全国「精神病」者集団ニュース2014年7月号抜粋

敗北
暑い季節となりました。いかがお過ごしでしょうか。
さて、7月1日、病棟転換型居住系施設は、指針案の中で「病院資源の活用]という畷目となって残りました。この先、高齢で身内のいない「精神病」者仲間は、体調を崩した際に行きつくところが、精神病院を改造した老人保健施設になるのではないかと、先行きの不安を強める結果になったと思います。
このままでは、老人を標的とした第三次大収容時代をむかえてしまうことになりかねません。そういう意味では、我々も本気で病棟転換型居住系施設の整備を阻止する戦いに踏み切らないと、取り返しのつかないことになるといえるでしょう。
今後は、地域の患者会との連帯を深め、病棟転換型居住系施設の整備を阻止する戦いを展開していきたいと思っています (桐原)

 

 

大野さんの思い出その1
一一医師が三徴候によって死を「確認する」のではなく、死を「判定する」こととなる

(脳死臓器移植法反対声明)
山本眞理
脳死が人の死とされていない時代は三徴候と言って、心臓拍動停止、呼吸停止、および脳機能の不可逆的停止を示す瞳孔の対光反射の消失、この3つを医師が確認し、
それにより死亡診断書を発行していた。さらに伝染病でない限り24時間たってから出ないとかそうは許可されない。現状でも脳死判定を受けない限りこれが手続きであ
る。
この流れは当然にも厄介者金食い虫と言われる障害者に襲いかかるとして私たちは脳死=臓器移植法に反対した。
文末あるように、尊厳死立法化を目指す議員連盟はこの国会で尊厳死立法成立を図っている。
脳死臓器移植法が作られようとしているとき、全国「精神病」者集団は反対声明を出した。その中でひとつのポイントとして大野さんが提案したのが、医師が死を「確認する」ことから、死を「判定する」ことへと任務を大きくかえるという点である。
非常に鋭い指摘であり、いまの尊厳死立法へと雪崩れ込む道筋を予測していた。
尊厳死立法のもとでは、医師は死を判定するどころか、死に加担し、率直に言えば殺す任務を負ってしまうのだ。
安楽死が合法化され、医師による自殺常助が合法化されているオランダでは安楽死クリニックで精神障害者9人に安楽死したと報じられている。
オランダの医療保険が定額払いであり、十分な治療や緩和ケアができないこともその背景という説明もある。すでに日本で定額払いの療養病棟で高齢者が治療を受けられずあたらいのちを失っているという、毎年2万人の精神病院からの死亡退院についても合併症治療が十分であたか疑問がある。殺され続けてきた障害者高齢者弱者にこの医師の任務の大変化は襲いかかるのではないだろうか。

 

運営委員会報告

病棟転換居住系施設

2014年6月17日、「第3回長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」は、定員の傍聴人数を大幅に上回るなか開催された。「障害連事務局FAXレターNo.307」の報告内容と重複することになるが、「病院が地域支援を行うと採算がとれない厳しい現実がある」「長期入院者には高齢者が多く、地域の受け入れ態勢がないのが現実」「一定期間は病院内で地域移行支援を行う」などの発言があり、これに対して、「病院内の施設で暮らしたら、そこからもう抜け出せなくなってしまう」「病床削減を強く打ちだす必要がある」「再入院しなくても家族が安心できる地域システムが必要」といった反論が激しく衝突した。加えて、消費税を財源とする基金のメニューにすでに「病棟転換施設は入っているのか」という質問に、厚労省は、「例えばという事で通所サービスなどを挙げているが、病棟転換施設については検討会の意向を聞いたうえで考える」とした。
ここで消費税を財源とする基金について、簡単な補足説明をしておきたい。ご存じのとおり、2014年4月1日から消費税が5%から8%に変更されたが、このたび国会で可決した「医療・介護総合確保推進法」では、消費税増額分の3%を財源とした基金条項が規定されている。第3回検討会では、この基金を財源に病棟転換型居住系施設の整備が進められるのではないかと懸念する意見が出されたのである。
医療・介護総合確保推進法趣旨説明と附帯決議によると、趣旨説明の基金の部分第一地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律の一部改正一厚生労働大臣は、地域における医療及び介護の総合確保方針を定めなければならない。二都道府県が、医療及び介護の総合的な確保のための事業に要する経費を支弁するため、基金を設ける場合には、国は、その財源に充てるために必要な資金の三分の二を負担するものとする。
参院附帯決議の基金の部分
2地域における医療及び介護の総合的な確保のために都道府県に設けられる基金の配分に当たっては、実効性、公正性及び透明性が十分に確保されるよう、総合確保方針を策定し、官民の公平性に留意するとともに、成果を適正に判定するための事業実施後の評価の仕組みの構築を急ぐこと。
と規定されている。
この条文からは、使途が不明であるが都道府県の裁量によるところが大きくなりそうである。
次回、第4回検討会は、7月1日に予定された。この検討会をもって方針が確定する見込みとなった。
それに先駆け、2014年6月26日、日比谷公園野外音楽堂にて「6.26集会:病棟転換居住系施設を許すな」(主催:病棟転換型居住系施設を考える会)が開催された。野外音楽堂は、定員3000人であるが、会場には、立ち見の人が出るほど、たくさんの人であふれかえっていた。精神障害領域では、これほどたくさんの参加者が集まった集会は例がなく、我が国史上初めての大規模な集会となった。
集会では、小池晃議員(日本共産党)、福島瑞穂議員(社会民主党)、田村智子議員(日本共産党)、川田龍平議員(結いの党)、山口和之議員(みんなの党)、三宅雪子前議員(生活の党)が駆け付け、また、横道議員(民主)、山根議員(民主)からは電報によって反対意思の表明を聞くことができた。
そのまま小池議員は、予算委員会で病棟転換型居住系施設について国会質問をおこなうなど、国会の場で追及をしてくれた。
そのまま、厚生労働省に行き、社会・援護局障害保健福祉部長との直接交渉をおこなった。その際に障害保健福祉部長は、「意見は賜った」『病棟転換型居住系施設については、その是非を含めて検討会で検討しているところ」の一点張りで、こちら側の主張を聞き入れるつもりは一切合財ないようであった。交渉団は、障害当事者が2名しかおらず、委員の過半数が医師免許取得者であるといった検討会の構成員のバランスの悪さを指摘した。
7月1日、第4回検討会において、指針案が示され、病棟転換型居住系施設による対応策が示された。
(3)精神障害者の地域生活支援や段階的な地域移行のための病院資源の活用
○2.〔ア〕の退院に向けた支援を徹底して実施することにより、長期入院精神障害者が地域移行していくことで、地域生活を支えるための医療の充実が必要となる。
○2.〔ア〕の退院に向けた支援を徹底して実施してもなお、高齢等の理由により移動に否定的な意向を持つ人や、病院の敷地内なら安心して生活できるという意向を持つ人など、本人の自由意思として退院意欲が固まらない人が存在するという現実がある。
○急性期等と比べ入院医療の必要性が低い精神障害者が、生活の場ではない、病院という医療の場を居住の場としている状態は、精神障害者本人の権利擁護の観点、精神医療の適正化の観点から、本来のあるべき姿ではない。また、長期入院精神障害者の半数以上が65歳以上であることを踏まえると、こうした状態を一刻も早く改善することが必要である。
○これらの、急性期等と比べ入院医療の必要性が低い精神障害者が、退院に向けた支援を徹底して行ってもなお入院したままとなるのであれば、段階的な移行も含めて、入院医療の場から生活の場に居住の場を移すことが必要である。
○これについて、医療法人等として保有する敷地等の資源や、病床の適正化により将来的に不必要となった建物設備を、精神障害者の段階的な地域移行や地域生活支援のために活用することについて検討した。
○これらの病院資源の有効活用については、病院の判断により、医療法等の関係法令を遵守した上で、以下a~cのいずれの選択肢も取り得る。
a.医療を提供する施設等としての活用(精神科救急・急性期病床、重度かつ慢性等の精神障害者に医療を提供する病床、外来・デイケア、アウトリーチ、訪問診療.訪問看護等の施設)
b.医療を提供する施設等以外としての活用(居住の場)
※グループホームのほか、精神障害者以外の人も含めた住まいとして、軽費老人ホーム、認知症高齢者グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、民間の賃貸住宅等が考えられる。
なお、医療法人は、基本的に明確に病院と区分した上で、グループホーム、軽費老人ホーム、認知症高齢者グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅等の設置を検討できる。それ以外の場合は、基本的に明確に病院と区分した上で、病院の開設者と別の者が居住の場として施設を開設する必要がある。
c.医療を提供する施設等以外としての活用(居住の場以外)
※宿泊型自立訓練事業所・短期入所事業所等の障害福祉サービス事業所、介護保険サービス事業所、地域コミュニティのための施設等が考えられる。
なお、医療法人は、基本的に明確に病院と区分した上で、宿泊型自立訓練事業所・短期入所事業所等の障害福祉サービス事業所、介護保険サービス事業所等の設置を検討できる。それ以外の場合は、基本的に明確に病院と区分した上で、病院の開設者と別の者が居住の場以外の施設を開設する必要がある。

このように指針案が公表されたわけであるが、現場レベルで転換型施設を作らせないこと、そのための運動を地域で展開していく必要がある。



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