在化しにくい状況があるのです。

また、我が国の精神保健福祉は、先進諸外国と比して、あまりに遅れているといわざるを得ません。今回はその具体的データをご紹介することが叶いませんでしたが、入院病床数の多さ、在院日数の長さは、群を抜いており、あまりにひどい有り様です。さらに、社会支援システムが皆無に等しいほど貧しいことも、諸外国と比して顕著に表れています。

先進国の一員であるはずの我が国において、ここまで精神保健福祉が貧困で、精神障がい者がむごい状況におかれていることには、様々の原因があるのですが、行政-厚生行政の責任が大きく関係していると考えます。つまるところ、国の責任なのです。

しかし、我々国民が主権者である以上、国の責任は我々自身の責任であるとも言えます。

多くの人々は精神障がいに無関心で、人々の無関心は無知を呼び、無知から来る偏見によって、我々精神病者は、常にいわれなき差別にさらされています。

あまりに閉鎖的な精神病院という環境のなかで、社会から忘れ去られたようにひっそりと人生の大半を過ごす多くの善良なる病者がいることを知って下さい。彼らにはおよそ人間らしい暮らしなどないことを知って下さい。彼らにとって、「人権」など、絵に描いた餅に過ぎないということを知って下さい。

多くの国民が、精神障がい者のおかれた状況に関心を寄せるならば、国を動かすことですら、不可能ではないはずです。

そのためには、どうか、本当のことを知って下さい。精神障がい者をめぐるあらゆる実態を、勇気を持って直視して頂きたいのです。

心ある皆さまが、偏見のなかで忘れ去られ社会から見捨てられた人々の、声なき声に耳を傾けてくださることを願って、あとがきとさせていただきます。

橋本 容子

次のページ →