STOP! 精神科病棟転換型居住系施設!! NEWS No.27

27号(2015年7月16日)
生活をするのは普通の場所がいい
STOP! 精神科病棟転換型居住系施設!! NEWS
PDFファイルは以下を御覧ください
6・26『NEWS』№27(20150716)
「考える会」声明を発表
2014年6月26日に「病棟転換型居住系施設について考える会」が,日比谷野外音楽堂で3,200人が集まる集会を開催し,1年が経過しました.この間,各地でこの問題を考える集会が開催され,テレビや新聞等々でも報道されてきました.
本年6月26日には,東京芸術劇場シンフォニースペースを会場に「6.26から1年 病棟転換を許さず 今こそ精神保健福祉法体制を問う」をテーマに集会を開催し,約130人が集まり,この1年の歩みを確認し合いました.
また,考える会では,全国精神障害者地域生活支援協議会と共同で「地域移行型ホームについての調査」を全国への自治体に向けて実施しました.(調査結果は3ページ以降参照)
そして,1年間の運動の成果を確認し,これからの取り組みの大切さを確認すべく「声明」を発表しました.(2ページ参照)本紙を多くの方に配信していただき,これからの運動の大切さを確認していきたいと願っております.

「考える会」では,この問題について多くの地域での学習会を開催していただくことを願っています.その学習会にDVD「STOP! 精神科病棟転換型居住系施設 やれば,できるさ」(企画:NPO法人日本障害者協議会<JD>,協力:病棟転換型居住系施設について考える会、制作:イメージ・サテライト,価格10,000円)をご活用いただければと願っています.DVD入手をご希望の方は,JD(℡03-5287-2346までご連絡ください.
合わせて,テキストには「病棟から出て地域で暮らしたい」(やどかり出版,価格1000円,048-680-1891)をご利用ください.

 

 

声明

私たちは、病棟転換型居住系施設に反対する運動を2013年12月に会を発足させて以来続けてきた。
そして、2014年6月26日に日比谷野外音楽堂における3200人参加の緊急集会を起点としてその運動は広がりを見せ、障害種別や立場を越えた運動を形成してきた。
しかし病棟転換の可否を議論する厚生労働省の検討会では、2014年7月に障害当事者、家族などの強い反対の声を無視する形で、病棟転換型居住系施設を容認する取りまとめが行なわれた。
これを受けて2015年1月16日、国は障害者総合支援法に関する省令改定を強行した。
しかし、この極めて問題の大きい国の施策に対し、障害のある人たちの声に誠実に耳を傾けたいくつかの都道府県・政令市は、国に追従した改定はせず、今後も病院敷地内グループホームは認めないという方針を示した。我々の独自調査によればその数は83の都道府県、政令市、中核市のうち、32の自治体に上っている。国の決定に対して自治体が別の意思表示を行うこのようなことは新たな動きであり、私たちの運動も一定の成果を上げつつある。

しかし、精神保健医療福祉全体の質が向上したかと言えばそれは別問題である。
聖マリアンナ医科大学病院の精神保健指定医不正取得事件では、強制医療の根拠となっている制度そのものが人権を無視する形で運用されてきていることが明らかになった。石郷岡病院での職員による暴行致死事件は、精神医療では未だ密室の中で容易に人権侵害が起き命を奪われ、闘い続けなければそれが表面化することすらない状況が続いていることが明らかになった。また、このようなことが行なわれている精神科病院に、認知症の人をさらに入院させようという動きも強まってきている。

かかる情勢下、私たちは、病棟転換型居住系施設、病院敷地内グループホームの設置を阻止しつつ、より力を結集し、精神保健医療福祉の改革に立ち上がる決意をした。
それは、人類普遍の価値である、人権、公正、平等をもっとも大切なものとして共有しながら、それを精神保健医療福祉の世界を含めて広く実現させていくものである。
これにはさらに広汎な人々の結集が必要であり、私たちはそれを強く呼びかける。
障害があろうがなかろうが人として当然の権利の実現を!
人々が平等に生きられる公正な社会の実現を!

2015年7月12日
病棟転換型居住系施設について考える会
2015年7月8日
地域移行支援型ホームについての調査【中間集計】(2015年7月7日現在)

病棟転換型居住系施設について考える会
全国精神障害者地域生活支援協議会共同調査
調査期間:2015年6月5日~19日
調査対象:都道府県(47)、政令市(20)、中核市(45)計:112自治体
回収数/回収率:都道府県(42/89.4%)、政令市(11/55.0%)、中核市(35/77.8%)
計:88自治体/78.6%

○ この「中間集計」は、2015年7月7日現在において回答のあったところのもの。今後も全数の回答が得られるよう、お願いを続けていく予定。
○ 【質問1】について、質問時において想定した回答は「1.条例改定を行った」か「2.条例改定を見送った」の2種であったが、回答を得た際に、

(A)「2.条例改定を見送った」としながら、「すでに定めている独自の条例において、病院敷地内へのグループホーム設置が可能」との自治体があった。
(B)「1.条例改定を行った」「2.条例改定を見送った」のどちらかを選択またはいずれも未選択されたなかで、「条例の規定が『厚生労働省令に準じる』旨の内容となっている」ことために「条例の改定を必要としない」あるいは「省令に連動して自動的に改定されることとなる」という自治体があった。
(C)「2.条例改定を見送った」としながら、「国の通知に基づき指定事務を行う」との自治体があった。
それらの3種の回答について、当初想定していた「1」「2」の回答に加え、それぞれ「A」「B」「C」として区分して整理を行った。
○ 上記の区分も含め、各自治体に対し、回答内容について電話による確認を行う予定。
……………………
<お詫び>

「地域移行支援型ホームについての調査」についてですが、この後は図表が続くため,大変恐縮ですが省かさせていただきました.
もうしわけございません.
図表をご覧になりたい方は以下のPDFファイルをご覧ください
6・26『NEWS』№27(20150716)

精神科病床:転換施策は患者の人権侵害 豊島区で反対集会 /東京
毎日新聞 2015年06月27日 都民版

厚生労働省が、空いた精神科病床を居住施設に転換する施策を打ち出していることについて、「患者の病院内への囲い込みで、人権侵害につながる」と反対している障害者団体や弁護士らが26日、豊島区で集会を開いた。約130人が参加し、今後も粘り強く反対運動を続けていくことを決めた。
昨年6月26日、障害者や支援者らが千代田区の日比谷公園に集まり、大規模な反対集会を開いたのを記念し、ちょうど1年後のこの日、再び集会を開いた。 この日は病床転換について全国の自治体を対象に今月実施したアンケートの中間集計が報告され、「今年度中に設置を予定している病床転換施設がある」と回答した自治体が現時点ではゼロだったことが紹介された。
反対派代表の長谷川利夫・杏林大教授は「昨年の集会で声を上げ、社会問題化したことが、一定の抑止効果を生んだのでは」と語った。【江刺正嘉】

精神科病棟のグループホームへの転換 32自治体が特例見送り
20150706 福祉新聞

精神科病棟をグループホームに転換することを特例で認め「地域移行支援型ホーム」とする厚生労働省の省令改正に関連し、この特例を条例改正に位置づけることを見送った地方自治体が32に上ることが、6月26日までに障害者団体の調査で分かった。2015年度中に同ホームの設置計画ありとした自治体はゼロだった。
調査は病棟転換型居住系施設について考える会(連絡先=長谷川利夫・杏林大教授)と全国精神障害者地域生活支援協議会(伊澤雄一代表理事)が6月5~19日に都道府県、政令市、中核市計112自治体に実施。83自治体から回答があった。特例を条例に位置づけたのは39自治体にとどまった。
特例に反対してきた長谷川教授は26日に都内で開いた集会で「32もの自治体が見送ったことは誇って良い」と評価。これまでの運動の成果だとみている。
同日の発表は中間集計で、両団体は7月末にも最終集計を発表する予定だ。
病棟を施設として使う特例は長期入院精神障害者の地域移行策に関する厚労省検討会のまとめを受けたもの。厚労省は今年1月に省令改正し、自治体に「あくまで選択肢の一つ。プライバシー確保など厳しい条件付き」と説明している。
これに対し、長谷川教授らは「特例は障害者権利条約に真っ向から反している」と反対している。

病棟転換型居住系施設について考える会
stopbttk@yahoo.co.jp
この『速報』は、複写、転送、転載、大歓迎です。ご自由かつ積極的にご活用ください。
《連絡先》長谷川利夫(杏林大学保健学部作業療法学科)
TEL.042-691-0011(内線4534)〔携帯電話〕090-4616-5521  http://blog.goo.ne.jp/tenkansisetu

[6・26]から1年 病棟転換を許さず、今こそ精神保健福祉法体制を問う 集会配布資料

20150626「6.26から1年」集会資料

文書名 _20150626「6.26から1年」集会資料

「骨格提言」の完全実現に向けて 10・29大フォーラムに賛同を!

障害者基本法改正、障害者総合支援法、障害者差別解消法の3つの国内法がやっとでき、障害者権利条約が日本でも批准されました。

この動きは今までになかったことで、私たちはとても評価をしています。その流れを受けて今、全国では市区町村レベルで条例をつくる動きがあちこちで行われています。 私

たちは障害者の生の声をぶつけるために、大フォーラムを9年続けています。 その中では日比谷野音や厚労省前や弁護士会館などで集会及びデモをやりました。

闘いはいろんなやり方があると思います。条例づくりの運動と、連帯していく必要は絶対にあると思います。 いま、日本政府はこの権利条約と真っ向から反対するような動きをしています。

具体的には精神病院における病床転換に見られるように、長期入院の方の退院を進めるどころか、病棟転換型居住系施設にまた隔離収容しようとしています。それどころか、尊厳死の問題にも見られるように、障害者抹殺攻撃がかけられていると思っています。本当の意味で権利条約や差別解消法等を守る意味でも、いろんな運動が連帯していく必要があると考えていますので、ぜひ命の問題として一部だけの運動ではなく、いろんな人たちが連帯していきましょう。

この9年間の闘いの中で学んだ事は、闘いは継続する事が一番大事だと感じています。

2015年集会は10月29日に日比谷野音で開催します。生きにくい問題が山積みされています。ぜひ私たちと一緒になって怒りの声を政府にぶつけていきましょう。

皆さんの参加・賛同をお願いします。

【企画案】 日時 2015年10月29日(木) 12:00~15:00(開場11時)予定

場所 日比谷野外音楽堂

内容 障害当事者のアピールなど

主催「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会

【呼びかけ団体】(順不同/2015年5月15日現在) 日本脳性マヒ者協会 全国青い芝の会/障害者の生活保障を要求する連絡会議/ピープルファーストジャパン/全国「精神病」者集団/難病をもつ人の地域自立生活を確立する会/怒っているぞ!障害者切り捨て-全国ネットワーク/全国ピアサポートネットワーク/兵庫県精神障害者連絡会/神奈川県障害者自立生活支援センター/自立生活センター・グッドライフ/こらーるたいとう/スタジオIL文京/自立生活センター・立川/CILくにたち援助為センター/町田ヒューマンネットワーク/自立生活センター・たいとう/あいえるの会/自立生活センター三田/自立生活センター北/ガチャバンともに生きる会/鈴木敬治さんと共に移動の自由をとりもどす会/自立生活センター福岡/障害者権利擁護センター くれよんらいふ/魔法陣/世田谷介助者ユニオン/自立生活センターHANDS世田谷

連絡先・事務局 自立生活センターHANDS世田谷

TEL 03-5450-2861/FAX 03-5450-2862/E-メール hands@sh.rim.or.jp

☆大フォーラム継続のために 賛同・ご協力ください!

【現在、政府が進めています・・・】 ◇ 障害者総合支援法施行3年後見直し/障害者差別解消法施行/障害者虐待防止法見直し

☆今こそ、「骨格提言」(障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言)の完全実現を求めよう!!

【許しません!】

◆障害者政策委員会からの当事者はずし

◆優生思想、分離・管理政策の拡大

◆精神病棟転換型居住系施設

◆施設・病院・学校での虐待

◆介護保険の押し付け

◆年金・生活保護の切り下げ

私たち抜きに 私たちのことを決めるな!! 当事者である 私たちが声を上げよう!!

今年は 「骨格提言」の完全実現を求める10.29大フォーラム 2015年10月29日(木)12時から 日比谷野外音楽堂にて

【賛同をお願いします!】

個人1口 ¥500  団体1口 ¥3,000

郵便振替口座 00110-0-292158  加入者名 大フォーラム実行委員会

※ 賛同と同時に、実行委員会委員を募集しますので、ご協力ください。

※ 賛同金の振込みと同時に、下記申込書に記入しFAXまたは同内容をEメールでお送りください。

FAX 03-5450-2862 / Eメール hands@sh.rim.or.jp

* ******************************************

「骨格提言」の完全実現を求める10・29大フォーラム

賛同申込書

・個人賛同(肩書き・地域等)

・団体賛同

・ご住所 ・お電話

FAX ・Eメール ・賛同費             円

【次回大フォーラム実行委員会のお知らせ】

2015年6月7日(日)13:30~

会場:烏山区民センター3階第4会議室 住所:世田谷区南烏山6-2-19 京王線 千歳烏山駅東口徒歩1分 (「介助者会議」という団体名で部屋を押さえています。)

☆ 15時頃から、今年4月に財務省が発表した「当面の社会保障制度改革の基本的考え方」をテーマに学習会を行います。

報告者:古賀典夫さん(怒りネット)ほか。

☆ ぜひご参加ください!

2015年1月29日 地域で暮らすための勉強会 精神科病棟転換型居住系施設を考える東京集会 配布資料

画像をクリックすると拡大します
東京の新規措置入院件数は最低の件の17倍
文書名 _1・29東京集会資料-1当日配布資料一式は以下から
1・29東京集会資料

20150303 Stop 病棟転換居住系施設院内集会Part3 配布資料

3・3院内集会資料

上野秀樹さんの資料
配布用

以下上野さんのパワポの説明
平成27年1月7日、新しい認知症施策が発表されました。認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新 オレンジプラン)です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072246.html

この施策では、「当事者本位の支援モデルの構築」が基本的コンセプトとなっています。しかし、策定の最終段階で精神科病院の役割が強調された文言修正が入ったため、このコンセプトがぶちこわしになってしまいました。

まず、今回の策定の経緯をおさらいします。
平成26年11月5日から7日にかけて認知症サミット日本後継イベントが開催されました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000058871.html

世界10か国以上から、300人以上の参加があり、「新しいケアと予防のモデル」をテーマに活発な議論が行われました。11月6日の本会議開会式において、安倍内閣総理大臣が挨拶されました。
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/actions/201411/06nintishou_summit.html

私は本日ここで、我が国の認知症施策を加速するための新たな戦略を策定するよう、厚生労働大臣に指示をいたします。我が国では、2012年に認知症施策推進5か年計画を策定し、医療・介護等の基盤整備を進めてきましたが、新たな戦略は、厚生労働省だけでなく、政府一丸となって生活全体を支えるよう取り組むものとします。

これをうけて、「新オレンジプラン」が策定されることになりました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072246.html

「新オレンジプラン」という名称でもわかるとおり、平成24年9月に「今後の認知症施策の方向性について(H24.6.18)」に基づいて策定された「認知症施策推進5カ年計画(通称
オレンジプラン)」の改訂版という位置づけでした。

このように、「新オレンジプラン」も「今後の認知症施策の方向性について」を受けた具体的施策だったのです。

「今後の認知症施策の方向性について」をご紹介します。
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/houkousei.html

まず、この報告書が策定された背景を考えてみます。

話は第2次世界大戦にさかのぼります。第2次世界大戦の反省から昭和20年に発足した国際連合では、昭和23年の世界人権宣言で「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利について平等である」とされるなど、一貫して人権‘保障が重要な課題とされてきました。世界の人口の約1割をしめると言われている障害者の人権に関する取り組みは、昭和40年代半ば頃から本格化しました。昭和50年に「障害者の権利宣言」が採択され、昭和56年には「障害者の完全参加と平等」を掲げて、「国際障害者年」が設定され、昭和58年から平成4年まで「国連障害者の十年」の取り組みがなされました。そして、平成10年代に入ると「障害者を含めたすべての人を包摂することが、すべての人にとって豊かな社会を作り出す方法である」という意味を込めた「万人のための社会(society
for all)」という言葉が使われるようになりました。平成13年から検討が始まった障害者権利条約は、平成18年に国連総会で採択され、平成20年5月に発効したのです。

日本は平成19年に署名し、内閣府 障がい者制度改革推進会議などで関連法制度の整備を積極的に行い、平成26年2月に批准しました。

特に問題が多い精神保健医療に関しては、厚労省 社会援護局 障害保健福祉部
精神・障害保健課が担当した審議会「新たな地域精神保健医療体制を構築するための検討チーム」で検討が行われました。そして、この検討チームの第2Rでは認知症と精神科医療」に関して議論が行われたのです。

そもそもなぜ、「認知症と精神科医療」に関する議論が必要になるのでしょうか。

認知症は医学的には、

いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し、複数の認知障害があるために日常生活、社会生活に支障をきたすようになった状態

と定義されています。認知症の人は日常生活、社会生活で支障を抱えているので、その生活を支援する必要があります。

認知症の症状は、通常「認知機能障害」と「行動・心理症状(BPSD、周辺症状)」の2種類に分けて考えます。このうち、認知機能障害とは、脳の神経細胞が死滅・脱落することによって直接的に生じてくる症状で、記憶障害、見当識障害、判断力の低下などをいいます。認知症であれば、必ず脳の神経細胞の脱落が認められるので、認知症の人では認知機能障害は必発です。また、

認知症の悪化=脳の神経細胞の脱落の進行

なので、認知症の進行に伴い、認知機能障害は増悪していきます。

それに対して、行動・心理症状とは「認知機能障害を持っている認知症の方に、もともとの性格、周囲の環境、人間関係などの様々な要因が絡み合って生じてくる症状」のことをいいます。具体的には、不安、抑うつ、興奮、徘徊、不眠、被害念慮、妄想などのことです。例えば、認知症の初期段階では、自分の認知機能障害に気づき、不安になったり、将来のことを考えて、抑うつ的になったりします。さらに認知機能障害が進行すると、忘れること自体を忘れてしまい、記憶障害に関する病識が失われるので、自分がしまい場所を忘れてなくしたものを「誰かが盗った」などと訴えたりすることがあります(物盗られ妄想⊆被害関係妄想)。こういった被害妄想のために興奮したりすることもあります。また、場所がわからなくなると徘徊が認められたりします。

認知症の行動・心理症状とは、もの忘れや判断力の低下で認知機能が低下した認知症の人が周囲の環境に適応ができずに混乱してしまった結果であったり、認知症の人の言葉にならないメッセージであったりするのです。認知症の人への支援が十分にあれば予防することも可能であり、改善も可能な精神症状です。

現在の日本では、国民全体の認知症に関する理解が十分ではなく、認知症の人への支援が十分に提供されていないため、認知症の人に行動・心理症状などの精神症状が出てきてしまうことがあります。現状では、かなりひどい状態になる方もいるため、精神科病院への入院のニーズは高い状態が続いています。

病院に入院中の認知症の人数 精神病院に入院中の認知症の人数 精神病院入院中の認知症の人

の割合

平成11年       54000人 36700人 67%
平成14年       71000人 44200人 62%
平成17年       81000人 52100人 65%
平成20年       75000人 51500人 68%
平成23年             80000人 53400人 67%

 

 

「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム第2R」では、この増え続ける「認知症の人の精神科入院の問題」に関して活発な議論が行われました。

とりまとめの段階で、日本精神科病院協会出身構成員と事務局が進めようとした「入院期間を短くするだけの目標値」設定に一部委員が強く反対したのです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001xah3.html

日精協出身構成員と事務局が設定しようとした「退院に着目した目標値」(報告書15ページ~)は、

平成32年度までに、精神科病院に入院した認知症患者(認知症治療病棟に入院した患者)のうち、50% が退院できるまでの期間を2ヶ月以内とする

というものでした。しかし、これはほとんど意味の無い目標設定です。
たとえば、ご家族のレスパイト目的での短期間の精神科病棟入院を入れれば、この目標値は簡単にクリアできます。現状でも、本来レスパイトを受けるべき介護施設のショートステイは数週間前に予約しないといけない状況でそのニーズに十分に対応できておらず、ご家族のレスパイト目的での精神科病棟への認知症の人の入院は多いのです。

これに対して、一部委員が主張した「入院に着目した目標値」(報告書18ページ以降)は

認知症の人の精神科入院を減らすためには、入院自体を減らす目標値を設定する必要がある

というものでした。至極当然の指摘であると思います。

この2つの立場が激しく対立し、とりまとめの段階で審議会の意見の一致に至りませんでした。

この問題をさらに深く検討するために、藤田一枝厚労省政務次官(当時)を主査とした「認知症施策検討プロジェクトチーム」が設置されました
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001wddm.html

外部の圧力をさけるため、チームは省内のメンバーだけで組織され、H24.6.18に報告書「今後の認知症施策の方向性について」を発表しました。
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/houkousei.html

この報告書の中では、これまでの日本の認知症施策の再検討をしています。

かつて、私たちは認知症を何も分からなくなる病気と考え、徘徊や大声を出すなどの症状だけに目を向け、認知症の人の訴えを理解しようとするどころか、多くの場合、認知症の人を疎んじたり、拘束するなど、不当な扱いをしてきた。今後の認知症施策を進めるに当たっては、常に、これまで認知症の人々が置かれてきた歴史を振り返り、認知症を正しく理解し、よりよいケアと医療が提供できるように努めなければならない。

そして、今後の目標を設定しました。

このプロジェクトは、「認知症の人は、精神科病院や施設を利用せざるを得ない」という考え方を改め、「認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会」の実現を目指している。

「今後の認知症施策の方向性について」をうけて、同年9月に認知症施策推進5カ年計画(旧オレンジプラン)が策定され、平成25年から実施されたのです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002j8dh.html

上野さんの参考資料
認知症ケア最前線H25.10Vol.41 認知症と障害者施策

共同通信記事
http://www.toonippo.co.jp/tokushuu/danmen/danmen2015/0127_2.html
http://hidekiueno.net/?p=1260

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