2016年2月全国「精神病」者集団ニュース 抜粋

精神保健福祉法改訂問題をめぐって資料ほか 

山本眞理

  • 前号でお知らせしたように「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」が始まりました。全国「精神病」者集団は2月25日にヒアリングに呼ばれています。

この議題は前号既報ですが、この根拠となったと思われる研究報告書「厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業 新たな地域精神保健医療体制の構築のための実態把握および活動の評価等に関する研究評価等に関する研究」平成24年度から26年度総合研究報告書 研究代表者竹島正が公表されました。

以下国立精神神経医療研究センター精神保健研究所の以下のサイトからダウンロードできます。大部のものです。

http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/pdf/vision_25.pdf

 

 

厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業「新たな地域精神保健医療体制の構築のための実態把握および活動の評価等に関する研究」

平成24年度から26年度総合研究報告書

研究代表者竹島正

目次

l 総括研究報告

新たな地域精神保健医療体制の構築のための実態把握

および活動の評価等に関する研究

研究代表者 竹島正

  1. 分担研究報告
  2. 地域精神保健医療の社会サービスへの統合および精神医療機能別必要量の検討に関する研究

(1 ) 地域精神保健医療の推進基盤に関するヒアリング報告

竹島正、立森久照、高橋邦彦、山之内芳雄、堀尾奈都記、河原和夫

(2) 精神科入院受療必要量の算定方法の検討

竹島正、立森久照、高橋邦彦、山之内芳雄

(3) 26年度630調査および追加調査の実施とそこから得られる成果の活用可能性の検討.

竹島正、立森久照、西大輔、高橋邦彦、下回腸樹、金田一正史、山之内芳雄

(4 ) Unmet needsの把握のための通報等調査

竹島正、下回陽樹、立森久照、高橋邦彦、金田一E史、小池純子

(5 ) 精神疾患当事者に対する態度の変容のための啓発資材・プログラムの開発に関する研究

竹島正、山内貴史、贋川聖子、牛島晶子、西村武彦

【研究協力報告書】

一精神保健福祉資料におけるレセプト情報の利活用の可能性一

奥村泰之、清水沙友里、立森久照、竹島正

 

  1. 630調査等による精神保健医療福祉のマクロ動向の分析に関する研究

立森久照、臼回謙太郎、後藤基行、下回腸樹、加藤直広、西大輔、竹島正

  1. 地域精神保健医療のニーズの変化とその予防的対応に関する研究

森川将行、井上雄一朗、小泉典章、黒田安計、永岡秀之、大塚俊弘、白川 教人、土山幸之助、山下俊幸

  1. 保護者制度・入院制度の理論枠組みおよび法律構成の分析

久保野恵美子、町野朔、道垣内弘人、磯部哲、柑本美和、佐藤雄一郎、千葉華月

  1. 国内外の精神科医療における疾病分類に関する研究

丸田敏雅、松本ちひろ

  1. 高齢精神障害者の処遇実態の分析と対策に関する研究

栗田主一、岡村毅、井藤住恵、古回光、稲垣宏樹、杉山美香、立森久照、新美芳樹、的場由木、船木友里恵

  1. 入院患者の権利擁護に関する研究

河崎建人、平田豊明、浅井邦彦、東司、岡崎伸郎、補巣泰治、田辺等、千葉潜、中島豊爾、永野貫太郎、益子茂、松浦玲子、松原三郎、松村英幸、三木恵美子、山下俊幸、八尋光秀、吉津雅子、四方田清

  1. 自立支援医療に関する研究

岩谷力、我津賢之、竹島正

  1. 精神医療にかかる医療圏のあり方に関する研究

高橋邦彦、立森久照、加藤直広、竹島正

  1. 精神疾患の医療需要の将来予測に関する研究

-統合失調症在院患者数の全国および都道府県別将来推計-

川上 憲人、堀尾奈都記

研究班名簿

 

 

「4.保護者制度・入院制度の理論枠組みおよび法律構成の分析」と「7.入院患者の権利擁護に関する研究」しか読んでおりませんが、いずれも障害者権利条約には一切触れておらず、4に至っては障害者権利条約に反した国連原則を引っ張りだして、なんとか医療保護入院を正当化しようとはしているのですが、全く理解できません。

国連原則は拘束力がなく新しい障害者権利条約は拘束力のあるものです。

人権擁護を語りながら障害者権利条約を無視するというのはどういうことなのでしょう。

入院患者の権利擁護に関する研究では日精協の希望に沿った公的保護者制度が提案されています。

前回の改定で保護者制度を廃止し、家族の入院への同意を残しましたが、市町村同意が著しく制限され、医療保護入院が困難となったということから日精協は公的保護者制度を提唱しています。

実際厚生労働省行政衛生報告例によると新規の医療保護入院は保護者制度廃止により4万件ほど減っています。

新規医療保護

2010年   209,547人

2013年   211980人

2014年   170079人(保護者制度廃止)

しかし新規入院そのものは減っていないのでおそらくなんちゃって任意入院に流れているのではあるいは措置にと想像していますが、そのあたりは不明。7番の報告書でもどうなっているのかは明らかにはされていません。新規措置入院はそれほど増えておりません。

それ故大変だということでちゃっちゃと円滑に医療保護入院できるようにということで公的保護者制度という提案がなされているということです。

なんとも本末転倒な話、強制入院や入院そのものを減らしていこうという議論は全くされていません。

この報告書は大部ですので全部コピーをお送り出来ませんが、郵送ご希望の方は4と7のみコピーをお送りします・コピー代送料実費をご請求いたします。窓口までご請求を。

 

  • 成年後見制度の利用の促進に関する法律案 今国会議員立法として提案?

政府与党は「成年後見制度利用促進法案」をまとめ、野党と協議の上議員立法として今国会に提案しようとしています。 

全国「精神病」者集団は昨年8月15日にこの法案反対の声明を出しています。

全国「精神病」者集団のサイト声明の欄に掲載中です。すでにニュースでもご報告済みですが。

障害者権利条約は後見人制度の廃止を求めています。他の国でも後見人制度は少なくとも最小限へという方向に進んでおり、それでもなお政府報告書審査では各国政府は後見人制度廃止を委員会から求められています。

それにもかかわらず、なんとこの間日本政府は予算をつけて後見人制度の宣伝と拡大を進めてきました。さらにこの法案は後見人制度の利用促進を歌い、さらに医療についてまで後見人が同意する対象と使用などということまでのべられています。

上記公的保護者制度は公費で行われるためとてもお金がかかりますが、後見人はなんとつけられた本人が毎月最低二万円もの自己負担を強いられます。でもこれで後見人が再び医療保護入院の同意を行うとさえすれば一件落着速やかに医療保護入院を強制できまた経費も自己負担ということになります。

まさに制度的将棋者搾取と人権侵害の制度となりかねません。精神保健福祉法では市町村長が必要と思えば精神障害者の後見を申請することができるとされており、いつでも後見人をつけることができます。家裁の審判と言っても形式的なもの、障害者手帳を取っていればほぼ自動的に認められるとやら。恐るべき体制です、医師の診断書もたった紙一枚で財産管理できるかどうかチェックに印をつけるだけのもので良しとされています。このたった一枚の診断書で、突然被後見人とされて、口座にアクセスもできない、自分で契約しても取り消されるなどの市民としての社会的地位を奪われてしまいかねない制度です。以下

裁判所|成年後見制度

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次ページ参照
診断書

「尊厳を再優先に」 同意のない強制的精神科治療の廃絶に向けたアピール

「尊厳を再優先に」

同意のない強制的精神科治療の廃絶に向けたアピール

2015年10月10日(土)世界精神保健デー

ジュネーブ(2015年10月8日)

国連の障害者の権利に関する特別報告官Catalina  Devandas-Aguilarと、健康への権利の特別報告官Dainius Pûrasの二人は本日あらゆる形態の同意のない精神科医療の廃絶を各国に呼びかけた。

世界精神保健デー[i]に先駆けて、独立専門家の二人は、発達障害と精神障害のある人々が尊厳をもってそして人権を尊重されて扱われることを確保するために、恣意的拘禁、強制収容、そして強制医療に終止符を打つことを各国政府に求めた。

「施設への監禁、身体拘束されること、そしてよくある独居拘禁、薬物を強制的に注射されること、これらは障害があるあるいはあるとみなされた人々が、本人の同意なしにされることのほんの一部を描いたものです。これらは身体的精神的インテグリティに対して重大な結果をもたらします。

世界的に、発達障害や精神障害者をもった人々は差別、スティグマそして周辺化に直面し、精神保健施設と地域社会の両方で感情的そして身体的虐待に屈従させられています。そして同意のない精神医療の介入の結果として世界各地で毎年何十万もの人々が尊厳と権利を侵害されています。

そして精神病院、他の特別な施設あるいはその他の同じような施設に恣意的に自由を奪われて拘禁されています。

拷問に値しかねない強制医療を行われるならそれは尊厳と両立することはありえません。各国は緊急課題としてこうしたことをやめ、治療やケアの選択権あるいは拒否権を含んだそれぞれの人の自律を尊重しなければなりません。

暴力と虐待からの自由なしには、自律、自己決定、地域社会への包摂そして、意思決定過程への参加、人の固有の尊厳は、空疎な概念です。医療行為として精神医療の名のもとに広範に受け入れられ正当化されている膨大で広範囲な侵害について国際社会は認識する必要がある。

同意のない収容と治療の背後にある『医療的必要性』という概念は科学的根拠と確固たる基準に欠けている。精神医療での強制の使用という伝統は『まず害すなかれ』という原則に反しており、もはや受け入れられるべきではない。

障害者権利条約は精神保健政策とその実践においてパラダイムシフトをもたらす絶好の機会を提供している。今年の精神保健デーにおいて、今までにもまして、人の尊厳とインテグリティを尊重した地域に根ざしたサービスの新たなモデルと実践を創出する必要を強調する。

効力を持った障害者権利条約を踏まえて、サービス利用者政策決定者そして精神保健含めたすべての利害関係者の間で、人権を基礎とした、条約の基準がもたらした課題に対する回答となるべき解決に向け取り組む仕事について対話を開始する、絶好のタイミングが今である

私たちは各国に、発達障害や精神障害を持つ人が、尊厳を持って対応され、いつもそれらの人の決定が尊重される権利を提供され、さらに必要とするその決定が有効に伝達されるための配慮と支援を得る権利を提供されることが確保されるために、すべての恣意的拘禁、強制収容そして強制治療を廃絶することを呼びかける」

 

 

 

Catalina Devandas-Aguilar氏 (コスタリカ) は、2014年6月に国連人権理事会によって、最初の障害者の権利に関する特別報告官に任命された。彼女は ディサビリティ ライト アドボカシー ファンド、国連の障害者権利条約の担当部署、さらに世界銀行、それらの戦略パートナーシップにおいて国内地域そして国際的に障害問題について広範に取り組んできた。彼女は主に障害のある女性と障害のある先住民に焦点を当てて取り組んできた。

詳細は以下

http://www.ohchr.org/EN/Issues/Disability/SRDisabilities/Pages/SRDisabilitiesIndex.aspx

 

 

Mr. Dainius Pûras (リトアニア) は2014年人権理事会によって到達しうる最高の基準の身体的精神的健康についての特別報告官に任命された。Mr.Pûras はヴィリニュス大学の社会精神医学小児科センターの所長であり教授である。彼はまた公衆保健政策とサービスの改革過程にこの30年間積極的に参加してきた人権擁護活動家でもある。彼はとりわけ子どもの権利と精神障害者の権利そして他の弱者の権利に焦点を当てて活動してきた。

詳しくは以下

http://www.ohchr.org/EN/Issues/Health/Pages/SRRightHealthIndex.aspx

 

国連の特別報告官は国連人権理事会の「特別手続き」として知られている活動部門に属している。特別手続きは国連人権機構で最大の独立した専門家による部門であり、特定の国家の状況あるいは世界のすべての地域の主要なテーマ別課題を扱う、理事会の独立した調査と監視メカニズムである。特別報告官の専門家はボランティアとして働き国連の職員ではなく無報酬である。彼らはいかなる政府、組織からも独立しており、個人としての能力において奉仕する。

詳細は以下 英語原文
http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=16583&LangID=E#sthash.z5MfKxiy.dpuf

 

[i] 世界精神保健デーは国連が後援しているもので、精神保健の課題について世界的に講習の啓発啓蒙のために毎年10月10日に行われている。ことしてのテーマは「精神保健における尊厳」である

(邦訳 山本眞理)