2011年9月全国「精神病」者集団ニュース抜粋

続・生活保護受給マニュアル

白縫狂介

<はじめに>

4年前に生活保護受給マニュアルを書いてから、急に生活保護受給者が増えてきたのは仲間が増えて嬉しいが、では、その生活実態はどうなのか?

について私の経験に則して書きたい。

<1>

クーラーなしでも生活できる!

私は現在の民間のアパートを借りてから14回の夏を過ごしましたが、その間、アパートにはクーラーを付けていません。

昔と違って、今では生活保護でもクーラーは付けられますが、なくてもやって行けるので付けないだけです。

暑い昼間は家に居ず、図書館とかプールとかとにかく涼しい所で時間を過ごし、夕方過ぎに帰ってきます。夜は網戸をつけた窓を開け放してゴザを敷いて寝ます。ハエやカも居ません。私のアパートは1Kの2階ですから風通しはいいのです。

熱帯夜の時はさすがに暑苦しい(それでも夏の間に2~3回程)のですが、それも、近くの公園のベンチで涼を取ります。

<2>

私の住んでいる街は、近くに商店街があるので自炊は、ほとんどしません。スーパーの持ち帰りか、安くてうまい外食です。

センタクはコインランドリーですし、入浴は銭湯です。サンパツも3ヶ月に1度ぐらいです。ソウジは、たまにする位です。

要するに日常生活のメンドウくさい事は、たいてい手抜きなのです。

メンドウくさい事をシンボウしてやる事程ストレスのたまる事は、ありません。

ギャンブルはしませんが、たまに映画館に行き、さらにたまに(年に1~2回位)ストリップに行く位です。

これは、この年まで独身なので許容範囲でしょう。

趣味といったら「将棋」と「野球観戦」と「旅」ぐらいです。将棋は初段ですが、あまり強くはありません。野球はもちろん、地元のソフト・バンクです。旅は海外旅行を含めて随分行きましたが、たいてい寝袋持参の貧乏旅行です。

それでも旅は楽しい。

生活保護は収入が明確なので(私は月に11万位)予定がたてやすいが、要心しないと、すぐに消費オーバーになります。

<3>

私は兄弟でも裁判に訴えた位だから人づき合いは悪い方です。しかし、デイ・ケアではケンカもせずに仲良くやっています。

メンバーは20人位ですが、老若男女、いろんな人と触れ合うので感性が刺激を受けます。

私の住んでる街は、地方にしては、JRも私鉄もバスも近くにあって交通の便がよいので、デイケアに通うのも便利な所に位置しています。

タレントの「武田鉄矢」の実家のタバコ屋から歩いて7~8分位です。

私は地元の人には、カム・アウトしてません。その方が日常生活上、スムーズに送れるからです。

2~3人の気のおける友達と、デイケアの仲間。人づき合いはこれで充分です。

手紙では、高校や大学の友人ともやりとりしています。

<4>

何故、私がこういう文章を書いたかというと東日本震災以後、日本も節約してやって行こうという時に参考にならないかと思ったわけです。これには障がい者も健常者の区別もありません。

未来の希望といったら、老い先短いが、何か著述でもして、ベストセラーでもなって、宇宙旅行のツアーに参加したい事です。

<了>

2011年6月29日

 

保護者制度を含む強制入院等の見直し

保護者制度を含む強制入院等の見直しに向けて、民主党の精神保健医療改革プロジェクトチーム(PT)から、ヒアリングのご案内がありました。次の要望書を出したうえで、当日、「責任能力のない精神障害者の不法行為について保護者の監督義務に怠慢があったとして保護者に1億円の賠償請求を求めた判決」が話題に上がり、厚生労働省がちゃんと説明できなかったところを、我々の仲間が「入院させていなかったから賠償責任が生じたと判決文に書いてある」と発言し、議員に問題を認識してもらうことができました。

2011年7月29日

民主党精神保健医療改革PT 御中

全国「精神病」者集団

保護者制度を含む強制入院等にかかる意見

日頃より、障害者制度に尽力をくださり、心より敬意を表します。

さて、このたびのヒアリングにおける、全国「精神病」者集団の意見を下記にまとめました。

1.前提

精神保健福祉法の強制入院は、人身の自由の剥奪にあたる。よって下記の事項は真摯に考慮されるべきである。

OHCHR(国連、高等人権弁務官事務所)

08年10月「被拘禁者のための尊厳と正義の週間、情報ノートNo.4 障害者

障害者権利条約は障害の存在に基づく自由の剥奪は国際人権法に反しており、本質的に差別であり、そしてそれゆえに不法であることを明確に宣言する。障害に加えて追加の根拠が自由の剥奪の正当化に使われる場合に対してもこうした違法性は拡大して認められる。追加の根拠とは例えばケアや治療の必要性、あるいは その人や地域社会の安全といったものである。

かみ砕いて、説明すると障害(この場合は精神障害)のある人と無い人がいるときに、障害のある人にだけ適用される強制入院に追加の根拠(医療及び保護の必要性等)があったとしても、それが障害の無い人には適用されないのであれば、それは差別であるということである。

2.問題点

精神に特化した法律は作らないと言うのが、制度改革推進会議での結論であった。

あらゆる医療においてインフォームドコンセントは必須である。

同時に、強制医療は絶対にあってはならないことである。

強制医療については、ECT、デポ剤が取り上げられているようだが拘束は極度の自由権の制限なので、同様に問題とされるべきである。

拘束については診療報酬上の政策誘導:保護入院等行動規制最小化委員会を創ること、があるが実際上機能していない。委員会が拘束を減らしているという事実は無いどころか、創られて以来、拘束は増え続けている。

・身体拘束 ・隔離

平成16年 5,242 平成16年 7,673

平成17年 5,623 平成17年 8,097

平成18年 6,008 平成18年 8,567

平成19年 6,786 平成19年 8,247

強制医療がありうるとすれば、医療基本法や患者の権利法などによる例外規定しかないと思われる。

3.強制入院を減らすために、当面すべきこと

◎人権に予算を付けること

医療と福祉という論点以上に人権という論点を重視すべきである。具体的に言うと、医療のパイ、福祉のパイ、という予算の考え方に加えて人権のパイという予算措置が必要である。

当面は公正で透明性のある、公費によって活動する当事者も加えた第三者機関が、常勤体制で、強制入院・強制医療について、人権の観点から考えられる医療内容に踏み込んだ厳密な構成要件を創り、それらを適用して強制医療を排除すべく活動すべきである。

そこで得られた厳密な構成要件を拘束力のあるものとし、強制医療の極小化に向けて逐次厳しいモノとしていく必要がある。

上記での活動は強制入院者のパーセントの削減目標を定めておこなうべきであり、その目標は世界の国々の中での最小値に合わせるべきである。

どの段階であろうと、告知後、本人からの異議申立があった場合は、弁護士を含む権利擁護者を直ちに付け、結論を遅くとも刑事事件による逮捕・拘留期間期限以内の間に出すべきである(ちなみにイタリアでの平均入院日数は18.6日である)。なお、それに掛かる費用は全て公的資金から出すべきである。

4.医療保護入院の廃止

医療保護入院は、精神障害者であり、任意入院できる状態でない者に対し、精神保健指定医が医療及び保護の必要性のあると認めた場合、本人ではなく保護者の同意でされる強制入院である。医療保護入院は、病識がない者の医療及び保護を旨とするが、それは、精神障害者が医療を拒否していることを権利ではなく、病気として処理する差別が内在している。一般人が癌と診断されて、治療を拒否した場合、病識がないとして入院を強制されることはない。

また、措置入院は、指定医2名による入院の必要性があるという判断が一致し、都道府県知事が認めることで始めて適用となるのに対して、医療保護入院は、1名の精神保健指定医の判断で間に合うので、不当な入院が起こり易いといえる。

措置入院が減ったことで強制入院が減ったかのように考えられているが、下のとおり医療保護入院の件数は、毎年増加傾向にある。

◆厚生労働省 保健・衛生行政業務報告(衛生行政報告例)

平成15年 151,160 人口比118.4

平成16年 161,587 人口比126.5

平成17年 163,370 人口比127.9

平成18年 170,700 人口比133.6

平成19年 175,624 人口比137.5

平成20年 184,345 人口比144.4

医療保護入院は、強制入院としても簡易過ぎるし、そのため増加傾向にあり、精神障害者側の言い分を一蹴して入院させる制度であるため、廃止されなければならない。

3.応急入院の廃止

保護者の同意を省略して強制入院させるのが応急入院である。医療保護入院は、保護者の同意が民法上の契約にあたるものとしている。また、医療保護入院の同意を保護者に限定しているのは、保護者以外の者による入院の濫用を防ぐことで、精神障害者の利益を図ろうとする趣旨がある。応急入院は、そうした趣旨に反することも含めて、法の構造上、あまりにも大きな問題をはらんでいる。即刻廃止すべきである。

4.措置入院の廃止

措置入院も障害を理由とした差別に当たるので、廃止すべきである。運用上、他害があったかどうかに力点が置かれているのは問題である。JDFと政府との条約に関連する話し合いの中では、病識の無い人を医療に結びつけるモノと説明されている。怖れという未来予測は本来不可能なので緊急な医療必要性が在るというのであれば、医療基本法や患者の権利法などによる例外規定の枠で考え直すべきである。

5.移送制度の廃止

移送は、精神障害者であり、任意入院できる状態でない者に対し、精神保健指定医が医療及び保護の必要性のあると認めた場合、本人ではなく保護者の同意で精神病院まで移送できるとするものである。いわゆる、精神病院による誘拐の免責規定ということになる。強制的であり、精神病院を選ぶこともできないような当該規定は、即刻廃止されなければならない。

6.強制入院「等」には、医療観察法が含まれること

保護者制度を含む強制入院等の「等」には、医療観察法が含まれる。よって、医療観察法の見直しに関する議論も国会報告等を土台に厚生労働省の検討グループで議論されなければならない。現時点では、それがされていない。強制入院の観点から医療観察法の見直しに向けた議論をすべきである。

7.保護者による財産の処分にかかる精神障害者の不利益解消に向けた措置

保護者の財産管理義務は、精神障害者の財産を処分した場合も管理したと見なされている。それにより、精神障害者が多額の資産を失い、無一文になってもやむを得ないものとされてしまっている。保護者制度を廃止しても、保護者による精神障害者及びその関係者の財産処分による、精神障害者及びその家族の結果的不利益について、過去に保護者の身分を濫用した疑いのある者に対しては、精神障害者は賠償を求めることができるなどの特例措置をつくるべきである。

8.保護入院に加えて任意入院も廃止し、一般医療に編入すること

任意入院とは、本人の意思による入院との誤解があるが、この場合の「本人の同意」とは、精神病院の管理者との入院契約のような民法上の法律行為としての同意と必ずしも一致するものでなく、患者が自らの入院について拒むことができるにもかかわらず、積極的に拒んでいない状態を含むものとされている。すなわち、事実上の強制入院であり、その運用も身体拘束、隔離の件数が増えていることから、深刻といわざるを得ない。

厚生労働省の精神保健福祉資料(平成1 9 年度6 月3 0 日)では、任意入院で保護室隔離が全国で1,017人(全体で8,347人;12.1%)、任意入院で身体拘束が1,170人(全体6,786人;17.2%)となっている。また、任意入院190,435件中、開放処遇制限が36,547件、終日閉鎖病棟での入院が88,597件と合わせると全体の半分を超えることになる。このことから、任意入院も高い閉鎖性を伴うことがわかる。

任意入院者の増加が開放化の指標のように使われるが、完全な誤りであり、任意入院ではなく、一般医療に編入した自由入院(当事者間の契約)にすべきである。

9.民法の責任無能力者による不法行為と監督義務者

保護者制度の廃止が民法に与える影響はないに等しい。責任能力のない状態で行った不法行為による第三者の不利益については、責任無能力者に賠償請求できないため、確かに損失は大きいが、保護者が義務を果たしていれば、結局のところ責任無能力者にも監督義務者にも賠償請求できないため、大きな差はないといえる。故に、保護者制度の廃止は、民法に踏み込んでする必要はあるが、民法を理由に妨げられるものではない。

以 上

 

 

 

障害者総合福祉法の骨格提言

2011年8月30日、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が障害者総合福祉法の骨格提言を発表しました。骨格提言の中に、医療合同作業チーム報告に沿って作成された項があり、そこに、上の保護者制度を含む強制入院等の見直しについても触れられています。当初、保護者制度を廃止し、医療保護入院にかわる、公的な強制入院(強制入院執行官が同意を与える強制入院)を求める内容であったのですが、これでは、なんの意味もないので強く変更を求めました。結果的に、「非自発的入院」の語だけが残りましたが、「障害者権利条約に基づく」を前に入れたので、運動次第では大いに防波堤になると信じます。

ただ、厚生労働省は、今年の10月・11月にでも、医療保護入院から強制入院執行官の同意による強制入院に変更しようと動き出しています。



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