3名の国連特別報告者からノルウエー政府に対する強制入院強制医療から直ちに解放を求める書簡

残念ながらノルウエーは障害者権利条約12条、14条に最後の手段を認めているという解釈宣言をしており、これに対する対応の書簡は否定的な対応で本人も解放されていません。
日本はいずれに対しても解釈宣言も留保もしていません。(山本)
 
恣意的拘禁作業部会、障害者の権利に関する特別報告者、身体的精神的健康の権利に関する特別報告者
                                                                                                                                                                                                                                                                             2017年1月30日
閣下
 私たちは人権理事会の決議33/30,26/20そして33/9に従い、恣意的拘禁の作業部会、障害者の権利の特別報告者、身体的精神的健康の権利の報告者の権限において閣下に申し上げます。
 この件に関し、私たちはA氏がその精神障害を理由として不法な恣意的な自由剥奪をされ、また拷問または他の虐待を構成しうる強制的精神科治療を受けているという申し立てについて、私たちが受け取った情報について、貴国政府の注意を喚起したいと考えております。
私たちの受け取った情報によれば
A氏は47歳のノルエー人の男性であり、2006年以来、精神保健法(法律第62号 1999年7月2日)の条項と適用によって、オスロ大学精神科病棟に自由なインフォームドコンセントなしに数回にわたり収容され、強制的治療を強いられた。2006年に強制入院と強制医療が必要であるという精神保健専門職の判断に基づき、A氏は意志に反し自由なインフォームドコンセントなしに強制入院させられた。A氏によれば、この拘禁期間中に強制的な電気ショック療法を27回受けさせれたとのことである。
2013年4月9日、A氏は、オスロのトラムで「奇妙な行動をしている」と誰かに警察に通報され逮捕され、オスロ大学精神科病棟に2回目も強制的に連れていかれた。入院にも治療にも同意を拒否したにもかかわらず、2人の医師の判断により、強制入院させられた。2013年6月19日の退院にあたりA氏は外来患者への「強制的精神保健ケア」体制の下で強制治療が継続された。この体制下では権限のある医者の予約をしなかったり、強制された体制に従うことを拒否したら強制的な入院患者としての治療に送られるという判断がもたらされることになる。
2015年8月19日A氏はもう一度オスロ大学病院精神科病棟に強制的に収容され、強制的精神科治療を受けさせられた。彼の拘禁中、A氏は抗精神病薬の服薬や静脈注射を強制的にされ、独居拘禁と器具によるあるいは化学的身体拘束を強いられた。A氏はこれらの処置や方法が強い身体的な痛みと苦痛をもたらし主張しており、また同時に深い無力感による永続的な感情的苦痛をもたらしたと主張している。2015年10月13日の釈放後、外来患者への「強制的精神保健ケア」体制が再び彼に命じられた。
A氏はいかなる意味でも地域におけるオルタナティブな支援がかけていたことが、彼の専門的能力の開発、家族や友人との関係の崩壊をもたらすことで、深刻な否定的影響を彼の生活の質に与えたと申し立てている。かれはまた継続的な強制医療によって記憶や集中力が損なわれ、非可逆的な症状と重症の錐体外路系の遅発性ジスキネジア、同時にかなりの体重増加がもたらされたと主張している。
A氏は4回にわたり、外来患者の「強制的精神科医療」の終了を求めて強制的精神科医療に対して異議申し立てをスーパーバイザー委員会に対して法律62号による手続きに基づき、1999年6月2日に行った。2013年10月5日に、最初の上訴をしたが、それは2013年10月15日に却下された。2度目の上訴を2014年1月13日に行ったが、それも2014年1月21日に却下された。そして3度目の上訴は2015年9月8日に却下された。4度目の上訴はまたもや2015年9月13日に却下された。A氏の精神障害にもとづく差別、不法で恣意的な拘禁、虐待と強制医療にさらされたという申し立てに対して、スーパーバイザー委員会は、A氏は「破壊的な病状」にあり、そして彼は「その状態について病識」がかけているという精神医療上の報告書を引き合いに出し、「強制的精神保健ケア」体制は医療上の必要により強制されたと主張した。
スーパーバイザー委員会の決定に不満なので、A氏はオスロ地方裁判所に訴えた。2014年7月2日の判決で、裁判所は彼の訴えを退け、「強制的精神保健ケア」体制を維持した。2014年8月26日にA氏はボーゲイティング控訴裁判所に訴えたが、裁判所はオスロ地方裁判所の判決を支持した。A氏は最高裁に訴えたが、最高裁は2015年2月2日に彼の訴えを退けた。
並行してA氏は郡政府に対しても強制的医療ケアの決定に不服申立てをしたが、それも2014年4月15日に却下された。A氏は郡政府に対して2度目の不服申立てをしたが、それも2015年8月に却下された。
これらの申し立ての正確さについての予見なしで、私たちは国内法の、法62号1999年7月2日の条項に従った、A氏の精神科病院への意志に反した自由なインフォームドコンセントなしの拘禁と長期化している強制医療の執行について重大な懸念を表明します。
非常に嘆かわしいのは、A氏の不法で恣意的な自由の剥奪、法的能力の侵害と意志に反した同意なしの医療実施、電気ショックや器具によるあるいは化学的拘束、精神障害者に対する隔離と独居拘禁の使用といった潜在的に残虐で、非人道的なあるいは品位を汚す処遇あるいは拷問に値しうる事柄に対する真摯な異議申し立てについて適切な国内機関が調査するという適切な行動が何一つ取られていないようだということです。
上記にのべられた様々な事柄は、恣意的に自由を剥奪されない障害者の権利にそして法の前に平等に認められる権利に反していると思われ、とりわけ1972年9月14日にノルウェーが批准した自由権規約9条と14条、1986年7月9日にノルウェーが批准した拷問等禁止条約の条項、にも保障されている、権利に反していると思われます。
ノルウェーが2013年6月3日に批准した障害者の権利条約は、すべての障害者による完全で平等なすべての人権と基本的自由の享受を促進し、保護し確保するさらなるガイダンスを提供しています。条約第5条と相まって14条は、精神科施設への強制的拘禁も含み、障害を理由とした不法なそしてあるいは恣意的な拘禁を禁じている。さらに条約12条は障害者の自律した決定をする権利とそれらの決定が尊重される権利を保障しています。障害者の法的権利への尊重は健康保健の領域、治療に関する決定にも拡大されています。(障害者権利条約一般的意見第1号、パラ41)。それに基づきノルウェーが1972年9月13日に批准している社会権規約12条も自由なインフォームドコンセントを基礎としたとケアの権利を保障しています。到達しうる最高の基準への権利に関する一般的意見14号において、社会権規約委員会は、12条の基準は差別なく誰にも、障害者も含み、同意の条項に関する事柄も含んでいることを確立しました。この立場はさまざまな締約国の総括所見においてさらに支持されました。それらにおいては、健康に関し説明された選択を求める時に適切な自己決定に対する支援へのアクセスを提供される障害者の権利、治療についての自由な同意あるいは拒否する障害者の権利について明白にのべています。
治療同意に関しての法的能力の否定と精神病院の自由の剥奪はこのケースの場合のように、また重大な精神的苦痛や苦しみを個人に与えかねません。したがってこれらは拷問そして他の残虐で非人道的あるいは品位を汚す処遇または刑罰禁止条約の対象になり、そして障害者権利条約15条の対象となります。同様に、抗精神病治療も含む薬物の強制投薬は精神病院の中であれ、あるいは外来患者への強制治療であれ、拷問あるいは他の残虐で非人道的あるいは品位を汚す処遇を構成しうるのです。(A/63/175,パラ63 CRPD/C/DOM/CO/1, パラ27参照)。同様のことは障害者に対しての電気ショック、器具によるあるいは化学的身体拘束の利用、そして隔離と独居拘禁の利用というやり方にも適用できます。(A/HRC/22/53,para. 63; A/66/268, paras. 67-68, 78; CRPD/C/SRB/CO/l; CRPD/C/THA/CO/l 参照) 。
これらの条項は、国家に対してこうした実践を直ちにやめ、障害を理由とした自由の剥奪と強制医療を許している法律と政策を改革し、障害者の表明するニーズにあったそして自律と選択、尊厳とプライバシーを尊重する地域でのサービスに置き換えることを直ちにする義務を国家に求めています。
上記で喚起した人権に関する文書と基準の全文は http://www.ohchr.org に掲載されておりあるいは必要であれば提供できます。
国連人権理事会により与えられた任務のもとで、我々の注意を引いたすべてのケースについて明らかにしようと努力するべき私たちの責任において、私たちは以下の事柄についての貴国の見解を求めたい
1. 上記で述べた申し立てについての追加の情報、そしてあるいは貴国のコメントを提供されたい
2. A氏の精神病院への拘禁と本人の意志に反し自由なインフォームドコンセントなしの医療、同様にA氏が強いられた同様に様々な身体拘束と隔離の法的な根拠についての情報を提供されたい。それらの法的条項がいかにして国際人権の基準に適合しているのかしめされたい。
3. A氏が、彼の精神病院への拘禁の合法性について審査を受ける司法へのアクセスの確保のため、そして虐待と人権侵害に対して適切に不正がただされ賠償を受けられることを確保するためにいかなる方策があるのか説明されたい。
4. 人権侵害状況においてそれを防止し行動するために、障害者が自由を剥奪されあるいは剥奪されかねない場所を訪問する権限をもった、国内の独立した不服申立てと監視機関の存在についての情報を提供されたい。
5. どういう障害者の権利と意志そして選好を尊重した地域の支援サービスと治療のオルタナティブをA氏に提供できるようにしたか説明されたい
6. 治療も含む健康ケアが常に障害者の自由なインフォームドコンセントによって提供されること、精神保健サービスで強制を避け予防することを確保するために法と他の方策の改革がなされてきたかに関して情報を提供されたい。
7. 精神保健に関する選択をする際に求められる意志決定のための支援で障害者に提供できるものは何があるか説明されたい。
回答を待っている一方で、すべての申し立てられた侵害を中止するため、それらの再発を防止するためにあらゆる必要な暫定措置が取られるよう私たちは要請します。また調査の結果が、申し立てが正しいと支持したり、示唆したりする場合には申し立てられた侵害に責任あるいかなる人物の説明責任を確保することを私たちは要請します。
緊急アピールが政府に出されたあと、恣意的拘禁作業部会は部会の通常の手続きすなわち自由の剥奪が恣意的であるか否かの意見を出すためにこのケースを作業部会で対応します。こうしたアピールは純粋に人道的な本質のものであり、恣意的拘禁作業部会のいかなる提出される意見も予見に基づきません。政府には緊急アピールへの対応と通常の手続きへの対応とはべつに対応していただくことを求めます。
このケースに関する国際人権の基準の履行を援助する目的でのこのコミュニケーションについて、参加している特別手続きの特別報告者に対して、協力し開かれた態度を取っていただくことを私たちは貴政府に求めます。そしてそれについては障害者がとりわけ障害者権利条約の求める他のものと平等な人権と基本的自由を十全かつ有効に享受できるよう保障する義務も含まれています。
貴国政府の回答は検討のため国連人権理事会へ報告書に書かれることになります。
閣下におかれては、私たちが慎重に検討することを保障すると受け止められたい
Jose Antonio Guevara Bermudez
恣意的拘禁作業部会副委員長
Catalina Devandas-Aguilar
障害者の権利に関する特別報告者
Dainius Puras
到達しうる最高水準の身体的精神的健康への権利に関する特別報告者
          仮訳 山本眞理 2017年6月6日 太字は訳者による
英文原文は以下
 
 
3名の国連特別報告者からノルウエー政府への手紙です 強制入院強制医療からの即座の釈放を求めています ただしいまだA氏は釈放されていないとのことですが 私たちも精神医療個人通報センターを確立し、こうした事例を積み重ね最終的に精神保健福祉法の撤廃を(山本)

2017年3月28日 国連人権理事会普遍的定期的審査について政府と市民社会の意見交換会 報告 山本眞理

全国「精神病」者集団が出した質問に関してのみ 広い会場でしかもマイクがなかったので、不正確な所あるかもしれませんが、ご容赦を
政府側の回答は赤字です

 

UPRと条約体の審査との違い、そもそも障害者政策委員会と障害者権利条約の国内モニタリング機関の違いについてきちんと理解していなかったので、見当違いなところあったのですが、怪我の功名で厚生労働省交渉できたようなものでした。少なくとも説明は引き出せた。

2番 従わない場合も強制入院はないというのは法的にはないというだけで、現行でも、毎日デイケアに来ないなら強制入院という脅しは日常的ですし、実際通報制度もあるわけでほとんど意味ありません。またそもそも地域の関係者が決めた計画を拒否して、それでも支援してくれる事業所があるとは思えません。

さらに市町村申し立てで後見人をつけられてしまえば、一切本人の意思など問うことなくすべてを進めることすら可能です

そもそも成年後見人制度と強制入院制度の廃止を求めている障害者権利条約批准している日本政府が一体なぜここまで、ますますガラパゴス、その中でも精神障害者知的障害者に対してはほとんど鎖国ということですよね

 

1 障害者権利条約33条の求める国内監視機関については、政府は障害者政策委員会を国内監視機関としているが、パリ原則に基づく国内人権機関も不在のまま、政府からの独立性もなく、また知的障害者・精神障害者団体の代表あるいは個人も構成員の中に存在していない。

内閣府 精神障害者団体と知的障害者団体は参加している、たまたま知的障害者と精神障害者はいないが、家族会は参加している 委員の半数以上が家族会と当事者である

 

2 批准以降、秘密保護法の適性調査に精神疾患を名指しで明記し医師の守秘義務以下維持を迫っていること、知的障害者や精神障害者が対象となっている成年後見人制度について、利用制限や代替方法の開発ではなく、利用促進萌芽成立したこと、さらに精神保健福祉法を改悪し、より強制入院である医療保護入院をしやすくしまた措置入院退院後の監視体制と個人情報の自治体間での共有を終生強制していること。これらは明らかに障害者差別の強化であり障害者権利条約の有効な履行に逆行している

適性調査について回答されましたが、聞こえませんでした
法務省
後見人制度は障害者の利益と保護を目的としており、本人の意志尊重と生活への配慮義務を定めており、条約に違反していない
医療保護入院については現行法は家族の誰もが意思表示できない時に対応できなかったが、そういう時に市町村長が医療保障のために同意できることを明確化した。告知も本人に行いまた任意入院が原則とされているので、条約に違反していない
措置入院制度に警察が介入というが、2つの体制があり、地域の支援協議会については警察が参加するが、個別の調整会議には警察は参加しない、なお支援計画があっても従う義務はないし従わなかったからといって強制入院されるわけではない。可能な限り本人がその作成に参加できるようにする、また計画にも同意を得るよう務めることする。ガイドラインを作る。

 

3 世界に類のない長期かつ大量の精神病院入院患者について、政府は1年以上の長期入院患者の6割が「重度かつ慢性」という個人の属性により長期化しており、退院困難とし、今後の障害福祉計画の国の私信においても残り4割の人を基準に地域支援の数値目標を立てるとしている。これは明らかに障害者権利条約19条および25条に反しているといわざるをえない。何故日本にだけそうした病気のある人が大量に存在するのか、さらに2025年においても10万床内外の長期の療養病床を維持する理由は

厚生労働省 「重度かつ慢性」というのは研究報告を受けて、そしてその方たちに手厚い医療と退院促進を進める
精神障害者に対してもその程度にかかわらず地域包括システムを構築し、平成30年度から医療計画に取り組み、平成32年度には基盤整備などに向け明確化する。治療可能な「重度かつ慢性」の患者さんにも手厚い医療保障する。
10万床を維持するというのではなくて目安目標である

 

4 新規措置入院について、都道府県により極端な人口比での差があるのはなぜか、また本来措置鑑定は2人の精神保健指定医による二重チェックのはずであるが、同時に2人が診察することが向上化している都道府県があるが、これを認めている理由は

厚生労働省 措置のばらつきについては意識している、今後運用についてガイドラインを作る
同時に2人が鑑定することはメリットもあり、患者さんへの負担軽減となる。同時だからといって二重チェックではないとまで言えない。
別々の鑑定であると、その間に時間があく場合があり、その間に病状の変化がある可能性がありそれはデメリット また患者さんへの負担がますというデメリットもある

 

5 措置入院医療保護入院とも増え続けているがその理由は。身体拘束隔離が増え続けているがその理由は。なんと身体拘束の14%が任意入院患者になされているがそれはなぜか、とりわけ北海道では44%が任意入院になされている。

厚生労働省 急性期の患者さんが増えたということも理由と考えられる。630の調査においてその理由がわかるように計画している

 

6 障害者の施設および精神病院、学校での虐待事例が多数報道されているが、未だに障害者虐待防止法の改正が行われていないのはなぜか

厚生労働省 精神保健福祉法によって規定されている。病院管理者への改善要求を家族や患者ができる、定期審査があり改善命令に従わない場合は公開もする。国の実地検証もある

 

追加質問

勧告に今後どう対応していくのか

外務省 勧告には法的に従う義務はない 建設的対話は継続していく

追記
国内人権機関がないということは国連人権勧告の実現がある意味不可能ということ、少なくとも行政は不可能政治的な対応しかない
現状の法案は政府からの独立性ということ全くなし、したがって小さく生んで大きく育てるなどというものではない
以下寺中さんの講演が明確に説明しています
https://www.youtube.com/watch?v=0rnV4Tg8cJk

政府の示した法概要は以下 すでに3月8日の関係課長会議で公表されています

https://www.jngmdp.org/%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E4%BF%9D%E5%81%A5%E7%A6%8F%E7%A5%89%E6%B3%95/3883

第3回国連人権理事会普遍的定期的審査日本政府報告書へのパラレルレポート      

2017年3月29日

Japan National Group of Mentally Disabled People (JNGMDP)

全国「精神病」者集団

World Network of Users and Survivors of Psychiatry (WNUSP)

世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク

 

 

2UPRの審査におけるアルメニアの勧告147-86は未だ日本では履行されていない[1]

 

 

はじめに

  1. 日本は障害者権利条約を2014年に批准したが、批准後も障害者権利条約に違反した法制度や政策がたくさんある。とりわけ精神障害者、認知症のある人、知的障害者は批准に向けた新たな法制度からも取り残されている。

 

障害者権利条約批准後も、多くの法制度と政策が障害者権利条約に違反している

  1. 現在パリ原則に従った政府から独立した障害者権利条約の国内監視機関はない。政府は障害者基本法の障害者政策委員会が障害者権利条約33条の国内監視機関であると説明している。しかしこの委員会は政府から独立していない。内閣府のもとにあり、委員会が管理できる、自らの事務局スタッフもおらず、予算もない。
  2. さらに、条約批准前に障害者基本法が改正されたため、障害者基本法には障害者政策委員会に対して障害者権利条約の国内監視の任務を定める条文はない。政策委員会の主な任務は障害者基本計画の調査と審査およびそれに基づいて政府に勧告することである。そして基本計画の履行状況について監視することがその任務である。したがって委員会は障害者権利条約の国内監視機関ではない。
  3. 成年後見人制度利用促進法の目的は後見人制度の利用者を増やすことであり、政府は後見人制度こそが唯一の精神障害者、知的障害者そして認知症のある人の保護の道具であると認識している。約19万人が今現在成年後見人制度のもとにあるが、政府は、これはあまりに少なく人権擁護のためにはこの数を増やさねばならないと主張している。
  4. 障害者権利条約12条は締約国に成年後見人制度を廃止し、すべての障害者が法の前に平等に認知されることをもとめている。したがって成年後見人制度自体と成年後見人制度利用促進法は障害者権利条約12条に違反している。
  5. 日本はOECD諸国の中で精神病院の病床数および平均在院日数ともに第一位である。約30万人の入院患者が精神病院におり、1年以上の入院患者は約20万人、そして20年以上の入院患者が36000人も存在する。またこの20年間で新規の強制入院は2から3倍に増えており、入院患者の約四割が強制入院患者である。しかし政府は強制入院は医療保障と患者の健康と福利を保障するものと認識しており、精神病院の病床や強制入院そして入院全体を減らしていく有効な政策がない。
  6. 精神保健福祉法改正案が2017年2月28日に国会に上程された。逮捕された人は完全責任能力があるとして2017年2月24日に起訴されたにも関わらず。政府は改正の目的はやまゆり園事件[2]のような犯罪を防止するためであると説明した。
  7. 政府は常に、精神保健福祉法および強制入院の目的は患者自身の利益と説明してきたにも関わらず、精神保健福祉法の改正は精神保健サービスの目的を患者自身の利益から治安へと根本的に変えるものである。
  8. 法案は措置入院患者[3]にのみ「支援計画」を作るという新たな仕組みが含まれている。これは実際にあるあるいはあるとみなされた障害に基づく差別である。自傷他害のおそれのある障害のない人はたくさんいるが、彼らはこうした扱いを受けないしそもそも強制入院自体されない。これは精神障害者に対する差別である。
  9. 退院前に強制入院を命じた地方自治体はケースマネージメント会議をする義務がある。そして当事者をそこに参加させる義務はない。
  10. 私たちはこの過程で時間がかかり、強制入院期間が伸びるのではないかと案じている。そして本人がこの計画を拒否したら、拒否を撤回し同意するまで拘禁され続けるのではと案じている。
  11. 精神保健福祉法案によれば地方自治体は「地域精神障害者支援委員会」を作る義務がある。しかしこの委員会のメンバーは真に支援者ではなく、保健所、病院スタッフ他のサービス提供事業所のスタッフそして警察が入っている。さらに重大なのは精神科医が違法薬物依存症者と固い信念によって犯罪を企てる患者を発見した時は、この委員会のメンバー間では警察も含み患者のセンシティブな個人情報が本人の同意なしに共有されるということである。
  12. それゆえ精神保健専門職は守秘義務を破らなければならなくなる。さらにその個人情報は転居してもなお転居先の自治体に送られ、この情報共有の期間は不定期である。
  13. 法案の監視システムは地域をあたかも精神病院か刑務所に変えてしまう。全日常生活がサービス提供者、精神病院スタッフ、そして警察に監視され管理されるようになってしまう
  14. この監視と管理を嫌う精神障害者は障害年金や生活保護を含むいかなるサービスも医療も拒否せざるをえないこととなり、ホームレスとなったり、放置の中で死んだりしかないことになりかねない。
  15. いかなる支援も支援計画も本人自身の意志と好みによるものでなかればならない。そして医療は当事者の自由なインフォームドコンセントに基づいて提供されなければならない。
  16. そして特に「固い信念」を持って犯罪を企てること自体は未だ犯罪ではないそれゆえ警察は介入すべきではないしできない、だからこそ警察はやまゆり園事件の被告を精神保健体制に送ったのだ。精神保健体制もそうした介入をするなら、精神病院は不定期拘禁センターとなってしまう。精神科医は人の信念を矯正してはならないしできない。もしそうしようとするなら、精神保健体制総体が保安処分となり、私たちは反社会的人格障害とレッテルを貼られた人が精神病院に強制入院させられ不定期拘禁されるのではないかと恐れる。この被告を精神保健体制に送ったことこそが最大の過ちであり、これは精神保健体制の問題ではない。
  17. 障害者権利条約は締約国に、意志に反して障害者を、障害を根拠として拘禁することを禁止するよう求めている、そしていかなるリハビリーテーションも医療も自発的でなければならないと求めている。障害者権利条約はまた障害者に対する非差別を求め、またプライバシーの権利とありのままでいることの権利の尊重を求めている。精神保健福祉法自体が障害者権利条約に反しており、そしてこの法案もまた障害者権利条約違反である
  18. 政府は、2018年から2020年の障害福祉計画のガイドラインを今作っている。しかし政府はここで精神病院の長期入院患者脱施設化を削除し、さらに1年以上の入院患者の6割は「重度かつ慢性」であり、退院も地域生活もできないとして、地域支援の数値目標は4割の長期入院患者のためとして立てるとしている。さらに政府は1年以上の長期入院患者の数は減らしていくが、10%は退院できないとして、2025年の長期入院患者のための病床の数値目標を10万床としている。障害者権利条約19条は誰もが施設で暮らすことを強いられてはならないと宣言しており、したがってガイドラインは障害者権利条約に違反している。

勧告

20. パリ原則に従った国内人権機関あるいは障害者団体の推薦する委員を含んだ障害者権利条約の国内監視機関の創説

21. 民法の成年後見人制度の撤廃と成年後見人制度利用促進法の廃止

22. 精神保健福祉法の撤廃と精神病院に対しての総合的な脱施設計画を作ること

 

[1] 147-86  障害者権利条約の有効な履行を継続すること(アルメニア) 日本政府が受け入れている

[2] 2016年7月26日障害者施設の元職員が障害者施設やまゆり園をおそい、19人の障害者を殺し、26人を傷つけた。2016年2月彼は国会の議長に手紙を送り、そこで彼は攻撃計画を宣言し、障害者は殺されるべきと言った 2016年2月19日から3月2日まで彼は自傷他害のおそれがあると鑑定され精神保健福祉法29条により強制入院させられた。

この襲撃は障害者に対するヘイトクライムである。しかし政府は厚生労働省内に強制入院制度の検討チームを事件後即2016年8月に発足させた。

[3] 自傷他害のおそれによる強制入院

 

付録
国連人権理事会に対して送付した2017年に恣意的拘禁に関する作業部会の日本訪問を要請する手紙
https://wgadcometojapan.jimdo.com/app/download/12847227036/jinkenrijikaiate_onegai.pdf?t=1474169123

UPR original English

 

2016年10月25日 院内集会配布資料 10年間で2倍! 精神科病院で増え続けている隔離・身体拘束について考える

10年間で2倍! 精神科病院で増え続けている隔離・身体拘束について考える
院内集会配布資料を以下からダウンロード
20161025 配布資料 PDFファイル7.82 MB

拷問等禁止条約政府報告書提出に先立っての質問項目

以下が来年5月の政府報告書提出に先立って委員会から、2015年6月15日に出された質問項目です。
これに意見出す機会逃してしまったのですが。身体拘束の増加や強制入院の極端な増加、また起訴前鑑定の増加など、そして精神保健福祉法改悪の動きなどパラレルレポート出さないと。 ただここ非常に保守的で障害者権利条約無視しているところですが、それですら日本の実態は呆れ果てるのは確実。
2013年に拷問等禁止条約委員会には日本から精神障害者団体が初めてロビーイングにということで委員会から熱心に質問を受けました。 いかが先立って出された質問項目のうち精神障害者に関わる所
20 委員会の非自発的入院に関する先の総括所見パラ22にてらして、自由権規約委員会の総括所見のパラ17についての情報を提供されたい。
a)非自発的な処遇と拘禁について、効果的な司法コントロールの確立と同時に効果的な不服申し立てメカニズム確立するためにとられた方策。精神科および社会的ケアの施設を含むすべての自由剥奪の場に適用しうる法的セーフガードについて説明されたい。
b)患者の傷害をもたらす拘束的な手段が過剰に使われた場合についての捜査およびその結果について
c)日本における精神障害者についての地域でのあるいはオルタナティブサービスについて
(山本眞理仮訳)

 

拷問等禁止条約委員会 日本の第二回定期報告に対する最終見解
日本の第二回定期報告に対する最終見解 第55回会期(2013年5月6日から31日)委員会により採択

精神保健ケア
22 精神保健施設に対して運用上の制限を確立している精神保健福祉法にもかかわらず、また締約国代表の提供した追加情報にもかかわらず、委員会は非常に多数の精神障害者と知的障害者が非常に長期間精神保健ケア施設に非自発的に留められていることに懸念を持たざるをえない。非人道的で品位を汚す程度におよびうる行為である、独居拘禁、身体拘束そして強制医療が頻繁に行われていることを、委員会はさらに懸念する。精神保健ケアに関する計画についての対話の間に得られて情報を考慮しても、委員会は精神障害者の入院に対するオルタナティブに焦点を当てたものに欠けていることに懸念を持たざるをえない。最後に、拘束的な方法が過剰に使用されていることへの効果的で公平な調査がしばしば欠けていること、同様に関連する統計的データが欠けていることに懸念を表明する(2,11,13,16条) 委員会は締約国に対して以下を確保するよう要請する
(a) 非自発的治療と収容に対して効果的な法的なコントロールを確立すること、同様に効果な不服申立ての機構を確立すること
(b) 外来と地域でのサービスを開発し収容されている患者数を減らすこと
(c) 精神医療および社会的ケア施設を含む自由の剥奪が行われるすべての場において、効果的な法的なセーフガードが守られること
(d) 効果的な不服申立ての機関へのアクセスを強化すること
(e) 身体拘束と独居拘禁が避けられ、あるいはコントロールのためのすべての代替手段がつきた時に、最後の手段として可能な限り最小限の期間、厳しい医療的監督下でいかなるこうした行為も適切に記録された上で、適用されること
(f) こうした拘束的な方法が過剰に使用され患者を傷つける結果をもたらした場合には、効果的で公平な調査が行われること
(g) 被害者に対して救済と賠償が提供されること
(h) 独立した監視機関がすべての精神医療施設に対して定期的訪問を行うことを確保すること
(精神保健の部分のみ山本眞理仮訳)

 

第6回日本定期報告に関する総括所見

1. 委員会は日本が提出した第6回定期報告(CCPR/C/JPN/6)を2014年7月15日及び16日に開催された第3080回(CCPR/C/SR.3080)及び第3081回会合(CCPR/C/SR.3081)において審査し、2014年7月23日に開催された第3091回及び第3092回会合(CCPR/C/SR.3091、CCPR/C/SR.3092)において以下の総括所見を採択した。
非自発的入院
17. 委員会は、非常に多くの精神障害者が極めて広汎な要件で、そして自らの権利侵害に異議申し立てする有効な救済手段へのアクセスなしに非自発的入院を強いられていること、また代替サービスの欠如により入院が不要に長期化していると報告されていることを懸念する。(7条、及び9条) 締約国は以下の行動をとるべきである。
(a) 精神障害者に対して地域に基盤のあるまたは代替のサービスを増やすこと。
(b) 強制入院が、最後の手段としてのみ必要最小限の期間、本人の受ける害から本人を守りあるいは他害を避けることを目的として必要で均衡が取れる時にのみ行われることを確保すること。
(c) 精神科の施設に対して、虐待を有効に捜査、処罰し、被害者またはその家族に賠償を提供することを目的とする、有効で独立した監視及び報告体制を確保すること

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