全国「精神病」者集団ヒアリング意見書 検討会2016年2月25日
1 精神保健福祉法下における精神障害者の実情と私たちの基本的な考え方について
精神保健福祉法による入退院問題の当事者は精神障害者です。当事者とは特定の問題の効果の帰属主体のことであり、精神保健福祉法の手続きに基づき入院したり、退院したりする問題の当事者は、精神 障害者を除いて他にいません。今この時間も精神科病院内には、長期入院者を始めとする極めて不遇な 扱いを受けている精神障害者が数多くいます。これらの問題は精神保健福祉法の帰結です。精神科病院 のお世辞にも雰囲気がいいとはいえない文化は、閉鎖的環境の中で構築されたものです。そして精神科 病院の閉鎖性は精神障害者だけを対象とした分離政策を背景にして構築されたものです。私たちは、精神障害者を分離する精神保健福祉法が撤廃され、一般医療の枠内で権利保障に基づくものに改編されて いくことを望みます。
2 障害者権利条約と障害者基本法について
○精神保健福祉法の目的条項において他の障害者施策と同様に障害者基本法の理念に基づくこと、ある いは障害者権利条約の趣旨を踏まえることを明文化してください。
○附帯決議に基づき障害者権利条約を踏まえるべく、検討会において同条約が要請している事柄を逐条列記的に確認する場面をもってください。
・医療保護入院及び措置入院は、精神障害者であることを要件として医療行為を受ける本人の同意に基づかない非自発的入院を規定しており、障害者権利条約第 12 条に違反する。
・医療保護入院及び措置入院は、精神障害者であることを要件として本人の同意に基づかない非自発的入院により、人身の自由を奪うため、障害者権利条約第 14 条に違反する。
・医療保護入院及び措置入院は、精神障害者であることを要件として説明と同意に基づかない非自発的 入院をするため、障害者権利条約第 25 条に違反する。
○本検討会には、精神障害当事者の委員が 2 名しかいません。これでは多勢に無勢なので今後当事者委 員を増やしていくとともに、現行の当事者委員には表決の拒否権を与えるなど何らかの工夫を要すると 考えます。
3 医療保護入院の問題と長期入院の問題について
○医療保護入院の対象者は、緊急に医療が必要な精神障害者に対する措置入院と精神障害者本人の同意 (積極的に拒んでいない状態を含む)による任意入院との中間の層であると考えられるが、そもそも立 法事実として、そのような精神障害者が存在しているのかが不明といわなければなりません。
○医療保護入院の要件の 1 つは医療及び保護とされているが、医療の必要性はなく保護の必要性だけで 入院させることが権利の観点から問題が認められます。
○現行の「家族等の同意」は、改正前の医療保護入院よりも広範囲の人に代諾を認めるものであるため、 こうした制度は改められる必要があります。
○長期入院患者の問題は、出口を作るための地域移行だけでは、入口から新たな入院者が入っていくだ けになってしまうため、入口である非自発的入院の縮小が求められます。
○地域医療計画等による非自発的入院・隔離・身体拘束の段階的削減、もしくは、病床の段階的削減の 資料4 ための行政計画(数値目標、見直し時期を含む)を導入してください。
○非自発的入院や行動制限の濫用、精神医療審査会の恣意的審査を防止するため罰則・規制強化・制裁 を検討してください。
4 精神科病院に係る入院中の処遇、退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明について
○平成 27 年度障害者総合福祉推進事業「入院に係る精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するモデル事業」では、“アドボケーター”は入院者に対して情報提供してはならないものとされています。しか し、情報はエンパワメントにもっとも不可欠なものとされており、当該モデル事業の示す“精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援”は、権利の擁護に資さない内容となっています。当該モデル事業を 参考にするのではなく、入院者の実質的な権利擁護を担える仕組みについて調査・集積して制度にして ください。(例 地方弁護士会が独自に取り組んでいる当番弁護士制度、ピアランクライシスセンター、 スエーデンのパーソナルオンブート、オランダのファミリーグループカンファレンス、アジアでの精
神 障害当事者よる地域支援活動など)
○障害者権利条約策定過程における意思決定支援(supported )とは、障害者権利条約第 12 条第 3 項の 法的能力の行使に向けた支援のことであり、法的能力の不平等である医療保護入院等の制度を廃止した 上で設計される制度のことを意味していました。意思決定支援を標榜する場合は、最低でも医療保護入院が廃止されている必要があります。
○精神医療審査会は、医者は医者を裁かないという慣習に貫かれており実質的に機能していません。障 害者虐待防止法など精神保健から独立した機関による救済の道を開いていく必要があります。
5 処遇について
○措置入院の要件である他害行為の基準から名誉毀損・侮辱を削除してください。
○携帯電話の精神病院病棟内での利用を原則認められるようにしてください。
○精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づき厚生大臣が定める処遇の基準から以下の極めて問題のあ る個所を早急に削除してください。 ・信書に関する事項「患者の病状から判断して、家族等からの信書が患者の治療効果を妨げることが考 えられる場合には、あらかじめ家族等と十分連絡を保って信書を差し控えさせ、あるいは主治医あて に発信させ患者の病状をみて当該主治医から患者に連絡させる等の方法に努めるものとする」
・患者の隔離に関する事項「急性精神運動興奮等のため、不穏、多動、爆発性などが目立ち、一般の精 神病室では医療又は保護を図ることが著しく困難な場合」
・身体的拘束に関する事項「多動又は不穏が顕著である場合」
・任意入院者の開放処遇の制限に関する事項「他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、 その言動が患者の病状、経過の経過や予後に悪く影響する場合」「当該任意入院者の病状からみて、開放処遇を継続することが困難な場合」
6 その他
入院中の保険外の自己負担として、タオル代、パジャマ代、小遣い銭管理料など、月額数万円に及ぶ 請求をする精神科病院があるため公費で出せるようにしてください。
この間の精神保健福祉法見直しへの取り組み報告
厚生労働省 社会・援護局
障害保健福祉部精神障害保健課長 殿
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正における
障害者の権利に関する条約との関係に関する質問書
2016年1月13日
全国「精神病」者集団
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法)は、附則に基づき今年度改正されることとされています。
精神保健福祉法の当事者は、精神障害者です。当事者とは特定の問題の効果の帰属主体のことであり、精神保健福祉法の手続きに基づき入院したり、退院したりする問題の当事者は、精神障害者をおいて他におりません。加えて、精神障害者としての主張をできる――精神障害者という集合アイデンティティを一人称として発言できる――のは、第一に精神障害者の団体であるはずです。貴省におかれましては、当事者である精神障害者の意見を聴く必要性を十分に認識していただきたく思っております。
2013年6月、衆参両議院厚生労働委員会において「精神障害のある人の保健・医療・福祉施策は、他の者との平等を基礎とする障害者の権利に関する条約の理念に基づき、これを具現化する方向で講ぜられること」を含む精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正に関する法律案に対する付帯決議が可決されました。
当会としては、障害者権利条約の策定過程に関わった精神障害の当事者団体として、私たち障害者の主張の集大成である障害者権利条約を政策における一次的な規範として踏まえられることを望みます。また、日本は障害者権利条約の締約国であるため政府(厚生労働省を含む)としても障害者権利条約を遵守し、履行するという前提があると考えます。
当会としては、厚生労働省が障害者権利条約をどのように理解しているのか、そして、精神保健福祉法を改正するにあたって障害者権利条約を踏まえたものにする意志はあるのか、といったことが大きな関心となっています。そこで、次の質問について回答をしていただきたくお願い申し上げます。
1 障害者権利条約を踏まえることについて
設置が予定されている精神保健福祉法改正のための検討会・ワーキンググループでは、障害者権利条約を踏まえるべく障害者権利条約が各国の精神衛生法規に対して一般的に要請している事項を確認する予定はあるのでしょうか。厚生労働省としての認識をお示しください。
2 障害者権利条約第14条 身体の自由及び安全
医療保護入院と障害者権利条約第14条の関係、任意入院と障害者権利条約第14条の関係、措置入院と障害者権利条約第14条の関係について、それぞれどのように認識されているのかをお示しください。
3 障害者権利条約第12条 法の前の平等
障害者権利条約第12条と任意入院の関係、障害者権利条約第12条と医療保護入院の関係、障害者権利条約第12条と措置入院の関係について、それぞれどのように認識されているのかをお示しください。
また、付帯決議の意思決定の支援とは、障害者権利条約第12条第3項の法的能力の行使に当たって必要な支援であるべきと考えておりますが、どのように認識されているのかをお示しください。
4 障害当事者の政策参画
精神保健福祉法改正過程は、付帯決議に基づき障害者権利条約の理念を具現化する方向で講ずるのであれば、障害者権利条約前文(o)及び障害者権利条約第4条第3項に基づき精神障害者を代表する団体から推薦を受けた障害当事者が精神保健福祉法改正のための検討会・ワーキンググループに構成員として複数名入っていてしかるべきと考えるが厚生労働省としては、どのように認識されているのかお示しください。
厚生労働省交渉メモ
日時:2016年1月13日(水)14時~15時15分
場所:厚生労働省8階
出席者:前川(企画法令係長) 桐原・関口(運営委員)
要約
桐原:障害当事者の政策参画について
前川:いろいろな団体からの申し入れがあって選別に苦慮したが当事者の参画は必要だと思っている。
桐原:強制的な入院をどのように認識しているか。
前川:措置入院、自傷他害、医療保護入院、医療及び保護の必要性。医療保護入院と違って措置入院は厳格な運用なので措置は存置することになると思う。
関口:改正の目的は
前川:施行の状況を見て、3年をみて課題を洗い出して、改善すべき点を改善する。
関口:日本は全世界の病床の20%をもっている。入院期間も長い。改正が改善につながっていない。どうするつもりか。変えたいと思っているのか。
前川:状況は認識しており、変えたいとは思っている。
関口:他の障害者関連法規の多くは目的条項が改正されている。基本法の理念という文言がある。精神保健福祉法はどうするのか。
前川:目的は、保健、医療、福祉という分け方をしている。
桐原:後日、回答ということでお願いします。
関口:金子試案は法務省の矯正とかをやっていた医師によるもの。開始点から治安的であり、無前提で医者に権限を与える。性善説にたっている。
前川:精神保健福祉法の趣旨と運用がかけ離れていると理解した。
関口:措置入院は自傷他害+精神障害の存在があること、精神障害のある人だけ対象とされる。措置入院は、緊急の必要性ということを政府が説明した。その意味では、医療保護入院は不要であると考えている。どう考えるのか。
前川:・・・・・
関口:総合支援法は自律を前提としているが、精神保健福祉法は自律を前提としないため、現実場面ではバッティングが起こってしまう。
前川:精神医療審査会を機能させる方法を考えていきたい。
桐原:条約を踏襲するのか
前川:事務局から明示的に要請していることを出す予定はない。
桐原:示して欲しい。
前川:検討する。
桐原:14条について
前川:恣意的に自由を奪われないこと。医療の中で身体拘束など適切な運用がなされるべきであることと理解している。
桐原:障害を理由とした拘束、強制入院は禁止する趣旨である。少なくとも、医療保護入院は廃止すべきと考えている。
桐原:12条について
前川:意思決定支援に関係する部分。意思決定支援、誰かほかの人がするのか。設けるのか、設けないのか、それは別としても、本人の意思を尊重するのが理念。
桐原:障害者権利条約の趣旨についてまとめたものをこちらで作成する。
その上で条約を明示的に確認する作業を課長・課長補佐と検討していただき、2月25日、10時 検討会のヒアリング、その前にもう一度、回答を兼ねた意見交換の場と、今回の件についての回答の場をもってほしい。
厚生労働省 社会・援護局
障害保健福祉部精神障害保健課長 殿
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正における
障害者の権利に関する条約との関係に関する質問書
2016年2月8日
全国「精神病」者集団
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法)は、附則に基づき今年度改正されることとされています。
精神保健福祉法の当事者は、精神障害者です。当事者とは特定の問題の効果の帰属主体のことであり、精神保健福祉法の手続きに基づき入院したり、退院したりする問題の当事者は、精神障害者をおいて他におりません。加えて、精神障害者としての主張をできる――精神障害者という集合アイデンティティを一人称として発言できる――のは、第一に精神障害者の団体であるはずです。貴省におかれましては、当事者である精神障害者の意見を聴く必要性を十分に認識していただきたく思っております。
そこで、次の質問について回答をしていただきたくお願い申し上げます。
1 障害者権利条約を踏まえることについて(再)
2016年1月13日にご相談にうかがった際に、「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において衆参両院附帯決議に基づき障害者権利条約を踏まえるべく障害者権利条約が精神衛生法規に対して一般的に要請している事項を列記的に示し確認することを検討していただけるとのことでしたが、それは課長に報告したのか、結果として列記的に示すことは決まったのかどうか、お答えください。
2 目的条項に障害者基本法を加えることについて
2016年1月13日にご相談にうかがった際に、精神保健福祉法の第1条において、他の障害者施策と同様に障害者基本法の理念に基づくことを明文すべきという意見に対して、保健、医療、福祉など多岐にわたることを理由に難しいとの説明がございましたが、そもそも、障害者基本法は保健、医療、福祉を網羅しているため、目的条項と相矛盾しないと考えますが、その後、課内において目的条項の改正についてが、どのような運びとなったのかをお答えください。
3 なぜ、法施行後、新規医療保護入院数は約4万人減ったのか、お答えください。
4 新規医療保護入院数が減少したのに入院者数それ自体に大きな変化はないということは、医療保護入院ではなくなった精神障害者のその後の入院形態はどうなったのでしょうか。
5 前項は突然にして医療及び保護の必要性のある精神障害者が減ったということなのか、お答えください。
6 携帯電話の持ち込み一律禁止の精神科病院は、一律に行動制限しているということか。
7 家族以外の面会を一律禁止している精神科病院は、一律に行動制限をしているということか。
8 平成27年度障害者総合福祉推進事業「入院に係る精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するモデル事業」(沼津中央病院)においては、アドボケーターとしてのピアサポーターには入院中の精神障害者に対して制度などの情報を提供してはいけない、病院スタッフが共有可能な記録を付けなければならないという状況の下でモデル事業を実施したというのは事実であるか、また、それがピアサポートとして妥当とお考えであるかお答えください。
9 精神保健福祉法改正過程は、付帯決議に基づき障害者権利条約の理念を具現化する方向で講ずるのであれば、障害者権利条約前文(o)及び障害者権利条約第4条第3項に基づき精神障害者を代表する団体から推薦を受けた障害当事者が精神保健福祉法改正のための検討会・ワーキンググループに構成員として障害者が相当数入っていてしかるべきと考えるが、これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会の委員が2名という数についての認識と今後の障害当事者の参画の目標値についてお示しください。
10 全国大行動において十分に回答されなかった点についてお答えください。
① 以下は即座に行われるべきこと
- 病棟転換居住系施設の即座廃止
- 非自発的入院・隔離・身体拘束の段階的削減、もしくは、病床の段階的削減のための行政計画(数値目標、見直し時期を含む)の導入
- 措置入院の要件である他害行為の基準から名誉毀損・侮辱を削除すること
- 携帯電話の精神病院病棟内での利用を原則認めること。
- 同様に精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づき厚生大臣が定める処遇の基準
第2 通信・面会について2 信書に関する事項(1)患者の病状から判断して、家族等からの信書が患者の治療効果を妨げることが考えられる場合には、あらかじめ家族等と十分連絡を保って信書を差し控えさせ、あるいは主治医あてに発信させ患者の病状をみて当該主治医から患者に連絡させる等の方法に努めるものとする。
の即時廃止。
- 処遇に関する大臣基準から身体拘束の要件である「極度の不穏もしくは多動」を削除すること。
- 精神保健福祉法(審判の請求)第51条の11の2および(後見等を行う者の推薦
等)第51条の11の3の廃止
- 心神喪失抗弁を前提とした不定期拘禁や地域監視体制である医療観察法の即時廃止 とりわけ鑑定のための人身の自由剥奪の即座廃止
- 入院中の保険外の自己負担をともなくものの強制の廃止タオルやパジャマなどの押し付け 小遣い銭管理料など 月額数万円に及びところもある 必要なら介助が公費で負担されるよう制度化すること
② 障害者権利条約の履行に向け、障害を理由とした強制入院、同意のない医療、身体拘束や隔離の廃絶に向け複数の精神障害者団体の参画を得た検討の場を設けること
検討項目には以下を含めること
- オルタナティブ研究
例 ピアランクライシスセンター、パーソナルオンブート、ファミリーグループカンファレンス、インド プネの他アジアでの精神障害者自身よる地域支援活動などなど
- 身体拘束について
トラウマインフォームドアプローチ デエスカレーション
テクニック精神科救急マニュアルでも紹介されている 救急学会邦訳 及び救急学会のガイドライン参照などなど
- 実態把握
@隔離身体拘束について(身体拘束の14%は任意入院である)
それぞれの期間分布 年齢 病名 病棟機能別分布 理由分布とのクロス
措置から医療保護に変わった例の実数
措置入院の期間分布及び医療保護入院変更後の期間分布
@OECDの求めている統計
精神医療の質に関して、国で収集されている指標はほとんどなく、日本は精神医療に関する OECD 医療の質指標で収集しているいずれの指標(入院患者の自殺、退院後の自殺、統合失調症又は双極性障害による再入院、統合失調症又は双極性障害を有する患者の超過死亡率)についても報告できていない。
@強制入院の個別事例の研究、なぜ強制が選択されたのか
都道府県別の措置入院のばらつきの要因分析など
@強制医療の実態把握 代理人家族等の同意によるものも含む
これについては一切統計がない
- 精神障害者団体市民団体によるによる権利擁護事業、とりわけ強制入院からの救援活動
厚生労働省交渉報告
2016年2月18日、10時30分から厚生労働省の前川企画法令係長と交渉しました。
関口明彦と桐原尚之、支援者1名で参加しました。
・検討会において障害者権利条約の要請を列記的に確認する作業をどこかに入れることについては、検討中とのことで具体的な方針は示されませんでした。
・障害者基本法を目的条項に入れさせる件に関しては、政府として理念条項を提案することが難しいとのことでした。
・医療保護入院届出件数の4万人減は、政策の影響であってニーズ変動とは考えていないとのことではあったが、その内訳についてはデータがないため詳細不明とのことでした。おそらくは、4万人の市町村同意が4万人程度ではないかと思われるが、市町村同意の件数がわからない、とのことで、そのため、今後は市町村から件数の照会を求めて、推計を出すなどしようと考えているとのことでした。
・行動制限については、実態を見ないで一律に制限することを想定していないとのことでした。たとえば、家族以外一律面会禁止としている場合は、病院のルールということではなく、精神保健福祉法上の行動制限に該当するため、診療録への記載義務も生じるとのことでした。病者集団側は、指導をしていくことになるが指導にあたって実情が浮かび上がってこないという課題があることと、繰り返し改善されない病院や都道府県がある事を指摘しました。厚生労働省は、指導を無視して現状が改善されないということはあってはならないことなので、より強い指導をしていくつもりだ、と回答しました。
・携帯電話の持ち込み禁止は、一律禁止ということを想定していないので、行動制限にあたるとのことでした。すなわち、カルテに制限の理由を記載する義務が生じるとのことでした。
・沼津中央病院のモデル事業については、委託したもので現在担当が産休中で確認できないためわからなかったのだが、このようなことがあるというように思っていないのだがどこからの情報か、と逆に質問がきたため、出典を明示し事実関係について具体的に伝えました。
前回の交渉で約束した障害者権利条約と精神保健福祉法に関する論点を提出しました。
障害者権利条約と精神保健法規の関係について(論点整理)
――医療保護入院を中心に――
○精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法)の医療保護入院は、精神障害者であることを要件として医療行為を受ける本人の同意に基づかない非自発的入院を規定しており、障害者権利条約第12条の趣旨に反する。
○医療保護入院は、精神障害者であることを要件として本人の同意に基づかない非自発的入院により、人身の自由を奪うため、障害者権利条約第14条の趣旨に反する。
○医療保護入院は、精神障害者であることを要件として本人の同意に基づかない医学的侵襲をするため、障害者権利条約第15条の趣旨に反する。
○医療保護入院は、精神障害者であることを要件として説明と同意に基づかない非自発的入院をするため、障害者権利条約第25条の趣旨に反する。
障害者権利条約第1回日本政府報告(日本語仮訳)へのパブコメ募集に対する意見
1.行動制限
⑥御意見の該当箇所
パラグラフ105、障害者権利条約第14条
⑦御意見の内容
本パラグラフにおいては、精神保健福祉法第36条に規定された精神障害者に対する行動制限に関する報告がなされていない。
⑧御意見の理由
障害者権利条約第14条は人身の自由にかかわる規定であり、本パラグラフにおいて精神保健福祉法第36条の精神障害者に対する行動制限に関する報告をすべきである。
2.障害者虐待防止法の範囲
⑥御意見の該当箇所
パラグラフ110、障害者権利条約第16条
⑦御意見の内容
本パラグラフにおいては、障害者虐待防止法の適用範囲について報告がなされていない。
⑧御意見の理由
障害者権利条約第16条は虐待防止にかかわる規定であり、本パラグラフにおいて障害者虐待防止法の適用範囲に教育機関と精神科病院が含まれていないことを報告し、救済可能な範囲等を明示すべきである。
3.骨格提言の実施状況
⑥御意見の該当箇所
障害者自立支援法違憲訴訟の基本合意と骨格提言を出した、とする記述。
⑦御意見の内容
骨格提言をどのように反映し、どれくらい実施されたのかが書かれていないため、明示すべきである。
⑧御意見の理由
骨格提言は、障害者権利条約の批准に向けた国内法整備の一環という政策上の位置づけであり、その反映は障害者権利条約の実施状況に係るものであり詳細の報告が求められるためである。
4.総論
この政府報告書は、制度の説明に終始しており、障害者権利条約の実施状況を報告する体をなしていないといわざるを得ない。そのため、部分修正を重ねたところで結局のところ国際社会からの非難を免れない内容となっている。