習志野市障害者差別解雇事件裁判第1回12月9日 原告意見陳述全文

2月17日 第2回の裁判です

第1回期日の原告意見陳述全文以下

私は生まれた時から脳性まひのため左足が不自由ですが、優しい人たちに囲まれて育ちました。小さい頃からクリスチャンで、どのような人たちに対しても愛を持って接することを学びました。「利益を追求するのではなく、人の役に立つ仕事をしたい」ということで公務員を志し、昨年の4月に大学を卒業した後、インターネットで知った習志野市の身体障害者枠の採用に応募しました。

当初は習志野市について知識がありませんでしたが、どんなところか調べるにつけ、「文教住宅都市」を標榜していてとても魅力的な街であるという印象を受けました。
試験を受け、習志野市から合格通知が来たときには、私も夢をふくらませました。両親や友人、高校のときの恩師、大学でお世話になった先生方もすごく喜んでくれ、激励してくれました。その時の私はまさか9か月後に解雇されるとは夢にも思っていませんでした。
確かに初めて社会に出て、とまどうことは多く、今振り返れば社会人としての未熟な面もありました。職場の皆さんにご迷惑をおかけしたこともあったと思います。しかし、条件附き採用期間終了時の免職処分は、あまりに残酷なものでした。なぜこんなことが起こってしまったのか、といまだに信じられない気持ちです。

最初の6ヶ月間は介護保険課で働きました。
介護保険課は制度改正があったこともあり、とても忙しい職場でしたが、自分のやる仕事が一通り終わった時などは周りの先輩職員に「何かお手伝いすることはありませんか?」と聞いたり、空いた時間は所属の課の介護保険制度について一生懸命パンフレットやマニュアルを読み込み、自分なりに頑張っていました。
ところが、ある日課長に残業して働いた分を鉛筆で下書きした超勤命令簿を見せるよう言われ、見せたところ、課長はその下書きした残業した部分の何時間分も消しゴムで消して、「お前には残業するほどの仕事を任せてないんだよ」と言いました。自分の存在意義が否定されたようで、とてもつらかったです。
市民から介護保険の書類が来ないという問い合わせがあって会計運営への疑念を持つようになり、ストレスがたまり、身体に帯状疱疹が出来てしまいました。またデータ入力の際、介護保険の介護と予防の認定日を早めたり遅めたりすることに疑問を抱き、係長に疑問をぶつけても「マニュアルを読め」の一点張りで納得のいく説明はしてもらえませんでした。

条件付き採用期間が終わる11月30日当日に人事課長は条件付き採用の辞令を私の前で読み上げ、条件付き採用期間を3ヶ月延長すると言いました。
そして、「明日から総務課に行くように」と言われました。
総務課では,順調に仕事をすることができました。
今年の2月12日、人事課長との面談が設定されましたが、そこでは突然地方公務員法第22条を読み上げられ、解雇を匂わす発言をされました。2月15日には、健康担当の主幹から電話がかかって来て、「心配だから親元に帰った方がいいと思う」と言われ、結局それに従いました。すると、2月18日に実家に電話が入り、母親と一緒に市役所に来るよう命じられました。2月22日、呼び出された母と私に、「能力不足により免職します。能力不足以外に解雇の理由はありません」と一方的な通告が行われ、「解雇予告通知」が読み上げられました。これは条件付採用期間が終わるわずか1週間前のことでした。目の前が真っ暗になり、私は泣き崩れました。
具体的な理由は示されませんでした。私が「能力不足とは何のことを指すのか」と聞くと、「普通の人が7日かかることを10日かかる」「ボイスレコーダーの文字起こしの時に、発言者が誰だか特定できなかった」と言われました。しかし、そのような理由で免職処分という、働く者にとって死刑に相当するような処分が言い渡されることが許されるのでしょうか。
免職処分の理由が分からなかったので、自己情報開示を求めたところ、勤務実績報告書などが開示されましたが、評価欄と条件付解除所見の記述欄の勤務評価が全て黒塗りでした。解雇に当たって弁明の機会も与えられず、解雇の理由もすべて秘密。これらのことからも、今回の私に対する免職処分が処分権の濫用であることは明らかです。

夢と希望を持って社会人としてスタートを切った私に、社会の壁はとてつもなく厚いものでした。仕事に疑問を持っても、きちんと説明してもらえない。パワハラを訴えても取り合ってもらえない。誰に頼ればいいのかわからない。条件付き採用期間が解除されるわずか1週間前、突然母親が実家から呼び出され、母親と私の面前で解雇予告通知をされる。こうした経験を社会に出て一年足らずで一度にしたため、目の前が真っ暗になり、絶望し、人間不信になりました。
しかし、絶望に陥っていた私をいろいろな人が助けてくれました。「たとえ社会人として未熟な点があったとしても、不当に障がい者を切り捨てることは絶対に許されない。頑張れ」という暖かい励ましのお言葉をいただきました。そんな中で、私も「職場に戻ってまた市民のために働きたい」という気持ちがますます強くなりました。
私が加盟した労働組合が習志野市当局と交渉をした際、前人事課長は「条件付採用期間を延長する理由として何を言ったか?」という質問に対して「忘れました」と回答しました。また、総務部長は障害者雇用を「法定雇用率を満たすために雇っただけである」、「身体障害者枠で採用しただけだから、障がい者としての配慮はしません」などと言い放ちました。私と一緒に障がい者枠で採用された方も私が免職処分される前にやめてしまっています。人を任用する、障がい者枠を設定するということが、こんなに軽く取り扱われていいのでしょうか。
いろいろな人からの声をいただく中で、職場でパワハラにあったり、民間の障がい者枠で採用されたのに「能力不足」で退職強要をされ、つらい目にあった方たちがいらっしゃることも知りました。しかし、「障がい者枠で採用した人間をわずか9か月で解雇」という乱暴な扱いをした自治体は習志野市だけだと聞いています。こんなことがまかり通れば、障がい者の差別ない雇用はいつまでたっても実現されません。こんな前例をつくっては絶対にいけない、心からそう思います。
習志野市役所を、人間を大事にする、暖かみのある職場にしていただき、この社会の中で私のような目に合う人間が二度と出ないようにしていただきたいと思います。

「この問題は君一人の問題ではなく、みんなの問題だ」と言われます。 社会に出たばかりの人間を不要なものとして排除してしまうというあり方は、「障害者なんていなくなればいい」という残酷な考え方を持った津久井やまゆり事件の犯人と同根です。地方公共団体は、本来、社会の共生化を促進する上で最前線に立つことが期待されています。そのためには、やまゆり事件の犯人とは対局にある、お互いが多様性を認め合える個人の意識が必要です。そういった意識や考え方を地域に根付かせることも地方自治体の仕事です。習志野市は、その期待されている役割を果たさないばかりか、今回、障がい者枠で採用した人間をすぐに解雇してもいい、という悪しき手本を示しました。こんなことは許されません。一方で、私に寄せられたたくさんの声は、人間の暖かさそのものです。困っている人を助けたいと自分のことのように感じとる優しさに、免職処分にあい絶望にうちひしがれていた私は救われました。その人たちの気持ちを、私は無駄にできません。

障がい者や青年の未来を閉ざすのではなく、真の共生社会をつくっていくためにも、公正なご判断をお願いいたします。

以上



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