2013年7月 全国「精神病」者集団ニュース 抜粋

ごあいさつ

厳しい暑さの中いかがお過ごしでしょうか? 会期末のバタバタの中でろくな審議もされないままに、運転免許の実質的な差別強化、精神保健福祉法の改悪が行われました。

生活保護法の根本的な否定につながりかねない水際作戦合法化の改悪法案、及び奴隷労働を強制しかねない生活困窮者自立支援法は、生活保護受給者当事者の歴史的な戦いにより廃案となりましたが、選挙結果次第でまた上程されることは予想されます。憲法の基本的人権否定が改憲論議の中でなされ、国連の人権条約各委員会の度重なる勧告も義務がないと開き直る現政府の姿勢は許しがたいものです。

 しかし私たちは生きていくことをそして仲間を精神病院から取り戻すことを諦めません。心神喪失者等医療観察法精神保健福祉法の廃止、そして他のものと平等に地域で暮らす権利の確立に向けて今後も戦い続けます

 暑さの中くれぐれも皆様ご自愛下さいませ

障害者差別解消法成立

                     運営委員 関口明彦

障害者差別解消法についてのあらまし。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律は付帯決議とともに平成25年第183回国会で可決成立した。障害当事者も参加した障害者制度改革推進会議及びその後継の障害者政策委員会、差別禁止部会のまとめた「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見、を受けてのものだが、禁止が解消になっていることからも分かるように部会の意見がそのまま法律になったわけではない。終盤国会で、今回この法案が流れると、選挙を挟むため廃案となり、0からの再出発になりかねないので、障害者団体は強く今国会での成立を求めて運動を展開した。その理由は2つあると思う。1つは目的条項が比較的良く出来ていること。もう1つは第六条4項により法を受けて作られる、障害を理由とする差別の解消に関する基本方針の案を作成するときに内閣総理大臣は障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない、とされていることだ。第六条2項により基本方針は次のものについて定める。

一 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向

ニ 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項

三 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項問題の目的は第1条で以下のように書かれている。

四 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項

目的条項は以下である。

第一条      この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

障害者の定義は障害者基本法のものと同じなので、全ての障害者が、と言うときには当然精神障害者が入る。これは今後精神障害者にとって使いでがある。障害者基本法の理念も納得できるものなのでなおさらだ。法は3年後の施行であるが、付則第六条までは公布の日から施行される。中身は基本方針、国等職員対応要領、基本方針に則して作られる対応指針、施行に関し必要な経過措置の政令を定めあるいは公表することが出来ると言うものだ。目的がまともで、当事者の意見を聴くという点で評価に値する。

ところで、もう1つ大きなポイントがある。それは(事業主による措置に関する特例)で

第十三条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)の定めるところによる。

つまり、雇用の部分は障害者雇用促進法に丸投げしたのだが、この障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律は同じく全会一致で可決、成立した。ここでは、厚生労働大臣は差別の禁止に関する指針を策定することとなっており、解消ではなく禁止という語句が使われている。何のことはない雇用に関しては差別禁止なのだ。なお、この法律で精神障害者は、10年後に雇用を義務づけられるとなっている。

まあ、総じて言えば、これら2法案が成立したメリットは大きかったと思われる。解消法には付帯決議が12項目付いたが、その中で大きいのは2番の、基本方針、対応要領及び対応指針は、国連障害者権利条約で定めた差別の定義等の基づくとともに、障害者基本法に定められた分野別の障害者施策の基本的事項を踏まえて作成すること。また、対応要領や対応指針が基本方針に則して作成されることに鑑み、基本方針をできる限り早期に作成するように努めること。従ってこれを守らせるために攻めの運動が不可欠だ



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