自由権規約一般見解35 段落19への手紙

現在自由権規約の9条 人身の自由と安全恣意的拘禁からの自由 についての一般見解が自由権規約の委員会で議論され、草案が示され5月末までに意見募集がされていました

精神障害者を中心に障害者権利条約の専門家が連名で意見を提出しました

関係文書はいかに掲載中です
こちら

以下はこの手紙を邦訳したものです
全国「精神病」者集団も連名しております

下記に署名した組織及び個人の専門家は、一般見解No.35草案の、規約9条のもとで精神保健による拘禁が認められるとしている先に出されている19段落について撤回することを強く求める。我々は人権委員会に、これに代わり障害者権利条約のもとで作り上げられた、精神保健による拘禁と強制医療をいかなる形であれ禁じている新たな基準を採用することを呼びかける。

人権委員会の規約9条に対する一般見解草案19段落は、特に、障害者が他のものとの平等を基礎として人の自由と安全を享受する権利について直接述べている障害者権利条約14条に矛盾する。障害者権利条約は既存の拘束力のない宣言とは異なり、自傷他害を防止するといった追加の因子や根拠があった時も含めて、精神保健を根拠とした拘禁を禁止している。

障害者権利条約委員会の解釈として、14条は、いかなる種類の精神保健施設にも何人も拘禁されないこと、そして精神障害者の拘禁を正当化する法律条項の撤廃を、確保することを締約国の義務としている、となっている。これには自傷他害の危険が潜在的にあるものとしてあるいはケアと治療の必要性のあるものとして精神障害を描く法律条項も含まれる。人身の自由と安全の障害者権利条約14条に加え、障害者権利条約一般見解No.1は自由なインフォームドコンセントなしのあるいは人の意志に反した施設収容は恣意的拘禁であり、法の前での平等な認知を定めた12条違反であるとしている。人の実際にあるあるいはあると推測される精神的能力の欠損あるいは意志決定能力の欠損は、医療について(精神医療も含め)の意思決定できる地位と機能を含む法的能力の否定を正当化できない。最善の利益という判断よりもむしろ本人の意志と選好を基礎とした意志決定への支援が提供されなければならない。障害者権利条約のもとでの一連の最終意見は、すべての保健及び精神保健サービスは当事者の自由なインフォームドコンセントに基づくよう確保することが締約国の義務であると、繰り返し強調している。一般見解NO.1は精神医療の強制を12条のもとでの医療についての決定権侵害であるとともに拷問からの自由の侵害であると位置づけ、その廃絶を要請している。

精神保健による拘禁と強制医療に対する寛容というよりは禁止という新たな基準は、人権委員会が採用した基準が、他のものとの平等を基礎とした自由と安全の享受、そして規約2条と9条のもとでの恣意的拘禁からの自由を精神障害者の権利として保障するには不適切であることを示している。人権委員会は19段落を削除し、代わりに精神保健による拘禁と強制医療は、人身の自由と安全の権利と恣意的拘禁からの自由の権利に対する正当化し得ない侵害であると宣言しなければならない

人権委員会は障害者権利条約委員会とともに、いかなる精神保健施設に誰一人として拘禁されないことそしてすべての精神保健サービスは当事者の自由なインフォームドコンセントにのみ基づくことを確保すべきと締約国に要請するべきである。危機的な状況かも含み常に、精神保健サービスと入院についての同意あるいは同意の撤回のための精神障害者の法的能力は尊重されなければならず、最善の利益ではなくむしろ人の意志と選好に基づいた意思決定支援が提供されなければならない。また障害者権利条約14条の2項に従い、障害者は一般の人に適用されるいかなる形態の拘禁も免除されずそして、そうした拘禁の際に他のものと同様の平等な保障を受ける権利があり、さらに合理的配慮の条項も含む障害者の権利に関する国際法にある最高の基準に従って処遇される権利がある、とすることを望ましいかもしれない。人身の自由と安全の条項についての一般見解草案は、それがこの新しい基準を採用すると宣言するのに理想的な文章であり、それにより、他のものとの平等を基礎として精神障害者は規約のもとのすべての権利を完全に享受し行使することを確保されることになり、すべての締約国はその義務を自覚することになる。

 

以下は問題の段落19

人権委員会 9条一般意見草案19段落

 

19. 締約国は恣意的拘禁を避けるために精神保健分野における時代遅れの法律と履行を撤回すべきである。いかなる自由の剥奪も、自傷を避ける事が問題になっていたりあるいは他害を避けることが問題となっていたりする人を保護する目的のために必要なものであり、不均衡なものであってはならない。それはより制限の少ない代替手段を考慮したものでなければならす、法による適切な手続及び実体のあるセーフガードを伴わなければならない。手続きは患者の視点を尊重することを確保しなければならずまた、また後見にあるいは代理人が本質的に患者の希望と利益を代弁しまた防衛することを確保しなければならない。締約国は収容された人に対して、その拘禁を正当化するとされている目的にあった治療プログラムを提供しなければならない。自由の剥奪はその継続の必要性の観点から適切な期間に再評価されなければならない。患者は、拘禁の際にそしてその後も定期的に、拘禁の合法性の審査も含んで、権利の実現のための有効な救済を求められるよう支援されなければならない。また患者は規約に従った拘禁条件を確保するために救済を求めるために支援されなければならない。



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