全国「精神病」者集団ニュース2013年3月号抜粋

ごあいさつ

この春、精神保健福祉法の改正案が国会に上程されることになっています。精神保健福祉法改正案は、保護者の義務を削除し、医療保護入院の手続きをより簡易な運用を可能なものにして、我々の生活を脅かすのではと危惧します。

一方、各地で家族会や医療・福祉事業の従事者らが、不確かな(事実無根の)情報を流していることも確認しており、各地の仲間が、大変な不安を抱えることを知りました。精神保健福祉法改正以外でも「精神障害者やてんかん患者が運転免許を取得できなくなる」との間違った情報も多く流れているようです。(実際には、精神障害者等に運転免許の規制が強化される見込みです。)こうした大きな法改正は、情報元の不明な噂話が錯綜し、患者に混乱や不安を与えることがあります。

しかし、事実関係を踏まえた上で、最悪の状態を回避すること、それが現状でできる範囲のことです。全国「精神病」者集団名で各地の国会議員らに情報提供を依頼してください。そして言うべきことは言っていきましょう。(桐原)

 

 

 

2013.2.11 東京新聞の記事に対する感想

このコラムを、精神障害について無知な、多くの一般市民が何の違和感もなく読むとおもうと、啓蒙啓発活動の必要性と、その道の遙かに遠いことを思い知らされた気持ちです。

まず、①入院の必要ありと医師が判断しても入院させられない

少なくとも現行法においては、医療保護入院が安易に濫用されている実態を知っていれば、保護者の同意の必要性が、むしろ、医療保護入院の濫用に対して歯止めをかける安全弁の機能を果たし、さらに、患者のみならず保護者に対しても慎重なインフォームドコンセントの徹底にもつながるという面も無視できないと考える。

(補充性の原則においてもなお必要なら、現行法の「措置入院」だって使えるんだし…)

次に、②病状が落ち着いても家族が拒否すれば退院できない。

これ(②)が生ずる理由のひとつが入院させた家族との関係悪化

しかし、①と②は、実に正反対の状況を示している

入院の必要を判断するのも医師ならば、退院が可能だと判断するのも医師であるはず。

それほどに医師の診断判断は信用性のないものか?

あるいは、入退院の判断において、医学的な理由よりも社会的な理由が優先してよいものか?

それでは精神科病院はすでに病院(治療機関)ではなくなる。

(実際なくなってるけど。しかしそれを容認する気はない。)

また、この①②の論法でいくと、保護者制度の見直し、廃止によって、強制医療についての医師の権限を、いたずらに強めることになるのではないかとの危惧が胸をよぎった。

宮子氏の結論は、『家族が恨まれないために保護者制度を廃止すべき』

保護者制度廃止は、本来患者のためになされるべきものを…

家族との関係悪化、「入院の恨みはやはりつよいのだ」と書いておられるが、私が知る限りでは、悪化している人も、むしろ絆が強まった人もいる。

「入院の恨み」は、入院そのものではなく、入院した後の、閉鎖的な病棟、保護室等の劣悪な環境下で隔離され、身体拘束を受けたり、薬を飲んだかいちいち口を開けさせられて確認され、ナースステーションの窓越しに、動物を観察するような目で見ている看護師たちが、せっせと観察日記(看護日誌)を書いているのを肌で感じ、あらゆる職員から蔑みと哀れみの目で見られつつ過ごす、そんな屈辱的な日々を強いられたことへの恨みではなかろうか、と思う。

病棟の中でそのようなことが行われているとは、ほとんどの家族は知っていないのではなかろうか。

「本人不同意の入院は必要悪だから、恨まれるのはなるべく遠い人がいい」なんて、

全く問題の本質がわかってない。浅薄な、表面だけをすくった、薄っぺらな考察だ。

そもそも、非自発的入院、当人が希望しない治療の強制、それらを廃止すれば、

すべては解決。誰も恨まれないのに。                                                                       鳥取 H

 

 

特集;どうする!? 精神保健福祉法の改正!

この春、国会に上程される精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正に関する法律(案)は、保護者制度を廃止し、医療保護入院の手続きを変更するものであります。各地で様々な噂に不安を煽られる仲間が多くと思いますが、今月号のニュースで特集を組み、事実関係を明らかにしたいと思います。

第183回通常国会 内閣提出予定法案等(2月21日)

件名:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正に関する法律(案)

提出予定時期:2013年4月上旬

要旨:精神障害者の地域生活への移行を促進する精神障害の医療を推進するため、精神障害者に治療を受けさせる等の義務を保護者に課す仕組みの廃止、医療保護入院における入院手続の整理、医療保護入院により入院した者の退院を促進するための措置の充実、厚生労働大臣による精神障害の医療の提供の確保に関する指針の策定等の所要の措置を講ずる。

 現時点だと、①保護者の義務(財産管理義務、医師への協力義務、医師の指示に従う義務)を削除し、②医療保護入院の保護者の同意をその他の者の同意とする、という制度設計である可能性が高いです。問題は、医療保護入院の同意をする「その他の者」の中身がいかなるものであるかですが、どうも、成年後見人、保佐人、配偶者、未成年の場合は親権を有する者、扶養義務者など、結局のところ家族への依存度を強めることになるとの見方が強いです。

 2013年2月22日、自民党政務調査会障害者特別委員会の団体ヒアリングが行われました。ヒアリング団体は、全国精神保健福祉連合会(みんなねっと)、全国精神障害者地域生活支援協議会(あみ)、日本精神保健福祉事業連合、日本精神科病院協会、日本医師会、日本精神保健福祉士協会、日本精神科看護技術協会、日本作業療法士協会、とです。「精神病」者の団体は、どこの団体も入っていません。

 ここから先、厚生労働省が出した改正の中身について、そのまま示していきたいと思います。



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