現在、厚生労働省は、全国障害児・者実態調査(仮称)に関するワーキンググループを設置し、全国障害児・者実態調査(仮称)の実施を検討しています。
2010年6月14日に開催された、第2回全国障害児・者実態調査(仮称)に関するワーキンググループの資料1「全国障害児・者実態調査(仮称)についての基本的な考え方(素案)」で調査方法が示されました。そこには、①調査員が調査地区内の世帯を訪問し、調査の趣旨等を説明の上、調査対象の有無を確認する、②調査対象者がいる場合は、調査票を手渡し、記入及び郵送による返送を依頼する自計郵送方式、③調査票は原則、調査対象者本人が記入する、というものでした。
突然自宅に押しかけられ、障害者かどうか追及されるという事態は、人道上、非常に大きな問題があります。また、地域でおびえつつ毎日ひそかに生き延びている障害者を追い詰める行為であり、最悪の事態を引き起こしかねません。過去に実施された精神衛生実態調査では、調査に恐怖して自殺した者がいると聞いています。全国「精神病」者集団の組織原則のひとつには、「精神病」者の生命の尊守があります。なので、こうした事態を許すことはできません。1973年、1983年の精神衛生実態調査が中止され、それ以降調査がなされてこなかった理由は、調査方法が非人道的であったからです。自殺者が出ているという歴史も全く総括・反省されずにして、全国障害児・者実態調査(仮称)が検討されている現状には、怒りを禁じえません。
これまで全国「精神病」者集団は、障害者を対象とした調査ではなく、精神科病院等の施設を調査することを求めてきました。精神病院の実態調査が行われなかった結果、明らかにされたのが、1984年の宇都宮病院事件です。全国障害児・者実態調査(仮称)の調査が障害者総体の利益につながるとは思えません。施設の実態調査こそされるべきです。まず、すべき調査を後回しにしてまで、全国障害児・者実態調査(仮称)を強行しようとしていることに、強い怒りをもちます。
全国「精神病」者集団は、全国障害児・者実態調査(仮称)の調査方法等に対し、強く抗議するとともに、調査方法等の変更を要請します。
2010年8月17日
全国「精神病」者集団