== ごあいさつ ==
暑い毎日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今号はこの間の運営委員会の動きの報告および集会、総会案内となり、皆様のご投稿を掲載できないことお許しください。
解散総選挙の前のどたばたの中で、臓器脳死移植法が改悪され、「脳死が人の死」とされました。私たちも精一杯の抵抗を続けましたが、
これほど重要な決定が衆院参院ともに10時間にも満たない審議で採決されてしまったこと許せません。
ますます障害者の命が脅かされる状況となったといっていいでしょう。
解散ということで、障害者基本法も障害者自立支援法の見直しも先送りとなりましたが、今後私たちの地域での生活を権利として保障し、
長期入院の方たちの退院促進を目指すために秋に向けた闘いが必要です。
一方で心神喪失者等医療観察法については、法律上必要があれば来年見直しとされていますが、施行4年目を迎え、
法の破綻状況はますます明らかになり、さらにその本質である、精神障害者への差別と予防拘禁の本質があらわになってきています。
こうした中で全国「精神病」者集団は10月青森において35周年記念総会を開催します。障害者権利条約の完全履行と、
一切の強制の廃絶と生存の確保・地域生活の確保に向け今後も闘い続けていきたいと思います。
== 【声明】 ==
命に甲乙をつける臓器移植法改「正」に反対する
我々は、今年で結成35周年を向かえる、「精神病」者個人・団体による、「精神病」者の全国組織です。
国会で臓器移植法改正案が4つ提出され、5月27日には、衆院厚生労働委員会で臓器移植法改正案についての一括審議が行われました。これは、
臓器移植法改正の実質的な審議入りを意味しているのだと思います。
臓器移植法は、人の命に甲乙を付け、甲は生きる権利を持ち、乙は死んでも構わない命として、体温があり脈拍がある体から、
医師の診断による「死」を根拠に臓器を摘出するというものです。いわゆるA案であれば、半強制的に上記の摘出が行われるわけであり、
D案であっても、結果的には充分に考える猶予もなく、家族同意などによって半強制的に摘出手術が行われる危険性があります。
多くの場合、甲の側に立って議論され、医師の職域開拓としても役立てられます。但し、我々「精神病」者のような、乙側の生命は、
甲と医師の職域のために、生きる可能性を失うことになるのです。
自由権規約第1条第2項、第6条第1項には、生命の固有の権利と生存について規定され、第7条には、
自由な同意のない医学的実験を禁止しています。障害者権利条約には、第10条に生命固有の権利を位置づけ、障害者の命が、優生思想に基づき、
いらない命として、必要とされる者のために命を奪われることを禁止しています。現在、
各省庁は障害者権利条約批准に向けて国内法整備をしております。今回の臓器移植法改正案は確立した人権法規を後退させるものであり、
完全に批准を遅らせるものです。今後は、障害者権利条約第4条第3項に基づき、
殺される側の生命の意見を充分反映させた法制度体系にパラダイムシフトしていくことが求められます。
我々は生きることを選択し、意識が極限の状態にあっても、医療と支援(支援された意思決定を含む)をうけて、
自立生活をする権利を求めます。これら権利を侵害する、臓器移植法改正案には、真っ向から反対します。
2009年5月29日
全国「精神病」者集団
== 運営委員会報告 ==
○障害者権利条約や障害者基本法、そして障害者自立支援法をめぐりめまぐるしい動きがあり、それへの対応に運営委員会は追いまくられ、
この間ご報告ができなかったことをお詫びいたします。
政府は3月に障害者基本法の一部手直しを持って条約の承認を国会にかけようとしましたが、これに対してJDF(日本障害フォーラム 全国
「精神病」者集団も一員です)として反対し、それは阻止されました。以下JDFの文章です。
== 障害者権利条約批准に関する意見 ==
日本障害フォーラム(JDF)
代表 小川 榮一
貴党におかれましては、平素より障害者の権利の向上並びに福祉の充実へのご尽力に対し、心より敬意を表します。
2006年12月、障害者の権利に関する条約(以下、条約)が採択され、2007年9月にはわが国も署名をしました。私どもJDFは、
国連日本政府代表 団へのJDF推薦による民間からの障害当事者顧問の参加、
8度に渡って開催された国連特別委員会への延べ200人以上のNGO代表団の派遣、条約に関する 20回に及ぶ政府との意見交換会等、
本条約に深く関与してまいりました。
JDFは、条約批准は推進するも、国内法整備をきちんと担保した上での批准を求めてまいりました。その意味から、拙速は許されず、
形式的な批准は絶対に避けなければなりません。付きましては、以下、JDFとしての意見を表明いたします。
記
1.障害者団体・関係団体の実質的な参画が保障されるべきです。
条約の批准から国内実施に関する全ての過程に、障害者団体・関係団体の参画が保障されるべきであり、
条約4条などにその旨が規定されています。 この規定は、他の国連人権条約にはない規定です。障害当事者・
関係者が実質的に参加することが大切であり、本条約の根幹を成す規定です。公定訳の策定も含 め、これらの確保を政府・
関係機関に働きかけてください。
2.第1条に関連して、全ての障害者の全ての権利を保障すべきです。
条約の「目的」は、全ての障害者に障害のない人と平等に(on an equal basis with others)
に全ての権利を保障することです。そして、「障害者」とは、機能障害をもつ人だけでなく、そうした機能障害は、
社会環境の障壁との関係で社会参加が妨げられるものも含む、と概念規定がされており、障害者を幅広く捉えています。
この規定に即した国内法の見直しが必要です。
3.平等・非差別の原則に基づいた「障害者差別禁止法」が必要です。
条約の骨格となるのが「平等・非差別」の原則です。条約の原則を定めた3条、締約国の義務を定めた4条、平等・
非差別規定の5条等の規定から、 2条に定義された「障害に基づく差別」を禁止する立法手段も含めた全ての措置を取るべきです。すなわち、
全ての生活分野の規定をしている条約に即した総合 的な差別禁止法の制定が必須です。
4.政府から独立した監視(モニタリング)機関の設置が必要です。
条約が国内で履行されているかを監視する監視機関は非常に重要です。33条の規定に沿った政府から独立した機関が、
障害者団体参画が保障された形で設置されることが条約の批准には必須です。
5.条約に即した国内法の整備を具体的に進めるための仕組みが必要です。
「基本的人権や自由及び民主主義といった普遍的価値を重視した外交を推進してきている我が国としても、かかる「人権の主流化」
の流れを踏まえ、 今後、人権分野での取組を強化していく考え」(外務省ホームページ)の下で「人権外交」を進めている日本にふさわしい、
高い水準での批准が必要です。「言 語としての手話の承認」(2条、24条)や「法的能力」(12条等)、「司法へのアクセス」(13条)、
「虐待防止」(16条)、「地域生活の権利の確 保」(19条)、「インクルーシブ教育制度への転換」(24条)、「雇用・労働」(27条)
、その他多くの課題が残されています。これらの課題についての 取り組みを当事者参画のもとで具体的に進める制度や機関が必要です。
6.選択議定書の批准を推進すべきです。
障害者権利条約の条約体である「障害者権利委員会」への、条約締約国の管轄下にある個人または集団による通報制度を規定する
「障害者権利条約の選択議定書」(Optional Protocol to the Convention on the Rights
of Persons with Disabilities)の批准を本格的に推進すべきです。
以上
後略