しょうがいしゃを裏切る“障害者総合支援法改定案” 政府は、法案を取り下げよ!

しょうがいしゃを裏切る“障害者総合支援法改定案”
政府は、法案を取り下げよ!

3月1日、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」(以下、法案)が閣議決定され、国会に上程されました。2014年に日本が障害者権利条約を批准したうえでの改定ですが、その内容は、しょうがいしゃばかりではなく、国会の論議さえも裏切る代物です。
2011年8月、しょうがいしゃ団体の代表が加わり作られた「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(以下、骨格提言)は、法律として生かされるはずでした。それが、2010年1月の「障害者自立支援法違憲訴訟団」との和解内容でしたし、すべてのしょうがいしゃとの約束だったはずです。
しかし、2012年6月に成立した総合支援法は、自立支援法の焼き直しに過ぎないものでした。それでも厚生労働省は、骨格提言を「段階的に実現する」と答弁してきました。また、現行の総合支援法の附則第三条には、「政府は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく・・・共生する社会の実現に向けて」検討する規定があります。しかし、法案は、こうした社会を実現する内容には全くなっていないのです。

●しょうがいしゃの隔離体制は変わらない
精神しょうがいしゃの入院患者数は32.3万人(うち1年以上の入院者は20万人)、知的しょうがいしゃの施設入所者は11.9万人、身体しょうがいしゃの施設入所者は7.3万人です。同居家族が高齢化したり死亡したりすると、施設や病院に入れられる状況が続いています。こうした隔離の場での虐待事件も横行しています。
こうした状況を変えなければ、権利条約の内容は実現されませんし、差別解消の出発点にさえなりません。
精神しょうがいしゃの他国にも類例を見ない長期入院については、国連やOECDからも批判を受けています。そして、法案のもとであるはずの社会保障審議会・障害者部会(以下、障害者部会)の報告書では、長期入院者の5万人が退院すると5万人がまた長期入院となる、との記載があります。審議の中では、5万人の退院者のうち1万1千人が死亡退院であり、1万9千人が転院や転科だという指摘がありました。
法案は、こうした深刻な事態を改善する施策が全く盛り込まれていません。

●骨格提言とは
上記のようなしょうがいしゃの状態を骨格提言では、「放置できない社会問題」と呼び、その解決のために予算を確保し、「地域基盤整備10か年戦略」を推し進める方針を提起しています。しょうがいしゃが地域社会でほかの市民と平等に暮らすため、本人の必要に応じた支援を作り出すことを求め、しょうがい種別間や地方自治体間の支援の格差をなくし、また、制度上の不備から支援を受けられない人が出ないようにしようというものです。
権利条約の具現化のためには、骨格提言の完全実現が必要なのです。

何が改善なのか全く不明な法案

●「支援の充実」は見せかけ
新たに障害福祉サービスのメニューに加えられる「自立生活援助」や「就労定着支援」は、現行の制度でもすでに行われているものです。前者は、現行の「地域定着支援」とどこが違うのでしょうか。後者は、現行の就労移行支援事業でも行われていることであり、また、障害者雇用促進法の“就業・生活支援センター”が行ってきた支援です。

事業所の情報公開についての条文も新設されていますが、すでに、ワムネットが行っている福祉サービス第三者評価のホームページ上の公開とどのような違いがあるのでしょうか。

●入院時の介助はどうなるのか
“重度訪問介護”利用者が入院した際に、慣れたヘルパーが介助を行うことができるようにするとの触れ込みがありましたが、法案に書かれているのは、介助を行う場所として、省令で定める場所、と記載しているだけです。閣議決定の際に厚労省から配られた資料によれば、入院時の介助の対象となるのは、障害支援区分6の人に限定しています。また、同資料によれば、ヘルパーの行う仕事は、医療関係者に適切な介助方法を伝えるだけの内容です。

●しょうがいじとその家族の支援は充実しない
「居宅訪問型児童発達支援」の新設が法案に入っていますが、これは、通所が困難な家庭に訪問して訓練を行うものです。
重度のしょうがいじのいる家族の問題として、障害者部会で議論されてきたのは、睡眠時間もまともに取れない家族の実態でした。これを解決するには、ヘルパー派遣、日中一次支援、移動介助などの充実だったはずです。

●事業所が増えないように規制する
児童福祉法改定の中に、「特定障害児通所支援」という規定を盛り込み、「放課後等デイサービス」などの事業所の増加を抑制しようとしています。大人の「特定障害者福祉サービス」と同様に、都道府県知事に事業所の総量抑制をさせようとしているのです。そのために、新たに都道府県の障害児福祉計画を作らせようとしているのです。
上述の「自立生活援助」も、“障害支援区分”の1や2の人をグループホームの対象者から除外するとの方向の中から出てきており、グループホームの増加を抑えようとする政策の一環です。

●介護保険制度に近づける政策に反対
骨格提言では、介護保険優先原則を改め、しょうがいしゃの制度か介護保険課を選択制にすることを求めてきました。しかし、今回の法案にそのことは全く反映されず、かえって介護保険に近づける政策ばかりがとられています。補装具にレンタル方式を取り入れたり、介護保険に移行したしょうがいしゃの利用料の一部払い戻し制度の導入は、そのために作られたものであると考えます。
この払い戻しに使われる予算は、総合支援法関連予算から支払われますが、その金額は政令で定めることとされています。閣議決定時の資料には、「一般高齢者との公平性」、「一定程度以上の障害支援区分」、「低所得者」、障害福祉を受けてきた年限など様々な条件が付けられており、払い戻しの対象者や金額が大きく絞り込まれることは明らかです。

●施行日を再来年4月としている意味は
政府の予定では、法案を今国会で通過させるのですが、施行は2018年4月としています。この施行時期は、“障害福祉サービス”事業所への時期報酬改定実施と重なり、前日の3月31日には高額な利用料や食費負担を軽減している経過措置の期限日となっています。財務省は、この経過措置の廃止を要求しているばかりでなく、利用料の増額、制度を利用できるしょうがいしゃを限定すること、家事援助を制度から切り離すか“地域生活支援事業”に移すこと、“障害支援区分”判定制度の改悪などを求めてきています。
総合支援法は、政省令を変化させることで、大きな制度改悪を可能とする構造をもっています。この約2年間の間に、政省令改悪が進められる恐れがあります。

私たちは、国会に上程されている法案を取り下げるよう、政府と全国会議員に要請します。そして、骨格提言を実現した法律の制定を求めます。
★私たちは、すべてのしょうがいしゃとその関係者に呼びかけます。地域社会から隔離された仲間を取り戻し、権利条約を具現化するために、骨格提言の完全実現を求めて闘うことを!

「骨格提言」の完全実現を求める
大フォーラム実行委員会
【連絡先】東京都世田谷区豪徳寺1-32-21スマイルホーム豪徳寺1F自立生活センターHANDS世田谷内 TEL 03-5450-2861 FAX 03-5450-2862

10.29 「骨格提言」の完全実現を求める 大フォーラム

◆障害者総合支援法の施行3 年後の見直しに向けた作業が進んでいます。この中で、「骨格提言」を完全に実現させる必要があります。
◆しかし現状は、介護保険の強制、病棟転換型居住系施設の容認、財務省の社会保障切捨て方針など、権利条約と「骨格提言」を踏みにじる動きがあります。
◆今こそ、いのちと権利をかけた障害者の団結した力を示そう!

日時=10 月29 日(木)
12~15 時 (開場11 時)
場所=日比谷野外音楽堂
日比谷野外音楽堂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内容=基調報告
障害当事者のリレートーク
各界からの連帯アピールなど
主催=「骨格提言」の完全実現を求める
大フォーラム実行委員会
〒154-0021 東京都世田谷区豪徳寺1-32-21
スマイルホーム豪徳寺1F
自立生活センターHANDS 世田谷気付
TEL 03-5450-2861 FAX 03-5450-2862
E メール hands@sh.rim.or.jp

賛同の呼びかけは以下
https://acppd.org/jngmdp-backup/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E7%B7%8F%E5%90%88%E6%94%AF%E6%8F%B4%E6%B3%95/2992

◆経済財政諮問会議の方針(「骨太の方針」)について

6月30日に、“経済財政諮問会議”の方針が閣議決定もされて発表されました。この方針の名前は以下のものです。

「経済財政運営と改革の基本方針2015 ~経済再生なくして財政健全化なし~(骨太方針)」

毎年6月に、安倍政権は、この方針を作ってきました。第二次安倍政権としては、3回目です。

以下、この方針について、骨太2015、と記します。

また、これには概要版がありますので、これを、骨太概要、と記します。

 

 

★財務省の方針との関係はどうなったか

 

「障害者」の福祉については、骨太2015では触れられていません。しかし、医療、介護保険、生活保護などの見直しについては、財務省関係の方針が表れており、これらにより、「障害者」も含めて苦しめられることになりそうです。

特に、医療について患者側として、危険性を持つ内容があります。

財務省側の表現では、「受診時定額負担」、骨太2015では、「外来時の定額負担」の導入を検討するとしています。3割から1割の窓口負担とは別に、受信するたびに一定額を支払わせようとするものです。事実上、3割負担を超えて支払わせる制度を定着させ、更なる窓口負担の増加を図ろうとするものです。

とりわけ、難病医療に指定されていない難病を抱える人=1型糖尿病、線維筋痛症などの人たちの負担は、さらに増大します。

また、財務省関係の方針では、「受信時定額負担」が導入された場合には、生活保護利用者からも、医療費の自己負担を求める、としていましたが、この導入も懸念されます。

 

財務省は、「頻回受診」を問題にしていましたが、骨太2015では、「重複受診」も問題にしています。日本の保険制度では、自由に医療機関を選べるという利点があったが、これをなくしてしまう可能性があります。これは一般の患者にとってもだが、医者との相性問題の大きい「精神障碍者」にとっては大きな問題になるのではないでしょうか。

 

  • 介護保険について

財務省の方針を受けて、次のよに記載されている。

「軽度者に対する生活援助サービス・福祉用具貸与等やその他の給付について、給付の見直しや地域支援事業への移行を含め検討を行う。」

財務省関係の方針では、要介護1、2の人を介護保険サービス給付の対象から外し、生活援助、住宅改修、福祉用具を自費で購入することを基本とするとなっていた。一部の補助は、自治体の地域支援事業の中で、補助がある可能性もあるが。

また、骨太2015では、「社会保障制度の持続可能性を中長期的に高めるとともに、世代間・世代内での負担の公平を図り、負担能力に応じた負担を求める観点から、医療保険における高額療養費制度や後期高齢者の窓口負担の在り方について検討するとともに、介護保険における高額介護サービス費制度や利用者負担の在り方等について、制度改正の施行状況も踏まえつつ、検討を行う。」、「あわせて、医療保険、介護保険ともに、マイナンバーを活用すること等により、金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担を求める仕組みについて、実施上の課題を整理しつつ、検討する。」ともされており、利用者負担の増額を図ろうとしている。

財務省関係の方針では、利用者負担2割の対象者拡大を図るなど、やはり利用者負担の増額を狙っていた。

骨太2015では、「介護サービスについて、人材の資質の向上を進めるとともに、事業経営の規模の拡大やICT・介護ロボットの活用等により、介護の生産性向上を推進する。」

資本家らしい表現ではあるが、実際に何をもたらすのか。小規模事業者はどうなってしまうのか。

 

  • 生活保護

骨太2015では、次のように記されている。

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足下の経済雇用情勢を踏まえ、就労支援を通じた保護脱却の推進のためのインセンティブ付けの検討など自立支援に十分取り組むとともに、生活保護の適用ルールの確実かつ適正な運用、医療扶助をはじめとする生活保護制度の更なる適正化を行う。さらに、平成29年度の次期生活扶助基準の検証に合わせ、年齢、世帯類型、地域実態等を踏まえた真に必要な保護の在り方や更なる自立促進のための施策等、その制度全般について予断なく検討し、必要な見直しを行う。

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財務省のように、更新制や「正当な理由なく就労しない場合の保護費の削減」、医療費の自己負担など、具体的なことは出てこないが、実際の検討段階では、財務省の方針がたたき台として出てくることは確実だろう。

 

  • 「尊厳死」の推進

財務省関係の方針では不鮮明だったものが、骨太2015では明確にされている。

「都市・地方それぞれの特性を踏まえ、在宅や介護施設等における看取りも含めて対応できる地域包括ケアシステムを構築する。また、人生の最終段階における医療の在り方の検討を行う。」

 

★歳出削減として、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」?

 

骨太概要には、次のように記されている。

「歳出改革は、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」、「公共サービスのイノベーション」に取り組む。公共サービスの質や水準を低下させることなく、経済への下押し圧力を抑えつつ公的支出を抑制。歳出全般にわたり、安倍内閣のこれまでの取組を強化し、聖域なく徹底した見直しを進める。また地方においても、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める。」

 

  • 公的サービスの産業化

財務省関係の方針では、医療や介護の保険など公的給付の対象から外して行くことが、そうした分野の市場を産業として発展させることができる、としている。

これが歳出削減となることは明白であるが、産業として発展させると言うのはどういうことだろうか。

厚労省の調査では、昨年7月時点の調査で、「生活が苦しい」という世帯が62.4%と過去最高となったことを発表している。

骨太2015では、財務省関係ほど露骨な表現は行っていない。2か所ほど引用する。

「民間の知恵・資金等を有効活用し、公共サービスの効率化、質の向上を実現するとともに、企業やNPO等が国、地方自治体等と連携しつつ公的サービスへの参画を飛躍的に進める。また、これまで十分に活用されていない公的ストック(社会資本、土地、情報等)を有効に活用する。さらに、規制改革や公共サービス・公共データの見える化等により、新たな民間サービスの創出を促進する。」

NPOが産業化の担い手だとすると、「非営利」ということはどうなってしまうのだろうか。

「(社会保障をはじめとする公的サービスの産業化の推進)

・ 企業等が医療機関・介護事業者、保険者、保育事業者等と連携して新たなサービスの提供を拡大することを促進する。

・ 医療、介護と一体的に提供することが効果的な健康サービスや在宅医療・介護の拡大に対応した高齢者向け住宅、移送サービスなどのニーズに応じた新たなサービスの供給を拡大する。」

「在宅医療」を産業と考えているのには驚く。

高齢者向け住宅はすでに作られてきたものであり、移送サービスは、介護タクシーなどで行われてきたのだが、それが新たに発展すると言うのだろうか。

健康診断や保険請求のデータを活用した健康産業の発展ということも考えているようだが、プライバシー問題、優生主義的な活用も懸念される。

 

  • インセンティブ改革

・骨太概要

「国民一人ひとり、企業、自治体等の意識や行動の変化を促す仕組みを構築。インセンティブが十分働く仕組みとするための改革を推進。」

骨太2015では、医療や介護保険について、医療費の地域差をなくす(医療費の多い地域の医療費の削減)、健康診断の地震率、要介護認定率、一人当たり介護給付費の地域差などに注目して、地域ごとの診療報酬に差をつけること、市町村や健康保険組合などに支援金を交付することなども検討すべきであるとしている。

個人についても、1年間保険医療を受けず、健康診断なども受けているかどうかに着目して、1万円あげるとか、スポーツクラブの利用券と交換できるポイントを交付するとか、医療機関を利用せずに健康を調整することなどを進めようとしている。

これは結局、地域間格差の増大となり、必要な医療も抑制してしまうことにつながっていく。実際に次のような記述がある。

「全国一律に一定の行政サービスを保障する仕組みの下、コスト意識が希薄化し、自助自立を促す取組や公共サービス需要の膨張を抑制する取組が弱い。また、一律的なサービス提供であるため、選択肢が乏しく、創意工夫が発揮されにくい。」

各地で一律のサービスさえ提供していない現状があるのに、何を言うか、と言いたくなる。

また、自己責任論、市民の健康を維持する義務などの万円を作り出して、優生思想を煽り立てていくことになるのではないか。

 

  • 公共サービスのイノベーションとは

骨太概要には、「「公共サービスの徹底した見える化」、「エビデンスに基づくPDCAの徹底」、「マイナンバー制度の活用やITを活用した業務の簡素化・標準化」に重点的に取り組む。」と記されている。

 

★骨太2015をどう読むか

 

消費税については、2017年に10%に引き上げることは、何度も書かれている。

その上で、社会保障について、相反するような2面があると読める。このままではやっていけない、という表現と、少なくとも2018年度まではこれまでの3年間と同様の予算をつけていく、と読める部分である。以下に、概要からこうした表現を抜き出す。

  • 「財政と社会保障制度は現状のままでは立ち行かない」
  • 「歳出改革は聖域なく進める。社会保障と地方行財政改革・分野横断的な取組等は、特に改革の重点分野として取り組む。
  • 「安倍内閣のこれまで3年間の経済再生や改革の成果と合わせ、社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び(5兆円程度)となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度まで継続していくことを目安とし、効率化、予防等や制度改革に取り組む。この点も含め、2020年度に向けて、社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す。」
  • 「国の一般歳出の水準の目安については、安倍内閣のこれまでの3年間の取組では一般歳出の総額の実質的な増加が6兆円程度となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度まで継続させていくこととする。地方の歳出水準については、国の一般歳出の取組と基調を合わせつつ、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額について、2018年度までにおいて、2015年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する。」

 

財務省は、あくまで社会保障予算の伸びを、高齢者の人口増加の伸びの範囲に抑える、としていて、消費税での予算の充実については、述べていなかった。5%から8%にしたときにも、消費税収で増えた部分は、大部分、国債で賄われていた部分や所得税や法人税などの税金で賄われていた部分の代替えとして利用されてしまった。したがって、ほとんど充実には使われなかった。財務省は、これと同じことを10%になった時にも行おうと考えていたのではないか。

 

選挙を意識しなければならない議員や厚労省の側の巻き返しもあったのかと思う。安倍政権としては、来年の参院選も含めて、選挙で勝たないと改憲ができないということも背景にあるのではないか。

子育て関係の予算については、これとは別に、予算を確保するとしており、ほかの社会保障関係とは別扱いになっている。

しかし、その間も、制度改革は行って行く、と述べているのであり、法制度の改悪は、財務省の方針も含めて検討されるという危機意識をもっていないといけないのではないか。

2020年度までに、国債に依存せずに一般歳出を賄えるようにするのが2020年の目標とされている。そして、2018年度には、一般歳出を賄うのにあたって、5兆円程度の国債の発行に抑える目標を立てている。(5兆円程度とは、GDPの1%ということを、私なりに計算した額です)

「中長期的に、実質GDP成長率2%程度、名目GDP成長率3%程度を上回る経済成長の実現を目指す。」

というここ何年もなかった高い経済成長を前提とした方針であって、マスコミの言うように、破産する可能性が高い。そうなると、財務省のような方針が、もっとエスカレートして出てくることも予想される。

 

財務省 「骨格提言」の実現を阻み、さらに、「障害者総合支援法」を改悪しようとする方針

◆私たち抜きに私たちのことを決めるな!
◆財務省は、社会保障、障害者総合支援法大改悪方針を撤回せよ!
◆’経済財政諮問会議=安倍政権は、社会保障切り捨てを止めろ!
◆今こそ、障害者の団結した力を示そう!

骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会2015

「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(骨格提言)の完全実現のため、各地、各団体で取り組まれている皆さん。今、財務省がこの「骨格提言」の実現を阻み、さらに、「障害者総合支援法」を改悪しようとする方針を打ち出してきていることをご存知でしょうか。総合支援法施行3年後の見直し時期であることを述べつつ、改悪案を出しているのです。
また、この財務省の方針は、社会保障の大改悪案として出されています。医療、介護保険、生活保護、年金などが改悪の対象とされています。
とりわけ、介護保険の改悪内容は甚だしく、要介護1・2の人を、介護保険のサービス給付の対象から外し、家事援助を中心とする’生活援助’、福祉用具、住宅改修を、自費で購入すべきであるとしています。
障害者についても、’家事援助’について、介護保険の改悪方向に沿った改悪を進めようとしています。詳細については後述しますが、そのほかにも以下のような内容が語られています。
①’障害支援区分’の判定方法を見直して、軽度に判定されるようにすべし
②’障害支援区分’に応じた利用限度額を作るべし(現在、介護保険の要介護区分において適用されているように)

こうした財務省の方針は、4月27日に主計局から示され、6月1日に’財政制度等審議会’が発表した「財政健全化計画等に関する建議」(以下、「建議」)にも、まとめられた形で盛り込まれています。この「建議」の概要版は、閣僚と有識者(財界と学者)の協議機関である’経済財政諮問会議’(議長は安倍首相)にも提出されています。
’経済財政諮問会議’は、6月中に「経済財政運営と改革の基本方針2015」を取りまとめようとしています。この方針は閣議決定され、これまでにも生活保護制度の改悪や介護報酬の引き下げなどが推し進められました。今年の6月10日の骨子案には、「社会保障と地方財政は、特に歳出改革の重点分野」と記されています。財務省の方針が盛り込まれる危険性が大きいと考えられます。
障害者やその仲間の団結した行動で、このような社会保障の大改悪を阻止して行きましょう。

(注)
4月27日に出された主計局の方針は、以下のアドレスに掲載されています。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia270427/01.pdf
「建議」については、以下のアドレスに掲載されています。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia270601/index.htm

★財務省の総合支援法改悪案

以下では、4月27日に示された主計局の方針と6月1日の「建議」に示されたものを紹介していきます。

「建議」においては、次のように記されています。

「(3)障害福祉
障害福祉については、今後もサービス需要の伸びが見込まれる中で、真に支援を必要とする者に必要な支援を確実に行き届かせるとともに、サービス提供を効率的なものとすることにより、制度の持続可能性を確保していくことが重要である。
平成28年においては、障害福祉サービスの在り方等について、障害者総合支援法の施行後3年を目途とした見直しを行うこととされている。
この見直しに当たっては、不合理な地域差の改善など執行面における適正化に加え、地域の実情に応じ効率的にサービスを提供する仕組みの活用など障害者の自立や就労を支援するための効率的なサービス提供の在り方、障害支援区分の導入対象サービスの拡大など必要となる支援の度合いに応じたサービス提供の在り方、制度を支える財源・利用者負担の在り方等について幅広く検討を行い、制度の持続可能性の確保を図るべきである。」

引用したこの「建議」の部分に対応する主計局の方針をも紹介しながら、財務省の方針の内容を検討したいと思います。

●「地域の実情に応じ効率的にサービスを提供する仕組みの活用」とは

主計局の方針では、次のように記載されています。

「障害者の地域生活を推進するため、インフォーマルサービス(制度等に基づかない形でNPO等により提供されるサービス)の利用等を進めつつ、一部のサービスについて地域の実情に応じ効率的にサービスを提供する枠組み(地域生活支援事業)の活用」

これと同じような記述は、4月20日に発表された厚生労働省の’障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ’の報告書にも「ボランティア等地域のインフォーマルサービスの位置づけ」という記載があります。
障碍者団体は、自治体の事業である’地域生活支援事業’の移動支援や意思疎通支援を国の事業である’個別給付’に位置づけることを主張しています。これとは真逆に、’個別給付’を’地域生活支援事業’に移すことを考えている、と読めます。しかも、自治体に責任を負わせると言うよりも、「インフォーマルサービス(制度等に基づかない形でNPO等により提供されるサービス)」、「ボランティア等地域のインフォーマルサービス」にすると言うのです。つまり、制度からの除外です。

●「障害支援区分の導入対象サービスの拡大など必要となる支援の度合いに応じたサービス提供の在り方」とは

この部分に対応する主計局の方針は、次のようなものです。

「支援を必要とする度合に応じてサービスが提供される仕組みへの見直し (就労支援のサービスやグループホームなど、障害支援区分の認定が必要ないか、支援区分が「非該当」であっても利用が可能なサービスの見直しや、障害支援区分等に応じた利用限度額の導入等)」

「障害支援区分等に応じた利用限度額の導入」とは、総合支援法を介護保険制度とほとんど同様のものとしてしまおうということです。
介護保険では、要介護区分に応じて、利用限度額が設定されています。要介護1ならば、165,800円。要介護5ならば、358,300円、という具合に。この金額の範囲ならば、利用者は1割の自己負担で、サービスを利用できる、という仕組みになっています。
総合支援法の場合には、利用限度額はありません。しかし、’障害支援区分’に応じた’国庫負担基準’があります。区分1ならば、2690単位(1単位のきほんは10円ですが、地域によって上乗せの基準があります)、区分6は22,200単位(’重度訪問介護’の区分6は44,230単位)などです。したがって、この国庫負担基準が利用限度額とさえれてしまう可能性があります。
2003年に支援費制度がスタートする際に、厚労省が作ろうとしていた国庫負担基準の考え方では、どんなに重度の障碍者でも、月に124時間程度しか保証できないものでした。障碍者の強力な反対運動によって、各市町村に対する国庫負担総額の中で調整する仕組み(区分間流用など)が作られ、さらに、各市町村に対する国庫負担基準額では足りない場合の市町村支援事業(’重度障害者に係る市町村特別支援事業’や’重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業’)が設けられてきました。
財務省の方針では、上述の’区分間流用’の仕組みや市町村支援事業が破壊される恐れがあり、どんなに重度の障碍者でも1日数時間しか介助が保障されない状況にされてしまう可能性があります。

「就労支援のサービスやグループホームなど、障害支援区分の認定が必要ないか、支援区分が「非該当」であっても利用が可能なサービスの見直し」とは、「就労移行支援事業」、「就労継続支援事業」、グループホームについて、’障害支援区分’の認定が軽い人については利用対象から外すことにもなりかねない内容です。

さらに、主計局の方針では、次のようなことも書かれています。

「新たな判定式が導入された障害支援区分の判定結果を見ると、従来と比べ、全体としてより上位の(重度の)区分にシフトしており、総費用額の増大につながっていると考えられる。・・・このため、新たな判定式の検証を行う・・・」

これでは、軽い区分が出るような方式に見直せ、と言っているわけです。

●利用者負担の強化

主計局の方針では、「利用者負担の在り方」として、「通所サービス利用者に対する食費負担軽減措置の見直し」を挙げるとともに、これを「含む利用者負担の在り方の見直し」と記載しています。

・’家事援助’を自費購入しなければならない仕組みにするのか!?

主計局の方針によれば、’家事援助’について、次のような記述が行われています。

「居宅介護のうち「家事援助」(掃除や調理・配膳等)について、介護保険における「訪問介護」に係る議論等も踏まえつつ、必要性に応じた給付の在り方の見直し (軽度の障害者の「家事援助」の利用割合は8割超)」

介護保険制度見直しについて、’財政制度等審議会の「建議」の概要版では、「生活援助サービス及び福祉用具貸与等の原則自己負担化」と記されています。また、「建議」の本文では以下のように記されています。
「軽度者に対する掃除・調理などの生活援助サービスや、福祉用具貸与等は、日常生活で通常負担するサービス・物品であり、また、原則1割負担の下で単価が高止まりしている可能性がある。公的保険給付の重点化、競争を通じたサービスの効率化と質の向上を促す観点から、原則自己負担(一部補助)の仕組みに切り替えるべきである。」
主計局の方針でも、住宅改修も含めて「原則として自己負担(一部補助)」と記されています。

こうした介護保険制度の見直しと歩調を合わせるとすると、障碍者の’家事援助’も、基本は自費購入(一部補助)程度にされてしまう可能性が高いと考えられます。自費購入で、週に3回1時間程度の’家事援助’を購入すると、1回2000円として、月に2万6000円以上の出費をしなければならなくなります。

●障害者の地域生活が不可能になる

’家事援助’の自費購入化や’障害支援区分’に対応した利用限度額が導入されれば、障碍者が地域で生活することは困難となり、精神科病院や入所施設、あるいは、親族の住居内に隔離される以外には生活できなくなります。
★生活保護

「建議」の中でも、「保護受給の更新期の設定や、正当な理由なく就労しない場合の保護費の削減」、「医療費の一部自己負担の導入」、などという言葉が記載されています。そして、生活扶助基準をさらに引き下げる検討を行うように指示しています。そこには、「健康で文化的」という観点は全くありません。

★医療

介護保険でも同様ですが、現在1割負担の対象者を、2割負担にもっていこうとしています。
また、3割などの窓口負担とは別に、一定額を徴収する制度も検討しています。
そして、何よりも問題だと思うのは、「建議」の中に記された次のような記述です。

「この公的保険給付の範囲の重点化は、保険給付額を抑制して制度の持続性に貢献すると同時に、公的保険から外れた市場を産業として伸ばしていくことにより、経済成長とも整合的であり、社会保障の雇用・成長市場としての側面を損なわずに社会保障改革を進めることができるメリットがある。」

国民皆保険制度を破壊することを方針としているとしか考えられません。

★最後に

このほか、財務省の方針には多くの問題があります。障害者、高齢者、そして、市民が力を合わせて、生きるための闘いを作り出して行かないと、とんでもない社会が作られてしまうと思います。
反貧困運動とも連携し、障害者団体の団結した行動を作り出して行きましょう。

◆財務省関係パンフ PDF 印刷用

「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム 賛同呼びかけ文

「骨格提言」の完全実現に向けて
10・29大フォーラムに賛同を!
障害者基本法改正、障害者総合支援法、障害者差別解消法の3つの国内法がやっとでき、障害者権利条約が日本でも批准されました。この動きは今までになかったことで、私たちはとても評価をしています。その流れを受けて今、全国では市区町村レベルで条例をつくる動きがあちこちで行われています。
私たちは障害者の生の声をぶつけるために、大フォーラムを9年続けています。その中では日比谷野音や厚労省前や弁護士会館などで集会及びデモをやりました。闘いはいろんなやり方があると思います。条例づくりの運動と、連帯していく必要は絶対にあると思います。
いま、日本政府はこの権利条約と真っ向から反対するような動きをしています。
具体的には精神病院における病床転換に見られるように、長期入院の方の退院を進めるどころか、病棟転換型居住系施設にまた隔離収容しようとしています。それどころか、尊厳死の問題にも見られるように、障害者抹殺攻撃がかけられていると思っています。本当の意味で権利条約や差別解消法等を守る意味でも、いろんな運動が連帯していく必要があると考えていますので、ぜひ命の問題として一部だけの運動ではなく、いろんな人たちが連帯していきましょう。
この9年間の闘いの中で学んだ事は、闘いは継続する事が一番大事だと感じています。
2015年集会は10月29日に日比谷野音で開催します。生きにくい問題が山積みされています。ぜひ私たちと一緒になって怒りの声を政府にぶつけていきましょう。皆さんの参加・賛同をお願いします。
【企画案】
日時 2015年10月29日(木) 12:00~15:00(開場11時)予定
場所 日比谷野外音楽堂
内容 障害当事者のアピールなど
主催「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会
【呼びかけ団体】(順不同/2015年5月15日現在)
日本脳性マヒ者協会 全国青い芝の会/障害者の生活保障を要求する連絡会議/ピープルファーストジャパン/全国「精神病」者集団/難病をもつ人の地域自立生活を確立する会/怒っているぞ!障害者切り捨て-全国ネットワーク/全国ピアサポートネットワーク/兵庫県精神障害者連絡会/神奈川県障害者自立生活支援センター/自立生活センター・グッドライフ/こらーるたいとう/スタジオIL文京/自立生活センター・立川/CILくにたち援助為センター/町田ヒューマンネットワーク/自立生活センター・たいとう/あいえるの会/自立生活センター三田/自立生活センター北/ガチャバンともに生きる会/鈴木敬治さんと共に移動の自由をとりもどす会/自立生活センター福岡/障害者権利擁護センター くれよんらいふ/魔法陣/世田谷介助者ユニオン/自立生活センターHANDS世田谷

連絡先・事務局 自立生活センターHANDS世田谷
TEL 03-5450-2861/FAX 03-5450-2862/E-メール hands(@)sh.rim.or.jp  (@)を@に変えてお送りください

☆大フォーラム継続のために 賛同・ご協力ください!

【現在、政府が進めています・・・】
◇ 障害者総合支援法施行3年後見直し/障害者差別解消法施行/障害者虐待防止法見直し

☆今こそ、「骨格提言」(障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言)の完全実現を求めよう!!

【許しません!】
◆ 障害者政策委員会からの当事者はずし ◆優生思想、分離・管理政策の拡大
◆ 精神病棟転換型居住系施設      ◆施設・病院・学校での虐待
◆ 介護保険の押し付け         ◆年金・生活保護の切り下げ

私たち抜きに 私たちのことを決めるな!! 当事者である 私たちが声を上げよう!!
☆☆☆ 今年は ☆☆☆
「骨格提言」の完全実現を求める10.29大フォーラム
2015年10月29日(木)12時から 日比谷野外音楽堂にて
【賛同をお願いします!】  個人1口 ¥500  団体1口 ¥3,000
郵便振替口座 00110-0-292158  加入者名 大フォーラム実行委員会

※ 賛同と同時に、実行委員会委員を募集しますので、ご協力ください。
※ 賛同金の振込みと同時に、下記申込書に記入しFAXまたは同内容をEメールでお送りください。
FAX 03-5450-2862 / Eメール hands(@)sh.rim.or.jp
* ******************************************
「骨格提言」の完全実現を求める10・29大フォーラム 賛同申込書
・個人賛同(肩書き・地域等)                (            )
・団体賛同                             □
・ご住所
・お電話               FAX
・Eメール
・賛同費   口          円  ・お名前の公表(どちらかに○を)  可 ・ 不可

大フォーラム2015呼びかけPDFファイル

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