運転免許の規制強化(てんかん患者の事故以来の動き)
について
2011年4月、栃木県鹿沼市内の国道上において、クレーン車の運転者がてんかんの発作により意識を消失し、登校中の小学生6名が交通事故により死亡した。遺族らは「2度と同じような事故が起きてほしくない」という思いから、再発防止に向けて昨年12月下旬に署名運動を開始。てんかんの持病を申告せずに運転免許を不正取得した人への危険運転致死罪の適用拡大と、自己申告の運転免許制度の改正を訴えてきた。遺族らは、2012年4月9日、法務省を訪れ、同種事故の厳罰化を求める約17万人分の署名を小川敏夫法相(当時)に提出した。小川敏夫法相は、「署名はもう提出しなくていいです。民意は十分に伝わりました」と述べ、問題に正面から取り組む姿勢を示した。遺族らは再発防止に向けた大臣の前向きな言葉に「うれしい」「つらかった署名活動が報われた」と涙ながらに喜びを語った。その後、警察庁で、ほぼ同数の署名を提出して運転免許制度の改正を訴えた。
一方2011年12月17日、てんかん患者の運転免許取得や更新の制度見直しを目指す日本てんかん学会と日本てんかん協会が警察庁と連携し、患者の運転事例を検証するための検討会を来年2月に発足させることが取材で分かった。警視庁は、「一定の病気等に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会」(座長:藤原靜雄・中央大学法科大学院教授)を設置し、
1 一定の症状を有する者を的確に把握するための方策について
2 一定の症状の申告を行いやすい環境の整備方策について
3 病状が判明するまでの間における運転免許の取扱いについて
を検討するため、次の日程で検討会を継続してきた。
1 第1回検討会平成24年6月5日
○ 関係団体からのヒアリング
(鹿沼児童6人クレーン車死亡事故遺族の会、社団法人日本てんかん協会)
2 第2回検討会平成24年6月26日
○ 一定の症状を有する者を的確に把握するための方策について
・症状等の虚偽申告に対する罰則の整備について
・外国における一定の病気等に係る運転免許制度における申告手続
○ 一定の症状の申告を行いやすい環境の整備方策について
3 第3回検討会平成24年7月26日
○ 一定の症状を有する者を的確に把握するための方策について
・自己申告以外の把握方法について
・外国における一定の病気等に係る運転免許制度(通報制度)
○ 厚生労働省による資料説明
・医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いに関するガイ
ドラインについて
4 第4回検討会平成24年8月28日
○ 病状が判明するまでの間における運転免許の取扱いについて
・病状が判明するまでの間における暫定的な免許の効力停止について
・外国における運転免許の効力停止等に係る手続きの例
○ 一定の症状を有する者を的確に把握するための方策について
・申請時における診断書の提出について
○ 制度運用上の改善事項について
・一定の病気に係る運転免許の可否等の運用状況
5 第5回検討会平成24年9月19日
○ 一定の病気等に係る関係学会等に対するヒアリングの実施結果について
○ 「一定の病気等に係る運転免許制度の在り方に関する提言」(素案)の
検討について
6 第6回検討会平成24年10月16日
○ 「一定の症状を呈する病気等に係る運転免許制度の在り方に関する提言」
(案)の検討について
2012年10月25日、同有識者会議から「一定の症状を呈する病気等に係る運転免許制度の在り方に関する提言」が示され、運転免許制度の見直しの方向性として、「運転に支障を及ぼす症状について故意に虚偽の申告をした者に対する罰則の整備」「医師への通告義務」「症状の把握にかかるデータベース化」などが盛り込まれた。
このような差別的な提言については、当初より懸念されていたが、改めて以下の抗議文を提出した。
2012年警視庁有識者会議による、てんかん、統合失調症、躁うつ病等を持った運転者に対する差別的提言への抗議
全国「精神病」者集団
2011年4月、栃木県鹿沼市で起きた、クレーン車が登校中の児童に突っ込み6名の児童が亡くなった事故の遺族が中心となって、17万人分の署名を集め公安委員長に提出。その後2012年4月に始まった警察庁の有識者会議が、運転免許制度見直しについて、まとめた提言を2012年10月25日発表しました。その報告書の骨子は、
1、 運転に支障がある症状を虚偽申告した人に対する罰則の整備を提案。
2、自動車の安全な運転に支障があると認められる人について、医師が任意で届け
出る仕組みの必要性を指摘。
3、病気で免許が取り消された人が再取得する時は試験の一部免除を提案。
4、症状の疑いがある場合は、明らかになるまで暫定的に免許停止を提案。
5、物損事故のデータベース化を提案(運転に支障ありそうな人の発見につなげ
る)。
6、診断書提出の義務は課さない見解。
となっています。
この提言骨子を整理してみたいと思います。
1~5をまとめると、虚偽申告への罰則・主治医の通報の奨励・再取得への配慮・症状主義・疑わしき人物のデータベース化・診断書は取れないケースが多いことへの配慮、と箇条書きできると思います。
この箇条書きを並べ替えると、「正しい自己申告、主治医からの情報提供、そして埋もれがちな物損事故の情報の3点から、虚偽申告も簡単に見破れる体制を整え、監視と厳罰化で特定障害者の運転事故をなくす。」となると思います。
ここをさらに抽象化すると、「特定の障害者による事故を無くすため、障害者の情報を管理出来る様にする。」とすっきりと言えないでしょうか。
特定の障害とは、てんかん・躁うつ・統合失調症・など、です。
さて,心神喪失者等医療観察法という法律が施行されていますが、精神障害者に対する保安処分で、一言でいえば、精神障害者は何をするかわからない危険な存在である、という認識のもとに策定運営されている法律です。
それと同じことがこの提言の骨子にも言えると思います。
心神喪失者等医療観察法は、あまたある重大他害事件の件数のうちの数%にも満たないであろう、精神障害者の他害事件に対して徹底的な保安処分を、目が飛び出るような公金を投じて行う、というものです。
てんかんの事故についても同様で、日本てんかん学会によれば、2010年の人身事故件数726,000件のうち、てんかんが原因と思われる事故は71件だったという調査があります(ニューモデルマガジンX 7月号P,50)。
その状況に対して71件の事故のため特別な法制度を整備して対応しようとしています。
医療観察法が出来たからと言って、重大他害事件全体の件数は大きくは変化することはないでしょうし、道交法を改訂したからと言って、726,000件の人身事故件数に何ら影響があるわけでもありません。
どちらも精神障害者等の存在を、社会不安に対するスケープゴートとして祭り上げているだけのことです。
マイノリティーである精神障害者等がすべて悪いのだ、という社会認識を作り社会の耳目をそらそうとしている、のではないでしょうか。
まとめると、人身事故等交通事故を抜本的に減らすためには、すべての運転者に対して、その適性を取得時、更新時に限らず、もっと的確に調べるシステム、法制度が必要なのであるのに、提言は人身事故の0,00001%である、特定の疾患を持つ障害者の事故を減ずるため、障害者の情報管理を徹底しようとしているものです。
精神障害者等は事故を起こすという偏見差別の前提に基づいたもので、全体状況に何ら手を加えようとしない国の怠慢で差別的施策への提言であり、私たちは断じてこれを認めるわけにはゆきません。
以 上
精神障害者保健福祉手帳の交通割引制度の拡大について
国土交通省から以下の通達がだされました。これまで適用されなかったバスの交通運賃の割引制度が精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者にまで適用範囲が拡大されます。ただし、精神障害者保健福祉手帳そのものの問題は厳然として残されます。
平成24年7月
旅客課
標準運送約款(一般乗合旅客自動車運送事業及び一般貸切旅客自動車運送事業に係るものに限る。)の一部改正について
1.背景
近年の乗合バス・貸切バスをめぐる諸状況を踏まえ、バス事業規制の見直しの方向性などを中心に、今後のバス事業のあり方について検討を行うため、国土交通省において、平成22年12月より「バス事業のあり方検討会」(座長:竹内健蔵東京女子大教授)を開催し、平成24年3月、一般乗合旅客自動車運送事業に係る規制の見直し等を内容とする最終報告が取りまとめられたところである。
また、同年4月に関越自動車道において発生したいわゆる高速ツアーバスの事故を受け、同年6月、国土交通省が「高速ツアーパス等貸切バスの安全規制の強化について」において取りまとめた安全対策の「引き続き検討すべき事項」として、「『新高速乗合パス』の厳格な制度設計と同制度への早期の移行促進」が位置付けられているところである。
今般、同安全対策を踏まえ、当該報告に盛り込まれた施策等を具体化するため、標準運送約款(一般乗合旅客自動車運送事業及び一般貸切旅客自動車運送事業に係るものに限る。) (昭和62年運輸省告示第49号。以下「約款」という。)について所要の改正を行う必要がある。
2.概要
( 1 )管理の受委託制度の見直しに係る取扱い関係(第2条、第6条及び第54条関係)
高速バスの管理の受委託について(平成16年国自総第140号・国自旅第80号・国自整第52号)の改正に伴い、他社の事業用自動車を使用して事業を行うことを可能とすること等を踏まえて、所要の改正を行う。
( 2.)精神障がい者割引関係(第24条関係)
現在は身体障がい者及び知的障がい者のみについて規定されている障害者割引について、平成5年に障害者基本法において身体、知的、精神の3障害同一の考え方で「障害者Jが定義されたことや、平成7年に精神障害者保健福祉手帳の様式が改正され、写真貼付が義務付けられたことにより本人確認が容易となったこと、近年、精神障がい者割引が適用される運行が着実に増加していることなどを踏まえ、身体障がい者及び知的障がい者に関する規定と同様に、精神障がい者割引についての規定を整備する。
( 3 )旅客の都合による運賃及び料金の払戻し関係(第26条関係)
旅客の都合による運賃及び料金の払戻しの際に支払を求める手数料について、現行、約款において収受する額を規定してきたところ、標準旅行業約款(平成16年国土交通省告示第1593号)を参考に以下の額の範囲内で、乗合バス事業者が設定することとする。
3.今後の予定
公布: 平成24年7月31日(火)
施行: 平成24年9月30日(日)