2015年12月6日
全国「精神病」者集団
2013年6月、精神保健福祉法は、保護者制度を含む医療保護入院等の見直しを含む「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(2010年6月29日閣議決定)を受けて、保護者制度の廃止に伴い医療保護入院も家族等の同意に変更する改正がなされました。このときの改正は、障害者権利条約の批准に向けた国内法整備の一環として実施されたものの、障害者権利条約に係る議論は一切なされませんでした。
この当時「家族等の同意」は、保護者の同意と比較しても広範囲(三親等以内)の人に同意権を付与することになるため批判の声が高まりました。そこで衆参両厚生労働委員会において法案の審議に質疑の時間が設けられ、付帯決議と施行3年後の見直しの規定が盛り込まれて可決へと至りました。このたびの改正は、ちょうど2013年改正の際にやり残された医療保護入院の見直しに取り組むことが求められている改正ということになります。
2013年度の法改正では、「家族等の同意」によって、従来よりも広範囲の人に同意権を付与することが可能となり、従来なら医療保護入院の対象にならない人までもが医療保護入院の対象となりました。また、大臣指針では、いわゆる「病棟転換型居住系施設」の構想が盛り込まれ、精神科病院の体制・文化が地域移行の過程において維持・継続されることが懸念されました。そしてこの間、新規措置入院患者の急増、医療保護入院の増加、隔離・身体拘束の増加など、拘束性の強い処遇が増しており、およそ改善に向かっているとはいいがたい状況があります。
このように精神保健福祉法の改正は、「より現実的な方法で」「少しでもマシなものに」という動機と裏腹な帰結を招いています。さて、このたびの改正でも、これまで通りに精神保健福祉法の部分修正を重ねたところで、本当に35万人の入院患者の実情に変化を与えることができるのでしょうか。私たちは、精神障害者をとりまく多くの問題は、精神保健福祉法という法律の部分改正では到底解決に至らない、否、精神保健福祉法という法律こそ問題の根幹であると断じます。
よって精神保健福祉法は、改正ではなく撤廃しかありえません。