全国「精神病」者集団ニュース2009年2月号

2009年2月発行の「ニュース」 抜粋です。 一般定期購読は 有料(年6回程発行1年分5000円)です。
(会員の購読は送料も含めて無料となっております。なお、一部、省略している箇所や伏せ字にしている箇所があります。
その他何かご要望などありましたらホームページ管理人まで直接お願いします)

= 全国「精神病」者集団ニュース 2009年2月版 =

= ごあいさつ =

 新年、明けましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いします。

 今年(2009年)は、全国「精神病」者集団結成35周年となります。中央法規出版の『障害者福祉論』
やNPO法人全国精神障害者団体連合会(略称;ぜんせいれん)のホームページでは、
1993年に初めて精神障害者の全国組織が結成されたことになっています。(丸山,2007:301)
 全国組織の定義の問題なのか、病者集団の存在感の薄さが因したのか、それはわかりませんが、編集者としては、
現場にいなかった若年世代であることや研究活動なども行っていることから、史実を大切にしたいという気持ちに駆られます。

 そういった意味でも、全国「精神病」者集団の35周年総会では、史実の観点からのアプローチも検討したいと考えています。

 総会のことも大切なことですが、法律事項に関しては、障害者基本法の見直し、障害者自立支援法施行3年の見直しに加えて、
2010年の医療観察見直しの時期に向けた廃止運動や障害者差別禁止法の制定に向けた運動など、政治的局面ではまさしく激動しています。

 我々、「精神病」者が、霞ヶ関に通所する重度健常者のペースについていけるのか?政治的には、どの分野でも激動しますが、なんとか、
この時期に良い成果がでることに期待したいと思います。

:全国「精神病」者集団連絡先です。
:★お手 紙、各地のニュース、住所変更、ニュース申し込みはすべて
:〒164-0011 東京都中野区中央2-39-3 絆社
:E-mail  contact@jngmdp.org
:電話03-5330-4170 IP電話 050-3564-7922
:(現在専従体制がとれていません。留守電の場合は以下携帯へ)
:080-1036-3685(土日以外午後2時から午後5時まで)
:ファックス03-5942-7626
——

(略)

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= 「強制入院反対論」=

 N.S.

 強制入院は、人の権利を剥奪するものである。強制入院と、その後の長期閉じ込め、そして強制服薬等の強制医療に、ぼくは反対する。

「強制入院は仕方ない」「過去のことだから気にするな」「こだわるな」という人がほとんどだ。だが僕はそれに納得できない。

 強制入院はひどいことである。これは事実である。この、強制入院はひどいことだ、という事実を分かっていない人があまりにも多い。
この事実認識が前提になければ話にならない。「強制入院はひどいことだが、それでもやらねばならない」と言うなら、
それはそれで一つの意見である。だが、「強制入院はいいことだ、本人のためだ」と、欠けた認識まま発言する人が多いように思う。 
《強制入院はひどいことだ》 この共通認識を土台として、議論をはじめていただきたい。

 強制入院は明らかに人権の制限、もっといえば人権侵害である。
人の権利を制限するような事にはもっと議論が尽くされなければならない。

 僕は強制入院(暴力による医療保護入院)を経験した当事者として、強制入院に反対するものである。

——

= 『投稿』 =

横浜N

 12月はニュース届いたが、その前3ヶ月ほど届かず返事もなかった?

 また、12月ニュースに苦情があったとあって具体的ではなくわかりにくく、私の投稿はいつニュースになるのか。

 法的能力とはなにか?

(略)
——

=== 横浜N様へのニュース編集者からのコメント ===

 ニュースは、原則年6回隔月発行です。年6回のニュースを、5回しか出せなかったことをお詫び申し上げます。現在、全国「精神病」
者集団は、少人数でこれら業務をこなしており、深刻な人材不足・時間不足の問題を抱えております。運営委員は現在募集中ですが、
パソコンを持っている人という条件のため、残念ながら人材不足解消には至っていません。ニュースに特段の想いがある方は、
是非ニュース編集者として、全国「精神病」者集団の業務に参加してください。

 さて、苦情の件ですが、書面ではなく口頭での苦情であったため、苦情処理が混雑しましたことをお許しください。苦情の内容も、
極めて明確なものではなく、ちょっとした方向性の話でしたので、それについて返事を出したまでです。ただ、
口頭であるから返事を出さないという結論とすべきではないと、ニュース編集者が独断で考えたため、このような結果になりました。
今回の指摘を受けまして、今後は、苦情処理も気をつけて行いたいと思います。

 法的能力とは、法律に関する能力があるという概念です。「精神障害者だけ無能だから法律から除外します」という規定が存在します。
成年後見制度(意思能力、行為能力)、刑法第39条の心神喪失(刑事責任能力)、不起訴処分(訴訟能力)などがそれに該当します。
これのなにが問題かというと、精神障害者の意思を無視した強制を法的に正当化することです。これが問題です。
我々は自分の意思で選択することを権利として認めるように主張してきました。ちなみに、法的能力法という法典は存在しません。
あくまで各法律に規定する、事理弁財能力、訴訟能力、返済能力、刑事責任能力、意思能力、行為能力という法律用語の総称です。

 また、向精神薬の侵襲性や拷問等の可能性について、ご意見があれば投稿いたします。全国「精神病」
者集団の活動の方向性としてのご意見であれば、全国「精神病」者集団の運営委員に立候補していただければ、運営委員となり、
向精神薬の侵襲性や拷問等の可能性について取り組んでいただければ幸いに思います。

 障害者権利条約第15条に拷問等禁止条項があり、これが向精神薬の投薬問題に該当します。現在、
理論化は桐原尚之が2009年7月を目処に個人的に行っておりますので、それまではご容赦願います。

——

= 私が見た自立支援法以降 =

大田区A

 スタッフは患者は「就労させる」それを大義名分に、セクハラ、見た目重視のメンバーの扱い、暴言、特に支援センター、
デイケアではそれがけんちょである。女性スタッフは好意を持った男性スタッフにセクハラ暴言やりたい放題。
少しでも告発するとスタッフ数名とメンバー一人のメンバー左側的不利な会議を開き沈黙させる。権力志向かつ横暴。

 名巻き損、精神的苦痛、スタッフのか剰防衛など不快な点は目に余る。家族とのトラブルでも黙らせるのはメンバー
「家族がこう言ってたから」になり、幸い私は只一人ターゲットに絞れる複数家族のいるメンバーは地獄。福祉スタッフは健常者のうばすて山。
学生時代何らかの問題をかかえ、されど高成績の学習能力を持っていた人ばかり、国家試験なければ、患者の一員。現実、私もそうだが、
大学卒業の学歴あるメンバーには全くおさえがきかず「規則だから」「他人を傷付けるから」などと自分は傷付かない笑顔をよそおう、
一流大卒のスタッフはいないのか?

——

= 「人としての尊厳を取り戻す闘い」支援のお願い (一部略) =

=== 裁判 始まる ===

 この8月初旬、T地方裁判所に、精神しょうがい者の女性(橋本さん)が訴えを起こした。

橋本さんは、精神医療の現場で行われた人権侵害事件の被害者だ。以下、その「訴状」の一部を紹介する。

「原告が本件で訴える違法行為の概要は、端的には、次のとおりである。

1 被告特定・特別医療法人M(略)に対しては、

 ① 後述するように平成19年1月30日から同月31日にかけて起きた原告の薬物多量服用に伴う救急車の利用に際し、
その搬送を受け入れたW病院が治療を放棄したために、原告を同病院内で縊首行為をするに至るまで精神的に追い詰めたことに対する責任を問う。

 ② 被告独立行政法人国立病院機構T医療センターへ救急車を呼んで原告を転送するに際して、不適切な連絡(紹介)により、
医療センターでの違法な身体拘束・隔離等の人権侵害惹起の責任を問う。

 2 被告独立行政法人国立病院機構・同M医師に対しては、
同月31日に紹介を受け同機構のT医療センターにおいて原告を受け入れた際、医療保護入院に必要な保護者の同意について、
充分な説明を行わず、保護者からその場で同意書への署名も口頭での同意も取っていないにも関わらず、原告を違法に隔離・身体拘束し、
男性看護師によって下着(パンティ)を剥ぎ取るという人権侵害を行ったことに対する責任を問うものである。」

===  橋本さんの背景と事件に至る経緯 ===

 橋本さんは、T県T市在住、双極性気分障がいⅡ型の傷病名を持つ女性である。

 橋本さんが、本件の被告である特定・特別医療法人M(略)の開設するW病院に通院を開始したのは、平成8年4月のことであった。
翌平成9年12月より、M(略)の代表者であるW医師の担当するところとなり、事件の起こった平成19年1月31日に至る約9年間、
ほぼ一貫して同医師の治療を受けてきた。

 この間、W医師は、彼女に様々な薬物療法を試みたが、それらはことごとく効果を上げず、彼女の病状は年々悪化の一途をたどった。
闘病が長期化すればするほど、彼女の焦りは増して行き、希望が見えない状況の中で、ひとり苦しみもがいていた。特に、
事件の3年前あたりから、社会生活はおろか、日常生活さえも壊滅的な状況となり、
その状況下での彼女の心理的な切迫感は筆舌に尽くしがたいものであり、生存に関わると言っても過言でなかった。

===  人権侵害事件 ===

 そのような状況下で、事件は起きた。

 橋本さんが薬物多量服用をしたのは、強い鬱症状のため約半年間自宅でひとり寝たきり状態にあったその時である。

一方、W医師は、約半年間にもわたり、彼女が外来受診をしていないことなどから、
彼女がおかれていた深刻な状況を長年の治療関係において知り得たにも関わらず、彼女に対して何らの救いの手を差し伸べようともせず、
存在すら忘れたかのように無視し、放置していた。

彼女は、そんなW医師に対して不信感を募らせながら、出口の見えない深い絶望の淵にあり、言語に絶する苦しみを味わっていた。
その苦しみから、彼女は、薬を飲んだ。

 平成19年1月31日、朝。彼女が救急車で搬送されたのは、W病院だった。T市内に住む彼女の父親に連絡が取られ、
父親は病院に駆けつけた。そこでW医師が父親に告げたのは、「今日は診療しません。引き取ってください」ただそれだけだった。
彼女は薬物の影響下にあり、まるで酒に泥酔したような状態。結局、夕方まで処置室のベッドに放置されていた。

 夕方、再び彼女のもとを訪れたW医師は、付き添っていた父親に「引き取って下さい」と重ねて言い、父親が「しかしこんな状態では…」
と言っても「お帰り下さい」の一点張りで、さっさと姿を消してしまったため、父親は困惑し、途方に暮れ、
為す術もなくその場立ちつくすばかりだった。

 やがて夜になり、少しずつ薬物の影響が薄れてきた橋本さんは、院内の照明がほとんど消えた頃になっても、
その場に居座ることで抗議の気持ちを表した。長年の治療にも関わらず、
悪化する一方の病状に対する苦しみの挙げ句に引き起こされた薬物多量服用であるのに、それに対してW医師は、
手を打つどころか治療拒否という、治療困難な患者を手に負えない厄介者として放り出す、医療者としてあまりに無責任な態度に出た。
10年にもわたる辛い闘病の行き着いた先がこれだった。彼女は深い憤りと暗澹たる絶望を覚えていた。

 そのやり場のない気持ちの発露として、発作的に彼女がとった行動は、ふと目にした処置室の片隅に置かれた数枚のタオルを、
カーテンレールに結びつけ、首をくくるという行為だった。これは、直後に看護師が気付き止めたため、大事に至らなかったが、
このような患者の行動に対して、W医師には予見可能性があったことについて、本件訴状においては、
具体的な証拠を挙げ指摘がなされていることを、ひと言書き添えておく。

 その後、彼女は、勝手に救急車を呼ばれ、国立病院機構T医療センターに転送される。

 医療センターに到着した橋本さんと父親は、診察室に通された。しかし、当直のM医師は彼女に目もくれず、
内線電話で慌ただしく指示を出しており、聞くとはなく聞こえてきたその内容から、彼女を収容するための隔離室の準備が、
既にとられていることが分かった。この時、M医師は、診察と言える行為は一切行わず、事務的に書類を記入してその複写を彼女に渡した。
これらの様子とM医師の態度から、彼女は、自分が「医療保護入院」させられると瞬時に察知し、恐怖した。それはまさに、
10年余に渡る闘病の結果、彼女が、精神医療の現場で患者として、様々の不当な処遇を見聞し、経験してきたことにより培われた、
知識と直感力によるものだった。とっさに彼女は、付き添っていた父親に「絶対にサインしないで!」と叫ぶ。

 診察も何もないまま、いきなり医療保護入院させようとする医師のやり方に、強い憤りを覚えた彼女は、手渡された書類を、
M医師の目の前でわざと破り捨てた。するとM医師は、「そんなことをすると懲役3ヶ月だ!」と強い口調で怒り出し、更に、
「わしは精神保健指定医だ!」と、恫喝するような調子で言い放った。

 これらの言葉を聞いた時、橋本さんは、それまでの憤りが鎮まってしまうほどに呆れかえってしまった。M医師の、人権意識の低さ、
患者を前にして子供だましの脅迫や権威のふりかざしを行う人間的な幼稚さに。しかし、それは同時に、
この医師の前ではモラルも法も理論も封殺され、患者は絶対的な暴力で抑圧され、抵抗することは全くの無駄であると、悟ることであった。

 実際、父親の同意もないまま、M医師の指示の下、あっという間に3、4名の職員によって彼女は羽交い締めにされ、
無理矢理引きずるように病棟に拉致された。さすがに複数の人間に取り囲まれて問答無用に引きずられて行くことには、強い恐怖を感じ、
彼女は悲鳴をあげて父親に助けを求めたが、M医師も職員も、黙って淡々とそれを行った。

 橋本さんは、強制的に隔離室に入れられ、注射を打たれ、錠剤を飲まされ、ベッドに寝かされ、腹部と両手足を拘束具で拘束される。
本人の了解どころか、家族(保護者)の同意もないまま、彼女は強制的に拘束され監禁された。

 しばらくして、男女2名の看護師がやって来て、男性看護師によって下半身裸にされ、紙おむつを着けさせられる。
女性看護師はただ突っ立って見ているだけだった。彼女が「何故男性の看護師なのか」と冷静に質問すると、女性看護師が応えて
「看護師には男性も女性もいますよ!」と吐き捨てるように言った。

 橋本さんが体験させられた今回の精神医療現場での驚くべき非人道的扱いは、断じて許されるべきではない。
全く同意を求められることもなく強制的に自由を奪われ非人間的扱いを受けたという事実は、人権無視、
人権侵害というありきたりの表現を通り越して、「ひと」の存在に対する冒涜である。

===  原告 橋本さんの決意 ===

 「その時、私は『ひと』ではなく『もの』に過ぎなかった。医療者たちは当たり前のように私をそう扱った。これは精神医療の現場で
「患者保護」の美名の元に公然と行われている、日常的な人権侵害のひとつである。『ひと』はその尊厳を失っては存在の意味をも失う。だから、
私は、泣き寝入りはしない。私は、闘う決意をした。奪われた人としての『尊厳』を取り戻すために。自らが『ひと』として生きるために。
同時に、そうすることが、現状で、あまりにないがしろにされている精神病者の人権を守ることにつながると信じるからだ。」

===  人としての尊厳を取り戻す闘い ===

 橋本さんは、たった独りで「人としての尊厳を取り戻す闘い」を始めた。まず、地元弁護士会の法律相談で相談するが、
「あなたには損害はない。事件にもならないし、裁判になどならない」と門前払いの扱いだった。

地元の弁護士に相手にされないのなら、日本中探してでも、精神しょうがい者の人権問題を理解できる弁護士を見つけようと決心し、
かねてより「全国『精神病』者集団」を通じて知り得た、「心神喪失者等医療監察法」に真っ向から反対の論陣を張る、I弁護士に望みを託した。

彼女は、W病院へ事件当日のカルテ開示の請求をし、本件証拠とした幾つかの文書を入手した。それらを丁寧に調べ、
父親の証言を得ながら、事件の経緯を詳細な文書に綴った。それらを携えて、単身、東京のI弁護士を訪ね、相談し、直接の紹介として、
しょうがい者の法と人権をよく知り、精神科医療に関わる裁判経験もある、T市のO弁護士と出会う。

 困難にくじけない、強い意志がそこには働いている。頭が下がる思いがする。自らの『ひと』としての尊厳を取り戻すために、
巨大な権力と組織に対して一歩もひるまず、圧倒的な力関係の差があるにも関わらず、たった独りで闘いをつくってきた、
無謀とも言えるほどの熱意。人権問題の原点が、そこにはある。

 精神医療の現場で、彼女のケースのような人権侵害事象が、何故公然と行われているのか。それは「国会で十分な議論もされないまま、
採決せられた『心神喪失等医療観察法』(予防拘禁法)に対する、多くのひとの無関心と無神経さが引き起こしている」と言えよう。だから、
この裁判は、橋本さん個人の問題ではなく、私達ひとりびとりの問題と考える。

===  「支援する会」へのご賛同のお願い ===

 精神医療現場で起こった今回の人権侵害事象を許さない闘いを、当事者(橋本さん)

だけの闘いにせず、全体の問題として取り組むためにも、「支援する会」を立ち上げていきたいと思います。

 橋本さんの「人としての尊厳を取り戻す闘い」に共感し、賛同頂き、今後の裁判の経過を見守って頂くことを、心よりお願いいたします。

「人としての尊厳を取り戻す闘い」を支援する会(仮称)

差し当たり「支援する会」の仮の事務局(連絡先)を下記に置くことにします。

「解放社会学研究所」〒731ー3361 広島市安佐北区あさひが丘4ー9ー7

 E-mail: ejima-s@ms11.megaegg.ne.jp

「支援する会」準備会 呼びかけ人代表   森島 吉美

===  「人としての尊厳を取り戻す闘い」を支援する会 呼びかけ人 ===

代表:森島 吉美  (広島修道大学 教授)~
   池内 まどか (社会福祉法人一条協会・高知県 事務局長)~
   岩田 啓靖  (曹洞宗:大寧寺・山口県 住職)~
   内田 博文  (九州大学 教授)~
   宇都宮 富夫 (八幡浜市議会 議員)~
   江嶋 修作  (解放社会学研究所 所長)~
   大久保 陽一 (いのちくらしこども宍粟市民ネットワーク 代表)~
   金杉 恭子  (広島修道大学 准教授)~
   鐘ヶ江 晴彦 (専修大学 教授)~
   川口 泰司  (山口県人権啓発センター 事務局長)~
   佐々木 理信 (浄土宗:真明寺・滋賀県 住職)~
   志村 哲郎  (山口県立大学 教授)~
   露 新治   (落語家)~
   砥石 信    (国連登録NGO横浜国際人権センター・信州ブランチ代表)~
   富田 多恵子 (びわこ南部地域部落解放研究会 副会長)~
   林 力    (福岡県人権研究所 顧問  元九州産業大学 教授)~
   福岡 安則  (埼玉大学 教授)~
   山崎 典子  (浜田べっぴんの会 代表)~
   山本 真理  (「全国『精神病』者集団」会員・世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク 理事)~
   若月 好   (精神障害者当事者会「きまぐれの会」・鳥取県 民生児童主任)~
   亘 明志   (長崎ウエスレヤン大学 教授)~

——

= 2月までの運営委員会活動報告 =

○ 障害者施策総合調査

 12月2日(火)に、第1回委員会が開催され、桐原が参加した。平成20年度は「教育」に関する調査であり、
主に特別支援教育と生涯学習についてアンケートを行う。結果は、障害者基本法に定める、障害者基本計画に反映させることになる。

○ チャットでのトラブルに対する抗議要請

(略)に謗中傷文を投稿する人がいて、困っているのでどうにかして欲しいとの連絡があった。
その人は各機関に連絡したが取り合ってもらえない様子であり、病者集団としてどう取り組むかは意見が割れた。

言論の封殺は人権侵害であり、認められないとする意見と、取り合ってもらえない状況を奪回する必要性で議論したが、
最終的にはチャットを見ないようにするなどの対処法を提示した。

○アクセシブルデザイン標準化開発委員会

アクセシブルデザイン(以下、AD)標準化開発委員会の趣旨は、国際的な障害者NGOと連携してAD開発をして、
ISOにより標準化することだ。全国「精神病」者集団は、WNUSPの国内支部という立場で、
WNUSPの協力呼びかけと仲介をする役割らしい。WNUSPとしては他に優先課題が多いということであったが、
協力をしないものではないということで確認した。

 9月30日に第二回の委員会があり、ティナ来日について報告し、ティナと共用品推進機構によるAD開発の話し合いが計画された。

 11月になるとティナが来日し、共用品推進機構の関係者との話し合いもした。極めて協力的であったことを確認した。

○ 障害者基本法の内閣府ヒアリング

全国「精神病」者集団運営委員の関口でございます。

 お手元のペーパーのほかに6つほど参考文書を送らせていただいていると思いますけれども、全部やっていると大変なので、
運営委員会の会議のメーリングリストの中で議論をされたものを御説明していきたいと思います。

 まず「権利主体としての障害者」ということでございます。我々精神障害者は、実はオープンにする、
私は精神障害者ですよと言った瞬間に差別をされるんです。就労支援センターの方も例えばクローズで就職をするということがあるわけです。
そうすると見た目は一般人と変わらないですから、薬を飲んでいるところを見られたりとか、医者に通っていると言わない限り差別はされない。
精神障害者としてのスティグマを負わなくて済むというところがあります。それが原因で実際問題、薬をだんだん減らしてなくしてしまおうとか、
そういうことを考えている人が多いです。

 ですけれども、こういうことが起こってきた原因は、そもそも憲法に法の下の平等とかいろんなことが書いてあるわけですけれども、
それから精神障害者が外されてきたという経緯がある。それを精神障害者も人間の権利の主体であると見てほしいということです。

 次の「強制医療・強制入院の廃絶」にも関わりますけれども、これも実は法制部分の議論はまだきちんとはできていないんですけれども、
パレンス・パトリエというのがあるとして、つまりその本人のための強制医療があるとしても、それは非常に緊急かつ待ったなしの状況で、
救急医療として行われるべきであろうと私らは思っていまして、やはり強制ということを制度的に位置づけるのはまずいのではないか。
これは参考文献の中にも出てきます。

 特に障害者の権利に関する条約の事務局は、これ以前の文書で、
精神疾患のある人の保護及び精神保健ケア改善の原則というのがありますけれども、これすらも日本はずっと守ってこなかったわけです。
これに対する非難があることも注意喚起を求めていて、CRPDの方が原則よりも優先しますよということを指摘しております。

 ですから、医療の必要な人に医療を提供するというのは非常に重要だと思いますし、
私もいろいろな場面でそういうことを感じることはあるんですけれども、どうするのかといったときに確かに今、
その次の地域移行にも関連しますが、自立支援法の中で退院促進ということで、国は17億円のお金を出しています。
同じ17億円がつまり精神科救急に使われております。この部署はどうやら別々らしいんですけれども、整合性を持たせていただくと。

 前の部分と関連したところで言いますと、いわゆる精神科救急と言ったときにハード救急といいますか、
とにかく無理やり病院に連れていって放り込んでしまうという局面が非常に強くて、例えば血を流している人がいたら、
意識を失っている人がいたら、とりあえず輸血して意識が戻ってから、
あなたは輸血を拒否するかどうするかという裁判で負けた例があるわけですけれども、それを聞くのが普通だと思うんです。

 例えばそう状態ならそう状態で、一種の幻覚妄想状態にとらわれている人がいたら、やはりどれくらいの医療の必要性があるのか。
その緊急性はどれくらいかと言ったときに、この辺は法的な枠組みが非常に難しいですけれども、
それはもう救急医療としてやりますよという形で整理していただかないと思います。

 後半の方に行きますと、地域移行です。地域移行というのは当然、
7万2,000人が社会的入院ということをおっしゃっていましたけれども、15万人が今5年以上入院しているという実態は異常だと思います。
はっきり言って加療して地域に出せないというのは医療の敗北だと思いますし、一定程度その症状が残っているにせよ、
5年もちゃんとした医療を受けていれば、地域でその人たちを受け入れる体制を逆につくらなければいけないと思います。

 その辺でこれは権利条約にも関連しますけれども、地域で生活する権利ということが明示されています。ただ、
これを一遍に15万人を放り出すということになると、これは一時のアメリカみたいな話になってしまって、
浮浪者が増えてしまうみたいな話になりかねないので、その地域の力をどういうふうにやっていくかということと関連します。

 例えば医療に結び付いている人ですら、自分の症状の変化というものに気づく人は少ないそうです。
私などは割と気づく方らしいんですけれども、そうすると薬も飲んでいればいいやでもって、自分の状況の変化に気が付かないんです。

 そういう場合に例えば迷惑行為したとか何とかいったときに、どの線で切って、どの線で救急医療に結び付けるのかということを自傷・
他害のおそれといったようなわけのわからない未来予測ではなくて、緊急医療の必要性でもって図っていただきたい。

 ですから、強制医療ということは医療観察法においては、3か月以上拘束されている間にきちんとした医療が行われていれば、
ほとんど落ち着くと思うんですけれども、その後で強制医療が行われるというのは甚だおかしいと思います。

 「障害者総合福祉法制定」です。これはつまり病院から出てきて、例えば今、病院にいる患者さんが半分になったとして、
その人たちが暮らせるためにはこういった福祉の総合法みたいなものがあって、
それが本人の権利を守り擁護していくような形でもって関わりをもって、予算の話もいっぱい出ましたけれども、
要するに簡単に言えばその人に対して、手厚い保護という言い方も余り好きではありませんけれども、選べる手厚い社会支援があれば、
その人が権利主体として選べるわけですしということです。

 「障害者団体の参加」はいろんな団体も言っていますけれども、障害者団体ということで考えて、
つまり障害者をピックアップして障害者の意見を聞きましたというのではなくて、
例えばJDFならJDFの団体としての意見をちゃんと反映させていただけるようにしていただきたい。

 「成年後見制度の削除」ですけれども、これは送付いたしましたインクルージョンヨーロッパの文書がかなり細かく書いておりますので、
パラダイムシフトということも踏まえて、その辺で後見制度自体を全面的に否定するものではありません。

 ただし、逆に言えば成年後見を1回受けてしまうと、その成年後見を受けた人が保護者の優先順位第1番ですね。そうすると、
これはそんなに悪い人はいないと思いますけれども、成年後見を受けてしまって保護者の立場にもなれてしまってというときには、
精神障害者にとっては手も足も出ないという状況になります。つまり悪意の場合です。
常に善意の人が何かやってくれるという前提は間違っているので、その辺のところを考えていただきたい。

 「障害者週間」では、きちんと障害者団体による障害者団体の参加ということでございます。

 最後に補足させていただきますけれども、障害者の権利に関することに関して、例えば精神障害者の場合は法律事項は結構多いです。
相続の問題とか強制入院の問題とか、今ある制度の下でもかなり問題のあるものがあります。

 そうしたときに、そういう人の人権をきちんと守っていくというのは、やはり今の体制だけではなくて、
やはり障害者差別禁止法みたいなものをきちんと制定していただいて、その中でもって、それはおかしいでしょうと。

 勿論、前提になっている措置、保護という枠組み、あるいは医療観察法という枠組み自体も考え直していただきたいんですけれども、
その中できちんと障害者の権利を保護していくところにきちんと予算を付けていくということ。だから権利主体になったということは、
権利主体を下支えするいろんな予算措置を含めた組織が必要なわけで、そちらの方も考えていただきたいと思います。

 以上です。どうもありがとうございます。