全国「精神病」者集団ニュース 2006年5月号

2006年5月発行の「ニュース」抜粋です。 一般定期購読は有料(年6回程発行1年分5000円)です。(会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

全国「精神病」者集団
ニュース


= ごあいさつ =

初夏の日差しが感じられる季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょう。

全国「精神病」者集団はこのたび東京中野に事務所を構えられることになりました。

運営委員も決まり、毎月2回(第2第4木曜日)のインターネット電話会議を重ねることで、いままでより早く会員の皆様からの提起に応えられることになります。自立支援法施行の中で、さまざまな困難に直面している仲間も多いことと思います。役所の窓口は幾重ものバリア(私たちをはばむ壁)を構えて私たちの要求を拒もうとしてきています。支援の専門職すら、厚生労働省の方針の下「公平・中立」という立場を拒めず、私たちの利益のために働くというより、私たちの要求を裁き、拒む役目を引き受けようとしています。一人一人の要求をかなえていくためにはますます仲間同士の支え合いが必要です。中野事務所では、「障害者権利主張センター中野プロジェクト」を準備中です。生活保護、年金、ヘルパーなどなどさまざまな福祉要求、医療現場において精神科医やソーシャルワーカーへの意思表示「イエス、ノー」を伝えていくための支援などなど一人一人の人権を一人一人が主張できるよう支えあう活動をしていきたいと考えています。

多くの仲間の参加と多くの方のご支援を訴えます。

★お手紙、各地のニュース、住所変更、ニュース申し込みはすべて
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携帯電話でも見られます。

運営委員会委員のご紹介

北は青森から南は宮崎まで、年齢層も二十代から六十代まで、11名の方が運営委員となってくださいました。この年齢層の幅の広さが、何より心強いと考えております。インターネット電話会議での組織の意思決定という初めての試みに挑戦中です。一人一人の会員の声に応えていける体制をめざして、試行錯誤中です。会員の皆様の声をお寄せください。

北から順に自己紹介を掲載します。

(略)


運営委員会活動報告

運営会議で4月に決定した文書 二つ

共謀罪に関する全国「精神病」者集団声明、会員の公設民営プールでの対応の問題点についての質問状。

共謀罪で、セルフヘルプグループ活動もピアカウンセリングも「犯罪」とされる私たちは仲間の絆を断ち切る共謀罪成立を許しません

共謀罪とは、実際に犯罪が行なわれなくても、犯罪について話し合っただけ、その話し合いそのものが「犯罪」とされるというとんでもない法律です。 しかし全国「精神病」者集団の日常的活動を振り返ってみると、私たちの活動の基盤そのものが共謀罪として「犯罪」とされかねないということになります。

いま厚生労働省もまた各地自治体も「ピアカウンセリング事業」「セルフヘルプグループ活動の育成」ということを盛んに言っています。突然カタカナ文字の導入がされていますが、これらは、それぞれの各地の仲間が最初に出会い会を始めたときから、自然発生的に行なってきた活動です。すなわち同じ「精神病」という体験を共有しているものが、専門職対利用者というのではなく、平らな関係の中で体験を分かち合い、そして相談をしあったり、支えあったりするという活動です。

仲間による相談=ピアカウンセリングは、まず体験の分かち合いとそして医療の名に値しない医療の現実、毎日の苦痛、あるいは被差別体験、経済的苦しさなどなどの苦悩と怒りの共有とそれらへのお互いの共感を根底におきます。そして患者会の集まりはまずこうした共感を出発点としています。

そこではたとえば「あの医者は許せない痛い目にあわせよう」「あの精神病院は何とかしなきゃいけない、みんなで押しかけよう」などという発言も当然出てきます。

そうしたときに、「そんなことはしちゃいけません、犯罪になりますよ」などといって発言を押さえ込んでは、ピアカウンセリングもセルフヘルプグループ活動も成り立ちません。まずひたすら仲間の思いを聞く、そしてその思いへ共感をすることがこれらの活動の出発点です。孤立のままに苦悩していたものが、共感によって仲間の絆を確認すること、これこそが私たち障害者運動の基盤です。

共謀罪の規定では、言葉にして「そうだそうだ、一緒にやろう」とまで言わなくても、黙って聞いていること自体が「共謀」とされ、「犯罪」とされてしまいます。「痛い目にあわせよう」というのを「うなずいて聞いていた」ということが「傷害」の「共謀罪」となります。あるいはみなで抗議のために精神病院に押しかけようというこという結論が議論の結果でたとしても、「組織犯罪処罰法 組織的威力業務妨害」の「共謀罪」ということになります。たとえ実際にはその行動が行なわれなかったとしても、です。

すでに大田区では支援費の移動介護時間をいきなり月90時間以上削られた身体障害者の鈴木敬治さんが障害福祉課の窓口に介助者や支援者といっただけで、大田区は「違法状態と認定する」としていきなり窓口からビデオカメラを鈴木さんたちに向けました。

大田区の認識に従えば、行政に要求に行った、あるいは悪徳精神病院や精神科医を取り囲んで抗議したというだけで、「違法行為」ということなのです。

精神障害者団体は犯罪組織ではないから大丈夫、とはなりません。法案では二人以上は組織、そしてサークルでも、企業でも、市民運動体でも、労働組合でも共謀罪の対象となりうるのです。当然にも障害者団体も対象となりえます。

そしてもっと恐ろしいことは、こうしたピアカウンセリング活動やセルフヘルプグループ活動に参加していた誰かが、「おおそれながら」と警察に自首するとその人は免罪され、グループは共謀罪という犯罪を行なったということになるという規定です。

これでは「精神病」者仲間が集まったとしてもお互いに疑心暗鬼となり、ピアカウンセリングやセルフヘルプグループ活動自体が成立しないということになります。

私たちが生き延びるために仲間との絆は必須のものです。私たちの絆を断ち切る「共謀罪」成立を私たちは決して許しません。

2006年4月13日

全国「精神病」者集団


公開質問状

前略

私ども全国「精神病」者集団は全国の「精神病」者個人団体の連合体です。

貴体育館の窓口対応について会員より以下の問題指摘がされましたので、確認のため以下質問させていただきます。

昨年秋に会員がプールを利用しようと訪れたところ、身体障害者手帳および愛の手帳所持者に対しては割引があるという表示に気づき、窓口で精神障害者手帳所持者にも割引があるかと質問しました。

ところが窓口ではいきなり、「わたしのいうことがわかりますか?」と質問したとのことです。さらに以下の対応があったと会員から訴えられております。

いったいどういう合理的理由があるのか不明ですので、それぞれについてご説明いただきたく質問します。

1 いきなり「私の言うことがわかりますか?」という質問をされたそうですが、これはすべての窓口に来た人に問いかけることとなっており、マニュアルとなっているのでしょうか?

2 さらにプール使用時に、職員の指示が理解できるか、とも質問されたとのことですが、これもすべてのプール使用者に確認することとなっているのでしょうか。

3 また利用者が出入りしている公衆の面前で、「どういう症状ですか」とまで質問されたということですが、これもまたすべてのプール利用者に質問することになっているのでしょうか。

4 利用割引の案内掲示は身体障害者手帳および愛の手帳となっているとのことですが、精神者手帳所持者について案内されていないのはなぜですか。

5 身体障害者および愛の手帳所持者については規定がないにもかかわらず、精神障害者手帳所持者のプール利用については登録手続きが必要とのことですが、なぜですか。

6 精神障害者手帳所持者については登録した後、その事実を職員全体で共有し確認するとのことですが、それは何を目的としているのですか。

以上6月1日までに文書を持ってご回答いただけますようお願いいたします。

2006年4月14日

東板橋体育館御中

全国「精神病」者集団


以上に対して板橋区からは回答(というか回答にならない回答)がきています。唯一の改善点は、精神障害者手帳についても割引するという掲示を行ないます、という点だけでした。列挙した質問には回答がありません。


保安処分法施行1年!

心神喪失者等医療観察法のある社会を改めて問う7・15集会

■日時 7月15日(土)13時~17時

■場所 南部労政会館

電話番号03(3495)4915

■交通 JR山手線 大崎駅 徒歩3分

※連絡デッキを進み、専用エレベーターで1Fへ降りる。

■会場費 300円(チケットあります)参加はできないけれどカンパの意味でチケットだけ購入という方も大歓迎です。

■集会概要

基調報告 龍眼さん

(心神喪失者等医療観察法[予防拘禁法]に反対するネットワーク)

シンポジウム「心神喪失者等医療観察法のある社会を改めて問う」

共催

心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)に反対するネットワーク

国立武蔵病院(精神)強制・隔離入院施設問題を考える会


全国の仲間の声を7・15集会に集めよう

いろいろな集会が東京でのみ開かれており、経済的にも体力的にも参加したくても難しいという仲間が多いと思います。そこで、会員の仲間の声を7・15集会までに集め、それを集会で配布したいと思います。

医療観察法のある社会で生きる私たちの思いをそれぞれに書いていただきたいと思います。締め切りは6月15日、字数は1行から、1000字まで。全国「精神病」者集団の連絡先までお送りください。

メール ファックス 03-3738-8815

郵便 〒164-0011 東京都中野区中央2-39-3 絆社

多くの方の声をお待ちしています。


久里浜アルコールセンター 医療観察法施設内覧会

東京 K

3月30日、神奈川県の久里浜アルコール小センター内に作られる保安処分施設(医療観察法の基に設立される病院)の内覧会に「処遇困難者」専門病棟新設阻止共闘会議の下に闘争参加してきました。

この施設は、今年の4月1日に開かれるそうで、15床のベッド数があります。

ここには「心神喪失」いわゆる「物事の是非を判断する能力」や「判断に従って行動する能力」が失われている精神状態だったとされるいわゆる「触法精神障害者」が収容され、同時に「心神こう弱」いわゆる「同様の能力が著しく減弱している」等の状態で、裁判官と精神科医師等の判断の下「入院=収容」される施設である。センターの課長は、内覧会を開くにあたって、厚生労働省の障害保健福祉部が作ったパンフを配布し、7枚つづりの案内書を参加者に渡した。

参加者の中には、防犯協会の地元の人間もいて、私たちにパンフのないように従って案内するのではなく、たった1時間の間に、ぐるりと病棟=指定入院医療機関を見せてただそれだけで終わりというアリバイ作りだけの内覧会に終わった感じがした。

私は参加して感じたことは「これで対象者に特別が医療が施されるのか」と疑問に思った。秒党内は無機質で、広い運動場もなく、高い警備用のフェンスに囲まれ、一人個室に押し込まれた触法「精神障害者」は、社会防衛論の下「危険」な存在として差別され、人間扱いされずに、まるで監獄のような施設に、いつ退院できるかも保障されずに押し込まれるのだ。

「心の病気」である精神「障害者」は、誰でも、社会が帝国主義社会である限り発症する。社会因といえる原因の「病気」である。この病気に根本的治療をせず、治安対策のためだけに小泉首相=政府与党は、暗黒の政策を「精神障害者」政策として新たな、アジア侵略・イラクは兵国内体制として、この悪法を作り上げ施行している。

戦前の保安処分策動の教訓を見るまでもなく、ナチスの刑法理論を手本にした精神障害者解放闘争に敵対する「心神喪失者医療観察法」を廃止に追い込もう。


資料

医療観察地域処遇運営要領の調整せず

県センター協議不参加を表明

心身喪失者等医療観察法対象者の地域処遇の枠組みを協議する県医療観察制度運営連絡協議会が、3月10日奈良市で開かれましたが、主宰した法務省奈良保護観察所(江崎博信所長)と、県や保健所の意見が真っ向から対立し、調整作業をしないまま終わりました。県精神保健福祉センターは、同協議会への今後の不参加を表明。関係者合意による地域処遇の運営要領づくりは暗礁に乗り上げた形です。

現在県内では同法により1名が鑑定入院中で、併せて今後の成り行きが注目されます。

会合は一昨年6月の第1回に続く2回目で、県健康増進課、県精神保健福祉センター、各保健所、入院・通院指定医療機関、県精神障害者地域生活支援団体協議会のほか、近畿厚生局、奈良地裁、同地検から29名が出席しました。

保護観察所は会議に先立ち「地域社会における処遇に関する運営要領試案」を出席者に事前送付しました。当日の会議について、県が情報開示した職員の復命書によると、会議ではこの試案をめぐって県や県精神保健福祉センター、保健所から異論が相次ぎました。

県は「合意に至っていない事柄が、合意事項のようにして数多く記載されている。心外であり、これでは協力できない」精神保健福祉センターは「連携と指示は別。センターは観察所の指示で動く立場ではないにもかかわらず、指示の文言が方々にある。センター名の削除を求める」

保健所からは「観察法業務は保健所の本来業務ではない。観察所の下部機関であるかのような内容は、承諾できない」などと発言しました。

山副亀久生観察課長の話

地域の協力は必要と考えている。調整作業の今後の日程は、今のところ決まっていない。


解説

「地域」はなし崩し実施を警戒

心身喪失者等医療観察法は、殺人や傷害などの事件を起こし、心神喪失が理由で不起訴や無罪になった人を、強制的に入院や通院させ、社会復帰を目指すもので、昨年7月に施行されました。

2月10日現在全国での申し立て件数は177、うち審判決定は114で、入院71、通院 28、不処遇11、却下4となっています。入院先は武蔵、花巻、東尾張、肥前、北陸の5指定医療機関です。

県内では大和郡山市小泉町の松籟荘病院が入院医療機関に指定されていますが、地元の反対で専門病棟は未着工です。別に4病院が通院医療機関に指定されています。

保護観察所側は対象者の地域処遇について、県や精神保健福祉センター、保健所、社会復帰施設の協力を求めていますが、それは「関係機関の連携と『情報共有』」を強く前面に出す法務省のガイドラインに基づいています。本人同意の原則をあいまいにしたまま、市町村にまで個人情報の提供・共有化を求め、さらに同法の普及啓発について、場所や方法を具体的に指示するものにもなっています。

一方、サービス行政機関である保健所や民間の社会復帰施設は「個人情報を本人同意なしに他の機関に知らせることは守秘義務違反」と警戒、「業務で依拠する法律は精神保健福祉法と障害者自立支援法であり、医療観察法で仕事をする立場にはない」としています。

県健康増進課は、この考え方に沿った試案を事前に観察所に示しました。しかし送付資料には観察所側の試案だけが記載され、県試案の欄は3箇所を除き斜線引きになっています。席上県精神保健福祉センターが求めた9箇所の運営要領修正も、取り上げられませんでした。

さらに、観察所案にも県案にも構成員として記載のない地裁、地検職員が、説明なく会議に参加し、出席者名簿にも載っています。運営要領案を検討せず、医療機関の主題外の質問を取上げるなど、強権的ななしくずし的運営に、地域関係者の警戒感は高まるばかりです。(小林)

マインドなら 2006年4月1日号より


少数者のためのブックガイド 第3回

「ディアスポラ紀行」 徐 京植(岩波新書 777円)

三枝 弘

「在日」の著者は書く。「多数者たちが固定的で安定的と思い込んでいる事物や観念が、実際には流動的であり不安的なものであるということが、少数者の目からは見える」。

本書で取り上げられた、高山昇「大地の歌2002」、文承根(ムン・スングン)「活字球」、シリン・ネシャット「歓喜」、ザリナ・ビムジ「アウト・オブ・ブルー」は胸を指すほど痛く、かつ美しい。

これが現代なのだ。

マネ、モネ、セザンヌ、マティスといった「教養主義的美術」はすでに私たちの感動を誘わない。ちょうど日本が140年かけて「国民国家」は作ったが、人権の貫徹される「社会」は作らなかったように。

著者は政治犯であった兄二人の救援活動から始めて、今日、政治、社会、文学、美術、音楽を通した独自の「世界観」を創出した。


集会案内

【「脳死」を人の死とする「臓器移植法」改悪を考える緊急院内集会第3弾】

日時:2006年6月1日 午後3:00~5:00

会場:衆議院第一議員会館第4会議室

(地下鉄丸の内線・千代田線 国会議事堂前下車3分)

冠木克彦弁護士

―脳死移植・人権救済申立てと日弁連勧告―

―肝臓病患者として脳死移植を考えるー

主催:「臓器移植法」改悪に反対する市民ネットワーク

医療観察法を許すなネットワーク第12回連続学習討論会

テーマ 医療観察法下の障害者自立支援法

提起 龍眼

日時 5月28日(日) 午後1時から

場所 中野区立環境リサイクルプラザ

03-3389-0600

JR中野駅北口から徒歩15分

関東バス(中野駅~江古田駅、中12系統)中野5丁目下車、徒歩3分

国際興業バス(中野駅~池袋駅、池11系統)中野5丁目下車、徒歩3分

お問い合わせ先 心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな! ネットワーク

携帯電話 090-8432-1091

kyodou-owner@egroups.co.jp

(携帯電話は留守電になっています。電話番号をお吹き込みください。

折り返しご連絡を致します)

(略)




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