2015年2月4日障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ(第5回)

障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ(第5回)に向けて以下意見書を提出しました
この関連サイトは以下
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai.html?tid=234694

参加した桐原の発言も議事録掲載されています

障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理

 

全国「精神病」者集団

 

はじめに

日本が批准した障害者権利条約は、障害を理由とした強制入院、そして制限行為能力で

ある後見人制度の廃止を締約国に求めています。 誰もが自立生活地域生活を保障されるために、精神病院収容のみに偏向してきた精神障

害者に対する施策を根本的に変え地域生活基盤の充実を図ることがもっとも重要な論点で す。以下、障害福祉サービスの在り方等に関して要望事項を列挙します。

 

 

1.移動支援

○移動支援は、個別給付とし介護給付などの義務的経費にしてください。

○現在、入院中の人は移動支援の利用ができません。長期入院している精神障害者は、退 院に向けて外出、外泊をすることがあり、移動支援の活用などが効果的です。入院中の精 神障害者の退院支援等のために移動支援の利用を可能とするよう医療の関係所轄と調整し てください。

 

 

2.精神障害者の介護

○現在、精神障害者は重度訪問介護の利用が可能となりましたが、行動障害 10 点以上に限 定されており、利用できる人はごく少数に限られるものと想定されます。事実、2012 年現 在で介護を利用している精神障害者は全体の 1%に満たず、行動援護を利用している精神障 害者は全国で 35 人であるとのデータがあります。重度訪問介護のニーズは、行動障害のあ る人に限られるものではなく、行動障害がない人でも必要としている人がいます。そのた め、重度訪問介護の利用に際しては、追加の条件を加えることをしないでください。

○現在、介護人材の不足等の理由により多くの居宅介護事業所では、利用者に対して利用 する曜日と時間を決めて機械的にサービス提供をおこなっています。一方精神障害は、障 害の状態が非連続的で不安定な障害です。その日の体調が悪いと、ヘルパーを自宅に入れ ることさえできないことがあります。そのため、こうした曜日と時間を決めた機械的なサ ービス提供では、ニーズを充足することができない場合が多々あります。また、前日にヘ ルパー利用のキャンセルの連絡を入れたとしても、たまたまキャンセルが続くと、事業所 から利用の休止を要求されることがあります。気兼ねなく利用できるように待機を給付の 対象とし、キャンセルの場合でも給付を使えるようにしてください。

○将来的には、移動、家事援助、身体介護という分類をなくし、重度訪問介護を発展させ て骨格提言が示すところの個別生活支援(パーソナルアシスタント)にすることを求めま す。

 

 

 

○重度訪問介護従業者研修は、短時間で重度訪問介護の従事者としての資格を認めるもの

です。この制度は、介護職員初任者研修と比べると人員確保の観点から非常に便利である といえます。ただ、研修自体は常時開催されているわけではないため、人材が見つかって もすぐに利用できるとは限らないという現状があります。パーソナルアシスタントの場合 は、研修を免除して従業者になれるよう特別な措置を講じてください。

 

 

3.介護保険との関係

○第 7 条の他の法令による給付との調整については、「介護保険法規定による介護給付」の 部分を削除してください。

 

 

4.グループホーム

○グループホームは、基本的に施設であり、障害者権利条約 19 条に違反するとの考えに立 ちます。一方、地域の介護体制がない現在では、事実上やむを得ないとする考え方も示さ れているようですが、そうした考えを仮に認めたとしても、原則個室で 20 人を定員とした ものを前提とし、大規模住居等を給付の対象としないでください。

○報酬改定の検討作業において敷地内グループホームの議論がありましたが、敷地内グル ープホームの新設をしないでください。

○「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」には、病棟転 換型居住系施設の規定があり、基本的にグループホームへの転換が可能であると読むこと ができます。上記 2 点は、病棟を転換してグループホームにした場合、結果として郊外の 病院跡地で大規模収容が可能なグループホームができることになります。そして、グルー プホームは、地域生活・インクルーシブ社会とかけ離れたものになります。こうした問題 を引き起こさない為にも上記 2 点の検討をしてください。

 

 

5.ショートステイ

○ショートステイは、入院予防に際して重要な効果があり、事業所が増えるよう報酬体系 と設置基準を見直してください。

 

 

6.意思決定支援

○成年後見制度の利用促進は、障害者権利条約 12 条に違反します。成年後見制度は、行為 能力の制限をかすものであり、法的能力の平等(権利能力と行為能力を含む)に背くもの です。障害者総合支援法では、成年後見制度を支援の代わりに使うのではなく、重度訪問 介護の拡充などにより、障害者が身近な介護者とのかかわりの中で意思決定をしていける ようにするなどの方法が採用されるべきです。

○相談支援の枠に新たに意思決定支援が規定されましたが、基本相談の中の理念にとどめ、 今度は、居宅介護、重度訪問介護など、あらゆるサービスにかかわる従事者の基本的な理

 

 

 

念に据えるように改正してください。

○障害者(特に精神科病院に長期入院中の人)には、権利の主張をサポートするアドボケ イト(パーソナルオンブスパーソンを含む)が不可欠です。アドボケイトは、あらゆる機 関から独立しており、障害者の擁護ができる者でなければなりません。そういう意味では、 障害者団体がアドボケイトの育成、派遣などをできるように制度の新設をしてください。

 

 

7.精神障害者の支援①――退院促進・精神科病床削減

○地域相談(地域移行支援・地域定着支援)の実務を担う相談支援専門員は、長期入院の 精神障害者が退院する場所として多くがグループホームを想定している事実があります。 しかし、退院に際しては、むしろグループホームが退院の阻害要因になっている実態があ ります。例えば、相談支援専門員は、グループホームに退院させるものとマインドセット されているため、グループホームが足りないために退院が進まないという言説を生産し、 グループホームが足りない以上退院支援は必然的に進まないかのように責任を転嫁し、可 能な地域相談をしていないことが挙げられます。このように、しばしばマインドセットの 問題は実務を規定していきます。そのため、地域相談については、アパート退院を基本と することを法律・政省令等に明文化してください。

○自立生活センター等が実践してきた自立生活体験室、自立生活プログラムの活用などの 方法で取り入れてください。

○精神病院入院患者は自立支援医療費の対象外ということもあり健康保険を使っても 3 割 自己負担と医療費が高く、障害年金や生活保護の収入だけではほとんど手元にお金が残り ません。すると、退院に向けたアパート探しや日中活動の場の見学などの交通費すらない ような状態になります。退院に向けた活動費(ヘルパーおよび本人の交通費、外泊・外出 の際の手当など)の支弁をできるようにしてください。

 

 

8.精神障害者の支援②――アドボケイトを制度的に保障すること

○骨格提言には、パーソナルオンブズパーソン制度にかかわる提言があります。精神障害 者は、地域生活においても、退院に向けても、とりわけ強制入院の最中においても、医療 福祉から独立したオンブズパーソンが必要です。また、当該制度の運用は、障害者団体に よって行なわれることが望ましいです。パーソナルオンブズパーソン制度を含むアドボケ イトを制度的に保障してください。

 

 

9.精神障害者の支援③――精神保健福祉法

○障害者総合支援法第 1 条は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり(中略)精神保健 及び精神障害者福祉に関する法律(中略)その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と 相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人として(中略)・・・目的とする、 とあり、障害者基本法との関係と精神保健福祉法との関係を規定しています。さて、障害

 

 

 

者政策委員会では、病棟転換型居住系施設に対する反対意見が多くの委員から寄せられま

した。このことは障害者基本法の理念に則っても問題があったことを示しています。精神 保健福祉法は、4の事項でも述べたとおりの問題を引き起こし、精神障害者の地域生活を 施策により解消することを放棄して、国策により長期収容されたその場で死ぬまで待つこ とを迫るものです。私達は病棟転換型居住系施設に反対します。

○精神医療審査会は、外交場面において Mental health coat と説明されています。最高裁 判所への上告ができない裁判所とは、いわゆる特別裁判所であり、日本国憲法第 76 条第 2 項によって設置を禁止されている機関です。私達は、精神医療審査会を充実させることで 非自発的入院の濫用防止や人権侵害の抑制に一定の効果があるという立場をとりません。 そもそも非自発的入院の濫用や人権侵害は、精神保健福祉法に規定された入退院手続およ び行動制限の基準そのものの帰結であると認識します。精神保健福祉法は医療部分を将来 的に一般医療の枠へ編入し、福祉部分を残すなり別の法律の編入するなどして、精神障害 者に対する特別な強制的手続規定の廃止を目指してください。



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