精神障害者の地域移行

『私たちの望む障害者制度改革』
~推進会議の議論と仕組みを尊重し、超党派による抜本改革の推進を~
日 時:2010年10月6日(水)10:30-17:00
場 所:参議院会館 第1会議室

山本眞理指定発言

1 実数人口比とも世界一の精神科病床数

精神障害者の10人に一人以上が入院中

さらに知的障害者は手帳を持っている方の4人に一人以上が施設に入所

2 超長期入院の高齢化した方々をまず地域生活へ

いわゆる「社会的入院」といわれている方のうち退院しやすい方から手をつけている実態があるのではなかろうか、そして死亡退院や転院

平成20年9月3日 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会に出された

これまでの議論の整理と今後の検討の方向性(論点整理)より引用(平成17年度患者調査より)

「○ また、入院期間1年以上患者は全体の65%を占めているが、退院患者のうち、在院期間が1年以上で退院した患者の割合は約13%であり、そのうち転院や死亡による退院は2割以下となっている。これに対し、退院患者のうち、在院期間が5年以上で退院した患者の割合はわずか4%に止まり、そのうち転院や死亡による退院は7割以上となっており、入院期間が長期化するほど、退院患者における割合が下がるとともに転院や死亡による退院の割合が高くなっている。」

4万人以上の20年以上入院している方、8万人以上の5年から20年未満まで入院している方を最優先に、退院して地域生活を送っていただく政策は喫緊の課題である。死亡退院を待っているがごとき、今回の概算要求での昨年度に比べ10億円もの退院促進予算削減は許しがたい

これら高齢の方たちが安心して退院してみようかなと思えるような、住宅保障、グループホームケアホームではなく、居住権のある介助つきの共同住居の整備、一人部屋でのびのびと暮らし、移動介助を使って外出を楽しみ、そして三食をどんぶり飯ではなくお茶碗でご飯が食べられる家庭料理の保障が必要である。

これは国家政策の被害者への賠償として位置づけ財政が投じられるべきであり、上記の支援は当然無料で保障されるべきである

3 長期入院の方が安心して退院できるためには、上記の介助つき共同住宅やアパート生活などの体験宿泊、入院中から介助者が使える制度、そして退院に向けた活動の経済的保障がとりわけ必要である。

現在多くの精神病院では生活保護受給者の日用品費ぎりぎりまでさまざまな名目(小遣い銭管理料、ロッカー使用料その他)で精神病院が搾取しており、退院に向けた活動への交通費すらままならない現状がある。生活保護受給中でなく年金しか収入のない入院患者あるいは年金すらない入院患者はさらに貧しい。たとえば小遣い銭管理料は1日100円から200円。1日200円取られれば、家族が月1万円小遣い銭を入れても本人の手には4千円しか渡らない。これではアパート探しの交通費や体験外泊の費用などまかなえるはずがない

国家賠償として入院期間に合わせて退院準備金を保証すべきである

4 毎日作られている社会的入院

上記のような地域移行策に合わせて再入院や新規の社会的入院を作らないための地域生活支援体制の基盤充実が必要

そもそも精神病院でしかできない治療はほとんどない

日常生活の重荷をとるため、あるいは家族から一時はなれるためであれば、ショートステイで十分であり、また安心できる介助保障が待機という形で24時間365日保障されればいい。今現在上記のような場合ほとんどの地域では精神病院入院しか選択肢がない。

自立支援法における精神障害者への支援体制は根本的に見直され、精神障害者にとって必要な待機という介助類型を保障すべきである。

さらに心神喪失者等医療観察法においてはほぼ全例において鑑定入院という強制入院が最低2ヶ月強いられるという社会的入院が制度化している。また通常の5,6倍の医療費をかけながら、心神喪失者等医療観察法病棟からの退院のための手続きだけで1ヶ月くらいたってしまうという社会的入院もある。

さらに施行後5年たってまだ入院中の方も存在するし、厚生労働省自身が心神喪失者等医療観察法入院者の1割は長期化すると説明している。

心神喪失者等医療観察法は直ちに凍結し、法律を廃止し、対象者の一般医療への移行を開始すべきである

上記は心神喪失者等医療観察法も含め(建前とは別に、運用上は発達障害者や知的障害者がすでに対象となっている。精神保健福祉法でも知的障害者の家族や施設側にとっては使いやすい隔離収容として精神病院が使われている)精神障害者の地域移行に限らない問題でもあり、隔離収容は全障害者の問題である。精神障害者に特化した法律ではなく、すべての障害者が地域生活を権利として獲得できるための地域移行・地域生活基盤整備充実法(仮称)といった時限立法が必要である



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