全国「精神病」者集団ニュース 2000年6月号

2000年6月発行のニュースです。一部のみの掲載となっております。

目録

ごあいさつ

  • 保安処分攻撃など

八王子市による差別事件

「電気ショック治療」と言われたら必ず断って下さい

(略)

日本精神神経学会闘争報告

(略)

資料

『赤堀さんは無実だ差別裁判糾弾!完全無罪を』他


SSKO

全国「精神病」者集団
ニュース


ごあいさつ

梅雨の季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか? 体調の乱れがちな季節をなんとかやり過ごし、無事に梅雨を迎えられていることをお祈りいたします。

この間保安処分攻撃が一段と本格化しております。保安処分とは単に刑法に保安処分に関する条項ができることを指しているのではありません。

「精神病」者に対する保安処分とはわれわれを「危険性」を要件として予防拘禁し、強制医療をもって個人の人格、行動を改造しようとする行為すべてを指します。

その意味で強制入院体制である精神保健福祉法体制はすでに保安処分体制です。こうした強制入院制度の強化からさらに刑法そのものの改悪まで色合いの違いはあれ、さまざまな形で保安処分体制強化策動がなされています。

一つは厚生省の動きで、今回の精神保健福祉法「見直し」における強制移送制度新設がその一つ、そして厚生科学研究班「精神医療事故の法政策的研究」班は「触法精神障害者」の刑事処分のあり方を検討中で、この3月に欧州数カ国を視察、「触法精神障害者」の処遇のあり方を提言する報告書を今年度中に提出するとのこと。すでに次回法「改正」への準備作業に入っていると見てよいでしょう。

日本精神病院協会は「触法精神障害者対策プロジェクト」を発足させ、1月20日に刑事局法務省と共に1回目の会議を行いました。今後この会議は月1回定例化していくとのこと。またこのプロジェクトチームは、日本弁護士連合会刑事法制委員会の精神保健福祉小委員会での「触法精神障害者に対する施策のあり方についての意見交換会(2月12日)」に講師を派遣しています。

(略)

「人権屋云々」などというキャンペーンに見られるように、人権を主張すること自体が悪とまでいわれるような状況下で、私たち「精神病」者の人権はじわじわと締め付けられているといって過言ではありません。これ以上仲間を殺されないためにそして私たちが生き延びるために、さまざまな問題意識の共有化を図り、反保安処分の闘いを強化しなければなりません。

(略)

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北から 南から 東から 西から


八王子福祉事務所の差別事件

八王子福祉事務所の差別事件はひどいと思いました。私も二一のときに発病して大学を中退、その后職に暫くついていましたが、二六歳のときから生活保護を受けて働かなくても病気の治療に専念することができています。何度かケースワーカーが変わりました。八王子福祉事務所のような人権を無視した態度をとられたことはありませんが、近くに住んでいる同じ病院の男性患者と知り合いで、その人がよく遊びに来るのですが、その人から金銭的救助を受けていないかとしつこく問われることはありました。しかし全くそのようなことがないという事実が認められると、私の代わりに福祉事務所に行ってもらうこともあります。代理人のようにもなっています。

さて投稿の呼びかけで一人暮らしの問題提起がありましたので、先述の友人は近くにいるものの実質的には一人暮らしをしている私の場合について思うことを述べたいと思います。

家事労働は、女ですから、毎食少しずつ作ったり、きついときはまとめ作りをして小分けして冷凍庫に入れてチンして食べます。貧血の持病があるので食べることはおろそかにはできませんが、病気の症状で家から出るのが恐いときに何も食べるものがなくなってしまって出前で済ませたこともありましたが、家を出るのが平気なときにまとめ買いをしています。

精神病以外の病気にかかったときは悲惨です。自分で自分の面倒を見なければなりません。近くに同病者の友人がいますのでよっぽどのときは助けてもらいますが、たいがいは一人で耐えています。あんまり苦しいときは救急車で病院に搬送してもらいます。付き添いがいないので病状を説明して処置してもらって、一人で帰るときは涙が出ます。ああー一人ってつらいなと思います。

……中略……


「電気ショック治療」と言われたら必ず断って下さい

追伸

また電気ショック療法が復活しつつありますが、先生から「電気ショック治療をしてみましょう」と言われたら必ず断って下さい。私は二×年前初めて入院した病院で数回にわたり電気ショックを受けましたが、その前後の記憶がなくなっています。

写真を見てかろうじて記憶をつないでいます。

母が見舞いに来手折り、たまたま電気ショックを受けているところを見たそうですが、その話によると、一、二メートル高く宙に浮いたかと思うとまた沈みまた宙に浮いて……と、その後の私はまるで別人のようにだらしなくボーッとして、母が私であるとは認めがたい形相になっていたそうです。ちなみに私はその時母親が面会に来たことすら記憶にありません。

その電気ショックを行った病院はその当時先端のスタッフと技術を持った新しいできたての病院でした。そんなところでも電気ショックをするのですから、おそらく古い旧態依然とした病院ではひんぱんに行われていたものと思われます。病状の改善が見られるかどうかは分かりませんが、本人は確かにそのショックで記憶を失います。二×年前ならいざ知らず、これだけ新薬も研究されている現在、今さら電気ショックなどという旧式の方法を採るのはどうかと思われます。電気ショックは受けなければ受けないで方策が別にあります。記憶を失いたくなかったらきっぱりと断って下さいお願いします。

その二

(略)


(略)


日本精神神経学会闘争報告

仙台で五月九日(理事会、評議会)、一〇日から一二日まで日本精神神経学会総会が開催されました。全国「精神病」者集団からは事務局員は全員体調不調および経済的理由で参加できず、窓口係が参加しました。そのほか九州から会員の方一名も参加されました。

全国「精神病」者集団としては理事会評議会、総会、および人格障害のシンポにおいて同封のビラ撒きをしました。

全国「精神病」者集団としての要求についてはほとんど入れられませんでしたが、死刑問題については次期理事会に引き継ぐこと、電気ショックの問題についてはシンポを開くのもあるのではという理事長の個人的意見は聞けました。

移送制度に関しては各地での混乱を理由に実施延期の決議が理事会より提案されましたが、警官の出動要請に関しては、「やむを得ない場合はある」ということでかつM理事によると「精神病者だから危険といっているのではなく、この対象者は追いつめられた人であり、健常者であろうと追いつめられた人は危険だ」そうです。

以下Yの個人的感想です。

学会そのものがこの十数年間で大きく変質してきました。

二〇〇二年には世界精神医学会大会を日本で行うことになっており、そのため主催者たる日本の学会は今まで拒否していた製薬会社からの寄付を公に受け取ることになりました。また世界大会には皇族が出席することになっています。

初めて参加された「精神病」者仲間が「ユーザーの参加費を作ってユーザーも参加させると言っているけど建前ではないか? 議論をさせようというのではなく、時間がなく議論は一切できない。総会はいわゆるシャンシャン総会だ」と感想を述べておられましたが、その通りでこの十数年の間に理事会評議会、総会の時間が極端に短縮され議論が実質できない状態になっています。

「患者家族市民に開かれた学会」というのは画に描いた餅になっているのが現状です。

人格障害について、ある発表ではうつ病でかかっている患者の三七%が人格障害であった、としていましたが、それに対して三七%は少し多すぎるのではという質問がありました。いろいろな論文でもその程度の率であるしテストでそうなっている、職業持ってまともに生活している方が人格障害というのはどうかなという気もするが、時期によっては七〇%ぐらいの例もある、と回答していました。人格障害というラベリングがいかにいい加減かという好例を示す質問と回答だと思います。

電気ショックについては、電気ショックと記憶障害を調べた発表がありました。電気ショックを受けた後のさかのぼった記憶障害についてはたしかにあるということ、それは四週間たっても回復しないことが説明されたあと、どういうわけか今後も症例を集めて研究したい、さらに修正電気ショックが普及していないがもっとどこでもやれるようにしたい、と発表していました。

「適正手続き」および同意はとった人体実験とはいえ、記憶を失ってもなお電気ショックをやろうというこの発表全く理解できません。

電気ショックに関しては何があろうと効くからドンドンやる、という動きがあることがよく分かりました。学会で仮に電気ショックについてのシンポが開かれたとしても、電気ショック廃絶に向けというより、よりよい電気ショック、あるいは電気ショックをやるための適正手続き問題にすり替えられたシンポになる危険性は非常に強いといわなければなりません。今後も監視が必要です。

精神科医への絶望だけが残った学会闘争でした。

北陽病院事件の患者さん本人に対して、彼の防衛と医療は私が責任を持つと宣言した医師は一人もいませんでした。医者は患者の利益のために働くというのはやはり私の妄想でした。適正手続きと本人の「同意」さえあれば何をやってもいいという発表もたくさんあり、「何をするか分からない危険な精神科医たち」に対抗する強力な闘いが必要です。


資料

(略)

  • 『赤堀さんは無実だ差別裁判糾弾!完全無罪を』

仙台赤堀さんと共に闘う会発行

島田事件の元無実の死刑囚赤堀政夫さんのことについて新しい仲間の中にはご存じない方が多いかと思います。

この事件は国家が「精神病」者差別に基づき「精神病」者を殺そうとした事件であり、私たち「精神病」者が日頃受けている差別の究極にあります。

それゆえこの事件を知ることで「精神病」者差別の本質がとてもよく分かります。このパンフはB五判一四ページの小冊子ながら赤堀さんの事件がよく分かるものです。

仙台赤堀さんと共に闘う会の方からのご厚意で若干部の寄贈を受けました。

(略)

  • 日本精神神経学会関係
  • 昨年の学会総会でのシンポ「司法精神医学の現代的課題――日本の触法精神障害者対策のあり方をめぐって――」の記録
  • 『精神科領域における他害と処遇困難性に関する研究』に対する見解」

日本精神神経学会・研究と人権問題委員会

二〇〇〇年三月一八日

「処遇困難者専門病棟」新設策動の根拠となった道下研究への批判的見解で、研究の名に値しないばかりではなく人権上多大な問題があるとしている。

  • 『精神科医療における行動制限の最小化に関する研究――精神障害者の行動制限と人権確保のあり方』

平成一一年度厚生科学研究費補助金

保護室へ入れること、身体をしばることをいかに合理的に行うかという研究。

精神障害者の人権といいながら、しばる側医療従事者にだけアンケートしているこの研究は一体なんでしょう。

しかしこの内容でも「身体拘束等への規制が厳しすぎる」という意見が医者たちから出るというのですから、この国の精神医療のレベルは?

(略)



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