「尊厳を再優先に」 同意のない強制的精神科治療の廃絶に向けたアピール

「尊厳を再優先に」

同意のない強制的精神科治療の廃絶に向けたアピール

2015年10月10日(土)世界精神保健デー

ジュネーブ(2015年10月8日)

国連の障害者の権利に関する特別報告官Catalina  Devandas-Aguilarと、健康への権利の特別報告官Dainius Pûrasの二人は本日あらゆる形態の同意のない精神科医療の廃絶を各国に呼びかけた。

世界精神保健デー[i]に先駆けて、独立専門家の二人は、発達障害と精神障害のある人々が尊厳をもってそして人権を尊重されて扱われることを確保するために、恣意的拘禁、強制収容、そして強制医療に終止符を打つことを各国政府に求めた。

「施設への監禁、身体拘束されること、そしてよくある独居拘禁、薬物を強制的に注射されること、これらは障害があるあるいはあるとみなされた人々が、本人の同意なしにされることのほんの一部を描いたものです。これらは身体的精神的インテグリティに対して重大な結果をもたらします。

世界的に、発達障害や精神障害者をもった人々は差別、スティグマそして周辺化に直面し、精神保健施設と地域社会の両方で感情的そして身体的虐待に屈従させられています。そして同意のない精神医療の介入の結果として世界各地で毎年何十万もの人々が尊厳と権利を侵害されています。

そして精神病院、他の特別な施設あるいはその他の同じような施設に恣意的に自由を奪われて拘禁されています。

拷問に値しかねない強制医療を行われるならそれは尊厳と両立することはありえません。各国は緊急課題としてこうしたことをやめ、治療やケアの選択権あるいは拒否権を含んだそれぞれの人の自律を尊重しなければなりません。

暴力と虐待からの自由なしには、自律、自己決定、地域社会への包摂そして、意思決定過程への参加、人の固有の尊厳は、空疎な概念です。医療行為として精神医療の名のもとに広範に受け入れられ正当化されている膨大で広範囲な侵害について国際社会は認識する必要がある。

同意のない収容と治療の背後にある『医療的必要性』という概念は科学的根拠と確固たる基準に欠けている。精神医療での強制の使用という伝統は『まず害すなかれ』という原則に反しており、もはや受け入れられるべきではない。

障害者権利条約は精神保健政策とその実践においてパラダイムシフトをもたらす絶好の機会を提供している。今年の精神保健デーにおいて、今までにもまして、人の尊厳とインテグリティを尊重した地域に根ざしたサービスの新たなモデルと実践を創出する必要を強調する。

効力を持った障害者権利条約を踏まえて、サービス利用者政策決定者そして精神保健含めたすべての利害関係者の間で、人権を基礎とした、条約の基準がもたらした課題に対する回答となるべき解決に向け取り組む仕事について対話を開始する、絶好のタイミングが今である

私たちは各国に、発達障害や精神障害を持つ人が、尊厳を持って対応され、いつもそれらの人の決定が尊重される権利を提供され、さらに必要とするその決定が有効に伝達されるための配慮と支援を得る権利を提供されることが確保されるために、すべての恣意的拘禁、強制収容そして強制治療を廃絶することを呼びかける」

 

 

 

Catalina Devandas-Aguilar氏 (コスタリカ) は、2014年6月に国連人権理事会によって、最初の障害者の権利に関する特別報告官に任命された。彼女は ディサビリティ ライト アドボカシー ファンド、国連の障害者権利条約の担当部署、さらに世界銀行、それらの戦略パートナーシップにおいて国内地域そして国際的に障害問題について広範に取り組んできた。彼女は主に障害のある女性と障害のある先住民に焦点を当てて取り組んできた。

詳細は以下

http://www.ohchr.org/EN/Issues/Disability/SRDisabilities/Pages/SRDisabilitiesIndex.aspx

 

 

Mr. Dainius Pûras (リトアニア) は2014年人権理事会によって到達しうる最高の基準の身体的精神的健康についての特別報告官に任命された。Mr.Pûras はヴィリニュス大学の社会精神医学小児科センターの所長であり教授である。彼はまた公衆保健政策とサービスの改革過程にこの30年間積極的に参加してきた人権擁護活動家でもある。彼はとりわけ子どもの権利と精神障害者の権利そして他の弱者の権利に焦点を当てて活動してきた。

詳しくは以下

http://www.ohchr.org/EN/Issues/Health/Pages/SRRightHealthIndex.aspx

 

国連の特別報告官は国連人権理事会の「特別手続き」として知られている活動部門に属している。特別手続きは国連人権機構で最大の独立した専門家による部門であり、特定の国家の状況あるいは世界のすべての地域の主要なテーマ別課題を扱う、理事会の独立した調査と監視メカニズムである。特別報告官の専門家はボランティアとして働き国連の職員ではなく無報酬である。彼らはいかなる政府、組織からも独立しており、個人としての能力において奉仕する。

詳細は以下 英語原文
http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=16583&LangID=E#sthash.z5MfKxiy.dpuf

 

[i] 世界精神保健デーは国連が後援しているもので、精神保健の課題について世界的に講習の啓発啓蒙のために毎年10月10日に行われている。ことしてのテーマは「精神保健における尊厳」である

(邦訳 山本眞理)

 



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