全国「精神病」者集団ニュース 2007年6月号

2007年6月発行の「ニュース」抜粋です。 一般定期購読は有料(年6回程発行1年分5000円)です。(会員の購読は送料も含めて無料となっております。)

全国「精神病」者集団

ニュース


= ごあいさつ =

今年も徐々に暑くなり始めました。いかがおすごしでしょうか。私は暑いのが苦手です。寒いのは服を着れば何とかなるけど、暑いと服を着ても服を脱いでも暑いからです。そもそも、薬を飲まなくなってから、代謝が良くなり夏が厳しくなったようにも思います。

さて、ふと見ると、そこにはヘルプサインがあります。強制されて傷ついた、仲間の声なのかもしれません。全国「精神病」者集団の本来の業務はそういった仲間と自由を取り戻していくことだったと思います。しばらくの間、それがしっかりとはできていなかったかもしれません。これから、全国「精神病」者集団本来の業務も、もっと考えていかなければなりません。

ニュースの編集員の問題もあります。現実的には編集員は不足していると思います。こういった、普段の活動以外にも、海外で行われる委員会への出席が重なれば、徐々にオーバーワークしつつもあります。

少しずつでも、多くの仲間の参加を実現できるように、いろいろと形を作っていかなければならない時期となりました。

皆様、応援よろしくお願い申し上げます。

陰の声 精神障害者の受給にとってはどれだけのことができるかまだ私もわかりませんが、それでもなお生き延びるために使える情報は皆さんにお知らせください。しかし生活保護の申請に法律家が出て行かないとならないというのは情けない話。「専門性」を主張する精神保健福祉士は、社会福祉士は、いったい何をしているんでしょうか? 福祉の専門家ではなかったんでしょうか?(英子)

全国「精神病」者集団連絡先の変更です。発送名簿の変更をお願いいたします。
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夏季カンパのお願い

うっとうしい梅雨の季節を迎えますが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 皆様のご協力のおかげで、全国「精神病」者集団財政は06年度も黒字となりました。次ページの会計報告をご覧ください。

全国「精神病」者集団の活動は、国際的には世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワークへの参加、国内的には日本障害フォーラムへの参加を通し、障害者人権条約の国連での採択というかたちで結実いたしました。

中野の事務所では、日常的に福祉や強制入院の被害者からの相談を受け、役所や医療機関への同行や、精神科病院への面会活動などを行っております。会計報告をごらんいただければわかりますように、現在人件費はおろか、こうした活動への交通費も活動家の自己負担で行っております。多くの活動家がこうした自己負担に耐えられず、訪問や相談に応じられない悩みを抱えております。また各地からの悲鳴に対応するために手紙のための通信費もかなりかかっております。

現在財政強化を図り、少なくとも相談活動や同行活動への交通費くらいの保障を行いたいと考えてはおります。

ぜひ全国「精神病」者集団ニュース有料購読の拡大、パンフの販売、絆バックナンバーの販売などにご協力いただけますようお願いいたします。

またこの経済状況かでまことに恐縮ですが、皆様のカンパをお願いいたします。

口座名義 絆社ニュース発行所

口座番号 00130-8-409131


全国「精神病」者集団 2006年度会計報告

(05年4月1日から06年3月31日まで)

(略)


心神喪失者等医療観察法の実態

東京 長野英子

政府は当初全国24箇所(700名)の入所施設を建設するとしていたが、協力する病院が少なく、07年3月1日現在で、現在機能しているのは国立病院機構の10箇所(国立精神・神経センター武蔵病院、国立病院機構花巻病院、同東尾張病院、同北陸病院、同久里浜アルコール症センター、同さいがた病院、同小諸高原病院、同下総精神医療センター、同肥前精神医療センター、同琉球病院)、建築中が、国立病院機構榊原病院、同松籟荘病院、同賀茂精神医療センター、同菊池病院の4箇所、さらに残り10箇所を都道府県病院でまかなうとしているが、現時点では予定も含め4箇所(岡山県立病院、東京松沢病院、大阪府立精神医療センター、長崎県立精神医療センター)のみとなっており、収容施設は圧倒的に不足している。

これに対し国は都道府県立病院では当初の基準30床単位を切り下げ半数の15床、あるいはそれ以下の独立した病棟でなくとも病床単位でこの法律の収容施設として認めるとして、全都道府県立病院に建築をと都道府県に働きかけている。

昨年12月末現在の各都道府県別の申し立て状況および収容施設の実態は以下に掲載中。インターネットをお使いでない方にはコピー代送料実費でお送りいたします。

https://nagano.dee.cc/tekiyou.htm


情報共有システムによる障害者権利条約策定

全国「精神病」者集団運営委員 K

精神保健福祉コンシューマーのKです。青森県で活動をしております。私は、精神障害のセルフヘルプ活動による就労体制を今年一年密着研究し、地方シンクタンクで仕事をしました。そこのシンクタンクはかなり過激な方が経営している為、時たま話が盛り上がると左翼みたくなります。

そこで私が学んだ事は、社会全体に広がる問題は、基本的に情報の共有をしていない事だそうです。福祉にしても、福祉が問題なのではなく、情報の共有の欠如が問題であるという事です。

さて、2006年12月の国連総会で採択された、障害者権利条約ですが、国内法の策定がいよいよ課題となりました。ここで、「障害者のトップ」がこの法律を作ってしまうことは、従来の福祉と変わらないシステムで創られる事になります。いわば、一部の人の意思。いままでの自立支援法にしても、一部の人の意思で創られて、その人達にとっては良い法律であり続けました。しかし、一方は悪夢です。

すべての人の参加こそが、それらの問題を解決します。

そこで、権利条約の国内法の策定には、「日本中の障害者すべて」の参加が求められます。100%は物理的に難しくはありますが、少なくとも、権利条約という言葉はだれもが知っているくらいの状態までもっていく必要があります。

そのためには、「政策マーケティング」の導入こそが、日本中の障害者の意見収集が可能になります。青森県おいらせ町(旧下田町と旧百石町の合併)では、すでに自治体の憲法である自治基本条例の策定に「政策マーケティング」を導入し、おいらせ町民が条例をつくった例もあります。

権利条約がすべての障害者の夢となるように願う。

我々の事を我々抜きに決めるな!のスローガンを裏切ってはいけない

恩恵より権利、保護より自立、のスローガンを忘れてはいけない

政策統計(政策マーケティング)による、我々全員の意見を権利条約へ!!!

<イメージ図>

http://kirihara1234.hp.infoseek.co.jp/comonzu.html

関連ページ

http://members.goo.ne.jp/home/k_naoyuki2

上記の目的でアンケート調査も予定しています。(略)


心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな! ネットワーク

パンフレット紹介

★「改めて予防拘禁法を問う」内田博文さん講演録

A5判 18ページ、1冊100円(送料80円)

いやしくも国権を持って人を拘禁するに際して、なんら根拠のない「危険性」を持って精神障害者を拘禁する医療観察法の違憲性、措置入院制度の違憲性の疑い、を鋭く突いている講演でした。罪刑法定主義という武器を磨きこれら権力の暴走に抗していくために、明白な根拠を整理してお話いただきました。

★「閉じ込めないでもうこれ以上」

医療観察法についてのイラスト万歳わかりやすいパンフレットです。

B5判16ページ(本文14ページ) 1冊200円送料無料


出版物紹介

★イチから出直せ!

問題てんこもり 障害者自立支援法

~地域の暮らし、あきらめない

定価1,000円+税 A5判 96頁

ISBN978-4-7592-6116-5 C0036

◆もくじ

●障害者自立支援法とは

●制定されるまで

●障害者自立支援法の問題点とその批判

●出直せ! 障害者自立支援法

●資料

これじゃ地域で暮らせない。

日本の福祉、後退させるな!

当事者の声を抜きに制定された障害者自立支援法の本格施行(2006年10月)により、障害者の暮らしは大きく揺らいでいる。施行後の障害者の深刻な暮らしの状況をふまえ、法の見直しに向けて、障害当事者の立場から法のさまざまな問題点をわかりやすく解説する。

【著者紹介】

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議 DPI(Disabled Peoples’ International)とは、1981年の国際障害者年を機に、身体、知的、精神など、障害の種別を超え活動する障害当事者団体として発足し、日本会議は1986年に設立。障害者が地域の中で当たり前に暮らせるノーマライゼーション社会の実現に向け、国際協力、政策提言、情報発信を担う。障害者自立支援法をはじめ障害者基本法、交通バリアフリー法の成立、改正で、障害当事者の立場からの論点形成を行う。また、2006年末に成立した障害者権利条約策定過程に参画。

今後は、国内の法整備を目指す。国内の加盟団体は58団体(2007年2月現在)。


運営委員会からのご報告

1 精神科病院施設内の「退院支援施設」新設問題について

政府は「精神病」者団体障害者団体その他専門職団体の反対にもかかわらず、4月1日に「退院支援施設」を施行し、また昨年10月には「地域移行型ホーム」を施行しました。これらは政府の失政による長期入院患者に対して地域での暮らしを保障する退院促進をではなく、単に病棟から敷地内の施設に入院患者を移動させることを持って、見かけ上の入院患者数を減らし、医療費を削減することを目的としたものです。

こうした国家犯罪を私たちは認めることはできません。すでに北海道や大阪で取り組みが始まっていますが、ぜひ各都道府県に向け「退院支援施設」を認めることなく、脱施設化、退院促進、さらに再入院防止に向けた有効な地域生活を支える仕組みを作り出すよう、要求していただけますようお願いいたします。この施設の指定は都道府県の権限です。

以下この間厚生労働省に対して交渉を継続している団体からの各都道府県知事への申し入れです。ご参考までに掲載いたします。

―――――

2007年6月14日

都道府県知事宛

NPO法人全国精神障害者ネットワーク協議会/全国「精神病」者集団/全国ピアサポートネットワーク/大阪精神障害者連絡会(ぼちぼちクラブ)/八王子精神障害者ピアサポートセンター/NPO法人こらーるたいとう/NPO法人DPI日本会議/全国自立生活センター協議会/障害者欠格条項をなくす会/きょうされん/NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会/東京都地域精神医療業務研究会/東京精神医療人権センター

(2007年6月14日現在連名団体)

「退院支援施設」を建設しないでください。そして本来の退院促進支援活動こそ推進してください。(要望書)

貴殿におかれましては、精神保健・福祉施策の充実にむけて邁進されておられること、敬意を表します。

私たちは障害者が地域社会であたりまえに暮らしていくことができることを実現するための取り組みを重ねてきた障害者・支援者団体です。

これまでの国の精神障害者に対する隔離収容政策が、世界に類を見ない数の精神科病床と長期に及ぶ「社会的入院」を生み出してきました。「社会的入院」を余儀なくされるということ自体、精神障害者の人権侵害に他なりません。

そうしたことから、各自治体での障害者計画の中でも、社会的入院の解消と精神障害者の地域移行は大きなテーマになっています。

ところが、厚生労働省は今年4月1日から精神障害者「退院支援施設」を施行に移しました。障害当事者はもとより、精神保健福祉従事者や支援団体等、多くの関係団体の反対を押し切っての実施となっています。

この「退院支援施設」構想は精神科病床の「看板の書きかえ」と見た目だけの「入院患者の減少」という「数字あわせ」にすぎません。「退院支援施設」構想を進めていくことは、社会的入院患者にとっては病棟転用の「退院支援施設」に移っても生活実態は全く変わらず、単に医療費が減り、その代わり自立支援法による福祉財源が賄うというだけのことです。

「退院支援施設」を認めることは精神科病院・施設内に移ることだけをもって「退院」とみなすということであり、一生を精神病院・施設内で終える人々がいるということです。このような人権侵害は断じて認めることはできません。それ故に私たち障害者・支援者団体は「退院支援施設」を撤回するよう粘り強い運動を展開してまいりました。「退院支援施設」は精神病棟と「退院支援施設」を患者さんは往復する仕組みではないかと危ぐされます。厚生労働省は私たちの危惧に対して「地域移行推進協議会を事業者に作らせる」としていますが、果たして自分の評価を事業所自らがおこなって質は担保できるのか、第三者性は担保できるのかと疑問です。委員も自分の事業所にとって都合の良い人を選ぶことができますし、市町村が入るにしても利用者全ての出身地域の市町村が入れるわけでもありません。

誤った精神医療行政のために人生を台無しにしてしまった人々が大勢います。日本は世界一の精神病床数~全世界に1,620,000床が存在しており、そのうちの340,000床がわが国に存在するという異常事態です。またその半数の病床が5年以上の長期入院者で占められています。誤った歴史を繰り返してはならないと思います。社会復帰促進のための本来の事業としての退院促進支援事業の拡充、居住支援系事業(グループホーム・ケアホーム)の増設や「居住サポート事業」の実施、さらに地域生活支援の継続性を担保する訪問系事業(ホームヘルパー派遣)等々を充実させ、社会的支援のインフラ整備、地域基盤の整備・確立に尽力されますよう強く要望させていただきます。

(要望事項)

1,「退院支援施設」を建設しないでください。そして退院支援施設は必要ないという見解を国に主張してください。

2,事業者から「退院支援施設」の指定申請があっても認めないで下さい。

3,本来の退院支援促進事業や介護保障、地域での住居、当事者活動への支援等、地域基盤整備こそ推進して下さい。

連絡先〒131-0033

墨田区向島3-2-1パークハイツ1階

NPO法人こらーるたいうとう

Eメールkoraru@mub.biglobe.ne.jp

2 死刑と厳罰化に反対する6月共同行動

以下の行動に全国「精神病」者集団として賛同しました。 東京と長勢法務大臣の地元富山で集会デモが行われました。

――――

長勢甚遠法務大臣は、昨年12月25日の4名の死刑囚への「クリスマス執行」に続き、4月27日に3名の死刑囚への執行を強行しました。

長勢大臣はその任期中に10名を執行しようとしていると伝えられます。私たちはこのかんの執行に抗議するとともに、更なる執行を絶対にやめるよう求めるものです。

昨年の「クリスマス執行」の際には、死刑確定者が100人に迫ろうとしていることへの法務省の危機感があるといわれていました。しかし、4人もの執行を強行しながら、死刑確定判決が相次ぐことにより、本年2月には100人をあっさり越えてしまいました。4月の執行時に102人となっていた死刑確定者は、3人を処刑したことで99人になりましたが、5月にはまた100人になりました。

死刑を執行すればするほど、死刑囚は増えていくかのようです。

死刑囚だけではありません。無期囚も増大しています。日本の刑事施設は過剰収容にあえいでいます。

これまでであれば死刑は控えられてきた事件についても死刑が適用されているように、有期刑だったろう人にも無期刑が適用され、微罪であっても実刑が科せられるようになっているのです。

このかん、政府・法務省はあらゆる領域において厳罰化を押し進めています。それを求める「世論」があるというのです。しかし「凶悪犯罪」が別に増加しているわけではありません。それは、マスコミ報道によって作られた「体感不安」なるものでしかなく、様々な思いや要望を持っているはずの犯罪被害者に対しても、ただ厳罰化によって応えようとしてきた結果です。

それを背景として、死刑判決が乱発され、無期懲役囚への仮釈放もほとんど認められることがなくなっています。日本は、死刑大国、監獄国家への道をひた走っています。

4月27日の執行は、ゴールデンウィークの前日という時期を見計らいつつ、異例の国会会期中の執行に踏み込んだものでした。国会開会中の執行は、 1993年3月26日に後藤田正晴元法相が執行を再開した以降では、2000年11月30日にもありましたが、それも閉会を翌日に控えていた日のことでした。今回は、執行が行われているまさにその時にも、衆議院法務委員会では、大臣出席のもと、問題の多い更生保護法案が強行採決されていたのです。

反対の声を無視し、力にものをいわせる政治がはびこっています。国会開会中の死刑執行は、国会運営のみならず、社会の隅々で少数者が抹殺されているこの国の醜い姿を如実に示しました。

厳罰の頂点である死刑は、人権の根幹たる生命を奪う残虐な刑罰であり、国家による「殺人」に他なりません。死刑には犯罪抑止効果がないばかりか、かえって、社会の倫理観を荒廃させます。そして死刑事件にも必ず冤罪があることが、過去の免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件の再審無罪で証明されています。国際的にも死刑を採用しない国、地域は広がっており、死刑のない社会は当り前になっています。執行を実際に行っている国はもはやごく少数(2006年では25か国)なのです。日本の社会にとりわけ死刑が必要な理由はありません。

私たちは厳罰化と死刑制度に反対し、死刑執行の即時停止を求めます。

実行委員会:

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90

(社)アムネスティ・インターナショナル日本

監獄人権センター(CPR)

「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク/東京拘置所のそばで死刑について考える会/ほか(個人)

連絡先:フォーラム90

東京都港区赤坂2-14-13 港合同法律事務所気付

3 障害者政策研究全国集会

昨年精神障害者部会にお誘いを受けたことをきっかけに、全国「精神病」者集団は実行委員会のメンバーとなりました。今年の12月の研究集会に向けて精神障害者部会としての取り組み内容、同時に集会全体に対して精神障害者として何を主張していくのか、他の分科会にも提案できるように、議論しています。

4 WNUSP・JDFおよび障害者人権条約をめぐって

全国「精神病」者集団は日本障害フォーラム(JDF)のオブザーバー団体ですが、障害者人権条約の問題について積極的に参加して、条約の国内履行に向け活動しています。6月13日は障害者権利条約推進議員連盟の主催の政府との意見交換会に出席し、今までの人権条約の中ではなじめて、政府から独立した国内監視機関が条文に明記されていることなどを主張し、政府の姿勢を問いました。署名にはまだ時間がかかるようですが、年内には、という感触を得ました。

12月10日は国連人権宣言の採択された国際人権デーです。各市町村都道府県では何らかのイベントが行われます。ぜひ各地で他障害団体とともに、国際人権デーに障害者人権条約をテーマと下も用紙を行うような取り組みをしていただきたいと考えます。

WNUSPとしては現在条文12条を中心に強制の廃絶に向けた理論的進化とパンフ作りの作業を進めています。5月にあった強制をテーマとした世界精神医学会に対しても、ドイツの国内組織、ヨーロッパ精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク、マインドフリーダムとともに以下の共同声明を発表し、学会内外を通して私たちの主張をアピールしました。

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ドレスデン宣言

強制的精神医療に反対して

ドレスデン(ドイツ)2007年6月7日

精神科(元)ユーザー・サバイバー・ネットワーク(ネットワークのドイツの参加組織であるBundesverband Psychiatrie-Erfahrener(訳注 精神医療体験者協会連盟)をふくむ)は、姉妹組織の世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク、および緊密に協働しているマインドフリーダム・インターナショナルとともに、2007年6月6日から8日にドイツドレスデンで開かれる、世界精神医学会(WPA)の「強制的精神医療 その包括的再検討」という会議に合わせ、強制と精神医療に対して私たちの共同の立場を明らかにするこの声明を発する。われわれ自身が強制的精神医療を体験し、そして私たち自身の生活と生命をそして私たちの会員、仲間友人の生活と生命を強制的精神医療が破壊してきたことを知っているがゆえに、われわれ組織はこの問題について語りうる唯一の立場に立っている。

私たちの組織は強制という行為に対してされた側の本人の存在を示していくために、WPAの会議に数カ国から代表を参加させる。精神医療によって強制を受けた人間として、われわれはこの種の強制に関して決定的な発言をする倫理的根拠を持つと確信している。

われわれは団結してあらゆる強制と強制的精神医療の実践の終結、そして精神医療に代わるオールタナティブの発展を呼びかける。

私たちはとりわけ最近国連総会で採択された「障害者人権条約」を取り上げる。この条約は精神保健体制を自ら体験した人権活動家の参加によって起草されたものである。すべての人々が平等に取り扱われるべきであること、そして誰一人として障害、病気、あるいは心身の不調というレッテルを根拠として自由を否定されるべきではないと考え、世界中の人々がそして人々の代表である政府が一切の留保なしにこの条約を批准すべきであるとわれわれは確信している。条約は障害に基づく差別なしに自由なインフォームドコンセントの権利を認識しているのであるから、われわれすべてが精神科医療を拒否する権利がある。さらに重要なことは、条約は、支援が必要な人に対しては意思決定を支援する強制的でない支援へのアクセスを提供することを政府に求め、他のものと平等に障害者に自らの決定を下す権利(法的能力)を保障していることである。

われわれは世界保健組織(WHO)がすべての非自発的電気ショック(電気痙攣療法=ECTとしても知られている)に反対の立場を明らかにしたことを記しておく。貧しい発展途上国においては麻酔なしで行われていることが多いことも含め、非自発的電気ショックは国際的に増加している。

WHOとヨーロッパ評議会は、また感情的苦痛を持つ人々に対して、烙印を押すことのないセルフヘルプの新たなアプローチの必要性についても宣言した。

精神医療を体験した人々の組織は強制よりむしろ平等と選択に基づいたセルフヘルププログラムの開発において指導力を発揮してきており、地域社会での暮らしへの統合に向けて人々へ援助し成果をあげてきた。私たちは、強制がリカバリーを不可能としていることを確信する一方で、人が、自由意志を持った人として尊重されるときにのみに癒しがありうること、そして倫理的アプローチに基づく、人を全体的に見つめ、リカバリーを支援する精神医療に代わるオールタナティブがある場合にのみ人は癒されることを私たちは確信している。

われわれは世界中のさまざまな国で強制的精神医療行為が増加していることを認識している。こうした強制医療行為の中には、自宅に暮らしていながら意思に反してあるいは自由を剥奪される中で向精神薬を服薬することを求める裁判所による治療命令も含まれている。こうした医療行為は、条約が位置づけた私たちの人権を侵害するものである。われわれは人権を支持するすべての人々に、われわれとともにそしてわれわれを支持し、強制的精神医療行為のない社会を求めていくことを呼びかける。そしてわれわれは自発的なセルフヘルプサービスとわれわれの人間性と尊厳を尊重した精神医療に代わるオールタナティブのために十分な資金と支援を呼びかける。

European Network of (ex-)Users and Survivors of Psychiatry (ENUSP)

World Network of Users and Survivors of Psychiatry (WNUSP)

MindFreedom International (MFI)

Bundesverband Psychiatrie-Erfahrener (BPE)

長野英子訳 原文は以下に掲載 http://www.enusp.org./dresden/dde.rtf


(略)




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