共謀罪で、
セルフヘルプグループ活動も
ピアカウンセリングも「犯罪」とされる
私たちは仲間の絆を断ち切る共謀罪成立を許しません
共謀罪とは、実際に犯罪が行なわれなくても、犯罪について話し合っただけ、その話し合いそのものが「犯罪」とされるというとんでもない法律です。
しかし全国「精神病」者集団の日常的活動を振り返ってみると、私たちの活動の基盤そのものが共謀罪として「犯罪」とされかねないということになります。
いま厚生労働省もまた各地自治体も「ピアカウンセリング事業」「セルフヘルプグループ活動の育成」ということを盛んに言っています。突然カタカナ文字の導入がされていますが、これらは、それぞれの各地の仲間が最初に出会い会を始めたときから、自然発生的に行なってきた活動です。すなわち同じ「精神病」という体験を共有しているものが、専門職対利用者というのではなく、平らな関係の中で体験を分かち合い、そして相談をしあったり、支えあったりするという活動です。
仲間による相談=ピアカウンセリングは、まず体験の分かち合いとそして医療の名に値しない医療の現実、毎日の苦痛、あるいは被差別体験、経済的苦しさなどなどの苦悩と怒りの共有とそれらへのお互いの共感を根底におきます。そして患者会の集まりはまずこうした共感を出発点としています。
そこではたとえば「あの医者は許せない痛い目にあわせよう」「あの精神病院は何とかしなきゃいけない、みんなで押しかけよう」などという発言も当然出てきます。
そうしたときに、「そんなことはしちゃいけません、犯罪になりますよ」などといって発言を押さえ込んでは、ピアカウンセリングもセルフヘルプグループ活動も成り立ちません。まずひたすら仲間の思いを聞く、そしてその思いへ共感をすることがこれらの活動の出発点です。孤立のままに苦悩していたものが、共感によって仲間の絆を確認すること、これこそが私たち障害者運動の基盤です。
共謀罪の規定では、言葉にして「そうだそうだ、一緒にやろう」とまで言わなくても、黙って聞いていること自体が「共謀」とされ、「犯罪」とされてしまいます。「痛い目にあわせよう」というのを「うなずいて聞いていた」ということが「傷害」の「共謀罪」となります。あるいはみなで抗議のために精神病院に押しかけようというこという結論が議論の結果でたとしても、「組織犯罪処罰法 組織的威力業務妨害」の「共謀罪」ということになります。たとえ実際にはその行動が行なわれなかったとしてもです。
すでに大田区では支援費の移動介護時間をいきなり月90時間以上削られた身体障害者の鈴木敬治さんが障害福祉課の窓口に介助者や支援者といっただけで、大田区は「違法状態と認定する」としていきなり窓口からビデオカメラを鈴木さんたちに向けました。
大田区の認識に従えば、行政に要求に行った、あるいは悪徳精神病院や精神科医を取り囲んで抗議したというだけで、「違法行為」ということなのです。
精神障害者団体は犯罪組織ではないから大丈夫、とはなりません。法案では二人以上は組織、そしてサークルでも、企業でも、市民運動体でも、労働組合でも共謀罪の対象となりうるのです。当然にも障害者団体も対象となりえます。
そしてもっと恐ろしいことは、こうしたピアカウンセリング活動やセルフヘルプグループ活動に参加していた誰かが、「おおそれながら」と警察に自首するとその人は免罪され、グループは共謀罪という犯罪を行なったということになるという規定です。
これでは「精神病」者仲間が集まったとしてもお互いに疑心暗鬼となり、ピアカウンセリングやセルフヘルプグループ活動自体が成立しないということになります。私たちが生き延びるために仲間との絆は必須のものです。私たちの絆を断ち切る「共謀罪」成立を私たちは決して許しません。