学会は移送制度への警官出動要請を撤回しろ

学会は移送制度への警官出動要請を撤回しろ

<警察の協力を要請する精神医療従事者>

 私たちの反対にも関わらず精神保健福祉法は改悪され、強制移送制度が4月から始まった。
この移送制度に対して学会は見逃すことのできない要請を行っている。

 精神保健福祉法見直しに際して設けられた専門委員会において、全国精神保健相談員会会長A氏は以下のように述べている。
「行政権力の発動なので吏員の立会い、付き添い、告知は必ず必要です。また、状況によっては『警察官の協力』は不可欠なため、
法施行前に厚生省は警察庁と消防庁の調整を行いどこかに文言化してほしい。といいますのは『都道府県知事は』となっていても、
警察は県ではないかということがあるのですけれども、全然県知事の方を向いていません。そういうことで、
今までスムーズに警察と連携できていた保健所が、34条の成立で協力してもらえないこと、それは県の仕事だろうということで、
連携がうまくいっているところが実際あるわけですけれども、協力してもらえなくなるのではということを会員は非常に危惧しています。
救急車の所管も市町村などて(ママ)同じ心配をしています。」

 また当学会副理事長M医師も以下述べている。「4番目に、これが特に強調されたことなんですが、
現場では当然職員の身体的危険ということもあるわけで、そういうことに配慮を含めて、その状況に応じて、
この場合は特に警察官との協力体制をきちんとできるよう、もちろん地域での協力体制もさることながら、
本庁でぜひその協力体制をつくるように合意形成をぜひお願いしたい。こういうことがないと現場は恐らく不安で動けない、
あるいは混乱することになると思います。」(議事録より)

 精神医療従事者の見事なまでの本音である。「精神障害者への偏見をなくそう」と言っている人たち自身がもっとも「精神障害者」
を危険だと主張しているのだ。この議事録を読んだ人々はどう考えるだろうか? 「専門家ですら、患者の家を訪ねるのに、
警官付きでなければ身の危険を感じると言っている。やはり精神障害者は危険なのだ」と考えるだろう。

 これほどの裏切りがあろうか? こういう発言をする精神科医を信じろと言われても私たちは一切信じることはできない。
1987年に全国の精神科医は一方的に「困った患者=嫌な患者」と決めつけた仲間を道下アンケートに売り渡した。
この売り渡し行為を自己批判した精神科医は一人もいない。そして今さらに「患者が恐いから警官が来てくれなければ移送制度はできない」
と宣言したのだ。私たち「精神病」者に対しこうした裏切りを重ねて一体どうやって精神医療が成り立つというのか?

<まず害する精神医療> 

 ヒポクラテスの誓いは言う、「まず害すなかれ」。しかし「まず害している」のが精神医療である。A氏の発言にあるように、
すでに警官によって精神病院に連行された経験を持つ仲間は存在する。彼らにとって精神医療とは何であったか。
こうした仲間にとっては精神医療とは医療ではなく「権力による弾圧」である。「誘拐と監禁」でしかない。警官に連行され、
監禁されて精神医療に出会い、どうして精神医療を医療と認識することができようか? この心的外傷の深さをどう癒やすことができるのか?
 一体どうやって精神医療に対する信頼をもてというのか? 

 その上強制的に連れ込まれた精神病院でのいわゆる「精神科救急」は何をしているのか。
そこにあるのは本人の同意なしの電気ショックの強制であり、大量の薬漬けであり、身体拘束である。
長い闘病と養生に立ち向かうにはまず患者が主人公となれる患者自身の力が必要であり、
医療は患者のこの力を強め支えるものでなければならない。
しかしこうした精神科救急による医療への導入では患者は自覚的に養生に立ち向かう力を持つことはできず、無力な受け身の立場に追い込まれ、
その後の養生に決定的な妨害となる。まさに反医療的なことが精神科救急では行われているのだ。

 病苦にあえぐ私たちをまず傷つけることで医療に導入するいまの強制入院制度を私たちは一切認めることはできない。
その上強制移送制度の新設はいままでの強制入院をより強化するものであり、警官出動の全国化は全国各地で今まで以上に傷つけられる「精神病」
者仲間を生み出すものでしかない。

 本来の病苦に加え、警官付きの強制移送、強制入院によって心的外傷による後遺障害を私たちは押しつけられるのだ。
苦痛を加え新たな障害を加えて医療などと言えるのか! これはすでに医療ではなく、まさに「権力による弾圧」である。

 この強制移送制度の対象となる仲間は、おそらくそれまでの精神医療によって痛めつけられ心的外傷に苦しんでいる仲間であり、
それゆえにこそ精神医療を拒否している仲間である。こうした私たち「精神病」
者をさらに再々度傷つけ害する移送制度を私たちは一切認めるわけにはいかない。ましてや警官付きの移送制度は断じて許せない。

 私たち全国「精神病」者集団は日本精神神経学会に対して以下を要請する。

①精神保健福祉法上の強制移送制度の撤廃を国に要請すること

②移送制度に関し警官出動要請を撤回すること
2000年5月9日



コメント

コメントする

コメントを投稿するには、ログイン する必要があります。