全国「精神病」者集団ニュース 2000年12月号

2000年12月発行のニュースです。一部のみの掲載となっております。

一般定期購読は有料(年6回発行1年分5000円)です。(病者である会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

目録

ごあいさつ

  • 2001年も生きて、語り続けようではありませんか

(略)

私がこうむった精神医療への憎しみと恨み

(略)

保安処分攻撃の現状(メモ)

(略)

本の紹介

(略)

冬期カンパ要請


SSKO

全国「精神病」者集団
ニュース


ごあいさつ

(略)

2000年はいみじくも精神病者監護法(日本で初めてできた「精神病」者監禁のための国の法律)ができて100周年でした。国際的にも日本でも20世紀は精神医学、精神医療の名の下に私たち「精神病」者が法により人権を時には生命を奪われた世紀でありました。そして第二次世界大戦前そして戦争中のドイツでの「精神病」者の虐殺、戦中戦後の日本での精神病院における大量の「精神病」者餓死、とわれわれ「精神病」者にとっては忘れることのできない歴史もあります。

私たち「精神病」者はこうした「精神病」者差別・虐待・抹殺の生き証人として、21世紀を迎えようとしています。なんであれとにかく生き延びようではありませんか。生き証人として生き延びることこそ私たちの最大の任務であり、闘いです。私たちの悲惨な体験をあとに続く仲間たちに決して繰り返させないために、そしてこれ以上仲間を殺されないために2001年も生きて、語り続けようではありませんか。われわれを押しつぶそうとする弾圧に対して「ノー」と声を上げ続けようではありませんか。

全国「精神病」者集団は今後も皆さま支えられながら活動を続けたいと決意しております。たとえささやかであろうとも継続を、そして連帯を、助け合いを、ゆっくりとしかし遠くまで歩いていきましょう。

(略)

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(略)


私がこうむった精神医療への憎しみと恨み

愛知 N

1975年普通に話もできてまた躁状態との病識もあって、一抹の医療への期待をこめて外来の門をたたきました(それがすべての間違いの始まりだった=精神医療を信頼してはならない)。親とうまくいかず、実家に戻るよりはその場では入院を選択してしまったのです。

すると看護士が四肢を押さえてイソミタールを打って保護室へ有無を言わさず監禁されてしまいました(それからが不幸の始まり=医原性心的外傷の始まりとなりました)。

その苦悩と苦痛は筆舌につくしがたく、さらに思い出すのも苦しみを伴うので、はっきりとは思い出すことさえもできません。苦悩と苦痛、自我の崩壊が始まったのです。病院はそんなますます悪くなっていく私を放置、傍観するのみでした。

家族は医原性の悪化なのに、救い出すこともせずに、医者の言うがままに「あんなに悪かったのだ」と医者に思いこまされ、結果としてこれ以上はないとゆう苦しみの中にいる僕を、そのままの状態に放置し続けました。

これこそ私の一生続く真に医原性の心的外傷です。病気によるのではなく、病院が僕の病気をまさに悪化させ、思い出すのも困難なほどの苦悩と苦痛を病院が僕に体験させたのでした。こんなことは、誰から見ても絶対に医療と言えるものなのではなく、本当に病院による患者への犯罪なのです。

20年前の話ですが、責任の所在がはっきりとならないと、私は精神医療と決して和解することなどできませんし、もって行き場のない強い怒りを私は抑えることができません。

よく人は「精神医療などそんなものだ」と言いますが、怒りを抑えることができないことは、いまだに精神医療を信頼する心が残っていたり、自分の病気のゆえにあてにしている甘い気持ちがあるのかもしれません。


精神科医療と医療保護入院

1998年全家連大会での発表と報告

愛知 O

<違憲立法としての精福法>

精神科医療は一般科医療と異なり、厳しい法律のもとで管理し拘禁を強いている。

一般科は総じて「医師法」「医療法」で医療行為が行われるが、精神科はそれに加えて第三の法律「精神保健及び福祉に関する法律(以下精福法という)」によって規定する。

「精福法」は拘禁を強いられる者の権利条項「憲法34条」で示される上位条項(拘留拘禁に対する保護)を否定した違憲立法である。

法はすべからく上位条項の理念に即し、なお誰が見ても明確であることが原則でなければならない。しかし「精福法」はこうした法律的な原則を意図的に廃し、「精神障害者」を排除し拘禁するものとして位置する。それは「精神障害者」を法の上で差別排除しているが、今回それを明らかにし「医療保護入院」を検証したい。

拘留に対する保護規定、憲法34条は次のように明文化している。その条文は「何人も直ちに理由を告げられ、且つ、直ちに弁護人を依頼する権利を与えられなければ、拘留または拘禁されない。また何人も正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない」とする。

しかし精神障害者は拘禁下におかれるにも関わらず弁護人の立ち会いもなく、医師の恣意的判断で容易に拘禁されうる。家族もまた「急性期」の対応は困難で、「精神病院に委託」をせざるをえない。

しかし「医療の利益は当事者」に還元できるもので、決して「他者の利益」に還元されてはならない。まして「社会の利益」や「社会防衛」であってはならない。

<保護者の義務とは社会防衛への加担>

今回全家連は「精福法」第22条「保護者」の撤廃を組織的に決定し、「精福法」を権利保障として新たな「法体系」として整備するよう提言している。

新たな「法体系」に向けて以下の問題点を明らかにする。

まず今回は「精福法」の「保護者」について言及する。

「精福法」は先に述べたように「違憲立法」でありながら、立法趣旨は「医療と保護」を規定する。その保護規定は二面性があり、一方において「精神障害者」の保護とまた一方では「社会防衛」(措置入院)の規定をする。

そして「保護者」はその内「社会防衛」「家族防衛」の側面を担わされている。具体的に「精福法」を再録してみる。

第22条 保護者は、精神障害者に治療を受けさせるとともに、精神障害者が自身を傷つけまたは他人に害を及ぼさないように監督し、精神障害者の財産上の利益を保護しなければならない。

2 保護者は精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力しなければならない。

3 保護者は、精神障害者に医療を受けさせるにあたっては、医師の指示に従わねばならない。

以上の制約下におかれているのが「保護者」であるが、「社会防衛」に関与する側面は措置入院の場合と同様で「でなければならない」と規定する以上、法的には「絶対条項」で、この1点においてすでに精神障害者に「保護者」は「敵対する関係性」と判断せざるをえない。

そうした視点では精神障害者の若干の「精神症状」も「医療と保護」の対象となり、精神障害者を「医療」の対象にしやすい。すなわち精神障害者にはあいまいな入院を強制し、「保護者」は家族と社会の防衛に傾斜する傾向を持たざるをえないであろう。医療の内容を問わずに「医療に依存する」のは家族から精神障害者を排外するもので、ここにも「保護者」の陥りやすい医療絶対信奉がある。

では現実の精神医療はいかなる「質」と「内容」を持ち、精神障害者を受け入れるのか? すでに全家連の「保護者」の多くには精神医療が「社会防衛」と「営利中心」の質で精神障害者を隔離と拘束を行っているのは周知の事実である。

かつて日本医師会の武見太郎氏がいみじくも「牧畜業者」と語ったように精神医療は現在も同様に精神障害者にはとうてい納得できるものではない。

その具体性は「精福法」では「任意入院」が主流となった昨今でも同様と言える。「任意入院」であれ、「精福法」の「詳解」で述べている問題点を見れば一目瞭然である。

具体的に「精福法」の「処遇」について述べる。

まずは「精福法の詳解(処遇)第36条」から検証してみる。

第36条は行動の制限が規定される。詳解ではこの制限について「保護室」であれ「閉鎖病棟」であれ、いずれも「主治医の『必要性の判断』と管理者の責任において」行動の制限がなされてよいことになる。

すなわち、いずれの「入院形式」をとっても行動の制限は医師の裁量権にまかされる。また精神障害者で、「『任意入院者』が行動の制限を理由に退院を申し出た場合」には、行動制限を行わずに入院を継続するか退院させなければならず、継続して行動制限する必要があれば、精福法は指定医の判断にゆだねられる(「精福法」第22条の3第3項の定めによる)。

「任意入院」の精神障害者の「退院要求」であれば、「退院」は可能であるが、時には「手のかかる精神障害者」が医師によって選別されて退院させられてゆくことも現実である。

精神障害者の退院では慎重な単身独居のアパート退院でも実態は、総数の3分の2は死亡そして、その70%(実数でアパート退院者の46%)は自殺である。

つまり、精神医療は無策である。現実に精神障害者の要求に基づく、ものは「皆無」といってよい。

総じて言えば精神医療の現実はマンパワーの欠如をはじめとして他医療との関係では差別下にあり、精神医療そのものと精福法も徹底検証下におかなくてはならない。


<当事者自ら権利追求>

今回、全家連は「保護者制度」の撤廃を標榜し、組織的な方針で精福法の改革に取り組み、新たに権利保障に向けて「法」の整備をすすめるものと聞く。精神障害者本人は「家族防衛」、「社会防衛」としての「質」と「内容」の精福法の完全撤廃を標榜し、精神障害者自らで「権利法」を追求してゆく。

「保護者」の放棄は即「精神障害者」の「権利代行者」の放棄が原則であり、精福法の「保護者」放棄と精神障害者本人による精福法の完全撤廃と「権利法の追求」は精神障害者の「権利」として追求するのが原則である。

医療はまず医師と当事者の契約の下で行使されねばならない。昨今、市民権を持った「インフォームド・コンセント」はこれを端的に現している。

現在も精神科医療は精神障害者の「隔離と拘禁」、そして「治療悲観論」と患者を「固定資産化」した医療内容であり、原則的な「本人の利益」とは隔絶したものと言わねばならない。簡単に一部の手直しではとうてい解決にはほど遠い現実で、精福法の完全撤廃後直ちに、精福法の第2条(国及び地方公共団体の義務)を中心に据えて権利の完全追及を行いたい。

ちなみに第2条は以下の通りである。

「国及び地方公共団体は、医療施設、社会復帰施設その他の福祉施設及び教育施設を充実することによって、精神障害者が社会生活に適応することができるように努力するとともに、精神保健に関する調査研究の推進及び知識の普及を図る等精神障害者の発生の予防その他国民の精神保健の向上のための施策を講じなければならない」の絶対条項の追求である。

それは、精神障害者総体でこれを基本的なベースとして「地域で生きたい人」「病院で生きたい人」等本人の要求度に応じて「施策」の遂行を貫徹していくべきである。

精神障害者の社会復帰の努力に関して「国及び地方公共団体の義務」の行使がなされていない現実に対し、精神障害者は「国及び地方公共団体の義務規定の違反」として告発し、権利の本流を自らで行使する。

今後この方針として以下明らかにする。

精福法の本質は本人の利益として「医療」と「保護」を命題としているが、実質は「社会防衛」を基盤として「治安管理法」として機能し、本人の利益と引き替えに違憲立法の下におく。それはいたずらに医療の質と内容を低下させて「営利の肥大化」の道具として精神障害者を差別下におく。

こうした精福法そのものの撤廃を原則的に標榜し、まず基本的には精神病者自ら「権利」を確立させ、それを国家および厚生省に確認させてゆく作業が当面火急な精神病者の運動とならねばならない。

そして家族会は精神病者のさまざまな「団体」のサポーターの位置にとどめられるように切望してやまない。

家族会は精神病者自らが権利追求に向けて、計画、政策立案、遂行に向けた行動をとる場合のみ、支援協力する位置にとどめおかれ、それを「ノーマライゼーション」の基本的な第一歩と確認されたい。


報告

私は分裂病者で障害2級の当事者である。一方こうした自己紹介ではおさまりがつかないのは、私が精神障害者の「母親」であり、介護者の立場に立たされている特殊事情である。私はあまり珍しくない精神分裂病者ではあるが、意外に珍しいのは病人で介護を必要とする私が(障害2級は介護者が必要である)、家族に「子」があるので常に介護者の視点や技術が求められていることであろうか?

介護の日常性を強いられる家族の苦悩はさまざまではあるが、私の家族は特殊な個体史を持っていて、私が介護者として参考にできるような教科書がないことが悩みである。特殊ケースと申し上げるのは、私の家族は元無実の死刑囚であった赤堀政夫さんなのである。ゆえあって赤堀さんは私のことを「お母さん」と呼んでおられるし、共同生活を営んでいる関係であるが、介護専従者といってもよい。

しかも獄中生活は35年弱あり(1954年3月24日から1989年1月31日まで)、その間ご存じのようにすさまじい社会変動があり、赤堀さん解放後も容易に「社会適応」はできない。遊びにゆくにも「どこに行きたい?」は愚問で、いろいろなメニューを準備して赤堀さんが選択することになる。

無論介護の状態である「食管理」「健康管理全般とその維持管理」「衣服の管理」「経済管理」等々全般で一般家族の介護の視点とあまり変わらないし、家族の苦悩は共有できる。そして、赤堀さんの介護者は特殊な理解力と特殊な介護姿勢を問われる。

生活全般が特殊な獄中に規定されていたので、それをクリアーさせて「実社会」への適応に向けて少しずつ生活全般を変革させてゆくことが、介護者の私のスタンスであろうか? 「長期入院患者の社会復帰や退院」に共通項があろう。

しかしこうした私に、ケースワーカーも非協力であり、医師も非協力である。

特殊な介護者への協力者などはなく、無視が現状であったが、唯一保健所が協力的であったといっておこう。しかし赤堀さんの福祉的な問題、デイケアーやホームスティにとどまっている。それも1年前からのサービスで福祉などはかつてなかった。

私も住民票をおく地区の家族会への参加を要請したが「断り」のお返事をいただくことになった。

その意味では「孤立した家族の一人」であろう。元死刑囚の特殊な介護者の孤立でも、私に理解者もいないし、家族の苦悩も素知らぬ顔ですべてから見過ごされてきた。そこに「医療提供」の他に解決能力のない精神医療を見てきたといってよい。

むしろ差別に愚鈍な精神医療関係者は「自助努力せよ」と無言で放置してきた。 こうした私たちの現状も視点を変えてみるとよくご理解願えるであろうか?

昨年赤堀さんとWFMH(世界精神保健連盟)フィンランド大会に参加したが、その途中、かつて赤堀さんを支援してきたNGO(国連の非政府機関)アムネスティインターナショナル極東支部(アムステルダム)に寄ったが、かの人々はすこぶる自然に、「赤堀さんには個人的にソーシャルワーカーがついていますか?」と問いかけられた。

特殊な要介護者には「個人的にはソーシャルワーカー」が一般的なのであろう。そんな言葉に吹っ飛んだのは、日本の福祉の貧困であり、当事者運動の未熟さである。それでも今回そうした特殊環境下にいる私にも「物言え」といって下さる全家連があった。無論家族の立場でいながら当事者からの提言であり複雑であった。

残念なことに当方の視点では参加は難しかったが、家族が強いられる「保護者」制度の撤廃は無論のこと、精神保健福祉法の完全見直しを含めて撤廃を標榜することを述べることができた。

そしてこれも当然であるが、精神科医療の受益者は精神障害者本人でその体験を通して、当事者が改革の主体者であることが当然であるので、「家族会はその改革主体の当事者のサポーターの位置に留めおかれたい」と意見の具申を行った。

最後17日の武道館で開催された全体会議で私は余りにも当たり前のことを次のように述べていた。

「私は当事者であるが精神保健福祉法の撤廃を標榜します。理由は精神保健福祉法が治安立法だからです。治安立法である根拠は措置入院(制度)で明らかでしょう。法的にこれらを規定するのは精神障害者が治安対象であることを国家が認めていることでありましょう。

国家がこのような精神障害者観を持っているのに、私たちが差別を否定し偏見を除去できるでしょうか? まずは精神保健福祉法を撤廃すべきでしょう。

そしてこの間、日精協(日本精神病院協会の略)は触法精神障害者に「特別措置」を導入し、その措置の解除のために鑑定医2名の導入、また「措置通院制度」の導入を図ろうとしています。

こうした諸々の動向について厚生省の考えはいかがなものかお答えいただきたい。 私の周囲の家族会のメンバーは「撤廃が妥当よね」と同調される。

「お父様、お母様、わが子が犯罪予備軍では差別とは闘えないですね」と激励。

家族会の懐柔で小手先の改革ができない。厚生官僚の机上論では精神障害者の解放も精神病院の改革も精神医療の特殊性からも抜け出すことはできない。

ひたすら厚生省は当事者運動から家族のあり方から「学ぶこと」が今問われている。そして家族会も精神保健福祉法の「保護者」のくびきからの解放後は私たち当事者のサポーターを務められ、常に介護者のエキスパートとしてプロに徹していかれることを強く望む。


編注

精神保健福祉法の改定点について(上記記事に関連して)

昨年精神保健福祉法が5年ごとの見直しにより変わった。

例によって我々「精神病」者本人の要求は一切無視した重大な改悪点もある見直しであった。以下大きな変更についてのメモ。

*保護者の義務の軽減

全家連は保護者制度の撤廃を主張しているが、今回は制度そのものはなくならず、「自傷他害防止義務」が削除された。

全家連は息子が他者を殺害した事件について家族が保護義務を問われ1億円の賠償を命じた判決が出たことから保護者制度の撤廃を主張しているが、この裁判の控訴審判決も第1審を支持控訴棄却した第2審判決は、自傷他害義務はなくなっても、医療を受けさせる義務は残っており家族は息子に医療を受けさせる義務を怠っていたとしている。

*移送制度の新設

旧精神保健福祉法では措置入院はともかく医療保護入院においては、患者を精神病院まで強制的に運ぶことを合法化している条文はなかったが、今回本人の意志に反しても患者を強制的に精神病院に運ぶことが合法化された(もちろん今までもやられていたことではあるが、非合法な措置であった)。

厚生省精神保健課三嘴課長は日精協に対して、保護者の自傷他害防止義務はなくなったが、この移送制度を新設したのだから、何かあれば医療を受けさせる義務を怠り移送制度を利用しなかった保護者の責任となる、旨述べており、また新潟の少女監禁事件に関しても、今後このようなことがあれば移送制度その他を準備しなかった行政の責任が問われるとしている。

「触法精神障害者」キャンペーンとあいまって、この移送制度が、本人のためではなく他害防止のために乱用される危険性は非常に大きい。家族もまた損害賠償を恐れ移送制度を乱用するおそれがある。

*任意入院の原則開放処遇(夜間をのぞき病棟からの出入り自由)が明記された。もっとも医療上の理由があれば閉鎖処遇でもよいことになっているのでこの規定の実効性には疑問がある(精福法見直しに関する通知一式は窓口にご請求下さいA4判約200ページ)。



保安処分攻撃の現状(メモ)

長野英子

☆厚生省の動き

*精神保健福祉法「見直し」における強制移送制度新設、および移送制度の受け入れ先である応急入院指定病院の条件緩和による増設

*厚生科学研究班「精神医療事故の法政策的研究」班は「触法精神障害者」の刑事処分のあり方を検討中で、この3月に欧州数カ国を視察、「触法精神障害者」の処遇のあり方を提言する報告書を今年度中に提出するとのこと。(巻末窓口入手資料参照)

*この3月に課長補佐となったA氏はもともと厚生官僚ではあるが、前職は警察庁であり、厚生省精神保健課と警察庁の人事交流が行われている。これは移送制度および「触法精神障害者」対策のためではないかと推察される。80年代半ばまでは精神保健課の課長補佐のポスト一つは必ず警察庁からの出向者でしめられていたが、その後この露骨な人事はなくなった。しかしいつの間にか厚生省官僚の警察出向という形で行われているようである。

☆法務省の動き

*保岡法務大臣発言、重大な犯罪を犯した「精神障害者」に関し退院後も保護観察制度に類似した制度を。

*法務省刑事局は日精協「触法精神障害者対策プロジェクト」と1月20日に会議を行いさらに今後この会議は月1回定例化。

*刑法を重罰化に向け見直すための予算請求。

☆日本精神病院協会の動き

*「触法精神障害者対策プロジェクト」を発足。このプロジェクトチームは日本弁護士連合会刑事法制委員会の精神保健福祉小委員会での「触法精神障害者に対する施策のあり方についての意見交換会(2月12日)」に講師を派遣。

*報道機関、国会議員などへのアンケートを行っているが、必ず項目に「触法精神障害者」問題を入れマスコミおよび国会議員オルグを行っている。

☆国会議員の動き

*精神保健福祉法の見直しの過程で衆参両院の委員会におsいて付帯決議として「重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇のあり方については、幅広い観点から検討を行うこと」といった内容を全員一致で決議。

*自民党は精神保健問題検討小委員会を設置、そこでいわゆる「触法精神障害者」に対する対策を2002年までに党として結論を出すとしてしる。

*99年2月24日には参議院予算委員会において民主党の海野徹議員(静岡県選出)が、事件を起こした「精神障害者」が社会に出てきて困る、必要な対策を、と法務大臣と厚生大臣にせまり、保安処分新設を示唆。

☆日本精神神経学会の動き

*保安処分に反対する委員会の消滅

「保安処分に反対する委員会」は数年前になくなり、精神医療と法に関する委員会内の「保安処分と司法に関する小委員会」に格下げ、かつ「保安処分に反対する」委員会ではなくなった。

*保安処分推進派によるシンポジウムの開催

99年「司法精神医学の現代的課題――日本の触法精神障害者対策のあり方をめぐって」、2000年人格障害をめぐるシンポと、保安処分推進派を中心にしたシンポジウムが続いている。

*移送制度新設に際し警察官の協力を要請

*精神障害者の起こした事件について詳細にわたる報告書を作成。福岡のバスジャックについても報告書を作る予定

70年代の刑法改悪=保安処分新設という攻撃は80年代には「処遇困難者専門病棟」新設というように姿を変え、そして90年代後半から2000年代にかけてはより鮮明に「精神病」者を分断していく「触法精神障害者対策」として変化してきた。

精神科医だけでなく地域で「精神障害者」の支援活動をしている医師以外の専門家たちにいたるまで「社会復帰やノーマライゼーションのためには触法精神障害者対策を」の大合唱が起こっている。87年精神衛生法から精神保健法への改悪の結果警察経由の新規措置入院が東京を中心に爆発的に増加している事実も見逃せない。

また弁護士会の中には刑法上の保安処分新設阻止のためには、今ある強制入院制度の強化が必要という意見もあり、そうした意見の中心人物N医師のおかげでかつて刑法保安処分新設は阻止できたという意見まである。

「危険な者は厳重に監禁しました。私たちは危険でないので社会参加させて下さい」というのか、それとも「一人の仲間も隔離拘禁されている内は我々に社会参加はない」というのか、いま我々はいずれの立場に立つのかが問われている。



本の紹介

  • 『精神医療ユーザーのめざすもの――欧米のセルフヘルプ活動』

メアリー・オーヘイガン著 長野英子訳 中田智恵海監訳

解放出版社 1800円プラス税90円

著者はニュージーランドで初めて患者自身による既成の精神医療体制に代わるサービスを発足させた方。「精神病」者解放闘争の理念および患者会の運営について、実践に基づき論点を整理したとても参考になる本です。

  • 『赤い鳥を見たか ある「殺し屋」の半生』

飯田博久・飯田裁判を考える会著 現代書館 1500円プラス税75円

電気ショックの恐ろしさそしてまるで入念に仕掛けられたワナのような精神医療により、追いつめられていく飯田さんの人生。精神医療告発の書

  • 『精神医療』フォービギナーシリーズ

長野英子著 現代書館 1200円プラス税60円

精神医療の実態そして精神保健福祉法の本質にせまる本です。

  • 「精神保健福祉法の撤廃と精神障害者復権への道」

久良木幹雄著 オープンスペース街発行 300円

精神保健福祉法撤廃、そしてそれに代わる精神障害者復権法の提案

素晴らしい内容です。ぜひご一読を

  • 「オランダTBS資料およびフィンランドの危機サービス資料」

オランダの保安処分TBSの当局側資料、および施設入所者のための案内

フィンランドの1日24時間1年365日の危機サービスのチラシ

英文と邦訳 1000円



冬期カンパ要請

会員の皆さまの日頃のご活動に敬意を表すると共にニュース購読者の皆さまのご支援に感謝いたします。

私たち「精神病」者をめぐる状況はますますその厳しさを増しております。一見美しい言葉が流布しています。いわく「ノーマライゼション」「地域精神医療充実」「精神障害者本人を中心とした福祉サービス」などなど。しかし実態はどうでしょうか? 夕方5時過ぎ休日そして年末年始、苦しみにあえぐ私たちが飛び込める場所はあるでしょうか? 私たちが安心して要請できる福祉サービスが地域にどれだけあるでしょうか? それどころかこうした美しい言葉を叫ぶ精神科医はじめ専門家たちは、同時に「精神障害者の社会復帰、ノーマライゼションのためには触法精神障害者対策が必須」と声をそろえています。

医療法「改正」においても相も変わらず精神科特例(精神科に限っては医師も看護も他の科より少ない定員で良しとするもの)は残され、「特例撤廃」の声すら、「慢性期」とされた患者には医者も看護も少なくていいという「病床機能分化」の固定化につながりかねず、さらには治安を目的とした「特別病院あるいは特別病棟」新設に利用されかねない状況にあります。

強制移送制度導入にあたっては、精神科医はじめ専門家たちは声をそろえて「警察官の出動」を要請しています。「精神障害者への差別と偏見」を広げているのは実はこうした専門家たちです。

圧倒的な保安処分攻撃の中で私たちは21世紀を迎えようとしています。反保安処分を掲げてきた全国「精神病」者集団の闘いもその正念場を迎えています。反保安処分の声をより広く、より強く上げていく必要があります。

他方全国「精神病」者集団の会員は増加の一方であり、地域で孤立した「精神病」者の絆としてのニュース発行はまさに生命の問題と言えます。手紙や電話は会員の命綱として機能しています。個々の会員の命のためにも全国「精神病」者集団の活動を継続していかなければなりません。

全国「精神病」者集団の事務局員は全ての活動費を自弁で活動しております。集会への参加費、交通費、例会への参加交通費、精神病院への面会交通費、獄中支援、全て手弁当で活動しています。経済的圧迫と消耗で各事務局員の病状悪化も著しい状態です。

それでもなお全国「精神病」者集団は財政危機にあります。有料購読者の増加を目指しさまざまな場所での宣伝活動も行っております。経費はこれ以上は不可能というところまで節減しています。全国「精神病」者集団の財政は皆さまからのカンパと「精神病」者以外の方のニュース購読料のみに頼っています。

現在赤字は約40万円でこれは一会員「精神病」者からの借金でしのいでいます。このままではニュース発行もままならない事態となります。今後も助成金申請や有料ニュース購読者の拡大などの自助努力を重ねていく決意でおりますが、なにとぞカンパ要請にお応えいただけますようお願いいたします。余裕のおありの方はぜひ有料購読者拡大にご協力下さいませ。ご請求があればニュース見本誌と購読呼びかけビラをお送りいたします。

また今回ニュース購読料請求の用紙の入っている方は、ニュース購読料をお振り込みいただけますようお願いいたします

2000年12月

全国「精神病」者集団

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現金書留

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