2013年春の精神保健福祉法 医療観察法改悪阻止

障害者権利条約の完全履行を   一切の強制入院強制医療の廃絶を

来春の精神保健福祉法、医療観察法改悪阻止  強制の拡大強化と差別的隔離拘禁の拡大を許すな

私ども全国「精神病」者集団は1974年に結成された全国の「精神病」者団体個人の連合体です。私たちは結成時より、一切の強制入院強制医療の廃止、精神衛生法(当時)撤廃をかかげ、私たちを犯罪予備軍としてとらえ差別的に予防拘禁し強制的に人格強制しようとする保安処分を許さない闘いを継続してきました。

また2002年より、国連の障害者権利条約作成への動きに対して、世界精神医療ユーザーサバイバーネットワークWNUSP 全国「精神病」者集団もメンバー)とともに積極的に取り組み、また国内でも日本障害フォーラムに参加して日本政府や国連特別委員会への働きかけを継続してきた。

2006年12月国連総会はついに障害者権利条約を採択し、日本政府も2008年9月に署名し、批准することへの意思を明らかにした。

私達日本障害フォーラムに集まった障害者団体は、障害者権利条約の完全履行のために十分な国内法整備を求め、そうした声にこたえ政府も2010年1月に障がい者制度改革推進会議を発足させ障害者制度の見直し作業を障害者団体の参加のもとで進めてきた。

その中で平成22年6月29日閣議決定されたのが「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」であり、その中でいかが明記されており、本来医療観察法も含め、強制入院、強制医療のあり方が根本的に見直されるはずであった。

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(4)医療

○ 精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」の見直し等も含め、その在り方を検討し、平成24 年内を目途にその結論を得る。

○ 「社会的入院」を解消するため、精神障害者に対する退院支援や地域生活における医療、生活面の支援に係る体制の整備について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23 年内にその結論を得る。

○ 精神科医療現場における医師や看護師等の人員体制の充実のための具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成24 年内を目途にその結論を得る。

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しかしながら、厚生労働省において「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」が作られたものの、この検討会は医療観察法についても触れず、また措置入院・医療保護入院など強制入院総体のあり方そのものに切り込むこともなく、医療保護入院についても保護者制度の廃止のみが語られ、医療保護入院についてはなんとたった一人の精神科医の判断で強制されるとされてしまった。

この厚生労働省の検討会の結論(2012年6月29日)を受け厚生労働省は来春精神保健福祉法「改正」を行うとしている。

この報告書の最大の問題点は、医療保護入院について、本人の同意が取れない状態でありかつ精神保健指定医1名が入院を必要と判断した場合に本人が拒否しようと強制的に入院できるという改悪。現行では保護者の同意が要件の一つであり保護者が拒否すれば強制入院はできない。この報告書の提言は強制入院の要件の緩和である。

そもそも障害者権利条約は強制入院および強制医療を否定しており、すでに締約国政府報告書審査で再三、その旨が委員会より述べられている。強制入院強制医療は、障害者権利条約12条、14条、15条、17条、25条d、26条bおよび3条の非(b) 非差別〔無差別〕という一般原則の侵害であり、廃止されなければならない。

したがって障害者権利条約批准に向けては最低限、強制入院の要件を見直し、強制入院を減らし、最終的に廃止する方向性を取る必要がある。それゆえにこそ上記閣議決定は強制入院強制医療の検討を求めたのだ。

私たちは閣議決定すら踏みにじり、障害者権利条約批准にあたって、厚顔にも強制入院強制医療を拡大強化する、検討会報告を決して許すことはできない。

同じく厚生労働省「精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会2012年6月29日」報告書も重大な問題点がある。マスコミなどでは精神病院でも他の病院と同等の職員配置、入院は原則1年までなどと報道されたが、この報告書を読むと恐るべき精神障害者差別の公認が提言されている。

今現在長期に入院している方についての対応である。今現在長期に入院している方の病棟については、差別的な特例(精神病院においては他科に比べ医師および看護の配置が少なくていいとするもの)以下の水準でよしとするものだ。医師は特例以下、看護についても看護師以外の介護士、精神保健福祉士、作業療法士、などをあわせて看護基準を満たせばいい、すなわち看護についても特例以下の配置でいいとするものである。これでは夜間は看護も医師も当直なしという病棟となるであろう。これを果たして「病棟」と呼んでいいのだろうか?  精神病院病棟が病院というより生活の場・施設と化してしまっている実態の公認である。しかもこの病棟については開放的なとはされているが、行動制限をしてはならないとはされておらず、また強制入院患者を入れてはならないもされていない。さらにこの病棟を年限を切って0にするという方針も出されていない。厚生労働省は「障害者政策委員会第2回 第4小委員会(2012年11月12日開催)」において、病床削減の数値目標は立てないし病床削減という方針はないと明言している。

医療と保護のために本人が拒否しても入院が必要という病態の方がなぜ医療保障もないこんな病棟に入れられるのか?  医療と保護のために止むを得ずするという行動制限を受けるほどの病態の方がなぜこんな病棟に入れられるのか?

しかも精神保健福祉法によれば、強制入院の医療費であっても本人自己負担が原則である。そして本人が負担できないときは扶養義務者から取り立てられることになっている。こんな基準以下の病棟に強制的に放り込まれ、その上医療費まで取り立てられる。これこそ精神障害者差別以外のなにものでもない。

厚生労働省は精神病院入院患者については長期化を避け短期間の入院とするという方針を出しており実際入院の短期化の傾向はある、その上で病床削減をしないということ、さらに医療保護入院の要件緩和ということは、今までの何倍もの精神障害者が精神病院入院を強いられて行く結果を招きかねない。

精神病院中心の精神医療からの変換、隔離収容から地域で医療を受ける権利確立、そして何より精神障害者差別と隔離拘禁の廃絶は私たちの積年の要求であり、またいま障害者権利条約の求めるところである。

厚生労働省の2つの検討会報告書は障害者権利条約に対する反動であり、その本質を否定する方向を出しており、断じて認めることはできない。こうした報告に基づいた精神保健福祉法改悪、さらには心神喪失者等医療観察法改悪を私たちは決して許さない。

再度私たちはすべての仲間に訴える。障害者権利条約の意味ある批准を そして完全履行を、強制入院強制医療の廃絶、精神保健福祉法の廃止、医療観察法の廃止を

 

 

2012年11月24日

全国「精神病」者集団

資料
あらたな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム第3ラウンドとりまとめの公表

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002e9rk.html

精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会  取りまとめ公表

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ea3j.html

厚生労働省・原医政局長インタビュー(上)- 「病床削減は困難」
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38775.html
 厚生労働省・原医政局長インタビュー(下)- 医療法改正、来年の通常国会で
 http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38776/page/0.html


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