全国「精神病」者集団ニュース 2012年7月号抜粋

ごあいさつ

 厳しい暑さの季節となりました。生活保護バッシングの中で体調を崩しておられる方も多いことと思います。また被災地とりわけ福島ではいまだ苦しい日常が継続していると思います。お見舞い申し上げるとともに、皆様のご無事をお祈りいたします。

翼賛国会の中で実質的憲法改悪、生活保護法の改悪さらに核武装化への道が開かれ、治安立法も乱立しています。全国「精神病」者集団が反対声明を出した共謀罪についても秋の国会で成立しかねない、尊厳死も今国会上程かという状況です。そして精神保健福祉法の改悪も来春予定されています。

私たちにとって厳しい時代が続きますが。こういう時にこそ粘り強く反保安処分、反強制入院強制医療の旗を掲げ歩んでまいりたいと思います。

ニュースは今回も小難しい中身となり、お読みになる余裕のない方が多いのではと案じておりますが、紙面改善のためにもぜひ多くの方からのご投稿ご体験を募集いたします。なにとぞよろしくお願いいたします。

 

 

精神保健福祉法、医療観察法はどうなるのか?

 

山本眞理

前号ニュースでご報告したように厚生労働省内検討会が開かれておりましたが、6月29日に「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」「精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会」のまとめが公表されました。次ページ1枚が後者のまとめ、次の2枚が前者のまとめです。

新聞報道等では保護者制度の廃止、指定医一名による強制入院、入院期間は原則1年あるいは精神科特例の見直しと人手の充実などと言われていますが、議論の流れ及び提出資料等を読み、その裏の意図を見ると恐るべき予測におびえます

問題点

1 長期高齢の社会的入院患者の切り捨て 病床の施設化の固定

1枚目の図面を見るとわかるように、社会的入院患者とされた方たちについては医師も今現在の差別的精神科特例より少なくてもよく(議論の過程では患者100名に医師一人という案が出ています)、看護の配置基準についても看護師だけではなく作業療法士や精神保健福祉士を足したものでよいということで看護も特例以下でもよいことになります。つまりこれはすでに病棟ではなくて施設です。しかも年限をもってこの部分を0にするという計画は全くありません。同時に議論の過程では病棟看板架け替えの高齢者施設を精神病院におくという主張も日精協から出されています。

2 強制入院は指定医1名の判断のみで可能

2枚目3枚目を見ると、全国「精神病」者集団の述べたそもそも病院でしかできない医療の中身及びその要件は不明のまま、指定医1名の判断のみで強制入院させられます。原則1年と言われていますが、1年とはあまりに長い人生被害というべきでしょう。さらに「重度かつ慢性」とされたら、それ以上の拘禁が許されることになります。また強制入院中の強制医療についても法定化が議論されています。移送制度についても保護者の同意もまた緊急性という要件も外され、いつ拉致監禁されるかわからない状態となります

代弁者という存在が位置付けられていますが、機能要件などがまだ不明ですが、本当に私たち個別一人一人の権利主張を支援する人私たちの指名する人がなれるのかどうかも不明です。しかも強制入院後のみであり入院手続きの過程では何もできません。

3 地域の精神病院開放病棟化 街が病院

地域からの支援関係者等の面会が書き込まれまた早期からの退院に向けた計画など言われています。しかし現状もそうなっていますが、退院にあたって、このグループホームケアホームに入り、この作業所に通い、あるいは毎日デイケアに通うなどという条件を付けられ、その条件をのまなければ退院できない、退院できてもその計画に違反したら強制入院となる。あるいはアウトリーチやACTで地域での強制医療を受けさせられるなどということが予想されます。

実際長期入院患者を入院させておくよりも、退院させて毎日デイケアナイトケアに通わせ、適宜訪問看護を入れたほうが1日当たりの報酬は精神病院にとって高くなります。もちろん地域で支援事業を多角経営している法人も、自らの利益のために本人の体調が悪いにもかかわらず、作業所への毎日の通所をグループホーム利用者に強制している実態もあります。アパートでの自立生活より、こうした施設に誘導していく動きは当然出てくると想像されます。

保護者制度をなくし、医療保護入院を単に一人の精神保健指定医の判断のみで可能とするこの動きは地域にいる私たちすべてにとって、主治医の思惑しだいご機嫌次第で強制入院移送までさせられるという体制を意味しています。しかも強制入院であるにもかかわらず医療費自己負担を強いられるのです。誰も契約していないのになぜこのようなことが可能でしょう。押し売りして代金強奪するようなもので、消費者保護の観点からも決して許されない構造です。

このような実態では障害者権利条約を批准することはできません。私たち自身がこの精神保健福祉法、医療観察法廃止、一切の強制の廃絶に向け闘い続けなければなりません

 



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