全国「精神病」者集団ニュース2017年11月号抜粋

ごあいさつ

気候不順が続いております。各地も洪水など災害が。気候不順のため体調を崩している仲間も多いようです。

皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて89日夜全国「精神病」者集団ニュース発送しました。ところが重大ミス。名簿の数より発送数が4名分不足。前号ニュースが届かなかった方はご連絡を。ご連絡次第発送いたします。ご迷惑をおかけし申し訳ありません。

全国「精神病」者集団の混乱は未だ続いておりますが、合宿でも解決には程遠い状態、参加者は皆疲弊したのではと案じております。

さていま事務所は専従体制がなく、郵便物の紛失が続いています。

そこで連絡先を変更しました。以下です。今後交換のニュースなどは以下にお送りくださいますようお願い致します。

〒165-0027 東京都中野区野方4-32-8-202 山田方 絆社

寒さも厳しくなります。皆様も風邪など引かないようお体にお気をつけて、なんとか困難な時代を生き延びて、生き延びてと願っております。

 

 

精神保健福祉法改悪案Q and A

山本眞理

 

精神保健福祉法案は突然の国会解散により廃案となりましたが、来年には出てくることは確かです
以下の文章をビラにまとめたものを作りました
ご活用いただけたら幸いです
下記からPDFファイルをダウンロード
Q精神保健福祉法がかわるというけれどどうして

Q 精神保健福祉法がかわるというけれどどうして?

精神保健福祉法は3年毎の見直しが規定されており、2013年の法案成立以来施行後3年の定期的な見直しが2017年ということで、2016年1月より厚生労働省内の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において議論がはじめられていました。議題は主に医療保護入院のあり方、および地域精神保健体制のあり方とされており、関係団体ヒアリングなどが進められていました。そこでは今回出された法案の中心である措置入院制度の話は議題とはなっていませんでした。
ところが7月26日に相模原事件が起き、その直後に安倍首相は逮捕された人に措置入院歴があることをもって、事件の再発防止策を厚生労働省内に検討チームを作るとし、さらにその検討チームの結論があり方検討会に出され、相模原事件の再発防止のための措置入院制度の見直しとして精神保健福祉法改悪案が国会に上程されることとなりました。

Q 措置入院していた人が退院後地域で支援を受けられるというのはいいことではないでしょうか

精神科の病気に限らず、何かの病気だろうが慢性的な病気の方に対して、地域での医療や支援は重要でしょう。そして精神疾患を持つ人の中には入院形式と無関係に地域支援が必要な方もいらっしゃるでしょう。
障害者総合支援法はそうした精神障害者に対して支援の類型を様々に準備しています。こうした支援の充実ではなくて、なぜ措置入院体験者だけにわざわざ特別な法律である精神保健福祉法で対応しようとするのか、そこが問題です。
その理由はやはり相模原事件の再発防止という目的、本人の望む本人のための支援ではなく、治安のために本人を見張る管理監視することこそがこの法案の目的です。
しかも国会審議の中で精神保健福祉法による「退院」とは「措置解除」のことであるとされており、措置解除後の入院継続は約8割と政府答弁がありました。つまり措置解除後の「退院支援計画」の8割は「入院継続」というだけのものであり、地域での生活を支援する計画ではないということになります。
これでは退院後の支援ではなくひたすら個人情報収集と管理だけが目的と言わざるを得ません。

Q 措置入院から退院した人に具体的にどういう支援をするのですか

支援の具体的内容は全く法案には書かれていませんが、要するに一般の外来医療必要に応じて障害者総合支援法による支援が想定されています。また精神保健福祉センターなどが行っている法外のアウトリーチなどが行われる可能性も高いでしょう。
措置入院した人はその措置解除までに病院側と次項で述べる地域協議会で支援計画をたてることになっています。そして対象者は転居してもその計画が転居先の自治体に引き継がれるということになっています。非常に重要な個人の医療情報などが地域の支援者や警察にまで共有されてしまうことになり、一旦警察に渡った情報は一生つきまといかねません。医療関係者福祉関係者は守秘義務を破ることを強いられるのです。

Q 新しく支援のための組織が作られるそうですが

法案には精神障害者支援地域協議会が新設されることになっています。これは都道府県及び政令指定都市に作られ、構成メンバーは関係行政機関、診療に関する学識経験者の団体、障害者支援団体等が挙げられており、その中に警察が入ることは明らかにされています。法案の説明ではこの協議会本体とは別に個別支援のための組織が作られるといわれていますが。法条文には明記されておらずその性格も不明です。
個別の支援会議についても警察が入る場合があると説明されており、すでに広島、兵庫、宮城の各県では措置入院の体験者の個別支援会議に警察が参加しています。

Q 本人の同意が必要と聞きましたが、拒否したらどうなるのでしょう

参議院の審議では、あくまで本人の同意のもとで計画が作られる、拒否することもできると政府は答弁しています。しかし医療機関と自治体で作った計画に対して本人参加は法律上保障されていません。もちろん拒否権も明記されていません。
今現在も同様ではありますが、地域での支援を拒否すること=病状悪化と捉えられ強制入院が待ち構えています。それへのおびえから専門職に取り囲まれて同意せざるを得ないという実態があります。またこの協議会にすべての支援団体が組織されれば、それを拒否することは即一切の支援も医療設けられないということになりかねません。
今現在紹介状を書かない、紹介状がないと受けないという形で精神障害者の医療機関を選ぶ権利は侵害され続けています。一旦厄介者とレッテルを張られるとどの支援団体も支援を拒否するという実態もあります。同意と言っても実質強制となることは目に見えています。

法案は、警察の失態をなんとかごまかし、被告本人の障害にすべての責任を押し付けるという許しがたい政府によるヘイトクライムです。さらに警察は、焼け太りで、個人情報を医療機関や福祉事業所から入手し、住民の管理、監視、そして治安のために利用していこうとしています。
法案は先の国会で参議院を通過し衆議院で継続審議が決まり、次の国会には出てくることが予想されます。一度でも措置入院となったら、一生警察に個人情報が保存され転居してもついて回る、そんな精神保健体制が作られてしまいます。なぜ措置入院を体験したというだけで、このようなプライバシー侵害が正当化されるのでしょうか。憲法にも障害者権利条約はじめ国際人権法にも違反した差別そのものです。医療福祉の関係者も支援のためということで守秘義務を解除することを強いられることになります。これでは患者と医師の関係利用者と支援専門職の信頼関係は破壊され、精神障害者は医療も支援も拒み野垂れ死にすら強いられかねません。
一片の法律でこうした人権侵害を許してはなりません。今この法案を廃案に追い込まないと、精神医療保健福祉は治安の道具に変質し、利用したくとも利用できない体制となってしまいます。
相模原事件の原因をあたかも精神障害であるかのようにでっちあげたことから始まった精神障害者差別に基づいたこの法案は白紙撤回しかありえません。

なお今進められようとする国の社会保障への責任放棄、自助努力と住民の「助け合い」を偽装した、市民総動員体制こそある意味では精神保健福祉法改悪案の先取り状況といっていいでしょう。この計画に当たっての先進事例とされる事例ではすでに警察も組み込まれています(認知症高齢者の保護に関してではありますが)

 

この2枚の図面をご覧ください。この我がこと丸ごとの方針は障害者が長年の闘いの中で主張してきた共生社会とは全く異なりますし、もちろん障害者権利条約の目ざす共生社会インクルージョンとは全く違います。10月28日の医療観察法を許すなネットワークの学習会で講師の尾上浩二さんはそう主張するとともに、障害者運動はまさに障害を我がこととする障害者とその支援者が丸ごと社会を変える闘いをしてきた。この国の方針は医療と福祉、そしてそれを必要とする高齢者、障害者、子ども、困窮者などを対象としているが、丸ごとと言いながら、教育も、住宅も、労働もはいっていない。厚生労働省の一部局の対象者だけを地域で囲い込むもの。国からいえばいわば「ひとごと、自治体に丸投げ」の方針である、とかたりました。
さらに前ページの図にあるように、地域力強化の相談体制は、再犯防止や後見人制度利用促進、と言ったものも含む可能性があり、まさに地域総動員体制による治安対策の道具になりかねません。要支援者とみなされたもの困窮者も含め地域で囲い込み監視管理していくシステム強化です。
心神喪失者等医療観察法廃案闘争のときは全精神保健福祉医療専門職団体が反対声明を出しあるいは名を連ねました(一部修正後に2団体が賛成に回りましたが)。日弁連もまた積極的な反対運動を行いました。連日のように各団体が議員会館を回り、議員さんたちは半分呆れながら「皆さん熱心ですねえ」とおっしゃったものです。しかし今回の精神保健福祉法案では精神保健福祉医療団体の動きは鈍く、日弁連もまた熱心とはいえない状態です。PSW協会に至っては法案説明の文書から「相模原事件の再発防止」という文言が削られたことをもって法条文は全く変わらないにも関わらず「政府が、相模原事件の再発防止を法改正の趣旨から削除したことは、精神病者監護法から精神衛生法の改正等々と連綿と続く、社会防衛策としてのこの法の成り立ちそのものを見直す覚悟の表れであると認識し、精神科医療をその他の医療から切り離して規定する現行の精神保健福祉法の抜本的見直しの端緒に立つことを示すものと考えます。 非自発的入院制度の存置の是非についてさらなる検討を重ね、国際連合の『精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則』や『障害者の権利に関する条約』に適った入院制度の創設へと歩を止めることがないよう求めるとともに、本協会も諸活動を展開します。」と述べ、障害者権利条約と両立しないため廃棄された国連原則まで引っ張り出して法案の問題点に目をつぶっています。
すでに精神保健福祉専門職団体や弁護士会は抵抗できず、まさに我がこと丸ごと体制において地域で総動員され後見人制度や教育刑・保安処分へと動員されていくと見えます。
私も国会議員周りをしましたが、やはり妙に障害問題に詳しい議員さんは野党とはいっても、後見人制度を人権擁護体制と確信していたり、治安強化共謀罪と一体となった攻撃としてこの法案があるという本質を見抜けなかったり、あるいは見て見ぬふりする方が多く、かえって労働問題が専門であまり障害問題をご存じない方のほうが、本質がわかるということつくづく感じました。
2人なら共謀罪、1人なら精神保健福祉法というのが私の作ったスローガンです。
私たちは課題別共闘を専門職と重ねることにやぶさかではないが、こうした閉鎖的な村をでてより広いマイノリティの仲間障害者団体と共に、真に1人も取り残さない、共に生きる社会を作り上げるために闘っていかなければなりません。
そして国際的な人権水準から見たら目を覆うばかりの日本とそして今や危うい日本国憲法の保障する基本的人権の確立、反差別そしてハンセンを貫く闘いより多くの市民とともに繰り広げていかねばならないと考えます。
いま改憲の動きの中で基本的人権そのものがすべての市民に否定されようとしている時、村をでて多くの仲間と課題を共有化してともに闘うことが共に生きる社会の構築には必須です。
国際社会国連への働きかけ強化と国際連帯もさらに広げなければなりません。

 

 

 

 

UPRプレセッション@国連ジュネーブ本部

参加報告

                                   三輪佳子

 

2017年10月10日~13日、国連ジュネーブ本部において、人権に関する普遍的定期的審査(UPR)のプレセッションが開催されました。主催元は、この審査のために設置されたNGOであるUPR Infoで、審査を行うのは国連に加盟している国々の政府です。国連が主催し、条約それぞれについて行う委員会審査とは異なり、複数の条約にかかわるその国の課題を包括的に取り扱うことが可能という特色があります。
このたびのプレセッションは、日本を含む13ヶ国に対する審査本番に先立って行われたもので、各国から5名のパネリストが登壇して行うパネルディスカッション形式でした。10月12日、日本の5団体からのパネリストの1人として、私も参加し、発表を行いました。また、発表の前後、6ヶ国に対してロビイングを行いました。

 

UPRプレセッションは火曜日~金曜日に開催されましたが、月曜日は朝から夕方までスタッフによるトレーニングが開催され、実質、1週間まるごと「UPRプレセッションウイーク」でした。トレーニングの内容は、UPRが創設された経緯や沿革・UPRの役割と実績・各国NGOに期待されている役割・ロビイングの方法・文書やプレゼンスライドの作成のコツ・口頭発表のコツ と多岐にわたり、極めて具体的でした。
火曜日には、UPRのスタッフとの打ち合わせがありました。「スライドの操作は自分でするのか、それとも誰かにしてもらうのか」といった具体的な事柄を打ち合わせながら、私が抱いていた不安はスタッフの方に聞き取られ、やりとりの中で解消され、さらにエンパワメントされました。その「人間力」に心から驚嘆し、かつ、ありがたく感じました。
発表の前後、国際障害同盟(IDA)のサポートのもと、イタリア・スペイン・オーストラリア・チリ・イギリス・ドイツの6ヶ国にロビイングを行うことができました。対応して下さったのは、大使館の外交官の方々です。どの方も、まず日本の現状に驚いておられました。そして同じように、精神科病院の病床数がなかなか減らず、入院日数も短くならないことの背景が何なのかに関心を持たれました。ある国の外交官は、限られた情報から全体像をはっきりさせるために、短時間のうちに的確な質問を繰り出されました。まるで、凄腕ジャーナリストの「プロの犯行」です。後で、同行してくださったIDAのスタッフに「ジャーナリストみたい」と感想を述べると、「彼女の前職はジャーナリスト」ということでした。
今回のUPRプレセッションおよびロビイングで訴えた日本の精神医療の問題は、拘束と保護室への収容が減少せずむしろ増加していること、日本の精神科入院患者が非常に多く世界の精神科入院患者の20%を占めること、精神科入院日数の平均が世界トップレベルの長期(約10ヶ月)であること、2025年にもなお10万人の社会的入院患者(現在の厚労省の呼称では「重度かつ慢性」の患者)が存在することを前提に組み立てられる地域移行、そして成年後見制度です。共通の背景は、入院しはじめるのは容易だけど退院は容易とは限らないシステムであり、患者の人権より優先される何かが常に存在しつづけている状況です。患者が地域にいないので、地域の理解も地域移行も進まず、このことが多数の入院患者と長期入院を維持する形になってしまっています。悪循環です。

 

6ヶ国の方々は、多様な形で「日本は、何が足りなくて、この悪循環を断ち切れないのか?」と聞いてくださいました。答えは明確です。地域生活に関する支援の充実であり、そのための費用です。精神科入院患者の全員にとって、退院して地域で暮らすことが魅力的な選択肢であり、しかも実際に選ぶことができるのであれば、地域移行は自動的に進むでしょう。
プレセッションでの発表は、各国政府から参加した25名程度の外交官たち、各国NGOの方々・傍聴者の方々含め約40~50名の前で行いました。
発表の冒頭で、私は2つの悲劇について話しました。千葉県の30代男性が保護室の中で看護師に暴力を振るわれ首を骨折して2014年に亡くなった事例、そして本年2017年5月、10日間の拘束のうちに深部静脈血栓症を発症して亡くなったニュージーランド国籍の20代男性英語教師の事例です。語り始めたとき、お2人の無念とご家族のお悲しみを思い、私は涙声になりそうでした。会場は「水を打ったように」という形容そのままに静まり、強い驚きと深い共感が寄せられていることを感じました。私は冷静に発表を進め、締めくくることができました。会場の驚きと共感は、発表の最後まで維持されたままでした。
フロアからは、日本の5人のパネルに対する質問はありませんでしたが、司会者から「日本政府に何を勧告してほしいですか」という質問がありました。私は「日本が、締結した国連障害者権利条約に違反しないこと」「日本政府の関心が精神科病棟の維持ではなく地域移行にあることを、地域生活支援への費用配分の形で示すこと」の2点を答えました。日本政府が精神科入院患者の地域移行を本当に重要だと考えているのなら、その考え方は、入院医療費の削減と、地域移行と地域での支援に予算が配分される形で示されるはずです。往年のドラマ『家なき子』の名セリフ「同情するなら金をくれ」ではありませんが。
用意した40部の資料は、私たちが会場を出る時には全部持ち帰られていました。サポートしてくれたIDAのスタッフは、この強い関心に大喜びしていました。またその日、日本国内および他国の方々30人程度から、「胸を打たれた」というご感想をいただきました。とにもかくにも、無事に役割を果たすことができてホッとしました
貴重な機会を与えて下さったUPR Infoの皆様、現地で細やかなサポートをして下さったIDAの皆様、私をこの貴重な場に送り出した全国「精神病」者集団の皆様、初めてのことで右も左も分からずにいた上に複数の締め切りを抱えていた私を的確なサポートとプッシュで成功に導いた山本眞理さん(全国「精神病」者集団)、そして費用のご支援をいただいた皆様に、心よりの感謝を申し上げます。
ありがとうございました。次の機会にも、どうぞよろしくお願いします。
(当日のスピーチ、パワポ、および会場で配布した身体拘束で息子さんをなくされたニュージーランドのサベジさんのご家族の手紙の邦訳を全国「精神病」者集団サイトに掲載しました。こちら インターネットお使いでない方には郵送します。窓口までお申し込みください
当日は当然日本政府も参加また9月28日に国連人権理事会で精神保健と人権の決議がなされ次に国連総会での決議という流れとなっている時非常にいいタイミングで精神障害者の問題が触れられてとても良かったと国際障害同盟のスタッフも言っております。そちらのサイトにも報告が載せられています。精神保健福祉法の改悪案の審議が来年になりそうですから、政府への厳しい勧告が出ることを期待しますが。受け入れるかどうかがまた難しいところではあります。山本)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精神医療国連個人通報センター 4件の個人通報を10月3日に行いました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京新聞
2017年10月17日 朝刊

 

少し不正確な記事で、作業部会への個人通報を行っても訪問調査はなく書類のやり取りだけです。またアサンジさんは英国に逮捕されているのではなく、ロンドンのエクアドル大使館に逃げ込み、一歩でもでたら英国が逮捕ということで拘禁状態ということです。
なお米国への訪問調査の報告書は非常にいい中身で、精神障害者の強制入院の廃止を述べています
ホームページもできました。精神医療個人通報センターと検索するとでてきます。現在拘禁中で精神医療審査会に訴えている方はぜひこちらにも (山本)



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