全国「精神病」者集団ニュース09年11月号

ごあいさつ

全国「精神病」者集団結成35周年記念総会も無事終了し、一段落…と言いたいところでしたが、政権交代による説明会やら、10月29日の院内集会やらで、むしろ、慌ただしさはピークに達しているように思います。

先日、大学の講義に参加しました。そこで某教授が言ったこと、それは、「宇都宮病院事件など1980年代におきた虐殺事件は過去の事件であり、現在はそのようなことはなくなった。病院は奇麗になり、通信、面会もできる。」という内容でした。そういえば、一昨日頃、青森県内の精神病院の浴槽で患者が溺死したと聞きました。それは、事故として処理されました。ところが、浴槽で溺死とは、どんな事故なのでしょう。また、仮に事故だとしても、何故、騒ぎにならないのでしょう。他科の病院なら大問題になるはずです。2008年12月の貝塚中央病院の事故(事件)からしても、やはり、虐殺は現在進行件であることに違いありません。むしろ、過去以上の告発の圧殺が繰り広げられているのではないかとの恐怖感さえ抱きます。

現在、青森県内の私立精神病院内で皮膚病の院内感染の可能性を巡って、調査を進めています。皆様の各地での闘いと連帯を深められること、祈っております。

 

 

全国「精神病」者集団

結成35周年記念総会の報告

桐原尚之

1.概要

09年10月1日から3日まで、全国「精神病」者集団結成35周年記念総会を青森県(アウガ5階 青森市男女共同参画プラザAV多機能ホール)で開催した。参加者は48名。大会では、各地の活動報告、全国「精神病」者集団の活動報告を行い、その後、歌手のおおたか静流さん、ピアニストの大友剛さんを御呼びして、記念コンサート「みんなちがってみんないい」を開催した。当日は、全日本ろうあ連盟様、NPO法人こらーるたいとう様から祝電をいただき、また、DPI日本会議様、こらーる岡山診療所様、広田和子様からは大会に向けてメッセージをいただいた。

2.実行委員長の挨拶

大会の参加者は合計で48名であった。もちろん、「お金があれば行きたかった」「時間があれば行きたかった」「情報があれば行きたかった」という声を、二十数名の仲間から聞いている。全国大会の開催意義は、「参加できなかった人のためこそ」と強く思った。また、生きていれば参加してくれた人もいた。向精神薬の副作用のためか、突然死する仲間も少なくない。昨年、私は青森市内の仲間を6人亡くした。青森市の人口は30万人だ。全国で概算すると年間2400人の仲間が突然死していることになる。08年には、大阪の貝塚中央病院で、またしても不審死が報道された。医療法施行令十条の規定で一般病院に入院できず、透析を受けられずに精神病院で死んだ仲間もいる。そして、年間に3万人の自殺者と、それを上回る推定自殺者がいる。考えてみれば、随分と仲間を亡くしてしまった。死んだ仲間も無念であったと思う。だが、我々の仲間の「死」は、それが「無」を意味するわけではない。

一方で、会場の前、受付の前では、仲間らしき数人の方がこちらを覗き込んでいた。この会場の外にも仲間がいる。この街にも仲間が、市内、県内、国内、海外と仲間はつながっていることだろう。そして、殺された仲間の霊魂もつながっているだろう。実行委員長の挨拶では、このことを伝えたうえで、黙祷をした。

3.活動の報告

各地の仲間からの報告として、青森の貞神克祥さんと京都の坂根輝吉さんから各15分程度の報告を頂いた。

貞神さんからは、「我々の活動が立法上の成果を果たしたとしても、それが直ちに運用上の成果となって生活に現れるとは限らないこと。それを念頭においたうえで、今後取り組むべき活動として、地域で地道に運用上の問題に取り組むこと、或いは、「世間」や「風習」といった文化に対抗した運動にしていくことが必要である。また、青森の現状課題として、人が集まらないことがあり、お金もないし、得もない、人を誘うにも誘いようがない。それでも今回の大会が何らかの起爆剤になればと願っている」と報告した。

坂根さんからは、「今、交通や機械にしても様々なものが使いやすくなっている。しかし、僕たちを含める社会的弱者の立場は、なにも変わっていない。むしろ、悪い方に悪い方に向かっているように思う。精神病になると、親が自分の子どもが病気であることを隠そうとする。なぜ、自分たちの状態は初めから隠されるのか。そして、初めからいなかった存在にされていく。これらは、私たちの生命の課題である。自分はいつまで戦えるか解らないが、多くの方々に協力を求めたい。」と訴えた。

大会に参加できなかった、ラミパスタロウさんからも電話で、昨年開催された第3回世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク総会(ウガンダ)の簡単な報告をいただいた。

障害者権利条約と批准に向けた国内法整備として、関口明彦さんから、法的能力(legal capacity)を中心に報告をいただいた。民法の制限行為能力の廃止による平等に止まらず、意思無能力(精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況)との関係からくる法律行為の無効も視野に入れて、人が法の前で平等に法律行為を可能とするための国内法整備の活動とその学習の必要性を訴えた。

4.記念コンサート

記念コンサート『みんなちがってみんないい』は、歌手のおおたか静流さんとピアニストの大友剛さんを招いて行った。会場には、属性に捕われない幻想的な音色が響いた。最後に参加者が一緒に歌って会場は大いに盛り上がった。おおたか静流さんのCDは、是非一度、お買い上げいただき聞いてほしいと思う。

☆「みんなちがってみんないい」2009.2.25発売 / 定価¥2400(税込) 発売元:ワーナーミュージック・ジャパン(WPCL-10655)

☆「Serenade」2008.12.7発売 / 定価¥2000(税込) 販売元:メタ・カンパニー(BUKIMI-4143) / 発売元:B4-Records

 

 

◎運営委員会報告

1.障がい者制度改革推進法案説明会

民主党説明会

10月9日、13時~15時まで、衆第一・第一会議室で、障がい者制度改革推進法案の説明会が開かれました。議員は、谷、金子恵美、石毛、小宮山、園田(旧障害PT )です。

2.賛同

10月23日の会議で、以下に全国「精神病」者集団として賛同することを決定しました。

1.障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動

2.新政権に対する外国人住民への施策に関する共同要請書

3.障害者にかかる共生社会実践活動事例調査

内閣府から9月18日付で選定委員会委員の選任依頼のFAXがあり、9月25日の運営委員会で、運営委員1名を委員に推薦することを決めました。

調査内容は、共生社会実践活動を、①障害のある人又は障害のある児童の自立及び社会参加の促進に資するもの(差別の防止やそのための配慮工夫の実施促進に資するものを含む)、②障害のある人又は障害のある児童と障害のない人又は障害のない児童との相互交流を伴うもの、③障害のある人又は障害のある児童に係る事項について活動の対象としているもの、のすべてを満たすものと定義づけたうえで、都道府県に2~3事例を回答いただき、それを報告書(700部)にまとめるものです。

10月28日10時00分から第1回委員会専門委員会が開催され、共生社会の定義について、「障害者による主体的な復権活動(いわゆる障害者が~の活動)と障害者を対象とした事業(いわゆる障害者を~の活動)のどちらが共生社会実践活動か」を質問し、内閣府から「双方を含む」との回答を得ました。また、「社会防衛の対象者のまま共生社会の語があてられるのは頓狂だ」と調査自体を否定しない程度ですが、意見はしておきました。

次回委員会(2月中旬)では、報告書内容の検討を行うことになっています。障害種別のクロスをかけるのですが、おそらく、精神障害者に関する共生社会実践活動は少ないことが予測されます。それまでに精神に特化した活動をどう評価するか、仮に結果が精神に特化した活動が少ない場合を肯定的考えるか、否定的に考えるか、その点を準備していきたいと思います。

4.平成21年度障害者施策総合調査

これも内閣府の事業です。9月28日付で調査委員の推薦願の文書がJDF経由できました。10月9日の運営委員会で

毎年アンケートをしておりますが、今年度は、「啓発・広報、国際協力に関する調査」です。集会への参加などを調査します。全国「精神病」者集団は配布する調査票を250部引き受けることになりました。

5.ICFに基づく障害児・者の生活機能の実態調査

こちらも、10月28日に緊急で引き受けることを決定しました。

平成21年度厚生労働科学研究費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))による「「生活機能」のコード化に関する研究(H19-政策-一般-027)」の一環として、調査研究を行うことになり、学識経験者と障害者団体からなる調査委員会を設置することになったそうです。



コメント