= 本人の同意なしの電気ショックをやめろ 学会は電気ショック廃絶決議をあげろ=
<よみがえる電気ショック>
この数年来日本精神神経学会始め各学会で電気ショックを肯定した研究発表が相次いでいる。
また私たち自身電気ショックについて相談を受ける件数が増えている。
電気ショックを体験した仲間たちは口々のその恐怖を語り、そしてそれは精神医療への不信精神病院への恐怖の大きな原因となっている。
しかし問題はこうした心的外傷だけではない、肉体的後遺症に苦しむ仲間も存在する。大きなものは記憶障害である。
数年前の学会でうつ病への電気ショック療法の発表があったときに、電気ショックのインフォームド・コンセントにおいては
「一時的記憶障害がある」と説明していると発表していた医師は回答していた。
しかし電気ショックにおける記憶障害は一時的なものでないことは電気ショック被害者は口々に証言している。
例えばこの総会会場ロビーで販売している『赤い鳥を見たか――ある「殺し屋」の半生』を読んでも分かるように、
この作者飯田博久氏は電気ショックによるさかのぼった記憶障害に苦しみ続けている。記憶を失うことは人生の一部を失うことであり、
その打撃の大きさは計り知れない。あるいは全国「精神病」者集団への手紙である電気ショック被害者はこう述べている。
「私は27年前始めて入院した病院で数回にわたり電気ショックを受けましたが、その前後の記憶がなくなっています。
写真を見てかろうじて記憶をつないでいます。……中略……
電気ショックの後の私はまるで別人のようにだらしなくぼーっとして母が私であるとは認めがたい形相になっていたそうです。
ちなみに私はその時母親が面会に来たことすら記憶にありません。……中略……電気ショックを受けなければ受けないで方策は別にあります。
記憶を失いなくなかったらきっぱり断って下さいお願いします」。
電気ショックのメーカー(ソマティックス)の作った電気ショック宣伝ビデオの中ですら、電気ショックを推進しているマックス・
フィンク(Max Fink)医師は「仮に記憶を失うことがあったとしても入院中の記憶をなくすだけである。
入院中の記憶をなくすことは喜ぶべきことで、いずれにしろ入院期間というのは楽しい記憶ではないのだから、
その記憶をなくすのはむしろ歓迎すべきことだ」と発言している。そして記憶障害が一時的でないのにも関わらず、電気ショックの「効果」
は一時的なものである。
<学会は電気ショックの強制を禁止しろ>
電気ショックの発祥の地イタリアでは、電気ショックに関する利益のみならず不利益そして代替手段も含めた説明を受けた上での、
本人の明白で自由な同意なしの電気ショックの原則的な禁止、子ども高齢者への電気ショックの全面的禁止、
妊婦への原則的な電気ショック禁止が定められた条例がピエモント州で可決された。この条例ではロボトミーも全面的に禁止されている。
こうした電気ショックへの批判があるにもかかわらず、現在日本では精神医療の現場とりわけ精神科救急の現場では、
電気ショックが本人の同意なしにあるいは保護者の同意のみで強制されている。これを正当化する法的倫理的根拠は一切ない。
私たちはこうした電気ショックの強制を断じて認めるわけにはいかない。
直ちに学会は本人の同意なしの電気ショックを禁止する決議をあげるべきだ。
そして電気ショックの廃絶をめざし、学会は電気ショックの是非をめぐる討論をすぐ開始すべきである。
いままでそうした討論が一切されず、電気ショックは野放しとなり私たちに強制されている。
また同意のもとと言っても極めて一方的な説明がされるだけで電気ショックが強制されている。もちろん強制入院中の患者、
獄中の患者に自由な同意の条件があるとは私たちは一切考えない。強制入院中、獄中にいる患者への電気ショックは直ちに禁止されるべきである。
私たちは学会に以下を要請する。
①本人の同意なしの電気ショック強制禁止を決議すること
②強制入院中、獄中の患者への電気ショックを禁止する決議をあげること
③電気ショック廃絶に向け、電気ショックをめぐる議論を開始すること
2000年5月9日
全国「精神病」者集団