医療観察法国賠訴訟傍聴のお願い

 

 

第1回口頭弁論期日

2017年5月24日(水)午前11時30分

東京地方裁判所615号法廷(霞ヶ関駅A1出口徒歩1分、裁判所6F)

 

ご挨拶

2017年2月13日(.月)、弁護団は、精神遅滞及び広汎性発達障害という診断を受けており、医療的な治療の可能性がないのに、医療観察法に基づく鑑定入院によって58日間も精神科病院に収容された方を原告として、国に対し、330万円(慰謝料300万円+弁護士費用30万円)の賠償を求める国家賠償請求を提起しました。

医療観察法に基づく通院または入院は、傷害など犯罪にあたる行為をしたが精神障害などの影響により完全な刑事責任を問えない方について、裁判所が通院または入院を命令することによって、強制的に医療を受けさせる制度です。ただし、医療観察法の目的は、精神障害者に適切な医療を提供することで社会復帰を促進することなので(医療観察法第1条1項参照)、社会復帰の促進につながらないような、無意味な医療の強制は許されません。

今回の裁判で問題となっている医療観察法に基づく鑑定入院は、医療観察法に基づく入院の要否を判断する前段階の手続として、裁判所が鑑定のために短期間の強制入院を命令するものです(医療観察法第34条)。入院期間は、通常2か月間です(同条3項)。

前述のとおり、医療観察法は、無意味な医療の提供を認めていないので、「社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合」(医療観察法第34条1項)に該当する場合には、裁判所は、鑑定入院を命令することができません。

今回の裁判の原告は、2011(平成23)年に、都内のスーパーマーケット内で、買物客であった被害者とすれ違うときに押して転倒させ、怪我を負わせました。この傷害行為は、精神遅滞と広汎性発達障害の影響に基づくもので刑事責任を問えないと判断され、次に、医療観察法に基づく入院の要否が問題となりました。一般に精神遅滞や広汎性発達障害の治療は「教育や生活指導」*1や「生活の援助」*2によるとされており、投薬治療を中心とする医療観察法に基づく入院によって改善するものではありません。そのため、最終的に、裁判所は、通院も入院も不要であると判断し、原告を帰宅させました。しかしながら、そもそも鑑定入院が必要だったのか、鑑定入院が必要だったとしても58日間も入院させる必要があったのか、鑑定入院の適法性が今回の裁判で争われています。

医療観察法は無意味な医療の提供を許さないはずですが、実際の運用では、法に触れる行為をした精神障害者(またはその疑いがある者)について、医療の必要性とは関係なく、精神科病院に強制入院させている疑いがあります。このような運用に歯止めをかけるためにも、今回の裁判は重要な意義を有しています。

みなさまが裁判を傍聴し、この裁判に注目していることを裁判所に示すことが大きな

カとなります。どうか裁判の傍聴にご協力をよろしくお願いします。

(2017年5.月1日)

【本件に関するお問合せについて】

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マザーシップ法律事務所

医療・扶助人権ネットワーク事務局長弁護士内田明

TELO3-5367-5142

FAXO3-5367-3742

 

1*渡辺雅幸『はじめての精神医学改訂第2版』(2015年)189頁

2*山下格『精神医学ハンドブック第7版』(2010年)219頁



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