2012年4月27日 厚生労働省 「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」 ヒアリングに向けて

全国「精神病」者集団

 

前提

閣議決定2010年6月29日「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」においては、医療分野において以下記述されている。

○ 精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」の見直し等も含め、その在り方を検討し、平成24 年内を目途にその結論を得る。

なお付け加えれば全国「精神病」者集団の関口は、「○関口委員 どうもありがとうございます。関口です。資料3の別紙3-2の修正についてという厚生労働省が出したものですけれども、留意点についてということで、まず42ページの『保護入院等』の『等』は当然医療観察法でございます。はっきりさせておきたいと思います。」(障がい者制度改革推進会議(第28回) 議事録)と確認している。

しかしながら、厚生労働省検討会内部の議論は医療保護入院および保護者制度の問題に集中しており、措置入院や応急入院、あるいは医療観察法の鑑定入院や入院について議論されていない。このことにまず抗議する。

そもそも障害者制度改革は障害者権利条約批准に向けた国内法整備を目的としたものであり、「障がい者制度改革推進本部の設置について」(2010年12月8日 閣議決定)においても「1 障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行い、関係行政機関相互間の緊密な連携を確保しつつ、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、内閣に障がい者制度改革推進本部(以下「本部」という。)を設置する。」とされている。

障害者権利条約は、5条(平等及び無差別)、12条(法律の前に等しく認められる権利)、14条(身体の自由及び安全)、15条(拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱いもしくは刑罰からの自由)、17条(個人をそのままの状態で保護すること)、19条(自立した生活及び地域社会への包容)、25条(健康)(d)他のものと平等なインフォームドコンセントの権利、などにより精神障害者のみに対する強制入院強制医療さらに強制的介入、隔離収容を禁止している。さらに4条(一般的義務)(b)において締約国の義務として障害者差別となる既存の法律、規則、慣習および慣行を修正し、または廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)を取ること、とされている以上、批准に向けて医療観察法の廃止、精神保健福祉法の廃止が求められている。なお添付のようにペルーの政府報告書に対する条約委員会の見解では後見人制度や精神保健法の廃止が求められ抗精神病薬の強制投与や10年以上の精神病院への拘禁が15条に触れるとされている添付資料 1参照)

残念ながらこの検討会ではこうした障害者権利条約の条文を巡る議論が全くなされていないが、これはいったいどういうことなのか、このこと自体が障害者権利条約を署名した国としてはあってはならないことである。2012年中の検証として新たに条約に基づいて議論する場が求められている。

詳細は国連高等弁務官事務所の文書及び、前拷問等禁止条約特別報告官の文書参照(添付資料2参照)

新たな地域精神保健医療体制の構築?

すでに19日に山本が述べたように(添付資料3参照)単科精神病院は終焉の時代を迎えていることを自覚すべきであり(『病院の世紀の理論』猪飼周平 有斐閣 参照)、求められているのは精神病院に代わる一般病院での精神病床(人口10万人当たり10床というのがモッシャーほか著の「コミュニティメンタルヘルス」中央法規出版 1992年)さらに、病院に代わる治療共同体や精神障害者自身による危機センター、ショートステイ、セルフヘルプグループなどであるが、さらに必要な方に対してパーソナルアシスタント制度が重要である。

家族をあてにした体制保護者制度は当然にも廃止されなければならない。

自立支援法は精神障害者にとっては何とも使いにくい制度であり、とりわけ地域移行に際しては精神病院入院中から自立生活体験室で介助者を訓練し、パーソナルアシスタントを獲得していくことが必要である。自立生活訓練は精神障害者が訓練されるのではなく介助者の訓練の機会ととらえられるべきである(これはすでに知的障害者の支援においては先進的に取り組まれている『良い支援?』生活書院 参照)資格さえあれば代替可能という介助では精神障害者は使いにくい。

また居宅介護ではなく、集いの場での介助支援や待機(これについては添付資料4 桐原研究参照)という介助類型も必要である。現在の地域定着支援は生活保護受給者には使えない(長期入院退院患者の多くは生活保護受給とならざるを得ない)ことさらに単価の問題もあり、とてもパーソナルアシスタントや待機を保障するものとはなりえない。もちろんグループホームやケアホームなどという施設ではなく、居住権のある住宅と呼べる住宅保障は最優先である。

医療・保健・福祉の連携や多職種チームによる支援が喧伝されているが、これらに私たちは強い疑問がある。一市民として支援介助を受けながら自立生活する中で、医療はあくまで必要な時に使うものであり、必要な場合における支援介助こそが中心となるべきであり、それにはパーソナルアシスタントこそが中心となるべきである。今現在行われている多職種チームとは専門職による支援とは全く逆な、あくまで本人の介助支援であり、指導や訓練であってはならない。介助者支援者の個別の精神障害者に合わせた訓練こそが必要。たとえば多職種チームによるケア会議は本人吊るし上げ、の場になってしまいがちである。

そして最も必要なのはアドボケイト、本人の権利主張の応援者支援者である。これは入院中のみならずすべての場において最も重要な支援といえよう。アドボケイトのいないままでの多職種チームによるケア会議はわかっているだけで17名の自殺者を出し、さらに体験者がさらし者の場と批判しているような医療観察法の実態にこそ問題点があらわとなっている(添付資料5参照)。いかに人手を増やし、金をかけても本人との信頼関係もなくアドボケイトもいない体制は本人を追い込むだけである。また今予算がついているアウトリーチも私たちは認めない(添付資料6参照)必要なのはスェーデンスコーネで行われているようなあるいはすでに各地で試みられているような本人と信頼関係を作り上げるアウトリーチである。

「新たな地域精神保健医療体制の構築」ではなく、「新たな精神障害者の地域生活支援と権利保障体制構築」に向け、私たち精神障害者団体による研究に資金をつけ、自立支援法上の事業所のない空白地帯を埋めていく取り組みが喫緊の課題である。

国連高等弁務官事務所及び拷問等禁止条約前特別報告官のレポート

資料2

障害者権利条約モニタリング人権モニターのための指針

専門職研修シリーズNo.17

 

国際連合人権高等弁務官事務所国際連合

ニューヨーク/ジュネーブ2010年

 

http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/rightafter/right_agreement_monitor.html

 

以下一部引用

 

〉 法律の前における平等な承認の権利では、とりわけ、障害を法的能力はく奪の根拠とすることを廃止する必要がある。たとえば、障害のある人の代理として決定を下す後見人を任命する慣習を廃止し、代わりに、障害のある人が自ら決定できるよう支援する。

 

〉 身体の自由及び安全の権利では、とりわけ、十分な説明にもとづく自由な同意がない限り、誰も精神障害および知的障害などの障害を理由に、精神科施設およびその他の施設に収容されることがないよう、監視する必要がある。

 

〉 拷問からの自由で は、とりわけ、各施設が障害のある人に対し、電気ショック療法の実施や檻のベッドの使用などを最終手段として用いたり、あるいは本人の意思に反して、障害 を矯正するための押しつけがましい、または元に戻すことのできない治療を課したりしているかどうかを調査しなければならない。

 

 

国連人権高等弁務官事務所08年10月「被拘禁者のための尊厳と正義の週間、情報ノートNo.4 障害者」

 

http://www.ohchr.org/EN/UDHR/Documents/60UDHR/detention_infonote_4.pdf)

 

以下一部引用  「障害者権利条約は、障害の存在に基づく自由の剥奪は国際人権法に反しており、本質的に差別であり、そしてそれゆえに不法であることを明確に宣言する。障害に加えて追加の根拠が自由の剥脱の正当化に使われる場合に対しても、こうした違法性は拡大して認められる。追加の根拠とは例えばケアや治療の必要性あるいはその人や地域社会の安全といったものである。」

 

 

 

 

 

 

08年7月28日
国連第63回総会への拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する、人権理事会特別報告官(Prof. Manfred Nowak)の報告

以下は一部3章のみの訳しかも注は省いてあります。

拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する中間報告

要約
国連総会決議62/148に従って提出する当報告書において、特別報告官は彼の権限内にある疑問点についてのとりわけ全体的は傾向と発展において特に懸念される事柄について述べている。
特別報告官は総会に対して、障害者の状況について注意を喚起しており、障害者が放置、拘束や隔離という厳しい状態、また同様に、身体的、精神的、性的暴 力に頻繁にさらされていることに注意を喚起する。彼は公的施設のみならず民間領域でも同様にこうした行為が行われているにもかかわらず、こうした行為が表 面化せず、また拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰と認識されていないことに懸念を表明する。最近発効した障害者権利条 約とその選択議定書は障害者に関して反拷問という枠組みから再点検する絶好の機会を提供している。障害者に対してふるわれている暴力と虐待を拷問あるいは 残虐な取り扱いとして再考することにより、被害者そしてその権利を擁護するものはより強い法的保護と人権侵害への補償を獲得することができる。
4章において、特別報告官は独居房への隔離拘禁の使用を検証している。独居拘禁は明白に、精神的健康への否定的な影響があるものとして記録されている。 そしてそれゆえ、独居拘禁は例外的な条件においてのみあるいは犯罪調査の目的で絶対的に必要とされる場合にのみ行われるべきであるとしている。特別報告官 は報告の付属文書として、非拘禁者の権利尊重と保護を促進する有益な手段として独居拘禁の利用と効果におけるイスタンブール宣言に注意を喚起している。

中略

三章 障害者の拷問からの保護
37 その権限行使において、特別報告官は障害者に対して行われている多様な形態の暴力と虐待についての情報を得てきた。これら障害者には男性、女性、子供が含まれるが、彼らの障害ゆえにこの人たちは放置と虐待の対象とされている。

38 障害者は施設に入れられ社会から隔離されていることが多い。こうした施設には刑務所、福祉的ケアセンター、児童施設そして精神保健施設が含まれる。 障害者は意思に反しあるいは自由なインフォームドコンセントもなしに、長期間自由を奪われている。これは時には一生にわたる場合もある。これらの施設内部 では、障害者は、頻繁に言語に絶する屈辱的な処遇、放置、身体拘束と隔離拘禁といった厳しい処遇、同様に身体的、精神的、性的暴力にさらされている。拘禁 施設における合理的配慮の欠如は放置、暴力、虐待、拷問そして残虐な処遇にさらされる危険を増加しているといえよう。

39 民間領域において、障害者はとりわけ暴力と性的虐待も含む虐待にさらされやすい弱者である。家庭内、家族の手によってあるいは介護するもの、保健従事者、そして地域社会の成員の手によって虐待が行われている。

40 医学実験や侵襲的で非可逆的な医療が同意なしに障害者に対して行われている(例えば、不妊手術、中絶そして、電気ショックや抗精神病薬を含む精神を変容させる薬といった障害を矯正したり軽減したりすることを目的とした介入)

41 特別報告官は、多くの事例において、こうした行為が障害者に対して行われる場合において、表面化しなかったり、あるいは正当化されたりしており、拷 問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰と認識されていないことに懸念を表明する。最近発効した障害者権利条約とその選択議定 書は障害者に関連する事柄について拷問禁止の枠組みから検証する絶好の機会を提供している。

A 拷問から被害者を保護する法的な枠組み
42拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は罰禁止条約、および、国連自由権規約7条、子供の権利条約37条、において拷問の絶対 的禁止が含まれており、障害者権利条約においても拷問の禁止が15条において再確認されている。障害者権利条約15条によれば、障害者は拷問又は残虐な、 非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない権利を有しており、特に科学的医学的実験を受けない権利を有している。15条第2項におい て締約国は、他のものと平等に拷問や虐待から障害者を保護するために、効果的な立法上、行政上、司法上その他の措置をとる義務がある

43 障害者権利条約16条は障害者に対しての暴力、虐待搾取を禁じており、また17条はすべての障害者に対して、身体的精神的インテグリティ(不可侵性完全性)が尊重される権利を認めている。

44 特別報告官は障害者に関しては、障害者権利条約は更に権威あるガイドを提供することにより、拷問および虐待の禁止についてのほかの人権条約を補強し ていることを明記する。たとえば、条約3条は障害者の個人としての自律の尊重の原則そして自らの選択の自由を宣言している。さらに12条はあらゆる生活領 域、例えばどこにすむか決めること医療を受けるか否かを決めることなどが含まれるが、において法的能力を享受する平等な権利を認めている。さらに付け加え て、25条においては障害者の医療は自由なインフォームドコンセントを基盤としなければならないとしている。したがってかつての拘束力のない基準、例えば 国連原則として知られている、1991年の精神疾患者の保護および精神保健ケアの改善に関する原則(決議46/119)について、特別報告官は非自発的治 療と非自発的拘禁を受け入れることは障害者権利条約の条項に違反と明記する。

B 障害者に対して、適用する拷問と虐待からの保護の枠組み
45 国際法において、とりわけ拷問禁止条約の下では国家は拷問を犯罪行為とする義務がある。すなわち加害者を起訴し、犯罪の重大さに応じた適切な刑罰を 科し、そして被害者に賠償提供する義務がある。障害者に振るわれている暴力と虐待を拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰 として認識し位置づけなおすことにより、被害者およびその権利擁護者は人権侵害に対するより強い法的保護と補償や回復を獲得しうる。

1 拷問の定義の要素
46 拷問と虐待からの保護に関する障害者権利条約15条の適用については拷問禁止条約の1条に含まれる拷問の定義によって説明することができる。障害者に対す る行為あるいは障害者を尊重しないという怠慢が拷問となるには、拷問禁止条約の拷問の定義の4つの要素すなわち、激しい痛みや苦痛、意図、目的そして国家 の関与、が存在することが必要である。この定義を満たさない行為であっても、拷問禁止条約16条のもとで、残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い 又は、刑罰となることもある

47その本質上、苦痛や痛みの度合いの評価に当たっては、そのケースについてのすべての条件が検討されることが求められる。その条件には障害の存在そのも のと同様に、被害者の処遇や拘禁条件の結果、損傷が生じあるいは悪化したかについても注目する必要がある。医学的治療として完璧に正当化されうるものであ ろうと、医療は重大な痛みや苦痛をもたらし、侵襲的で非可逆的な本質があるがゆえに、治療的目的に欠けるときあるいは障害を矯正するまたは軽減する目的を 持つときで、当事者の自由なインフォームドコンセントなしに強制され行われるならば、拷問そして虐待を構成することとなろう。

48 拷問禁止条約における拷問の定義は、いかなるものであろうと差別を根拠とした身体的精神的苦痛をもたらす行為を明白に禁止している。障害者の場合、 特別報告官は障害者権利条約第2条が障害を根拠とした差別について以下述べていることを想起する。「障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政 治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、他の者との平等を基礎として すべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、合理的配慮を 行わないことを含むあらゆる形態の差別を含む。」

49 さらに拷問禁止条約の第1条の意図という要件は障害に基づいて差別されてきた人については有効に適用されうる。このことはとりわけ、障害者に対する 医療の文脈において、重大な侵害と差別が障害者に対して、保健専門職の一部においては「よき意図」というごまかしにおいてなされうるということについては 重要な関連がある。単なる過失や怠慢は1条の求める要件である意図にかける、しかし、重大な痛みや苦痛をもたらすものであるなら、そうした過失や怠慢も虐 待を構成しうる。

50 拷問すなわち、個人のインテグリティ(不可侵性統一性)と尊厳へのもっとも重大な人権侵害は、他の者による全的な支配の下に被害者が置かれるが故 の、無力さを前提としている。障害者がそうした状況におかれることはよくあることだ。例えば、監獄あるいは他の場で自由を奪われているときあるいは介助者 や法的後見人の支配下におかれているとき。一定の状況下では個人の特定の障害が、その個人を依存的な状況下に置くことがありがちで、そしてそうした個人は 容易に虐待の対象となりがちである。しかし「無力さ」はしばしば個人の外側にある環境がもたらすものである。意思決定の行使そして法的能力を差別的な法律 や運用によって奪われ他の人にその権限を与えられるというときに「無力さ」が生じるのだ

2 誰に責任があるか?
51 政府の関与という要件に関して、特別報告官は、拷問の禁止は公務員に限ることなく、厳密な意味で法的な権限を持った機関のようなものに限らず、民間 病院、あるいは他の施設や拘禁施設で働く場合も含めて、医師や保健従事者、ソーシャルワーカーにも適用されることもあると明記する。拷問禁止条約委員会の 一般見解のNo.2(2008)で強調されているのは、あらゆる種類の施設で拷問の禁止がなされなければならないということであり、締約国は国家機関によ らないあるいは民間機関における拷問の禁止については徹底して予防し、調査し、起訴処罰すべきであるとしている。

3 何に責任があるのか?
(a)貧しい拘禁条件
52 数え切れないほどくりかえし、拷問禁止条約委員会は精神保健施設や障害者用の家の貧しい生活条件について、拷問等禁止条約16条の下の虐待という視 点から、懸念を表明してきた。施設の貧しい条件は、適切な食事、水、医療的ケア、衣服を拘禁下ある人に提供すべき義務を国家が果たしていない結果である場 合が多い。そしてこうした貧しい条件は拷問と虐待を構成しうるのだ。

53 国家は障害者に対して直接的間接的な差別がなされないよう、拘禁下の処遇あるいは環境条件を整えることを確保するさらなる義務がある。もしこうした 差別的処遇が痛みや苦痛をもたらすのであれば、それは拷問あるいは他の虐待を構成しうる。ハミルトン対ジャマイカのケースにおいて、人権委員会は、申立人 の障害を考慮し、適切な配慮をして、独房に拘禁し、彼の汚水バケツを取り上げることを認めたことが、国連自由権規約の7条と10条に違反するか否かを審査 した。委員会は両足の麻痺した申立人は、条約10条の第1項に違反して、人道的にかつ人間としての固有の尊厳への尊重を持って処遇されていないと判断し た。プライス対英国の場合、ヨーロッパ人権裁判所は、身体障害のある女性の拘禁条件について、利用不可能のトイレとベッドも含め、ヨーロッパ人権条約3条 の品位を傷つける処遇となるとした。

54 特別報告官は障害者権利条約14条第2項は以下の締約国の義務を定めていると明記する。それは自由を奪われた人は合理的配慮を提供される権利があるという ことを確保するという義務である。このことは手続きにおいてまた、拘禁施設、これらはケアのための施設や病院も含むが、において障害者が他のものと同じ権 利と自由を享受することを確保するために、その調整が過大な負担をもたらさない限り、適切な調整を行う義務があるということだ。障害者に対する合理的配慮 の否定や欠如は虐待や拷問とみなされるほどの拘禁や生活条件を生み出しうる。

(b)身体拘束と隔離の使用
55 施設の貧しい条件はしばしば身体拘束と隔離という厳しい形態を伴っている。障害のある子供たちや成人は長期にわたりベッドや、檻あるいはいすに縛られたり することがある。鎖や手錠をはめられることもある。”檻”や”檻つきのベッド”に拘禁されることもある。また大量の薬を与えられることも化学的身体拘束と いえよう。”長期にわたる身体拘束は筋肉の萎縮、生命にかかわる変形、そして内蔵の損傷を生み出しうるということ”、そして精神的な損傷を悪化させること を明記しておくことは重要である。特別報告官は拷問や虐待を構成しうる長期にわたる身体拘束について、治療的正当化はありえないと明記する。

56 治療的理由からは正当化できず、処罰の一形態であるにもかかわらず、施設において障害者は管理の一形態としてあるいは医療的治療としてしばしば隔離 され独房に拘禁される。2003年12月米州人権委員会はパラグアイの国営神経精神病院に拘禁されている460人を保護するために予防的対策を承認した。 この460人の中には独房に裸で非衛生的な条件で4年間以上も独居拘禁されていた二人の十代の少年も含まれていた。Victor Rosario Congo対エクアドルの場合、米州人権条約委員会は社会復帰センターにおいて精神障害のあるCongo氏が独房に拘禁されていることは米州人権条約第5 条2項に定められた非人道的で品位を傷つける処遇を構成すると認めた。特別報告官は人に対する長期の独居拘禁と隔離は拷問あるいは虐待を構成する場合があ ることを明記する。

(c)医療の領域
57 医療の領域において、障害者はしばしば重大な虐待と身体的精神的インテグリティの権利の侵害を体験している。とりわけ実験においてあるいは特定の損傷の矯正あるいは軽減を目指した治療において。

(ⅰ)医学的科学的実験
58 障害者権利条約15条の下では、薬物の治験含め障害者に対する医学的科学的実験は当事者の自由な同意のあるときのみ、そして実験の本質が拷問または残虐で非人道的品位を傷つける処遇とみなされえないときにのみ許される。

(ⅱ)医療的介入
59 ロボトミーと精神外科手術の実施は実例として役立ちうる。侵襲的で非可逆的な治療であればあるほど、自由なインフォームドコンセントを根拠としての み保健専門職が治療を障害者に提供することを確保するより強い義務が国家にはある。子供の場合にはもしそうした介入が治療的目的にのみ行われるのであれ ば、保健専門職がそうした介入が子供の最善の利益において、そして両親の自由なインフォームドコンセントに基づき行われることを国家は確保しなければなら ない。(しかしながら両親の同意は治療が子供の最善の利益に基づかない場合は無視されなければならない)。さもなければこうした治療は拷問あるいは残虐 で、非人道的もしくは品位を傷つける処遇となりうると特別報告官は明記する。

a 妊娠中絶と不妊手術
60 無数の障害のある成人と子供が政策の結果としてまたそうした目的を持って制定された法律によって強制的に不妊手術を行われてきた。障害者とりわけ女 性と少女が施設の中と外とを問わず、自由なインフォームドコンセントなしに中絶や不妊手術を強制され続けている。この行為の関しては報告されている。特別 報告官は障害者権利条約23条C項の下で「障害者(障害のある子どもを含む。)が他の者との平等を基礎として生殖能力を保持する」ことを確保し、また自由 と責任をもって、子供の数と出産の期間を決める権利を確保することが締約国の義務であることを明記する。

b 電気痙攣療法
61 囚人に対する電気ショックの使用は拷問および虐待を構成すると認められてきた。発作を引き起こす電気ショックあるいは電気痙攣療法の使用は精神あるいは知 的障害をもつ人への治療法として、1930年代にはじまった。ヨーロッパ拷問禁止委員会は非修正電気痙攣療法(例えば麻酔、筋弛緩剤あるいは酸素補給なし のもの)が精神保健施設において障害の治療のために人に行われていることさらには処罰の形態としてさえ行われていることを報告している。特別報告官は、非 修正電気痙攣療法は、重大な痛みや苦痛そしてしばしば重大な医療的結果例えば骨折、じん帯の損傷や脊髄損傷、また認知障害や記憶喪失の可能性などをもたら すことがあることを明記する。非修正電気痙攣療法は医療行為として許容されることはできず、また拷問あるいは虐待を構成しうる。修正電気ショックの形態で あれ、当事者の自由なインフォームドコンセントにもとづいてのみ行われることはきわめて重要である。この自由なインフォームドコンセントには、副作用や心 臓への影響や混乱、記憶喪失さらには死亡といったリスクの説明を受けること含まれる。

c 強制的精神医学的介入
62 拷問や虐待の手段としての政治的弾圧を目的とした、例えばテロリズムとの戦いという文脈での精神医学の使用、より少ないとはいえ、個人の性的指向を 弾圧し、支配し変更しようとする試みを目的として行われる治療については詳しく報告されてきた。しかし、特別報告官は精神医学の乱用と障害者への強制、主 として精神的知的障害をもつ人への強制についてより重大な注意を喚起する。

63 施設内そして地域での強制医療も同様であるが、精神医 療、抗精神病薬と精神を変容させる薬も含む投薬が精神障害者の自由なインフォードコンセントなしにあるいは意思に反して強制的にあるいは処罰の一形態とし て行われることがある。拘禁施設と精神保健施設における薬の投与、それは抗精神病薬も含まれえるが、この抗精神病薬はふるえをもたらしたり、無気力な状態 にさせたり、知性を曇らせたりするものであり、こうした薬の投与は拷問の一形態として認識されてきた。Viana Acosta 対ウルグアイのケースでは、人権委員会は、申立人の処遇、治療は非人道的処遇を構成すると結論を出した。この治療処遇には、精神医学的実験、彼の意思に反 したトランキライザーの強制的注射などがふくまれていた。特別報告官は精神状態の治療のための、強制的そして同意のない、精神科の薬の投与とりわけ抗精神 病薬の投与は詳細に検証される必要があることを明記する。個別のケースの情況、与えられる苦痛そして個人の健康への効果、これらの検証しだいでは、拷問あ るいは虐待の一形態となることもありうる。

d 非自発的精神保健施設への収容
64 多くの国家が、法的根拠のあるなしにかかわらず、精神障害者を自由なインフォームドコンセントなしに施設収容することを許容している。その根拠は精 神障害の診断の存在と共に追加の基準が使われることがよくある、それは例えば「自らあるいは他者に対する危険性」あるいは「治療の必要性」というものであ る。特別報告官は障害者権利条約の14条が法によらない恣意的な自由の剥奪の禁止と障害の存在が自由の剥奪の正当化とされてはならないとしていることを想 起する。

65 特定の事例においては恣意的あるいは法によらない障害の存在を根拠とした自由の剥奪はまた個人へ重大な痛みや苦痛をもたらす場合もあり、したがって拷問禁 止条約の対象となる。自由剥奪による苦痛の影響を検証するには、施設収容の期間、また拘禁や処遇条件が考慮されなければならない。

(d)性的暴力も含む障害者に対する暴力
66 施設内において、他の患者や被収容者また同様に施設職員によって障害者は暴力にさらされることがある。Ximenes Lopes 対ブラジルのケースでは米州人権裁判所は、精神科病院へ収容された患者に対する暴力という文脈において、被害者に行われた日常的な殴打や身体拘束そして貧 しい拘禁条件,(たとえば貧しい保健ケア、低い衛生状態や不足がちな食事)は、米州人権条約5条の1項と2項の下での拷問と虐待の禁止と身体的精神的イン テグリティの権利の侵害であるとした。

67 もし、病院、ケア施設あるいは同様の施設において働く公務員も含む、公務員によって、あるいは公務員の示唆にまたは同意あるいは黙認の下で行われたのであれば、拘禁下での強姦は拷問を構成することを特別報告官は繰り返し発言する。

68 民間領域において、家族の手によってまた障害者の介護者によっての双方によって、障害者は男女にかかわらずほぼ3倍も身体的性的虐待と強姦の被害者 となっている。女性や少女はジェンダーと障害の二重の差別の結果として、親しいパートナーによる暴力も含め高い比率の暴力を経験している。Z対英国とA対 英国のケースにおいてヨーロッパ人権裁判所は個人とりわけ子供と他の弱者を虐待から保護する政策を採る義務が締約国にあることを認めた。同様に当局は虐待 を防止する合理的な段階を取るための知識を持つあるいは持つべき義務を認めた。

69 障害者権利条約16条が宣言しているように、締約国は家庭の内外、そしてジェンダーにもとづくものも含み、あらゆる形態の暴力、虐待および搾取から 障害者を保護しそれらを予防するため、またこれらの責任について調査し訴追するすべての適切な政策をとる義務がある。特別報告官は、締約国の障害者への暴 力に関する黙認は多くの形態がありうることを明記する。それは、法的能力を奪う法律という差別的な法の枠組みや運用あるいはこれらの暴力が刑罰を逃れると いう結果をもたらす障害者に対する司法への平等なアクセス保障の失敗もふくまれる。

C 結論と勧告
70 特別報告官は障害者権利条約の発効にあたって以下を歓迎する。障害者権利条約は拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑 罰の絶対的な禁止を再確認していることそして、障害者の基本的な権利と自由へ解釈についての権威あるガイドを示していること。障害者に対して行われた侮 辱、放置、暴力そして虐待の一連の報告に対して、これらの行為がどう認識されるか、例えば拷問や虐待と認識されることそして、国際的拷問禁止の枠組みが活 用されることは、法的保護と補償への道を切り開くであろう。

71 特別報告官はとりわけ2条の非差別条項に注目した上で、障害者権利条約の批准と、完全履行を各国政府に呼びかける。

72 条約締約国は条約が公刊され広められ、そして市民にあまねく啓発啓蒙がなされ関連するさまざま専門職グループ(例えば、裁判官、弁護士、法執行公務 員、公務員、地方自治体公務員、施設職員そして保健専門職など)すべてに広く訓練されることを確保しなければならない。公務員と民間機関の職員は同様に障 害者を拷問と虐待から保護しそれらを防止する役割を持つ。

73 条約を守るために締約国は、障害者に法的能力があることを認める法律を制定しなければならない。また必要であるならば、説明を受けた上で決定するために必要な支援を提供することを確保しなければならない。

74 締約国は、「自由なインフォームドコンセント」が何を意味するかについての明白であいまいでないガイドラインを条約の求める基準で公布しなければならない。また使いやすくアクセスしやすい不服申し立ての手続きも作らなければならない。

75 独立した人権監視機関(例えば国内人権機関、拷問禁止機構、市民団体など)は障害者が住んでいる施設、例えば監獄、福祉ケア施設、児童養護施設そして精神保健施設などを定期的に監視しなければならない。

76 特別報告官は関連する国連および地域の人権機構に対して、個人の不服申し立ても含み、拘禁施設の監視を行うさいに、障害者権利条約に含まれる新たな基準に完全に配慮した上で、これらの監視調査に新たな基準を統合することを呼びかける。

後略

国連障害者権利条約委員会 ペルー政府報告書への勧告一部邦訳

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邦訳は山本眞理仮訳

 

 

Committee on the Rights of Persons with Disabilities

Seventh session

Geneva, 16-20 April 2012

Consideration of reports submitted by States parties under article 35 of the Convention

Concluding observations prepared by the Committee on the Rights of Persons with Disabilities

Peru

III.          Principal areas of concern and recommendations

B.           Specific rights (arts. 5-30)

24.         The Committee considered the initial report of Peru at its 66th and 67th meetings, held on 17 April 2012, and adopted the following concluding observations at its 72nd meeting, held on 20 April 2012.24.             The Committee notes with concern that legislation of the State party (article 7 of the Constitution, articles 564 and 565 the Civil Code) is not in conformity with article 12 of the Convention, as it establishes substitute decision-making instead of supported decision-making and permits the suspension of civil rights of persons with disabilities in cases of judicial interdiction.  The Committee is also concerned by the lack of information concerning the number of persons that have been subjected to guardianship and trusteeship and the lack of legal remedies and safeguards, such as independent review and right to appeal, that are in place in order to revoke those decisions.

締約国の法律(憲法7条、民法564条と565条)が条約12条に一致していないことに懸念を明記する。

すなわちこれは支援された自己決定の代わりに意志決定の代理を制定しており、司法的な禁止命令の場合には障害者の市民権の剥奪を許しているという意味で条約12条に一致していない。委員会はまた多数の人々が独立した審査やこうした後見や信託を廃止するための請求権などといった法的救済やセイフガードなしに後見制度や信託制度のもとにおかれ続けていることに懸念を表明する

25.         The Committee recommends the State party to abolish the practice of judicial interdiction and review the laws allowing for guardianship and trusteeship to ensure their full conformity with article 12 of the Convention and to take action to replace regimes of substitute decision-making by supported decision-making, which respects the person’s autonomy, will, and preferences.

条約の12条に完全に一致した種々の法律を確保するためには、委員会は司法的な禁止命令の実行を廃止し、後見人制度や信託制度を許している種々の法律を見直すこと、そして、代理決定による体制を人の自律と意志そして選好を尊重する支援された自己決定におきかえる行動をとることを勧告する

 

Liberty and security of the person (art. 14)

28.         The Committee notes with concern that article 11 of the General Health Law No. 26842 permits involuntary detention for people with “mental health problems”, defined to include people with psychosocial disabilities as well as persons with a “perceived disability” (persons with a drug or alcohol dependence).

委員会は総合的保健法11条(法律26842号)が「精神保健的問題」を持った人の非自発的拘禁を許していることに懸念を明記する。これらの人々には精神障害者と同様「障害者とみなされた人(薬物やアルコール依存の人々)」も定義として含まれている

29.         The Committee calls upon the State party to eliminate Law 29737 which modifies article 11 of the General Health Law, in order to prohibit the deprivation of liberty on the basis of disability, including psychosocial, intellectual or perceived disability.

精神障害知的障害あるいは障害があるとみなされる障害を含んだ、障害を根拠とした自由の剥奪を禁止するために、委員会は総合保健法11条を修正した法29737号の廃止を強く要請する

Freedom from Torture (art 15)

30.         The Committee is concerned at consistent reports of the use of continuous forcible medication, including neuroleptics, and poor material conditions in psychiatric institutions, such as the hospital Larco Herrera, where some persons have been institutionalized for more than ten years without appropriate rehabilitation services

.委員会は抗精神病薬も含む強制的な投薬が継続的に行われているという一貫した報告に懸念を表明する。また適切なリハビリテーションサービスなしに10年以上施設に入れられている人々がいるLarico Herrera 病院のような貧しい物理的状況に懸念を表明する

31.         The Committee urges the State party to promptly investigate the allegations of cruel, inhuman or degrading treatment, or punishment in psychiatric institutions, to thoroughly review the legality of the placement of patients in these institutions, as well as to establish voluntary mental health treatment services, in order to allow the persons with disabilities to be included in the community and release them from the institutions. 委員会は精神医療施設における残虐で非人道的あるいは品位汚す処遇もしくは刑罰についての訴えを直ちに調査することを締約国に要請する。またこれらの患者がこれらの施設に入れられていることが合法か否かについて完璧に審査すること、同時に障害者が地域社会に共生しそしてこれらの施設から解放されることを許容するために、自発的精神医療サービスを確立することを要請する

福祉事務所への警察官OB配置撤回要求署名

横浜市が警察官OBを福祉事務所に配置しようとしています。ただですら近づきがたい生活保護であり、本来受けるべき人が受けられず孤独死したりする実態が出ているのに、ますます生活保護受給の壁は厚くなり、現在受給中の方も委縮し恐れることになります

警察官PB配置反対の署名にご協力ください。締め切りは5月末日です

署名は厚生労働大臣あてと横浜市長あての二枚です。署名用紙は呼びかけ団体に直接お送りいただけますようお願いいたします

PDFファイルこちらから厚生労働大臣あてpoliOB-220040412

PDFファイルこちらから横浜市長あてpoliOB20040412

 

よろしくお願いいたします

 

 

 

佛祥院裁判の傍聴のお願いです

佛祥院裁判傍聴のお願いです。

期日は

6月15日(金) 13時15分より

東京地裁 526号法廷

呼び掛け文はこちら

 

 

 

 

 

 

 

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