2012年警視庁有識者会議による、てんかん、統合失調症、躁うつ病等を持った運転者に対する差別的提言への抗議

2012年11月22日

全国「精神病」者集団

 

2011年4月、栃木県鹿沼市で起きた、クレーン車が登校中の児童に突っ込み6名の児童が亡くなった事故の遺族が中心となって、17万人分の署名を集め公安委員長に提出。その後2012年4月に始まった警察庁の有識者会議が、運転免許制度見直しについて、まとめた提言を2012年10月25日発表しました。その報告書の骨子は、

1、   運転に支障がある症状を虚偽申告した人に対する罰則の整備を提案。

2、自動車の安全な運転に支障があると認められる人について、医師が任意で届け出る仕組みの必要性を指摘。

3、病気で免許が取り消された人が再取得する時は試験の一部免除を提案。

4、症状の疑いがある場合は、明らかになるまで暫定的に免許停止を提案。

5、物損事故のデータベース化を提案(運転に支障ありそうな人の発見につなげる)。

6、診断書提出の義務は課さない見解。

となっています。

この提言骨子を整理してみたいと思います。

1~5をまとめると、虚偽申告への罰則・主治医の通報の奨励・再取得への配慮・症状主義・疑わしき人物のデータベース化・診断書は取れないケースが多いことへの配慮、と箇条書きできると思います。

この箇条書きを並べ替えると、「正しい自己申告、主治医からの情報提供、そして埋もれがちな物損事故の情報の3点から、虚偽申告も簡単に見破れる体制を整え、監視と厳罰化で特定障害者の運転事故をなくす。」となると思います。

ここをさらに抽象化すると、「特定の障害者による事故を無くすため、障害者の情報を管理出来る様にする。」とすっきりと言えないでしょうか。

特定の障害とは、てんかん・躁うつ・統合失調症・など、です。

さて,心神喪失者等医療観察法という法律が施行されていますが、精神障害者に対する保安処分で、一言でいえば、精神障害者は何をするかわからない危険な存在である、という認識のもとに策定運営されている法律です。

それと同じことがこの提言の骨子にも言えると思います。

心神喪失者等医療観察法は、あまたある重大他害事件の件数のうちの数%にも満たないであろう、精神障害者の他害事件に対して徹底的な保安処分を、目が飛び出るような公金を投じて行う、というものです。

てんかんの事故についても同様で、日本てんかん学会によれば、2010年の人身事故件数726,000件のうち、てんかんが原因と思われる事故は71件だったという調査があります(ニューモデルマガジンX 7月号P,50)。

その状況に対して71件の事故のため特別な法制度を整備して対応しようとしています。

医療観察法が出来たからと言って、重大他害事件全体の件数は大きくは変化することはないでしょうし、道交法を改訂したからと言って、726,000件の人身事故件数に何ら影響があるわけでもありません。

どちらも精神障害者等の存在を、社会不安に対するスケープゴートとして祭り上げているだけのことです。

マイノリティーである精神障害者等がすべて悪いのだ、という社会認識を作り社会の耳目をそらそうとしている、のではないでしょうか。

まとめると、人身事故等交通事故を抜本的に減らすためには、すべての運転者に対して、その適性を取得時、更新時に限らず、もっと的確に調べるシステム、法制度が必要なのであるのに、提言は人身事故の0,00001%である、特定の疾患を持つ障害者の事故を減ずるため、障害者の情報管理を徹底しようとしているものです。

精神障害者等は事故を起こすという偏見差別の前提に基づいたもので、全体状況に何ら手を加えようとしない国の怠慢で差別的施策への提言であり、私たちは断じてこれを認めるわけにはゆきません。

以上



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