本日厚生労働省で以下中身で記者会見しました。7名の記者さん参加でしたが、この中身全く反応なし、そもそも一体なぜ拷問等禁止条約かが伝わらない、池原さんが察していま上程されている精神保健福祉法改悪案に話を振ってようやく反応あり
20130607 記者会見資料
厚生労働省記者クラブにて
全国「精神病」者集団 山本眞理
1 拷問等禁止条約委員会第二回政府報告書審査
国連拷問等禁止条約委員会は日本政府の第二回報告書の審査を行った。日程としては
5月17日 日本のNGOによる委員会へのブリーフィング1時間
10団体が日本から参加、各団体2分説明の後30分間委員から質問
5月21日 委員会から日本政府への質問
5月22日 日本政府から委員会への回答
5月31日、委員会の最終見解発表
1年後これら勧告に対して日本政府はフォローアップして回答することを求められている
3 全国「精神病」者集団は精神障害者の国際組織である世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク(WNUSP)とその参加している国際障害者団体の集まり国際障害同盟(IDA)の連名でパラレルレポートを提出 WNUSP理事のオランダのヨーラン、IDA事務局のヴィック、支援者として池原弁護士、私の4名の最強チームでロビーイングできた
IDAには国内の各障害の全国組織の加盟している国際組織が参加している。加盟組織は以下
障害者インターナショナル (DPI)
ダウン症インターナショナル (DSI)
国際育成会 (II)
国際難聴者連盟(IFHOH)
世界盲連盟(WBU)
世界ろう連盟 (WFD)
世界ろうもう連盟 (WFDB)
世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク(WNUSP)
アラブ障害者組織(AODP) アラブ障害者組織
ヨーロッパ障害フォーラム (EDF)
ラテンアメリカ障害者家族ネットワーク(RIADIS)
太平洋障害フォーラム(PDF)
IDAのジュネーブ事務所の方のコーディネートで積極的にロビーイング活動を行い、委員3名と個別に面会話し込むことができた。個別に会えたのは、Ms.Nora Sveaass(心理学者、拷問等禁止条約委員会の医療保健におけるワーキングチームメンバー)Mr Marino(日本担当の委員)、Mr.Togushi(日本担当の委員)。
こちらから主張したことは、
- 平均在院日数および人口比で病床数の国際的に類を見ない長さ、多さ
11万人が5年以上、20年を超えた入院患者が38000人以上
- 強制入院が新規および在院日数で4割強を占めていること 医療保護入院は増え続けており、20万人近い人が1年間で強制入院させられていること
- これらに対する有効な改善策が取られていないことたとえば精神保健予算の分配が精神病院対地域で97対3であること また精神医療審査会が機能していないこと 強制入院の地域格差の大きさ
- 身体拘束と保護室隔離がそれぞれ約9000人で増え続けていること、しかも期間についてのデータがないが、1年をこす例も珍しくなく長期化していること 歩いて入院した方が入院後たちまち寝たきりになってしまうという身体拘束の高齢者に対する影響
- 病院内の虐待については個人が刑罰を受けることがあるが、それを組織的に予防する法制度がなく、監視体制もないこと
- 強制医療については法的根拠もなく、逆にインフォームドコンセントの法制度もないこと したがって強制医療のデータはないこと
など
パラレルレポートは以下に掲載
全国「精神病」者集団のサイト https://acppd.org/jngmdp-backup/
https://acppd.org/jngmdp-backup/announcement/1738
委員からの反応は、日本政府は政策の優先順位として精神医療体制改善を取り上げないのか、私立病院が多い、一人の医師だけで強制入院を決めるのか、入り口の審査はないのか、などなど、レセプションの立ち話では「貴国政府は全く理解できない」という嘆きも聞かれました。17日のブリーフィングでは30分の委員からの質問が私たちに集中しました。
22日には日本政府回答の最後の方にせし問題が取り上げられたのに対し、「残念だ、こんな重要な問題を最後のほうで時間が足りない」という発言もありました。政府は最後には厚生労働省担当者が来ていないのでこれ以上答えられません、という対応でした。
2 最終見解の精神についての部分
すでに第1回日本政府の報告書に対して、1パラグラフ、精神医療について触れた部分はあるが、ここまで全面的に日本の精神医療体制を批判し、勧告を出したのは初めて。
主な中身は以下
- 強制入院に法的コントロールを、有効な不服申立てメカニズムを
- 地域サービスの充実で入院患者を減らすこと
- 身体拘束や保護室への隔離を減らすこと、期間も最小とすること
- 身体拘束や保護室隔離などの行動制限による被害者に対して救済と賠償を
- 独立した監視機関による精神病院の定期的監視を
強制入院の法的コントロールについては第一回目にも出されている中身であるが、他は殆ど私達のパラレルレポートを反映した勧告です。精神に関する部分の抄訳は以下
拷問等禁止条約委員会 日本の第二回定期報告に対する最終見解
拷問等禁止条約委員会
日本の第二回定期報告に対する最終見解
第55回会期(2013年5月6日から31日)委員会により採択
精神保健ケア
22 精神保健施設に対して運用上の制限を確立している精神保健福祉法にもかかわらず、また締約国代表の提供した追加情報にもかかわらず、委員会は非常に多数の精神障害者と知的障害者が非常に長期間精神保健ケア施設に非自発的に留められていることに懸念を持たざるをえない。非人道的で品位を汚す程度におよびうる行為である、独居拘禁、身体拘束そして強制医療が頻繁に行われていることを、委員会はさらに懸念する。精神保健ケアに関する計画についての対話の間に得られて情報を考慮しても、委員会は精神障害者の入院に対するオルタナティブに焦点を当てたものに欠けていることに懸念を持たざるをえない。最後に、拘束的な方法が過剰に使用されていることへの効果的で公平な調査がしばしば欠けていること、同様に関連する統計的データが欠けていることに懸念を表明する(2,11,13,16条)
委員会は締約国に対して以下を確保するよう要請する
(a) 非自発的治療と収容に対して効果的な法的なコントロールを確立すること、同様に効果な不服申立ての機構を確立すること
(b) 外来と地域でのサービスを開発し収容されている患者数を減らすこと
(c) 精神医療および社会的ケア施設を含む自由の剥奪が行われるすべての場において、効果的な法的なセーフガードが守られること
(d) 効果的な不服申立ての機関へのアクセスを強化すること
(e) 身体拘束と独居拘禁が避けられ、あるいはコントロールのためのすべての代替手段がつきた時に、最後の手段として可能な限り最小限の期間、厳しい医療的監督下でいかなるこうした行為も適切に記録された上で、適用されること
(f) こうした拘束的な方法が過剰に使用され患者を傷つける結果をもたらした場合には、効果的で公平な調査が行われること
(g) 被害者に対して救済と賠償が提供されること
(h) 独立した監視機関がすべての精神医療施設に対して定期的訪問を行うことを確保すること
原文は以下 (精神保健の部分のみ山本眞理仮訳)
http://www2.ohchr.org/english/bodies/cat/cats50.htm
(訳注)
拷問等禁止条約より抜粋
第二条
1.締約国は、自国の管轄の下にある領域内において拷問に当たる行為が行われることを防止するため、立法上、行政上、司法上その他の効果的な措置をとる。
2.戦争状態、戦争の脅威、内政の不安定又は他の公の緊急事態であるかどうかにかかわらず、いかなる例外的な事態も拷問を正当化する根拠として援用することはできない。
3.上司又は公の機関による命令は、拷問を正当化する根拠として援用することはできない。
第十一条
締約国は、拷問が発生することを無くすため、尋問に係る規則、指示、方法及び慣行並びに自国の管轄の下にある領域内で逮捕され、抑留され又は拘禁される者の身体の拘束及び取扱いに係る措置についての体系的な検討を維持する。
第十三条
締約国は、自国の管轄の下にある領域内で拷問を受けたと主張する者が自国の権限のある当局に申立てを行い迅速かつ公平な検討を求める権利を有することを確保する。申立てを行った者及び証人をその申立て又は証拠の提供の結果生ずるあらゆる不当な取扱い又は脅迫から保護することを確保するための措置がとられるものとする
第十六条
1.締約国は、自国の管轄の下にある領域内において、第一条に定める拷問には至らない他の行為であって、残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に当たり、かつ、公務員その他の公的資格で行動する者により又はその扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行われるものを防止することを約束する。特に、第十条から第十三条までに規定する義務については、これらの規定中「拷問」を「他の形態の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰」と読み替えた上で適用する。
2.この条約は、残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を禁止し又は犯罪人引渡し若しくは追放に関連する他の国際文書又は国内法令に影響を及ぼすものではない。
全国「精神病」者集団
担当 山本眞理