「骨格提言」実現の前に立ちはだかる安倍政権の社会保障解体政策

厚生労働省の方針以前にそれを規定する予算を決める財務の方針
ご参考までに、ぜひご一読を
本日の10・30大フォーラム学習会資料以下


◆「骨格提言」実現の前に立ちはだかる安倍政権の社会保障解体政策

 ここでは、厚生労働省関係の動きを抑えた上で、財務省の主計局の方針、それ
を受けた財政制度等審議会の「財政健全化計画等に関する建議」を見ていくこと
にします。
 そして、この「財政健全化計画等に関する建議」は、内閣府の「経済財政諮問
会議」に提出され、「骨太の方針」として閣議決定されていくものと思われま
す。6月の中旬には、この閣議決定が出されるでしょう。

 社会保障解体ともいえるこの動きに対して、どのように私たちが闘うか、この
ことをぜひ議論していただきたいと思います。私が思いつくのは、以下のような
ことです。
 声明などで、広くこの危機を訴え、ともに闘う体制を作ること。
 集団的戦争法案に反対する闘いが展開されていますが、そうした人たちにも、
社会保障分野の実質改憲問題として、訴えていくこと。
 そして、実際の闘いをどのように作るか、これが大事ですよね。この点につい
ては、社会保障審議会の障害者部会の動きも抑えつつ、行動を考えていくことか
と思います。

★「障害者総合支援法」施行3年後の見直しに向けた厚労省関係の動き

●4月20日、’障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキン
ググループ’の報告書が出される

 以下に、この報告書の中で、私が最も気になる部分を引用します。

-------------
「○障害福祉サービス等の財源の確保を含めた制度の持続可能性についてどう考
えるか。
<検討の視点(例)>
・国の財政健全化との関係
・目指すべき障害福祉サービス等の在り方・サービスの効率化・重点化
・サービスの費用対効果等の精査や質の向上の取組
-----------------

 この部分は、4月8日に行われたワーキンググループでは、以下のように記載
されていました。
---------------
・国の財政健全化との関係・サービスの効率化・重点化
・サービスの費用対効果等の精査や質の向上の取組
-----------------

 厚労省の本音は、この4月8日の文章だったと思います。
 これに対して、山下委員から「めざすべき障害者福祉の方向性というところ
を、どこか審議していただきたい。1つは制度の持続可能性の冒頭のところに入
れてということです」という指摘があり、付け加えられたものと思います。

 「サービスの効率化・重点化」とは、政府の社会保障切り捨ての常套句です。
 また、「国の財政健全化との関係」も、社会保障を切り捨てるときに持ち出さ
れる論理ですよね。企業の法人税は減税する癖に、何をいるんだと思いますが。
人の生活やいのちよりも、大企業のほうが大事なのでしょう。

 ほかにも気になる部分をいくつか紹介します。

----------------
 どのような人が「常時介護を要する障害者」であると考えられるか
---------------

 これは、後で示す財務省の資料にも出てきますので、注意を要します。

--------------
○「常時介護を要する障害者」のニーズのうち、現行のサービスでは何が不足し
ており、どのように対応すべきか。
<検討の視点(例)>
・対象者の範囲、支援内容(通勤、通学支援等)、支援時間、提供方法等・入院
中の障害者に対する支援
・現行のサービスの見直しでの対応の可否
・ボランティア等地域のインフォーマルサービスの位置づけ」
----------------

 この部分だけ読むと、「ボランティア等地域のインフォーマルサービス」を
言っているのは、様々なニーズに対応できないこともあるので、こうした手助け
も使うべき、と言った内容に読めますよね。これを後で示す財務省の資料で読む
と、「インフォーマルなサービス」で公的保証を置き換える、正確に言えば公的
保証を切り捨てる、と読めてきますので、ご記憶ください。

---------------
○同じ事業の利用者であっても、障害の状態等により支援内容に違いがあること
についてどう考えるか。
<検討の視点(例)>
・支援の重点化
・見守りや待機の評価」
---------------

 これは、「常時介護を要する障害者等に対する支援について」について書いて
いるのです。
 「重度訪問介護」の見守りをなくされる危険性、「重度訪問介護」や「生活介
護」が受けられない人を作り出す可能性があります。これも、財務省の資料を読
んで、改めて感じていることなのですが。

--------------
○障害福祉サービスの利用者が介護保険サービスへ移行する際の利用者負担につ
いて、どう考えるか。
<検討の視点(例)>
・低所得者の負担への配慮・一般の高齢者等との公平性
--------------

 あくまで厚労省は、応益負担を課そうとしています。しかし、後の財務省の資
料を読むと、介護保険自身が1割や2割の利用者負担にはとどまらない、とんで
もない状況にされようとしていることが判ります。


●社会保障審議会・障害者部会の動き

・4月28日開催
 ここに今後のスケジュール案が厚労省より示された。
-----------
資料5
障害者総合支援法の施行後3年を目途とした見直しに係る今後の障害者部会のス
ケジュール(案)

4月28日(本日)3年後見直しに係るフリートーキング
5月末~6月中旬関係団体ヒアリング(4回程度)
7月~11月個別論点について議論(月2回程度)
11月~12月目途とりまとめ(予定)
-----------

・5月29日から団体ヒアリング
 この日の資料の中で、ヒアリングの予定が示されました。
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団体ヒアリングのスケジュール(予定)

第62回(ヒアリング①):5月29日(金)9:30~12:30
・一般財団法人全日本ろうあ連盟
・一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
・社会福祉法人全国盲ろう者協会
・全国手をつなぐ育成会連合会
・公益社団法人日本看護協会
・公益社団法人日本精神科病院協会
・全国社会就労センター協議会
・全国就労移行支援事業所連絡協議会
・特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク
・きょうされん

第63回(ヒアリング②):6月2日(火)15:00~18:00
・社会福祉法人日本身体障害者団体連合会
・一般社団法人日本筋ジストロフィー協会
・公益社団法人全国脊髄損傷者連合会
・一般社団法人日本ALS協会
・公益財団法人日本知的障害者福祉協会
・全国身体障害者施設協議会
・特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク
・特定非営利活動法人日本相談支援専門員協会
・障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会
・特定非営利活動法人DPI日本会議
・全国自立生活センター協議会

第64回(ヒアリング③):6月9日(火)15:00~18:00
・社会福祉法人日本盲人会連合
・特定非営利活動法人日本失語症協議会
・特定非営利活動法人日本脳外傷友の会
・一般社団法人日本難病・疾病団体協議会
・特定非営利活動法人難病のこども支援全国ネットワーク
・公益社団法人日本医師会
・公益社団法人全国精神保健福祉会連合会
・公益社団法人日本精神保健福祉士協会
・特定非営利活動法人全国精神障害者地域生活支援協議会
・一般社団法人日本精神保健福祉事業連合
・全国精神障害者社会福祉事業者ネットワーク
・一般社団法人日本精神科看護協会
・全国「精神病」者集団

第65回(ヒアリング④):6月15日(月)9:30~12:30
・一般社団法人日本自閉症協会
・一般社団法人日本発達障害ネットワーク
・一般社団法人全国児童発達支援協議会
・社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会
・公益社団法人日本重症心身障害福祉協会
・全国重症心身障害日中活動支援協議会
・一般社団法人全国肢体不自由児者父母の会連合会
・全国肢体不自由児施設運営協議会
・全国知事会
・全国市長会
・全国町村会
--------------


★財務省の動き

・4月27日、財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会に、主計局が「社会
保障」と題する資料を提出。社会保障・福祉の解体方針を示します。

・6月1日、財政制度等審議会の「財政健全化計画等に関する建議」(以下、
「建議」)を発表。麻生大臣あて。
 同日に行われた内閣府の’経済財政諮問会議’に「建議」の外洋を麻生大臣が提出。

 社会保障の論じ方としては、医療、介護保険、年金を最初に論じているのです
が、ここでは、介護保険、障碍者、生活保護といった順番で記します。
 以下では、「建議」、その「概要」、主計局が、社会保障関係でどのような表
現を行っているか、みていきます。
 また、私流にまとめた内容を「まとめ」とし、「建議」、「概要」、主計局の
意見の順に記します。

●介護保険について

「まとめ」
・要介護1や2の人も、介護保険の直接の給付対象から外して、「地域支援事
業」に移す。
・「地域支援事業」の対象となった人は、介護、福祉用具、住宅改修などを自費
で購入し、一部を自治体が補助する仕組みとする。
・ 要介護3以上の人については、マイナンバー制度を使って預貯金を調べ、利
用料2割負担の対象者を増やせ、としています。また、所得に応じた負担の上限
を見直すことも提起しています。

「建議」
------------
ハ)次期介護保険制度改革29における軽度者に対する介護保険給付の見直し
我が国の介護保険は幅広く要支援者・要介護者を対象としており、軽度者(要支
援・要介護1・要介護2相当)に対する給付が約4割を占めているが、公的な介
護保険制度のある主要な国であるドイツ・韓国においては、保険給付の対象は中
重度者(要介護3~要介護5相当)である。今後の制度の持続可能性や保険料等
の負担を考えると、大きなリスクに対応するとの基本的考え方に沿って、質を確
保しつつ、給付範囲を重点化していく必要がある。

 まず、軽度者に対する掃除・調理などの生活援助サービスや、福祉用具貸与等
は、日常生活で通常負担するサービス・物品であり、また、原則1割負担の下で
単価が高止まりしている可能性がある。公的保険給付の重点化、競争を通じた
サービスの効率化と質の向上を促す観点から、原則自己負担(一部補助)の仕組
みに切り替えるべきである。
 また、軽度者に対する通所介護等のその他のサービスについては、提供されて
いるサービスの内容に鑑み、人員や設備基準の規制を緩和して地方公共団体の裁
量を拡大しつつ、地方公共団体の予算の範囲内で実施する枠組み(地域支援事
業)に移行すべきである。これにより、地域のニーズに応じて、メリハリのある
介護サービスが提供されるようになるとのメリットがある。
・・・ 

29 第7期介護保険事業計画(平成30年度~平成32年度)において対応できるよ
う、平成28年中を目途に結論を得る必要がある。
-----------------

「概要」
-----------
・生活援助サービス及び福祉用具貸与等の原則自己負担化、通所介護等の地域支
援事業への移行等(サービス単価の抑制)

・診療報酬本体・介護報酬のマイナス改定

介護保険制度の2割負担対象者の対象拡大及び月額上限の見直し、金融ストック
も勘案した負担能力判定の仕組みの導入
----------------

主計局
----------------
軽度者に対する生活援助は、日常生活で通常負担する費用であり、原則自己負担
(一部補助)の仕組みに切り替える必要。また、2015(H27)年度から地域支援
事業へ移行した予防給付(訪問介護・通所介護)についても同様の観点からの見
直しを行う必要。これらにより、事業者間の価格競争の促進と、サービスの効率
化、産業の発展が図られる効果も期待できる。

○ 軽度者の福祉用具使用は日常生活で通常負担する費用と考えられ、また、軽度
者の利用割合の高い住宅改修は個人の資産形成そのものであり、原則として自己
負担(一部補助)する制度に切り替える必要があるのではないか。
  なお、福祉用具の貸与等については、価格設定は自由競争に委ねられている
が、利用者負担が原則1割となっている中では、利用者の価格考慮のインセン
ティブが低いため、競争原理が機能せず、価格が高止まりしている可能性。
原則自己負担(一部補助)の仕組みに見直すことにより、価格競争を促す効果も
期待できる。

○ 軽度者に対するその他の給付(例:通所介護)については、地域の実情に応じ
たサービスを効率的に提供する観点か
ら、柔軟な人員・設備基準として自治体の裁量を拡大し、自治体の予算の範囲内
で実施する枠組み(地域支援事業)へ移行すべき。その際には、メニューの統合
等により、簡素で分かりやすい体系とすべき。
・・・・・

○ 一定の所得以上の者については、2015(H27)年8月から利用者負担が1割か
ら2割に引き上げられる (あわせて現役
並み所得の者に係る利用者負担限度額(高額介護サービス費)も引き上げられ
る) が、医療保険制度と同様、2割負担の対象者の拡大、利用者負担限度額の
在り方等の見直しが必要ではないか。
○ その際には、マイナンバーも活用しつつ、預貯金等の金融資産も勘案して負担
能力を判断する仕組みに移行する必要。
----------------


●障害福祉

「まとめ」
・「家事援助」の利用の8割は「軽度の障害者」なので、介護保険に沿った改定を。
・「障害支援区分」の新たな判定式により、重度の判定が多くなって財政を圧迫
するので、見直すべし。
・作業所などの「就労支援」事業についても、「障害支援区分」で対象者を限定
する。
・「障害支援区分」に即した利用限度額の導入
・NPOなどによる制度に基づかないサービスを推進。

「建議」
------------
(3)障害福祉
障害福祉については、今後もサービス需要の伸びが見込まれる中で、真に支援を
必要とする者に必要な支援を確実に行き届かせるとともに、サービス提供を効率
的なものとすることにより、制度の持続可能性を確保していくことが重要である。
平成28年においては、障害福祉サービスの在り方等について、障害者総合支援法
の施行後3年を目途とした見直しを行うこととされている。
この見直しに当たっては、不合理な地域差の改善など執行面における適正化に加
え、地域の実情に応じ効率的にサービスを提供する仕組みの活用など障害者の自
立や就労を支援するための効率的なサービス提供の在り方、障害支援区分の導入
対象サービスの拡大など必要となる支援の度合いに応じたサービス提供の在り
方、制度を支える財源・利用者負担の在り方等について幅広く検討を行い、制度
の持続可能性の確保を図るべきである。
-------------

 「概要」には、障害福祉のことは出てきません。

主計局
-----------
○ 2016(H28)年においては、障害福祉サービスの在り方等について、障害者総
合支援法の施行後3年を目途とした見直しを行うこととされている。この見直し
に当たっては、
   ① 自立や就労を支援するための効率的なサービス提供の在り方② 必要な支援
の度合いに応じたサービス提供の在り方③ 制度を支える財源・利用者負担の在り方
 等について、例えば次項以降に掲げる観点から幅広く検討を行い、必要な見直
しを図るべきではないか。
・・・・・・

○ 新たな判定式が導入された障害支援区分の判定結果を見ると、従来と比べ、全
体としてより上位の(重度の)区分にシフトしており、総費用額の増大につな
がっていると考えられる。また、2次判定における上位区分への変更においても
依然として大きな地域差が生じている。このため、新たな判定式の検証を行うと
ともに、不合理な地域差の改善を図るべきではないか。

○ 本来の趣旨に則ったサービス利用という観点から、例えば、「短期入所
(ショートステイ)」について、1ヶ月間利用している者が事業所ベースで一定
数見られることから、その要因分析やその結果に基づく制度改正等が必要ではな
いか。また、「生活介護」について、サービス利用者の「常時介護の必要性」の
検証やその結果に基づく制度改正等が必要ではないか。

○ 今後も、介護者の高齢化等により、障害福祉サービス等の需要は伸びると考え
られるため、真に支援を必要とする障害者に対し必要な支援を行き届かせる観点
から、以下を検討すべきではないか。

① 居宅介護のうち「家事援助」(掃除や調理・配膳等)について、介護保険にお
ける「訪問介護」に係る議論等も踏まえつつ、必要性に応じた給付の在り方の見
直し (軽度の障害者の「家事援助」の利用割合は8割超)

 ② 障害者の地域生活を推進するため、インフォーマルサービス(制度等に基づ
かない形でNPO等により提供されるサービス)の利用等を進めつつ、一部の
サービスについて地域の実情に応じ効率的にサービスを提供する枠組み(地域生
活支援事業)の活用

③ 支援を必要とする度合に応じてサービスが提供される仕組みへの見直し (就
労支援のサービスやグループホームなど、障害支援区分の認定が必要ないか、支
援区分が「非該当」であっても利用が可能なサービスの見直しや、障害支援区分
等に応じた利用限度額の導入等)

 ④ 通所サービス利用者に対する食費負担軽減措置の見直し(自立支援法施行時
に経過的に導入。通所サービスを利用しない障害者(施設入所者を除く)や、介
護・医療の通所・通院では食費補助はない)を含む利用者負担の在り方の見直し

○ 制度創設以降9年が経過し、これまで主にサービス量の拡充が図られてきた
が、今後はサービスの質の向上も重要。例えば、都道府県等による事業所等に対
する実地指導について、実施率が低いことから、全事業所等に対する実地指導を
徹底するべきではないか。
  (注)厚生労働省は、施設は2年に1度、その他のサービス事業所は3年に1
度、実地指導を行うよう自治体に対し通知している。
------------------


●生活保護

「まとめ」
・「保護受給の更新期の設定や、正当な理由なく就労しない場合の保護費の削減」
・「医療費の一部自己負担」
 生活扶助の更なる引き下げも検討せよ、としています。そこには、健康で文化
的かどうかなどの観点は0です。

「建議」
------------
(2)生活保護
生活保護については、平成27年度予算編成過程において、住宅扶助基準や冬季加
算について、各地域の家賃実態や一般低所得世帯の光熱費支出額等を踏まえて一
定の適正化が講じられたところである。しかしながら、足元の受給者数は、雇用
環境が大幅に改善しているにもかかわらず、依然として歴史的に極めて高い水準
で高止まっており、引き続き、最低限度の生活保障や自立の助長といった制度趣
旨を踏まえた見直しを行っていく必要がある。このため、生活保護制度全般につ
いて予断なく検討し、次期生活扶助基準の検証(平成29年度)までに必要な見直
しを行うべきである。
受給者の自立の助長を促進するため、これまでも累次の就労支援策が講じられて
きたが、雇用環境の改善にもかかわらず、就労可能な受給者が多い「その他の世
帯」の保護廃止は進んでいない。このため、受給者の就労を通じた保護脱却を一
層進める観点から、保護受給の更新期の設定や、正当な理由なく就労しない場合
の保護費の削減などの仕組みの導入について、検討を行うべきである。また、地
方公共団体ごとの保護率等の動向について随時公表し、改革の取組を進めるよう
促すべきである。

医療扶助費は、生活保護費全体の約5割を占めており、持続可能な生活保護制度
の運営のためには、その適正化が不可欠である。これまでも後発医薬品の使用の
原則化などの取組を行っているが、更なる適正化を進める観点から、頻回受診の
是正の強化を図るとともに、一般の保険医療制度において、特許切れ医薬品につ
いて保険給付額を後発医薬品の価格に基づいて設定する制度や、外来受診時定額
負担が導入される場合には、その見直しの趣旨を踏まえて、後発医薬品に基づく
医療扶助基準の設定や、医療費の一部自己負担の導入等の医療扶助制度の見直し
について検討を行い、必要な措置を確実に講じるべきである。

受給者の自立の助長及び生活保護制度に対する国民の信頼の確保の観点からは、
次期生活扶助基準の検証にあたって、被保護世帯と世帯構成が類似する一般低所
得世帯との均衡を踏まえつつ、最低限度の生活保障としての扶助基準の在り方に
ついて予断なく検討し、整理することが重要である。具体的には、一般低所得世
帯の消費実態について、世帯構成や年齢、居住地域等に応じてきめ細かく分析・
検証し、例えば、最低賃金水準との関係を踏まえた就労可能世帯の保護水準や、
年金受給者との均衡を踏まえた高齢者世帯の保護の在り方、教育費等や他制度に
よる給付等を踏まえた有子世帯の保護の在り方等について、検討を行うべきである。
------------

「概要」
----------
○保護脱却の推進、医療扶助費の適正化、最低限度の生活保障としてのきめ細か
い扶助基準の在り方等を検討する。 
--------------

主計局
---------
○ 足下の経済雇用環境は大きく改善しているにもかかわらず、「その他の世帯」
の保護廃止割合はむしろ低下してい
る。
○ 保護廃止世帯のうち、労働収入の増加による生活保護からの脱却は4割程度に
とどまっており、就労を通じた保護
脱却を一層進める観点から、保護受給の更新期の設定や、正当な理由なく就労し
ない場合の保護費の削減などの更なる取組みが必要ではないか。

○ 生活保護受給者は、1人当たり医療費が国民健康保険・後期高齢者医療の被保
険者と比べて約6割程度高い。また、国
民健康保険等と比べて受診回数が多い傾向にあり、不要な医療扶助が生じている
可能性がある。

○ 医療扶助の適正化を一層進めるため、医療保険制度における改革とあわせて、
後発医薬品に基づく医療扶助基準の
設定や、医療費の一部自己負担の導入等の更なる制度の見直しが必要ではないか。

○ 次期生活扶助基準の検討(2017(H29)年度)にあたっては、被保護世帯と世
帯構成が類似する一般低所得世帯との均衡を踏まえつつ、最低限度の生活保障と
しての扶助基準の在り方について整理する必要。
○ 具体的には、一般低所得世帯の消費実態について、世帯構成や年齢、居住地域
等に応じてきめ細かく分析・検証
し、最低賃金水準との関係を踏まえた就労可能世帯の保護水準や、年金受給者と
の均衡を踏まえた高齢者世帯の保護の在り方などについて検討を行うべき。

○ 「夫婦子1人」の被保護世帯の扶助基準について、世帯構成が類似する一般世
帯の消費実態と比較すると、地方都市(例:宇都宮市)の場合では収入階層でみ
て第5・十分位、東京都区部では第7・十分位の高い収入階層と同水準の消費生
活を保障している。
(出典)総務省「全国消費実態調査」(H21年)

○ 「母子世帯(子2人)」の被保護世帯の扶助基準について、世帯構成が類似す
る一般世帯の消費実態と比較すると、地方都市(例:宇都宮市)の場合では収入
階層でみて第7・十分位、東京都区部では第9・十分位の高い収入階層と同水準
の消費生活を保障している。
-----------------

●医療
(ここからは、「概要」から引用し、簡略化します)

・「(国民皆保険を維持するための公的保険給付範囲の見直し)」
 「建議」の中には、次のような記述もあります。
 「この公的保険給付の範囲の重点化は、保険給付額を抑制して制度の持続性に
貢献すると同時に、公的保険から外れた市場を産業として伸ばしていくことによ
り、経済成長とも整合的であり、社会保障の雇用・成長市場としての側面を損な
わずに社会保障改革を進めることができるメリットがある。」
 結局は、’国民皆保険制度’を破壊することになります。

「・後発医薬品使用割合目標の29年度内80%への引上げ、30年度から後発医薬品
がある先発医薬品の保険給付額を後発医薬品価格までとする制度への移行」

「・市販品類似薬の公的保険からの除外、かかりつけ医の推進等も踏まえた受診
時定額負担等の導入」

「(サービス単価の抑制)
・薬価調査に基づく薬価のマイナス改定分は診療報酬本体の財源としない
・診療報酬本体・介護報酬のマイナス改定、調剤報酬の適正化」

「(年齢や就業先に関わらない負担能力に応じた公平な負担)
・高額療養費制度の見直し、75歳以上の医療費定率負担の原則2割負担化
・・・
・前期高齢者医療費納付金と介護納付金の総報酬割への移行等」

「(医療の効率化等)
・病床の機能分化
・医療費の不合理な地域差解消に向けた枠組み強化
・データに基づく外来医療費の地域差解消の枠組み構築、ICT等を活用した医療
の無駄排除、予防の推進に向けた枠組み強化」

 医療とかかわって、主計局の文章でも「建議」でも、項目だけで中身が書かれ
ていない不気味な見出しがあります。
 「ロ)リスクの大きさやQOL(Quality of Life)/ADL(Activities of
Life(日常生活動作))等への影響度に応じた保険給付範囲の見直し」
 QOLやADLが出てきているところを考えると、3月18日に取り上げられた「社
会保障改革しか道はない(総合研究開発機構報告書)との関係であろうと推測し
ます。この報告書には、「終末期医療」として、そのような言葉が出てきてお
り、報告書の立場として、「尊厳死」推進の方向をもっています。しかし、その
観点を保険給付にまで拡大することまでは述べてはいないと思います。やはり、
財務省としての立場なのでしょうね。
 ところで、この報告書では、精神科病院の長期入院が問題点として取り上げら
れているのですが、財務省はこれを全く取り上げていません。

●年金
 「マクロ経済スライドによる調整が極力先送りされないような見直しや支給開
始年齢の更なる引上げ等」

●子育て
 「○更なるサービス充実の要請に応えるための、事業主負担の拡大」

●歳出削減は何が狙いか

  財務省は2020年までに、国歌財政の政策経費について、借金に頼らずに
立てられるようにすることを目的として、上述のような社会保障の切り捨てを提
案しています。この切り捨てにより、高齢者人口の伸びの範囲に社会保障予算を
抑え込み、GDPが毎年3%増加すると、その目的が達成されるとしています。最
近は、毎年1%程度の成長率なのですが。
 マイナンバー制度そのものが危険な制度だということはもちろんですが、財務
省は、社会保障の利用料徴収に使うことは言いますが、金融取引の分離課税方式
を辞めて所得税との総合課税に用いるとは言いません。
 歴代の政府は、「超高齢化」の危機をアジリながら消費税の値上げをしてきま
した。でもそれと歩調を合わせて、法人税や高額所得者の所得税を減らしてきま
した。それほどゆとりがあるとしか思えませんが。今年度も、「所得税法等の一
部を改正する法律」で、法人税の減税を決めました(これまでの25.5%から
今年度は23.9%に)。
 医療費の削減についても、精神科病院の「社会的入院」の解消などということ
は決して言いません。
 ジェネリック医薬品についても、医薬品業界を統制して、添加剤も含めたすべ
ての成分を同じものにすることなどは行いません。
 こうした、業界やお金持ちの人たちは、財務省の身内だから、そんなことはし
ないのでしょう。
 こうした人々が気にしているのは、次のような「建議」の記述からよく判りま
す。「PB赤字半減目標について、当審議会は、我が国財政に対する市場の信認や
国際的な評価を失うことのないよう、PB黒字化目標に向けた試金石としてその確
実な達成を求めてきた。」PBとは、プライマリー・バランスのことで、政策経費
が借金なしで賄えているかどうか、ということです。


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財政制度等審議会 財政制度分科会名簿

吉川 洋 東京大学大学院経済学研究科教授[財政制度分科会長代理]
○ 田近 栄治 成城大学経済学部特任教授[委  員]
秋山 咲恵 (株)サキコーポレーション代表取締役社長
碓井 光明 明治大学大学院法務研究科教授
遠藤 典子 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授

大宮 英明 三菱重工業(株)取締役会長
倉重 篤郎 (株)毎日新聞社専門編集委員(論説室)
黒川 行治 慶應義塾大学商学部教授
古賀 伸明 日本労働組合総連合会会長
角  和夫 阪急電鉄(株)代表取締役会長
竹中 ナミ (社福)プロップ・ステーション理事長
田中 弥生 (独)大学評価・学位授与機構教授、日本NPO学会会長
○ 土居 丈朗 慶應義塾大学経済学部教授
○ 富田 俊基 中央大学法学部教授
中空 麻奈 BNPパリバ証券(株)投資調査本部長
永易 克典 (株)三菱東京UFJ銀行取締役会長[臨時委員]
赤井 伸郎 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授
板垣 信幸 日本放送協会解説主幹
井堀 利宏 政策研究大学院大学教授
老川 祥一 読売新聞グループ本社取締役最高顧問・主筆代理
岡本 圀衞 日本生命保険相互会社代表取締役会長
葛西 敬之 東海旅客鉄道(株)代表取締役名誉会長
加藤 久和 明治大学政治経済学部教授
○ 小林 毅 (株)産経新聞執行役員東京編集局長
佐藤 主光 一橋大学国際・公共政策大学院教授
末澤 豪謙 SMBC日興証券(株)金融経済調査部部長金融財政アナリスト
十河ひろ美 (株)ハースト婦人画報社ヴァンサンカン&リシェス編集部編集長
高原 豪久 ユニ・チャーム(株)代表取締役社長執行役員
武田 洋子 (株)三菱総合研究所チーフエコノミスト
冨山 和彦 (株)経営共創基盤代表取締役CEO
鳥原 光憲 東京ガス(株)相談役
南場 智子 (株)ディー・エヌ・エー取締役ファウンダー
増田 寛也 東京大学公共政策大学院客員教授
宮武 剛 目白大学大学院生涯福祉研究科客員教授(

注1)上記は五十音順。
(注2)○は起草委員。
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経済財政諮問会議議員名簿

議長 安倍 晋三   内閣総理大臣
議員 麻生 太郎   副総理 兼 財務大臣
同   菅  義偉   内閣官房長官
同  甘利  明    内閣府特命担当大臣(経済財政政策) 兼 経済再生担当大臣
同  高市 早苗   総務大臣
同  宮沢 洋一   経済産業大臣
同  黒田 東彦   日本銀行総裁
同  伊藤 元重   東京大学大学院経済学研究科教授
同  榊原 定征   東レ株式会社 取締役会長
同  高橋  進    日本総合研究所理事長
同  新浪 剛史   サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長


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