要請書 障害者虐待防止法の改正を行い病院・学校・官公署を通報義務の対象にしてください

2016年6月26日

内閣総理大臣 安倍晋三様

厚生労働大臣 塩崎恭久様

 

病棟転換型居住系施設について考える会

池原毅和(弁護士)

伊澤雄一(NPO法人全国精神障害者地域生活支援協会)、

大熊一夫(ジャーナリスト)

加藤真規子(NPO法人こらーるたいとう)

関口明彦(全国「精神病」者集団)

高木俊介(たかぎクリニック)

西村直(きょうされん)

長谷川利夫(杏林大学)

増田一世(公益社団法人やどかりの里)

八尋光秀(弁護士)

山田昭義(認定NPO法人DPI《障害者インターナショナル》日本会議)

山本深雪(認定NPO法人大阪精神医療人権センター)

渡邊乾(全国精神医療労働組合協議会)

(以上、呼びかけ人代表)

 

要請書

障害者虐待防止法の改正を行い病院・学校・官公署を通報義務の対象にしてください

 

 私たちは、精神病院病床の一部をグループホームなどの居住系施設に転換しそこに長期入院患者を「退院」したことにする「病棟転換型居住系施設」政策に反対して集まった、精神障害者・障害者・精神障害者家族・支援者・市民からなる団体です。私たち団体の調査によれば、厚生労働省は昨年2015年1月に省令改正し4月に施行しましたが、この精神病床の「住居化」については4割の自治体が条例改正を見送っています。(2015年8月13日朝日新聞朝刊2面にて報道済み)。当会を始めとする全国での反対の運動の取り組みが一定の歯止めとなっていると考えます。

一方、精神病院の処遇の実態は変わらず、毎年のようにスタッフによる入院患者に対する虐待事件が報道されています。しかしそれは個人の犯罪として処理されたりし、虐待を生み出す構造は温存されたまま、改革は進まない実態があります。

昨年報道された千葉の精神病院である石郷岡病院の保護室内における看護師による傷害致死事件、あるいは東京の榎本クリニックにおける合鍵、現金、通帳を管理することによる事実上の「強制通院」問題なども記憶に新しいところです。学校や保育所における障害児虐待報道もありました。

こうした実態があるにもかかわらず障害者虐待防止法は、学校・病院そして官公署を通報義務の対象としていません。官公署で働く障害のある者に対する虐待はないなどということは有り得ません。この三者を通報義務から外す合理的理由は全く見当たりません。

 

障害者虐待防止法は2012年10月1日に施行されました。

この法律は障害者への虐待とし、① 養護者による障害者虐待、② 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待、③ 使用者による障害者虐待を明記しました。

虐待の類型については、① 身体的虐待、② ネグレクト、③ 心理的虐待、④ 性的虐待、⑤ 経済的虐待の5つを上げています。

附則第2条では、施行後3年をめどに学校、保育所等、医療機関、官公署等における虐待防止のあり方等について見直しを行うとしています。

厚生労働省の虐待防止法概要においても、その他として「 2 政府は 障害者虐待の防止等に関する制度について この法律の施行後3年を目途に検討を加え 必要な措置を講ずるものとする」とされています。

しかしながら、すでに施行後3年を過ぎているにもかかわらず、厚生労働省は未だ改正に向け作業を開始していません。

また、現在、通報義務の対象となっている障害者施設での虐待についても、死亡者が出る事態となるまで、あるいはマスコミで報道が行われないと行政は動かない、それまで何度も通報があったとしても門前払いされているという例が多く、虐待防止に有効な運用がなされていません。

通報義務の拡大のみならず、真に有効な虐待防止を達成するために根本的な法改正と予算確保が重要な事は明らかです。

 

さらに、精神病院での虐待についてはすでに国際的な批判を浴びており、以下の国連の2つの委員会も独立した監視機関の創設を求めています。

 

2013 年 5 月  拷問等禁止条約委員会勧告 「独立した監視機関がすべての精神医療施設に対して定期的訪問を行うことを確保すること」

2014 年 7 月  人権委員会 日本政府への勧告 「精神科の施設に対して、虐待を有効に調査し罰し、被害者またはその家族に賠償を提供することを目的として、有効で独立した監視と報告体制を確保すること」

 

したがって私たちは政府=厚生労働省に対して以下を要請いたします。

 

 

1 直ちに障害者虐待防止法の改正作業に着手すること

2 改正に向けては精神障害者、知的障害者など当事者及び家族関係者による検討の場を保障すること

3 改正にあたっては学校保育所等、病院、官公署を通報義務の対象とすること

4 有効な虐待防止のための独立した監視機関を創設すること

5 義務に基づき通報を行った者に対して、その地位及び名誉・財産を守るための有効な仕組みを創設すること

以上

 

 

 

【連絡先】

長谷川 利夫(杏林大学保健学部 作業療法学科 教授)

〒181-8612 東京都三鷹市下連雀 5-4-1

携帯電話:090-4616-5521

E-mail:hasegawat@ks.kyorin-u.ac.jp



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