2011年11月28日
全国「精神病」者集団
はじめに
総合福祉法(仮称)については、総合福祉部会の骨格提言すべてが完全に盛り込まれるべきである。
障害当事者、障害者家族、福祉医療提供者、法律家、有識者、自治体関係者などあらゆる立場のもの55名が一致して提言した中身は重く受け止められ、骨格提言を完全に盛り込んだ法律を作るべきである。
骨格提言のうち全国「精神病」者集団として強調する点
1 前文の必要性
総合福祉法(仮称)の制定経緯そして理念を明確にするために前文は必要
たとえ議員立法でなくとも、前文を付けてはならないという縛りはないはず
2 法と理念の重要性
憲法の定める基本的人権が障害者にも平等に実質的保障されることは何より重要なことであり、目的条項に明確にされるべき。また法の理念条項も必須、目的を達成するために、国、都道府県、市町村、国民の義務条項は必須、基盤整備義務も必須
3 支援(サービス)体系
ショートステイは精神障害者の新たな社会的入院防止のためにはとりわけ重要なものであり、充実化が求められる(参考資料1参照)。精神障害者にとっては環境を変え三食昼寝つきで休息できる安全保障感のある場所が必要であるが、特別の施設でなくとも旅館やホテルなどのクーポン券支給で足りる場合が多い。こうしたクーポン券支給をショートステイの中に位置づけるべき
グループホームについてはソフトとしてのグループホームとして、分散したアパートのそれぞれの部屋をグループホームとして使い、交流の場と事務所を作るサテライト型グループホームの推進が重要。グループホームとしてのサービスが不要になった場合はそのままそのアパートの一室を住居として使えるため、転居の必要もなく、精神障害者の負担軽減となる。また新たな施設を新設する必要もない
居宅介護についてはキャンセル時の報酬保障(利用者負担をなくすため)あるいは臨機応変に対応できる24時間365日事務所に待機して対応できる介助類型と報酬確保が必要である。
4 地域移行
地域移行の法定化は何より重要であり、障害の程度や状況、支援の量などにかかわらず、すべての障害者が地域移行の対象となることは重要。現在の精神病院推薦による退院促進事業の発想を大幅に変える必要がある。とりわけ高齢超長期の入院患者の地域移行は緊急に解決されるべき人権問題(放置すれば死亡退院になってしまう 参考資料2参照)
なお精神病院隣接のグループホームや敷地内施設あるいは病棟改築の居住施設への「退院」は地域移行ではなく、既存のものは廃止し、今後決して認められてはならない
家事援助(閉鎖病棟で精神病院売店の割高な買い物をしないですむようにあるいは売店で買えないものなど買い物代行など)外出の促進のための移動支援など地域の福祉サービスを精神病院入院中から使えることは重要
現在精神病院入院中に保険外の支出がほぼ生活保護の日用品費と同じ例も多く地域移行に向けた活動への資金援助はことのほか重要。外出しようにもアパート探しするにもその交通費すらないのが現状
5 基盤整備
精神障害者への地域での福祉が圧倒的に貧しいがために、精神障害者は精神医療に囲い込まれ、デイケアや訪問看護(押し付けられる場合多い)に膨大な医療費が使われているが、これを地域でのサービスに転換するためにも基盤整備は精神障害者にとって重要 現在訪問系サービスあるいはショートステイの支給決定を受けても提供事業所がないため使えない精神障害者が多い
6 相談支援と権利擁護
相談支援については、「中立・公平」な、裁く人であるケアマネージャーではなくて、あくまで本人の利益に奉仕する立場をとるべきであり、かつ決して強制されないことを法的に担保すべきである
相談支援・権利擁護については、施設や精神病院あるいは刑事施設に積極的に出張相談窓口設置ができることを法的に保障すべき
現状では精神障害者に対して「うつ病は対象外」「3級は対象外」などという自立支援法申請窓口および相談支援事業所による水際作戦が行われており、申請すらできない状況がある。申請権・受給権の確保、あるいは相談支援を強制されないため、施設入所やグループホーム入居(とりわけ刑事施設からの出獄者に対してや精神病院からの地域移行の過程において)を強制されないため権利擁護はとりわけ重要である。
また逮捕された障害者に対して、救援の立場から権利擁護や相談支援がかかわることへの報酬保障と法的保障が必要
7 人権を侵害する制度の廃止とそれに費やされている予算を地域移行や地域基盤充実に向けること
心神喪失者等医療観察法の廃止やアウトリーチ事業の廃止(参考資料3、4 参照)
参考資料
1入院回避のためのショートステイ
全国「精神病」者集団運営委員 佐々井 薫
岡山県ではS51年に「精神障害回復社会復帰センター」として県がデイケアと診療所を合わせた施設を開設した。診療所は往診、家庭訪問を積極的に行いデイケアにも重きを置いて行っていた。
しかし、24時間体制の緊急対応の必要性を痛感して、ナイトケアとしてのホステルを追加した。
このセンターは地域医療の可能性とデイケア、ナイトケアの、有り方についての成果を上げていったがH18年に岡山県は財政難と地域医療は出来つつあるとしてセンターの廃止を打ち出した。
それに対して家族会や、各関係者の反対により「NPOけんかれん」基幹型地域生活支援センターゆうとして「日中活動や相談事業」「24時間電話相談事業」「ホステル事業」を県からの委託引き継ぐ事になった。
ホステルは自立支援法下にあってもショートステイで言う介護認定や利用条件を適用せず、手帳が無くても主治医の紹介やケースワーカーとの相談によって、本人の意思を尊重して、利用できる事となり、これまで簡単に強制入院させられたり、自分から入院を逃げ場所としていた人たちもホステルを利用する事で 地域生活を継続できる事になった。
以下は実際に利用している仲間のコメントである。
私は躁鬱病の精神障害者です。5年ほど躁と鬱に悩まされていますが、病状が悪化する時には、必ず何か家庭内に問題がある時だと医師からも指摘をうけ ていました。「ゆう」の「ホステル」を知るまでは、限界まで問題のある家庭内で我慢して、どんどん病状が悪化し、何ヶ月も入院するという悪循環をくりかえ していましたが、「ゆう」のスタッフの方に電話相談などをしながら、調子が悪化しそうになり始めのうちに「ホステル」を利用しては?などアドバイスをして もらいながら「ホステル」を利用するようになりました。実際利用するようになって、病状が悪化する前に、家庭から離れ環境を変える事ができ気分転換にもなり、ずいぶん入院回避できるようになりました。
これからも病状が悪くなる時がくるかもしれません、自分で自分をコントロールできない、でも、いざとなったら「ホステル」を利用させてもらえると心強くも思うのです。
この事業も5年の見直し期間を目前に、いかに今の形を継続していくかが、危ぶまれる事態になっています。
2 大量の超長期入院患者
5年以上の入院患者は総計121,856人
そのうちなんと20年以上の入院患者数は40,167人
3 2012年度予算によるアウトリーチ事業を弾劾する
全国「精神病」者集団
厚生労働省は2012年度予算において精神保健体制によるアウトリーチ施行事業を予算化した。
これは本人の同意がない場合、医療報酬としては請求できないという理由で、医療保険以外で多職種チームによる強制的介入を行おうというものである。望んでいないのに自宅に侵入され介入されるという重大な人権侵害が税金を使って行われようとしている。いかなる根拠でこのような人権侵害が許されるのか? 憲法および国際人権法違反と断ずる。
しかも恐るべきことにこのチームにはピアサポーターも位置づけられており、いわば精神障害者自身を専門職による人権侵害の手先として利用する、恐るべき精神障害者の分断である。私たち精神障害者はこうした犯罪行為に加担するいわば岡引になることを拒否する。
この試行事業は世界的に精神障害者の反対の中で強行され、しかも効果も疑わしく、死亡例も有意に多いとされている、地域での強制医療法への一里塚である。
本来すべての福祉や医療を拒否して孤立して、苦痛や困難に直面している人たちに対しては(ホームレスを含む)スエーデンスコーネで行われているような(注参照)パーソナルオンブート制度こそが求められている。これについてはすでに全国「精神病」者集団が何度も厚生労働省および関係団体にも紹介している。
スコーネのパーソナルオンブートは行政からも精神保健体制からも独立した障害者および家族団体によって運営されており、1対1のつながりを作っていく事で信頼関係を作り上げ、語り合うものであり、守秘義務があり、記録も付けないものである。もちろん精神保健体制にも行政にも個別の人について報告義務はない。こうした先進事例こそが試行事業化されるべきである。
私たち全国「精神病」者集団はこのアウトリーチ事業についてすべての都道府県が拒否すること、そしてすべての関係諸団体が拒否することを強く要請する。
注
アウトリーチ試行事業については
障害福祉保健関係主管課長会議 20011年2月22日資料以下11ページより
スエーデンスコーネのパーソナルオンブートについては以下参照
https://nagano.dee.cc/swedensd.htm
4 人権侵害と膨大な金食い虫、青天井の予算を使う心神喪失者等医療観察法(省略)