全国「精神病」者集団ニュース 2003年6月号

2003年6月発行の「ニュース」抜粋です。 一般定期購読は有料(年6回程発行1年分5000円)です。(病者である会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

全国「精神病」者集団
ニュース


ごあいさつ

梅雨を迎えました。うっとうしい毎日が続きますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

春先からの不調も少しは楽になった方もおられるといいのですが。

「心神喪失者医療観察法案」は6月3日参院法務委員会で強行採決されました。このニュースがお手元に届く頃にはおそらく成立しているのではないかと思います。

国連では6月16日から27日まで、障害者権利条約制定に向けた第2回特別委員会が昨年に続き開かれています。WNUSPも「精神病」者の国際会議として、参加しています。強制入院制度、強制医療制度撤廃にむけて、そして私たち「精神病」者もまた人であるという主張を掲げて参加しています。

反撃はすでに始まっています。「心神喪失者医療観察法案」廃案に向けて、そして私たちの人権奪還に向けて。

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(略)


私たちはより人間

藤井わらび

ねぇ、お姉さん

そんなに心配することも、そんなに怒ることもないのよ

だって、私たちのそばには神さまがいらっしゃるから

必ず報いられるものなのよ

明日は終戦記念日ね

多くの精神障害者が餓死していったわ

彼らは邪魔者として隅へ追いやられ

「生きる」ことを奪われた

今も光が当たらない

私たちは最期まで生きましょうね

浮かばれない先輩たちの分まで取り戻しましょうね

私たちが「生きる」社会は豊かになる

先輩たちの祈りを実現させましょうね

私たちは人間

より人間

(2001年8月14日)


「心神喪失者等医療観察法案」強行採決弾劾!

「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」が、6月3日、参議院法務委員会で強行採決された。審議では、この法案が精神障害者の利益にならず治安目的であること、再犯予測可能という根拠は証明不可能であることがますます明らかになってきていた。

一方で日本精神科病院協会(私立精神病院の経営者の集まり)の政治資金問題が暴露され、有事法制など治安強化のために人権の制限をもくろむ政府と、病院経営者の利権が生みだした悪法であることを政府与党は隠しおおせなくなっていた。

日精協会長の参考人出席の引き延ばしが困難となり、木村副大臣ら法案関連の自民党議員の政治献金をめぐる疑惑は決定的に煮詰まってきた。

それにもかかわらず。いやだからこそ6月3日、参議院法務委員会で野党議員の質問終了後、次回の日程を決めるのではなく、突如、自民党・公明党議員のだまし討ちにより採決を強行したのだ。政府・与党は恥を知るべきである。

<精神障害者差別立法を弾劾する!>

ここに再び三度、精神障害者は人間でない、人権はない、という差別立法が採決された。

通常、無罪・執行猶予、あるいは不起訴となれば、その人が拘禁されることはない。しかしこの法案下では心神喪失等を理由に無罪・執行猶予あるいは不起訴となったものを直ちに「鑑定入院」という名目で拘禁し、そして裁判官と精神科医の合議による審判により、特別施設に強制的に収容したり、通院を強制したりする処分が決定されることになる。法案の目的は如何に仮装しようと「再犯の防止」であり、処分の要件は「再犯のおそれ」である。

まさに精神障害者差別に基づく医療の名を借りた実質的保安処分だ。

参院の審議で政府は「法案は対象者に手厚い医療と社会復帰をうながすもの」と開き直り続けた。

医療を保障し社会復帰を促すのであれば、なぜ特別な法律が必要なのか? なぜ特別施設なのか? なぜ退院は主治医だけで決められないのか? なぜ高い塀と堀に囲まれた全室独房の病院が必要なのか? 特別施設そしてこの法律そのものが精神障害者差別を強化していくではないか? 重大な犯罪にあたる行為をして、再犯のおそれのあった精神障害者という三重の烙印を押されたものが社会に戻ることなど可能なのか? そもそも「再犯のおそれ」など予測不可能であり、さらに言えば「再犯のおそれのないこと」など絶対に証明不可能だ。治安的圧力のもと審判は拘禁に傾き、釈放などなかなか認められなくなる。法案は長期の隔離拘禁、そして抹殺しか生み出さないではないか? これらに政府は全く答えていない。

今現在入院治療が不要にもかかわらず、行き場がないため、精神病院を生活の場としている方たちが10万ともそれ以上とも言われている。政府ですら七万二千人を10年かけて退院させるとまで言っている。精神病院からの退院のこの困難の中で、いったん特別施設に拘禁されれば、釈放などありえず、施設は過剰拘禁となりさらなる増床が必然である。法案採決後、政府はなんと各県に特別施設を作るとまで言い出しているではないか。政府自身が被拘禁者の釈放などありえないことを認めているのだ。

<特別施設に措置入院患者も収容?>

恐るべきことに、修正案提出者塩崎泰久議員は、措置入院制度との有機的連携、この法は特別施設への措置入院患者収容を排除しない、とまで答弁している。日精協の精神病院で少しでも「厄介」とされたらここに送り込まれることとなる。日精協の長年の悲願、「扱いやすい患者だけ入院させ儲けたい」「厄介な患者は追い出したい」が達成することになる。

すべての精神障害者は、特別施設送り、という脅迫のもとで精神科医はじめ精神医療・保健・福祉従事者に隷属させられることになる。精神医療・保健・福祉は根底から破壊されてしまう。

一方精神医療・保健・福祉従事者のほうも、「再犯予測ができることを前提」としたこの法律のもとで、「犯罪防止」を任務として科せられ、精神医療・保健・福祉総体が治安の道具とおとしめられ、精神病院の開放化や退院促進、地域での精神障害者の生活はますます困難となっていく。

私たちは法案を精神障害者差別に基づく予防拘禁法であるという立場から、精神障害者、精神医療従事者、法律家、労働者、市民が集まりこの稀代の悪法を廃案にするために闘ってきた。たとえ数の力で強行採決がなされようとも、私たちはそれぞれの立場から精神障害者差別を許さず、共に生きる社会をめざし、今後も廃案まで闘いつづけることをここに宣言する。

2003年6月18日

つぶせ! 予防拘禁法4.20集会実行委員会

連絡先:自律支援センター さぽーと

〒113-0033

文京区本郷3-18-11TYビル501

FAX03-3816-2063


(略)


無年金障害者問題について

長野英子

実現するのかどうか?なのですが、少しは明るいニュース。

年金を14日に受け取った仲間も多いでしょうが、物価を反映した切り下げがあ

りました。将来どうなるか、不安を覚えておられる方も多いのではないかと思い

ます。

でも年金が取れるのはまだましで、発病のとき学生だった方や主婦で未加入だった方など、無年金障害者がたくさんいます。もちろんそもそも加入できなかった外国人も。

黒岩たかひろ議員のページに以下の報告が載っていました。坂口大臣も積極的な発言をしているのですが。

無年金障害者問題について

☆「無年金障害者」とは?

「無年金障害者」とは、国民全員に国民年金制度への加入が義務付けられていなかった時代、いわゆる制度のはざまの時代に保険料を払わなかったため、重度の障害を負っても障害基礎年金を受け取れず苦しむ人たちのことです。

わが国の障害基礎年金(月額1級約8万4000円、2級約6万7000円)は、20未満で障害を負うと20歳になった時から一律支給されますが、20以降に障害者になった

場合は国民年金に加入していなければ支給されません。坂口厚生労働大臣独自の推計によると、20歳以降の学生時代に国民年金に未加入だったり、在日外国人で年金に加入できなかったりして障害を負った無年金障害者は全国で10万人以上いるとされます。

☆「無年金障害者問題を考える議員連盟」

制度の網から洩れていたために不当にも年金受給できないこうした無年金障害者を早急に救済する必要があります。そこで、黒岩宇洋を事務局長とする「無年金障害者問題を考える議員連盟」が半年の準備期間を経て、2002年12月4日に設立しました。会長に八代英太元郵政相、顧問に津島雄二元厚生相、そのほか幹事は全政党にわたるという強力な布陣で、約100名を有する非常に大規模な議連となっています。将来的に年金財政が逼迫する見通しの中、官による弱者切り捨てを防ごうと党派を超えてスクラム体制を敷いています。

☆「無年金障害者問題を考える議員連盟」 第1回幹事会

☆第1回幹事会 開催

「無年金障害者問題を考える議員連盟」第1回幹事会が2003年2月13日(木)、

参議院議員会館の議員第2会議室で開催されました。本議連で事務局長を務める黒岩たかひろは、司会進行役を努めると同時に、冒頭、本問題に対する現在の厚生労働省の対応について説明をしました。その後、出席役員により議連の今後の活動方針について話し合われました。

以下、その決定事項をお知らせいたします。

☆決定事項

一.活動方針

1.基本方針

年金制度枠内での解決を基本とする

2.救済対象

無年金障害者のケースのうち、未加入者・滞納者を除く「適用除外の在日外人」「適用除外の在外邦人」「任意未加入の学生」「任意未加入の主婦」の4類型

*「未加入者」「滞納者」の2類型は、上記4類型救済後、福祉的措置で解決を図る

3.具体策

2004年度年金改正へ向けて骨格を作る

→「無年金障害者救済」項目を入れる

二.活動計画(今常会)

1.「第2回 無年金障害者問題を考える議員連盟」開催

第2回議連総会を3月20日前後に開催する。内容は、①関係者・関係団体からヒアリング、②厚労省担当局長より調査報告と来年度の年金体制についてヒアリング

2.迅速な対応

厚生労働省の調査報告に対し、申入れ書提出等、迅速なアクションを心がける

3.委員会質疑

厚生労働委員会に所属する議連の役員又は会員によって、委員会一般質疑で無年金障害者問題を一斉に取り上げる

4.意見書の提出

今夏発表の厚生労働省による実態調査の結果を踏まえ、坂口大臣と面会し、意見書を提出する 以下略

黒岩たかひろ議員のサイト

http://takahiro.025.ne.jp/kokkai/event.html


資料

障害者の権利と尊厳を強化し守る包括的かつ完全な国際条約についての第2回国連特別委員会への提言

世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク

2003年6月10日

条約の必要性

平等な人権を組織的に保障し、そしてそれに焦点を当てた人権条約を障害者は必要としている。現在、ほかの人権条約も障害を理由とした差別を禁止してはいるが、差別禁止を実現するには不十分である。障害者が参加して作られる条約は現実の人権侵害と差別に焦点をあてることが可能となる。

原則

条約は国家の義務について定めるものでなければならないが、また必要な社会的構造的変革をももたらすものでなければならない。条約は障害者のさまざまな権利に焦点をあてなければならない。そしてそれらの権利は平等で自己決定(自分自身で決定を下すという意味において)に基づく社会的連帯のもとで行使されることに焦点を当てるべきである。

はじめに

WNUSPはこの条約で、従来のパターナリスティックな基準に基づいた規定がされるのではないかと案じている。そうした基準はこの条約の解釈に混乱をもたらしかねない。障害に関する世界行動計画と基準規則、同時に障害に関する中米条約、関連するILO(国際労働機関)条約などは障害者の人権条約に先立つものであると認識されなければならない。

基本的条項 すべての規定の上位にあること

条約は、以下に引用する文章によって従来の法律を無効にし確実にそれに代わるものでなければならない。以下は「なにが条約に含まれるべきか?」というメキシコシティーでの専門家グループ会議で出された文書に含まれている。

「条約の条文に違反しあるいは条文の適用を制限する、いかなる国際的国内的法の規定も、いかなる行政上の規則や決定もまず無効とみなされなければならない。」

基本的条項 対象者をどう定めるか

条約の性格が、人権条約であり非差別的なものであること、すなわち障害を理由とした差別からすべての人を保護することは重要である。それゆえ障害にもとづく差別の定義が重要となる。障害者差別撤廃中米条約、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、そしてキトにおけるセミナーで参加者による文書による提起に基づき、われわれは以下の定義を提案する。

障害者に対する差別

a 障害者に対する差別とは、障害、障害の記録、以前の障害より生じた状態、予測される障害に基づいた、過去か現在かを問わない、障害者の人権、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的自由の平等な条件での認識・享受・行使を制限もしくは否定する効果や目的を持ったあらゆる区別、排斥、制限を言う。

b 物理的環境の障壁あるいは心理的態度の障壁を除去できないこと、または市民的、文化的、経済的そして社会的生活における諸活動への完全参加と希望するサービスを受けることを不可能にする新たな障壁を作り上げること、これらもまた差別となる。

c 上記のaあるいはbで定義された差別を受けたものは誰でもこの条約による救済を求められる。

障害者及び障害そのものの定義は条約作成過程のいずれかのときに必要とされるであろうが、現在はまだその緒についたばかりで、障害者団体間および障害者団体と政府代表団との間でさらなる議論が必要であると考える。

われわれが最も重要だと考えるの上記の定義がすべての障害者すべての障害の形態を包摂するということである。そして医学的用語と診断によって障害を規定する障害者と、政治的社会的範疇の問題としてのみ障害を規定する障害者の双方に受け入れられる定義が求められている。

障害に関するいかなる定義であってもその拡大に向けた論議、たとえば障害を構成している機能的制限についての拡大と称するような議論、を引き起こすものでないこともまた重要である。

基本的条項 国家の義務とは何か?

条約は国家に対して反差別法を作ることそしてそれ自身が差別を存続させているすべての法律を廃止することを求めなければならない。

条約で保障された権利については国内審査機関で救済を命ずることができるようにならなければならない。また非政府機関による権利侵害からの保護についても国家の義務とされなければならない。こうした規定は人権条約において必須のものであり、すでに採択されたほかの条約における国家の義務と同様でなければならない。

基本的条項 差別撤廃へ向けた積極的(原語はaffirmative アファーマティヴ…長野注)政策あるいは賠償的な政策はこの条約において認められるか?

a 「特別に権利を侵されやすい条件下の障害者」に特別に焦点をあてることに対する懸念

権利を侵害されやすい状況下の障害者への特別な権利保障条項を条約に入れることに関し懸念を表明している人は多い。こうした特別な条項を障害者の中の一定部分を分離したり、その部分に対して低い人権基準を適用するための口実としてはならない。

他方で障害に加え、人種、性、年齢などといった因子をもとにした差別をも重複している場合については焦点をあてるべきこととして明言されなけばならない。

b差別撤廃に向けた積極的(アファーマティヴ)対策あるいは賠償的対策とは何か?

恒久的な差別撤廃に向けた積極的対策あるいは賠償的対策という概念は問題が多い。そうした対策があれば、障害者が完全に社会に統合されることは決してないということになりかねないからである。差別撤廃に向け積極的対策や賠償的対策といった概念に代わりうるものがあるとすれば、ユニバーサルデザイン(訳注1)、障害者への合理的な配慮、そして政策決定のあらゆる面に障害を組み入れること(原語 main- streamingメインストリーミング…訳注2)といった体制変革であろうとわれわれは考える。

あらゆる面で障害者にもそうでない者にも社会は平等に開かれたものとなるには、ユニバーサルデザインという概念が一般的政策決定についても拡大適用されるべきである。

支援的サービスや装置器具への権利は賠償とみなされる必要はない。世界人権宣言にはすでに「すべて人は、……中略……自己の尊厳と自己の人格の自由な発展とに欠くことのできない経済的、社会的及び文化的権利を実現する権利を有する」という条項がある。障害者の権利条約は、障害者自身の専門的知識の光のもとで国家の義務の本質をこの観点から明確にするであろう。

国家の義務は障害者の自己決定(自分自身による選択の権利)といかなる形でも衝突する形で解釈されてはならない。

特別な条項

障害に基づく差別なしに自由である権利は平等な社会参加に向けては重大なことである。施設や病院あるいは家族の家へ拘禁は排外のもっとも極端な形態である。

精神と肉体の自律性の権利、望まない治療の拒否権も同様に重大である。「ノー」という権利は精神と肉体を健全に保つ中心的なものだ。特別報告官は以下の言葉で基準規則に補足されるべき提案として権利を規定している。

国家は他の市民同様の治療への同意と拒否の権利を含む自己決定権を認識すべきである。

国家は医療機関および医療者個人が、インフォームドコンセントの要件、治療拒否権そして施設への強制収容に応じない権利を含む自己決定権について障害者に対し告知することを保障しなければならない。国家はまた望まない医学的あるいは関連した介入そして障害者に押し付けられている矯正手術を防止すべきである。

*障害者権利条約は望まない医療およびそれに関連した介入を拷問、残酷で非人道的または品位を汚す処遇または罰の一形態として禁止すべきである。障害者に対して行われる、尋問、強制、脅迫、罰を目的とした、あるいはいかなる形態であろうと差別を理由とした医療およびそれに関連する介入もまたとりわけて規定され禁止されなければならない。

*条約は障害のみに基づくまたは障害をその一つの理由とした拘禁や留置はいかなる形でも禁止すべきである。

*どのようなものであれ治療やサービスを受けるか拒否するか決定する権利もまた保健と社会サービスの条項で規定されなければならない。決定に必要な情報提供を保障する条項により、そして障害者が自分自身に有益だとみなす形のサービスを適切に提供することによって、この権利は保障されなければならない。

*保健とリハビリテーションの権利についての表現を工夫するなら、表現は疾病や障害の治療という医学用語より広くなければならない、それはあらゆる種類の治療と健康法の選択を許容し、健康志向のものでなければならない。

*条約には障害者の家族を作り維持する権利条項、そして障害者の個人情報のプライバシー権の条項が含まれなければならない。

*障害者の雇用される権利は合理的配慮、雇用のあらゆる場面での非差別と、同一労働同一賃金の要件を含まなければならない。雇用される権利は、能力を過小評価し差別的に固定化する隔離された職場ではなくて統合された経済的参加という取り組みでなければならない。

*住宅は物理的、法的、社会的経済的に障害者が手に入れられるものでなければならない。障害者の一定のグループは公営住宅に入る資格がないと排除されている国もある。これは法的障壁の一例である。多くの国で、住宅費は障害者にとって手の届かないものであり、彼らは他の人の家に住むとか施設にあるいは路上に住むことを強いられている。社会的差別もまた住居を獲得するわれわれの能力を阻害している。すべての障害者に対し生存のための基本的必需品入手の保障を宣言すると同様に、条約はとりわけ住居の必要性を宣言すべきである。施設収容あるいは同じような隔離された住まいは、住居保障に代わるものとして許容されてはならない。

履行と監視

WNUSPは特別報告官と専門家パネルと同時に、政府報告書、不服申し立て機関(団体としてそして個人として)、NGOの参加、そして条約機関の調査権限を含んだ包括的な監視機構を提唱する。また障害を統合するための共同作業を目的で開かれる、その発展と政策決定の政府間の会議においては、NGOをとおしあるいは他のやりかたででも障害者を参加させなければ何の成果もあげられないと確信している。これは他の条約の監視と履行においても有効と証明された方法である。

監視委員会は国内障害者組織の指導者である障害者の中からあるいは障害者の権利の強化と保護に能力と実績のある障害者の中から選ばれた多様な専門家グループによって構成されなければならない。

障害者はまた条約の監視と履行を監督する国内組織に中心的かつ影響力を持って参加する必要があるだろう。

組織紹介

世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワークは精神医療ユーザーとサバイバーの国際組織である。WNUSPはユーザー・サバイバーの人権の主張し、ユーザー・サバイバーのために国際的に発言し、すべての国でユーザー・サバイバーの運動を強化しそして国際的にユーザー・サバイバー組織および個人を連携させている。

精神医療ユーザー・サバイバーとは、狂気あるいは精神保健上の問題を体験し、また精神医療・精神保健サービスを使ってきたまたはそこから生還したと者と自らを定義している人である。監禁と強制医療を課せられることは有害で生命を脅かすものだという認識しているので、われわれは「サバイバー(生還者)」と自称している。

WNUSPはユーザーとサバイバーが自らの存在の認知を求め、自らの代表を求めていることから生まれ育ってきた。世界精神保健連盟の2年ごとの会議での集会でWNUSPは生まれたが、いまや恒久的な国際組織である。

WNUSPは1991年世界精神保健連盟のメキシコ会議で世界精神医療ユーザー連盟として結成された。1997年には名称を変更し現在の名称となった。1999年にチリ・サンチャゴでの国際集会の計画のために国際障害者基金から最初の基金を得た。2000年にデンマーク・オーデンスに組織事務局が作られ、2001年に34団体12カ国からの参加を得てバンクーバーで第1回総会を開き、WNUSPの規約を採択した。

現在30ヶ国70以上の団体会員がいる。また個人会員制もあり公開のメーリングリストとホームページがある。

(仮訳 長野英子)


(訳注1)ユニバーサルデザイン

障害者非障害者の区別なく、誰にでも利用しやすいデザイン、さらに仕組み。

たとえば建物を立てるときに正面に階段を作り、バリアフリーということで、スロープも脇につけるというのではなくて、最初から、すべての人が使えるように、階段ではない入り口を工夫する。

(訳注2)メインストリーミング

これはとても重要な概念です。現段階での長野の理解を書いておきます。一応「組み込む」という訳をしましたが、すべての差別や人権問題に対応するときに、どう政策を立てるべきかの現段階では最良の概念ではと考えます。

ユニバーサルデザインとも共通のことですが、今ほとんどすべての政策は、健康で壮年の男性を「人である」として立てられています。そしてそこからこぼれる、たとえば女性、子供、障害者、高齢者などは特別の政策で拾っていくという体制と考えていいと思います。日本では外国人も「人」の中に入っていないでしょうが。

たとえば精神保健福祉手帳を巡る議論の中で、権力への登録制度である、所得保障が原則、強制収容法である精神保健福祉法に組み込まれているのは問題などという議論がありました。

なんらかの経済政策を立てるときに、人権と障害ということをメインストリーミング(組み込む)とすれば、弱者と呼ばれる人に対してたとえば、障害者手帳を持つ人には公共サービスの値引きをして救済しようなどという話にはならないはずです。最初から人権と障害を組み込んで政策が立てられるわけですから、弱者に特別の救済措置を作る必要はないはずということになるわけです。

あまりに理想主義的と思われるかもしれませんが、この文章で、アファーマティヴな政策や賠償的な政策への批判をした上で、それに代わるものとしてはメインストリーミングとユニバーサルデザインの原理による、体制変革しかない、というのは上記のような意味だと私は理解しています。


編集後記

@同封の毎日新聞全面広告は5月25日に全国版に掲載されたものです。5月連休明けから、2週間ほどで目標額を超えるカンパが集まりました。多くの方の廃案への思いが集まった広告です。ぜひご覧下さい。

@皆様にご協力いただいた「心神喪失者医療観察法案」を廃案への署名は、73,998名集まり、魚住参院法務委員会議長あてに民主党、社民党、共産党議員のご紹介で請願署名として提出いたしました。多くの方のご協力に感謝いたします。

@法案廃案闘争に追いまくられた2年余り、合同検討会その他の保安処分攻撃との対峙から言えば3年余りの闘争でした。その間に転居まで重なりさすがに疲労困憊。皆様へのお手紙も滞っており恐縮です。いま少しお待ちくださいませ。

@7月18日締め切りで、厚生労働省が「診療情報の提供等に関するガイドライン(案)」に関する意見募集を行っております。詳しい情報が必要な方は窓口までお申し出下さい。インターネットをされる方はこちらから。
http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/p0617-1.html

(略)

@国連障害者人権条約、そしてそれに対するWNUSPの取り組みなどについての資料をご希望の方は窓口までお申し込み下さい。インターネットをなさる方は長野のページに掲載中です。目次欄のWNUSPのところあるいは原稿欄のWNUSPの取り組みのところをご覧下さい。
http://www.geocities.jp/jngmdp/



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