「骨格提言」の完全実現を求める10.27 大フォーラム 報告

2016 年10 月27 日に、「骨格提言」の完全実現を求める10・27 大フォーラムが日比谷野外音楽堂で開催されました。7 月26 日に起きた相模原の津久井やまゆり園事件を受けて、二度とこのような事件を起こさせてはならないと、全国から約600 人が集まり、幅広い立場からの発言がありました。
ご賛同・ご協力くださいました皆さんに、報告ニュースをお送りします。

【実行委員長メッセージ(要旨)】

私たちは何故骨格提言の完全実現にこだわっているかと言うと、今から11 年前の2005 年10 月31 日に衆議院本会議で自公の賛成多数により障害者自立支援法が強行採決されました。
2009 年の政権交代の後、当時の厚労大臣が私たちの目の前で謝罪し、もっとよい法律を作るので力を貸してくださいと言われました。そして「創ろう みんなの障害者総合福祉法を!」をスローガンに制度改革推進会議が立ち上がりました。私たちの仲間が制度改革推進会議に参加し、よりよい制度を作ろうとしました。そこでまとまったのが骨格提言でした。骨格提言は「私たちを抜きに私たちのことを決めるな」という合言葉で地域で暮らすことを目的にまとめ上げ、これから前へ進もうと思っていた矢先に、2012 年には民主党政権が大敗し、再び自公政権へ戻りました。そこで今までの流れが逆回転したように制度改革推進会議はなくなり、再び当事者抜きの委員会で当事者抜きの部会が発足されました。
骨格提言を実現していけば、あんな悲惨なやまゆり園のような事件は起こらなかったと思います。
だからこそ私たちは骨格提言にこだわっています。本当に生きにくくなってきたと思います。今こそ、いろいろな団体を超えて連帯していきましょう。

「骨格提言」の完全実現を求める10.27 大フォーラム実行委員長 横山晃久

【集会アピール】
障害者差別解消法が施行された今年、私たちにとってひじょうに哀しい事件が起きました。
7 月26 日未明、神奈川県相模原市にあるしょうがいしゃ施設・津久井やまゆり園で、男が侵入し、入所者19 名を死亡させ、27 名を負傷させた事件。 被害にあわれたかたのご冥福をお祈りするとともに、順調な回復をお祈りいたします。
犯人は、ことし2 月に、しょうがいしゃは社会にとって不要な存在とする手紙を衆議院議長宛に書いていたり、「彼らはいなくなればいい」と話すなど、しょうがいしゃに対するゆがんだ考えをもっていました。
私たちはこの事件に対して、怖さと怒りをおぼえています。私たちの仲間には、「自分たちもおそわれないか」、「周りの人も“しょうがいしゃはいなくなればいい”と思っているのではないか」。そして、犯人を何の根拠もなく精神障害と決めつける政府や世間に対して、「自分も危険な人物としてみられないか」と思ってしまう人が多くいます。
「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラムは、このような思いを共有し、ともに不安を乗り越えます。また、事件でふたたび浮き彫りになった社会の障害者不要論、しょうがいしゃを排除しようとするちからに対して断固反対し、しょうがいしゃが入所施設ではなく地域で暮らすことのできる環境整備を強く求めます。
この事件の根底にあるのは優生思想です。優生思想とは、人間の命に優劣をつける思想で、世界はもとより日本に昔からありました。たとえば、しょうがいしゃを保護者、施設職員がころす事件は、くりかえされていて、保護者に対する減刑嘆願・同情的報道は、減りません。つい20 年前まで、優生保護法が存在して、そのなかには不良な子孫の発生予防という条項がありました。
政府は長年、しょうがいしゃを地域で暮らせるようにすることよりも、本人の意に反してとおい施設で生活させることにちからをいれてきました。1960 年代からの経済成長期には、都市から離れた場所に入所施設をどんどん建てて、定員を満たすようにしょうがいしゃを入れてました。現在、入所施設にいる人は、精神障害で32.3 万人、知的障害で11.9 万人、身体障害で7.3 万人います。
また急速な高齢化社会により「入所施設にいれる」ということに何ら疑問を持たない世間があります。
しかし私たちは知っています。入所施設は“効率的な介護”が行われ、職員に従わなければいつ虐待がおこるかわからない状態であることを。本人の意志ではなく、家族や地域の事情と意志で入所させられることを。そして「厄介者は外へ一カ所に」という論理が、ひとびとのなかに働いているため、自治体は在宅サービスの充実や脱施設化をすすめないことを。これらに共通することは、しょうがいしゃを何もできない者、邪魔な存在とする優生思想が働いており、根底では相模原事件の犯人と同じなのです。
今日の集会で語られたように、政府は優生思想そのものを否定はせず、むしろ擁護するような政策を出しています。出生前診断で陽性だったひとの9 割が中絶をえらんでしまうのは、しょうがいじを安心して育てられる環境の整備を社会があえて放棄しているからです。障害者虐待防止法の改正議論をはじめず、学校・病院を対象外のままにしつづけることは、しょうがいしゃの人権を軽んじでいるからではないでしょうか。改正される総合支援法は、「地域でどうくらせるか」という発想ではなく、「弱者はがまんせよ」という立場にたって、地域格差や、障害の種別・程度による支援格差をひろげています。政府は相模原事件の原因である優生思想をひとことも批判していません。
それどころか厚生労働省は事件の原因を精神医療の不備にもとめ、措置入院の強化という、精神しょうがい者の社会復帰の促進とはまったく逆の方向を向いています。3年前に日本が批准した障害者権利条約にも反しています。
優生思想をもつ為政者は、どの時代にもいました。しかしすでに述べたような社会環境にあるいま、優生思想に同調する言動があちらこちらで聞かれます。
2011 年に当事者と関係者55 名がまとめた「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」は、ひとを線引きしない福祉政策を提言しており、優生思想がはいりこむよちがない社会を描いています。私たち大フォーラムは、この骨格提言を完全実現させることが、優生思想をなくすみちだと確信しています。今後とも、他の団体と広く連帯して、優生思想を根絶させる運動、骨格提言を実現させる運動をしていきます。
2016年10月27日
「骨格提言」の完全実現を求める10.27 大フォーラム 参加者一同

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