財務省 「骨格提言」の実現を阻み、さらに、「障害者総合支援法」を改悪しようとする方針

◆私たち抜きに私たちのことを決めるな!
◆財務省は、社会保障、障害者総合支援法大改悪方針を撤回せよ!
◆’経済財政諮問会議=安倍政権は、社会保障切り捨てを止めろ!
◆今こそ、障害者の団結した力を示そう!

骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会2015

「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(骨格提言)の完全実現のため、各地、各団体で取り組まれている皆さん。今、財務省がこの「骨格提言」の実現を阻み、さらに、「障害者総合支援法」を改悪しようとする方針を打ち出してきていることをご存知でしょうか。総合支援法施行3年後の見直し時期であることを述べつつ、改悪案を出しているのです。
また、この財務省の方針は、社会保障の大改悪案として出されています。医療、介護保険、生活保護、年金などが改悪の対象とされています。
とりわけ、介護保険の改悪内容は甚だしく、要介護1・2の人を、介護保険のサービス給付の対象から外し、家事援助を中心とする’生活援助’、福祉用具、住宅改修を、自費で購入すべきであるとしています。
障害者についても、’家事援助’について、介護保険の改悪方向に沿った改悪を進めようとしています。詳細については後述しますが、そのほかにも以下のような内容が語られています。
①’障害支援区分’の判定方法を見直して、軽度に判定されるようにすべし
②’障害支援区分’に応じた利用限度額を作るべし(現在、介護保険の要介護区分において適用されているように)

こうした財務省の方針は、4月27日に主計局から示され、6月1日に’財政制度等審議会’が発表した「財政健全化計画等に関する建議」(以下、「建議」)にも、まとめられた形で盛り込まれています。この「建議」の概要版は、閣僚と有識者(財界と学者)の協議機関である’経済財政諮問会議’(議長は安倍首相)にも提出されています。
’経済財政諮問会議’は、6月中に「経済財政運営と改革の基本方針2015」を取りまとめようとしています。この方針は閣議決定され、これまでにも生活保護制度の改悪や介護報酬の引き下げなどが推し進められました。今年の6月10日の骨子案には、「社会保障と地方財政は、特に歳出改革の重点分野」と記されています。財務省の方針が盛り込まれる危険性が大きいと考えられます。
障害者やその仲間の団結した行動で、このような社会保障の大改悪を阻止して行きましょう。

(注)
4月27日に出された主計局の方針は、以下のアドレスに掲載されています。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia270427/01.pdf
「建議」については、以下のアドレスに掲載されています。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia270601/index.htm

★財務省の総合支援法改悪案

以下では、4月27日に示された主計局の方針と6月1日の「建議」に示されたものを紹介していきます。

「建議」においては、次のように記されています。

「(3)障害福祉
障害福祉については、今後もサービス需要の伸びが見込まれる中で、真に支援を必要とする者に必要な支援を確実に行き届かせるとともに、サービス提供を効率的なものとすることにより、制度の持続可能性を確保していくことが重要である。
平成28年においては、障害福祉サービスの在り方等について、障害者総合支援法の施行後3年を目途とした見直しを行うこととされている。
この見直しに当たっては、不合理な地域差の改善など執行面における適正化に加え、地域の実情に応じ効率的にサービスを提供する仕組みの活用など障害者の自立や就労を支援するための効率的なサービス提供の在り方、障害支援区分の導入対象サービスの拡大など必要となる支援の度合いに応じたサービス提供の在り方、制度を支える財源・利用者負担の在り方等について幅広く検討を行い、制度の持続可能性の確保を図るべきである。」

引用したこの「建議」の部分に対応する主計局の方針をも紹介しながら、財務省の方針の内容を検討したいと思います。

●「地域の実情に応じ効率的にサービスを提供する仕組みの活用」とは

主計局の方針では、次のように記載されています。

「障害者の地域生活を推進するため、インフォーマルサービス(制度等に基づかない形でNPO等により提供されるサービス)の利用等を進めつつ、一部のサービスについて地域の実情に応じ効率的にサービスを提供する枠組み(地域生活支援事業)の活用」

これと同じような記述は、4月20日に発表された厚生労働省の’障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ’の報告書にも「ボランティア等地域のインフォーマルサービスの位置づけ」という記載があります。
障碍者団体は、自治体の事業である’地域生活支援事業’の移動支援や意思疎通支援を国の事業である’個別給付’に位置づけることを主張しています。これとは真逆に、’個別給付’を’地域生活支援事業’に移すことを考えている、と読めます。しかも、自治体に責任を負わせると言うよりも、「インフォーマルサービス(制度等に基づかない形でNPO等により提供されるサービス)」、「ボランティア等地域のインフォーマルサービス」にすると言うのです。つまり、制度からの除外です。

●「障害支援区分の導入対象サービスの拡大など必要となる支援の度合いに応じたサービス提供の在り方」とは

この部分に対応する主計局の方針は、次のようなものです。

「支援を必要とする度合に応じてサービスが提供される仕組みへの見直し (就労支援のサービスやグループホームなど、障害支援区分の認定が必要ないか、支援区分が「非該当」であっても利用が可能なサービスの見直しや、障害支援区分等に応じた利用限度額の導入等)」

「障害支援区分等に応じた利用限度額の導入」とは、総合支援法を介護保険制度とほとんど同様のものとしてしまおうということです。
介護保険では、要介護区分に応じて、利用限度額が設定されています。要介護1ならば、165,800円。要介護5ならば、358,300円、という具合に。この金額の範囲ならば、利用者は1割の自己負担で、サービスを利用できる、という仕組みになっています。
総合支援法の場合には、利用限度額はありません。しかし、’障害支援区分’に応じた’国庫負担基準’があります。区分1ならば、2690単位(1単位のきほんは10円ですが、地域によって上乗せの基準があります)、区分6は22,200単位(’重度訪問介護’の区分6は44,230単位)などです。したがって、この国庫負担基準が利用限度額とさえれてしまう可能性があります。
2003年に支援費制度がスタートする際に、厚労省が作ろうとしていた国庫負担基準の考え方では、どんなに重度の障碍者でも、月に124時間程度しか保証できないものでした。障碍者の強力な反対運動によって、各市町村に対する国庫負担総額の中で調整する仕組み(区分間流用など)が作られ、さらに、各市町村に対する国庫負担基準額では足りない場合の市町村支援事業(’重度障害者に係る市町村特別支援事業’や’重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業’)が設けられてきました。
財務省の方針では、上述の’区分間流用’の仕組みや市町村支援事業が破壊される恐れがあり、どんなに重度の障碍者でも1日数時間しか介助が保障されない状況にされてしまう可能性があります。

「就労支援のサービスやグループホームなど、障害支援区分の認定が必要ないか、支援区分が「非該当」であっても利用が可能なサービスの見直し」とは、「就労移行支援事業」、「就労継続支援事業」、グループホームについて、’障害支援区分’の認定が軽い人については利用対象から外すことにもなりかねない内容です。

さらに、主計局の方針では、次のようなことも書かれています。

「新たな判定式が導入された障害支援区分の判定結果を見ると、従来と比べ、全体としてより上位の(重度の)区分にシフトしており、総費用額の増大につながっていると考えられる。・・・このため、新たな判定式の検証を行う・・・」

これでは、軽い区分が出るような方式に見直せ、と言っているわけです。

●利用者負担の強化

主計局の方針では、「利用者負担の在り方」として、「通所サービス利用者に対する食費負担軽減措置の見直し」を挙げるとともに、これを「含む利用者負担の在り方の見直し」と記載しています。

・’家事援助’を自費購入しなければならない仕組みにするのか!?

主計局の方針によれば、’家事援助’について、次のような記述が行われています。

「居宅介護のうち「家事援助」(掃除や調理・配膳等)について、介護保険における「訪問介護」に係る議論等も踏まえつつ、必要性に応じた給付の在り方の見直し (軽度の障害者の「家事援助」の利用割合は8割超)」

介護保険制度見直しについて、’財政制度等審議会の「建議」の概要版では、「生活援助サービス及び福祉用具貸与等の原則自己負担化」と記されています。また、「建議」の本文では以下のように記されています。
「軽度者に対する掃除・調理などの生活援助サービスや、福祉用具貸与等は、日常生活で通常負担するサービス・物品であり、また、原則1割負担の下で単価が高止まりしている可能性がある。公的保険給付の重点化、競争を通じたサービスの効率化と質の向上を促す観点から、原則自己負担(一部補助)の仕組みに切り替えるべきである。」
主計局の方針でも、住宅改修も含めて「原則として自己負担(一部補助)」と記されています。

こうした介護保険制度の見直しと歩調を合わせるとすると、障碍者の’家事援助’も、基本は自費購入(一部補助)程度にされてしまう可能性が高いと考えられます。自費購入で、週に3回1時間程度の’家事援助’を購入すると、1回2000円として、月に2万6000円以上の出費をしなければならなくなります。

●障害者の地域生活が不可能になる

’家事援助’の自費購入化や’障害支援区分’に対応した利用限度額が導入されれば、障碍者が地域で生活することは困難となり、精神科病院や入所施設、あるいは、親族の住居内に隔離される以外には生活できなくなります。
★生活保護

「建議」の中でも、「保護受給の更新期の設定や、正当な理由なく就労しない場合の保護費の削減」、「医療費の一部自己負担の導入」、などという言葉が記載されています。そして、生活扶助基準をさらに引き下げる検討を行うように指示しています。そこには、「健康で文化的」という観点は全くありません。

★医療

介護保険でも同様ですが、現在1割負担の対象者を、2割負担にもっていこうとしています。
また、3割などの窓口負担とは別に、一定額を徴収する制度も検討しています。
そして、何よりも問題だと思うのは、「建議」の中に記された次のような記述です。

「この公的保険給付の範囲の重点化は、保険給付額を抑制して制度の持続性に貢献すると同時に、公的保険から外れた市場を産業として伸ばしていくことにより、経済成長とも整合的であり、社会保障の雇用・成長市場としての側面を損なわずに社会保障改革を進めることができるメリットがある。」

国民皆保険制度を破壊することを方針としているとしか考えられません。

★最後に

このほか、財務省の方針には多くの問題があります。障害者、高齢者、そして、市民が力を合わせて、生きるための闘いを作り出して行かないと、とんでもない社会が作られてしまうと思います。
反貧困運動とも連携し、障害者団体の団結した行動を作り出して行きましょう。

◆財務省関係パンフ PDF 印刷用



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